先日に観た『Uボート』に感化され、潜水艦をフィーチャーしている『眼下の敵』を観ました。
第2次大戦下、大西洋を進むアメリカの駆逐艦ヘインズ。敵の姿もなく退屈な日々を送る中、乗組員たちは、部屋に引きこもったまま姿を見せない艦長を腑抜け呼ばわりしていた。
そんな中、ヘインズはドイツの潜水艦に遭遇。
姿を現した艦長は潜水艦への奇襲を敢行、その的確な指示に乗組員らは感嘆の声を上げる。
一方、潜水艦のストルバーグ艦長もまた、あの手のこの手で攻撃を回避する。
お互いを好敵手として感心する中、駆逐艦の攻撃パターンに気付いたストルバーグ艦長は、イチかバチかの策に出るが……といったお話。
『Uボート』を引き合いに出してしまいましたが、あちらはドキュメントに近い作風で、本作の方はしっかりとしたドラマです。
つまり、後者には荒唐無稽の要素が入り込む余地があるという事です。だからって、本作がつまんないわけではありません。
映画に娯楽を求める人にとっては、むしろ本作の方が面白く感じるんじゃないかな?
数多く、かつ広範囲に渡って繰り広げられているであろう戦線の中の、ごく小さな戦闘を描いた作品。だだっ広い大西洋で、偶然の邂逅を果たした駆逐艦VS潜水艦のタイマンです。
戦争映画でありながら、知恵を絞って攻撃し、攻撃に耐えて次の攻撃に移るという戦闘シーンのセオリーは踏襲していながら、どことなく殺伐とはしていないんですよ。
ヘインズの艦長(=マレル)とUボートの艦長(=ストルバーグ)の探り合いは裏の裏の読み合いのようで、国のために戦うという大義名分は二の次に、単にこの対決に勝とうと躍起になっているだけにも見えるんです。ちょっとしたゲーム感覚というか。
そう思える落としどころが、クライマックスでの敵味方が入り交わるシーン。普通の戦争なら敵兵に対して殺意が湧くところでしょうが、そうはならないのが好きです。
似たようなシチュエーションが『Uボート』にもありましたが、この時の対応は、あちらと本作とでは実に対極的です。
マレリとストルバーグがキチンと顔を合わせるのもいいですね。
戦場で生まれた友情の証にガッチリと握手!なんてダッセー演出もなく(笑)、あくまで根本は敵国の人間同士として描かれるのは始終変わらず、二人とも生き残って終わる爽やかな終わり方も好きです。
アメリカ海軍が撮影に協力しているという事で、あの駆逐艦はキチンとした本物。
70年代あたりまでに作られたアメリカの戦争映画の多くは本物を使っているので、たとえ映像は古臭く見えても、本物が見せる迫力に関しては、現代の優れたCGよりも遥かに説得力があります。
爆雷の爆発時に上がる水柱の迫力と言ったら!
短所を挙げれば、駆逐艦と潜水艦の位置関係がイマイチ分かりづらい点でしょうか。セリフだけでそれらを把握しきゃならないというか。
魚雷や爆雷を発射するような緊迫した状況で、面舵やら取り舵やら言われても、それらがどっちから来るのかピンと来ないんですよ(笑)。画面内の緊張感から取り残されているみたいで、ちょっと乗り切れないのが残念でした。
その辺を理解できている人は、あのやり取りが正確だって分かるんですかね?
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吹き替え音声があるだけで、映像特典どころかトップメニューすらないトホホ仕様です。
今回は2度目の鑑賞なので吹替版で鑑賞しましたが、マレル艦長=ロバート・ミッチャムさんを担当するのは浦野光さん。
この声はどこかで……おお、『ウルトラセブン』(と『ウルトラマン』の後半)のナレーターでお馴染みの!