観た、『間違えられた男』 | Joon's blog

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『間違えられた男』を観ました。

 

貧しいながらも妻子とともに幸せな暮らしを送っているマニーは、唐突に警察署への同行を求められる。

マニーが先に訪れた保険会社からの通報によるもので、過去に2度も強盗をした男だというのだ。

無実の証明ができず、一旦は刑務所に入れられるマニーだったが、義理の弟が保釈金を支払った事で、家には帰れたものの裁判は免れない。

オコーナー弁護士の助言通り、事件当日のアリバイを証明するために奔走するマニー。しかし、状況は不利になるばかりで、妻のローズは気を病んでしまう。

そしてやって来た裁判の当日、マニーは無実を証明できるのか……といったお話。

 

冤罪を晴らすために奮闘する男の話と聞けば、まさにアルフレッド・ヒッチコックさんの得意分野。

しかし、本作はいつもとはチト毛色が違う作風で、実話を元にしているとか。

そんなリアル志向のせいか、主人公=マニーは行動派ヒーローではなく、長いものに巻かれざるを得ない小市民として描かれています。

刑務所に向かう最中で脱走したマニーは、独力で犯人を捜し出す……なんて展開を予想していたので、これは大ハズレ。おかげで、新鮮な気持ちで楽しめました。

 

原題は『The WRONG MAN』、訳せば“間違った男”といったところですから、『間違えられた男』という邦題も間違いではないんですが(ややこしい!)、正直、このタイトルは良くないですね。

だって、ネタバレじゃん(笑)?

このおかげで、別の誰かと間違われているというオチが読めてしまいますからね。

もし、そうではないタイトルであれば、普通の人の身の上に降りかかった不条理劇として、ミステリアスな雰囲気を出せたかもしれません。

 

そんな災難が降りかかったマニーは、いかにも普通の人。

芝居がかった台詞を叫んだり、派手なアクションで人一倍の腕っぷしを披露する事もなく、ただ目の前の現実を受け入れざるを得ない淡々とした男として描かれます。

マニーを演じるヘンリー・フォンダさんの、勇敢さを抑えた芝居が良いんです。

 

さらに、極貧に喘ぐような生活を送っているのが、我々のような庶民には感情移入しやすいキャラですね。ローズは常に借金に頭を抱えていて、マニーは保険証券を売ってでも金を作ろうとするんだから、生々しさすら感じます。

自分は50ドルくらいの借金を返すのに苦労しているけど、義弟のジーンは7500ドルの保釈金を払ってくれるという、この格差にも悲哀を感じます(笑)。

 

犯人捜しというより、どうしてマニーが無実を証明できるかが本作の縦筋ですが、ローズが精神に異常をきたしてしまうという新たな問題が発生します。

お金の問題に加え、夫に強盗の容疑が掛かっているというダブルパンチのせいで、ローズはパニクってしまいます。

前半の、貧しくても夫や子供のおかげで幸せを感じていた、いじらしいまでに健気なキャラだったローズの変貌は、それまで以上に物語に緊張感を与えます。

あっちが解決しても、こっちの問題は未解決のまま、みたいな。

ラストの一文はあった方が良かったのか、なかった方が良かったのか、ビミョーですね(個人的にはない方が良かったけど)。

 

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Blu-ray版は、評論家が本作やヒッチコックさんを語る証言集と予告編を収録。吹替版も収録しています。

 

ヘンリー・フォンダさんの吹き替えを担当するのは、おおっ……小山田宗徳さん!

自由な人間であっても番号で呼びたくなるっ…!

 

『~その2』はコチラ