『量産型リコ』を観終えました。
イベント企画会社に勤める璃子は、事なかれ的に人生を過ごす女子。お荷物社員の寄せ集めと言われる部署でのらりくらりと仕事をこなし、定時が来れば即座に帰宅するような毎日。
ある日、同僚の浅井に言われた、平凡の極みを表す“量産型”という言葉が引っ掛かる璃子。言われてみれば、近頃では熱意や興奮を感じる事がなくなっている…。
そんな事を思いながらの帰り道、璃子は何の気もなく小さな模型店に足を踏み入れる。店員に言われるま量産型ザクを作り切った事で、プラモ作りに楽しさを見い出した璃子の人生は少しづつ変わり始め……といったお話。
女子✕プラモデルという意外な組み合わせの作品。
これまでもプラモを作劇に取り入れた作品はいくつかありましたが、“プラモを作る”事自体に関しては、ことごとく無視、もしくは軽視されてきました。
作った後の、形になった物こそが肝要で、作る作業なんかどうでもいいくらいにしか考えていないんですよね。
とある監督(だかプロデューサー)なんか、“プラモの製作は地味だからガンプラバトルに重きを置くようにした”とか言っちゃう始末で、タイトルに“ビルド”というワードを冠していながら抜け抜けと何を言ってるんだと呆れた記憶があります。
本作におけるプラモ作りとは、人生でぶち当たる障害や疑問に対する答え探しの一端であり、そのおかげでキャラが成長(もしくは変化)するという意味で、キチンとドラマの根幹になり得ているんです。
先の例とは逆で、作っている過程こそが肝要で、結果的に完成品はどうでもいい(笑)というのが本作の斬新な点だと思います。
「璃子の技術がいつになっても上達しない!」「今時に、あそこまで潤沢にガンプラが揃っている店なんてあるものか!」と感じる人もいるようですが(あんま見ないけど)、そう感じる人にとっては、本作は実に難解なお話かもしれません。
これまでにあった、プラモを題材にした作品よろしく、本作もそんなCMドラマみたいなものだと言い切れそうなものですが、本作に感化されて、自分もプラモを作ってみようかなと思い立つ事はあっても、実行に移せる人は大して存在しないと思います……何しろ、売ってないからな(笑)!
プラモ売り場が枯渇している状況が続いている昨今に、よくもまぁこんな生殺しに近しいドラマを作る(or放送する)気になったものです。
本作最大の見どころ(?)でもあるプラモ作りのシーンですが、至らないながらも自分なりの技術を注ぎ込んで、あくまで自分だけの作品にしようとするのがいいんですよね。
足りない所を自分で補完するのがプラモの本分であり、醍醐味ですから。
本作を参考に、色んな用具を使って自分なりの作品を作る事に愉しみを見い出せる人が増えてくれると嬉しいですね。
ニッパー1丁しか使わずに色が足りないだの合わせ目が出るだのと、恥ずかしげもなく文句を言える連中よりも遥かに志の高い人間になれますよ。
文句は言わないにしても、環境や状況といった不可抗力により、やりたい事ができない人にとっては、本作に登場する矢島模型店はこの世のパラダイスです。
プラモが製作しやすい環境が揃っているだけでなく、困った時に頼りになるアドバイザーがいるのが大きいですよね。無尽蔵にガンプラが売っている事よりも、こっちの方に魅力を感じる人は、とっくにパチラーを卒業している中級者だと思います。
しかも、メンドくせ―準備&後片付けまでやってくれるんだったら、俺ッチだって塗装もマメにやりますよ(笑)。
塗装に関して、身体への悪影響を配慮するような説明ゼリフが一切ないあたり、大人向けの作品だなと感心しました。…って、今時は大人の方がうるせーか。
登場するキャラたちがプラモ作りを通じて一歩を踏み出す様は、ドラマ面においても面白いと感じます。
もちろん一番の変化があったのは主人公の璃子ですが、そのきっかけすらなかった1話の時点では“量産型”と揶揄されるのも当然なキャラでした。
・何してる時が楽しい? → 家でゴロゴロしてる時(楽だから)
・将来はどうなりたい? → なるべく現状維持
・欲しいものは? → 良いドライヤー
・部活は? → 中学の時はダンス部(周りがやってたから)、高校の時は帰宅部
・大学は? → 文学部ドイツ語学科(倍率が最も低かったから)
・武勇伝は? → 塾を休んだ事がない
・選挙は? → 興味はないけど、一応は行く
・服はどこで買う? → 駅ビル(全部揃うから)
…もうさ、無個性どころか、絶望的につまんない子だよね。量産型というより3日で飽きられる美人ですよ(笑)。
そういうのを見知りしてしまうと、たとえオタクと呼ばれようが、一つくらいは没入できる何か、いわゆる趣味を持っていたいものです。
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璃子を演じる与田ちゃんの、いつまで経ってもベテラン感が身に付かない感じもいいですね。
本作を撮り終えたところで、プライベートでプラモを作る事はないでしょうし、ミーグリとかで“ザク姉ぇ~”とか呼ばれてもポケーっとしてそうな感じ(笑)。
次回予告の後にネット配信の告知がありましたが、この時はカンペ視線を送る事なく、始終カメラ目線を逸らさずに告知文を読み切っているのには感心しました。与田ちゃん、さすが!
ところで、矢島模型店のバイト店員(だと思う)である郁田ちえみを演じている石川恵里加さんは、ルックスや声からみーぱんを連想してしまうのは俺ッチだけでしょうか?
…おっと、専門用語を使いすぎましたが、分かる人にだけ分かれ!
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