『見知らぬ乗客』を観ました。
テニスプレーヤーのガイは列車での移動中、ブルーノという男と知り合う。
他愛のない話をする中、ガイは妻を、ブルーノは父を疎ましく思っている心情を吐露し合う。そこでブルーノは交換殺人を提案してくる。知らない者同士であれば、お互いに殺す動機がないという理屈だ。
妻への愛情は失せ、気持ちはアンに傾いているガイにはそんな願望がないわけでもないものの、ブルーノの話を一笑に付して、その場を去る。
数日後、ガイの前に再び姿を現したブルーノは、ガイの妻を殺したと告白。約束通り、次はガイが自分の父を殺す番だと迫り……といったお話。
「あいつホントにムカつくから、ブッ殺してもらいたいよ」
ある意味、健全な人はこのくらいの冗談や愚痴を口にした事があるはずです。もちろん、それは話し相手の人とナリを分かった上での会話だから、普通はサラッと笑い流して終わりです。
しかし、それを冗談と捉えず、実際にあなたが口にした事だからと真に受けてしまうような人間がいたとしたら…?
本作は、今しがた知り合ったばかりの、人とナリもロクに知らない相手と腹を割った会話をする事が、いかに危険であるかを描いた作品でもあるのです。
冒頭のブルーノとの会話を聞く限り、妻に関してよりも、既婚者の立場でありながらアンという女性と不倫関係にあるガイの方に問題があるように思われます。
が、その後、問題の妻であるミリアムが描かれますが、絵に描いたようなビッチっぷりが、ま~小憎らしいの何の。ミリアムを殺したブルーノに酌量の余地を与えてやっていいくらい。
殺人よりも不倫の方が罪が重いと捉えるヤフコメ民よ、それでもお前らはガイを咎めるかい(笑)?
クライマックスの、メリーゴーラウンドでの決闘も緊張感がありますが、最大の見どころは機械の故障からの大事故のシーン。
おそらくはミニチュアとの合成だと思うんですが、割と本気で見ていないと虚実の境が付かないほどに良く出来ています。『逃走迷路』のクライマックスもそう感じたっけ。
ヒッチコックさんの作品はサスペンス要素のみならず、特撮技術(特に合成)も侮れないんです。
しかし……高速回転するメリーゴーラウンドの下を匍匐前進するジイさん、アンタに一番ヒヤヒヤさせられたよ…。
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Blu-ray版の映像特典は多め。予告編や著名人による評論の類の映像です。
イギリス版の本編が映像特典扱いで収録されていますが(無情な事にSD画質)、アメリカ版本編と何が違うんだろう?