市の担当者
「（遠くに建つ塔を見ながら）確かにあなたに塔のリフォームを依頼したのは私です。」
大工
「おぅよ！」
市の担当者
「確かに見違えるようにキレイになりました。」
大工
「だろぉ？どうだい？
立派な仕上がりだろぉ？」
市の担当者
「ただ・・・、これはどういうことです？」
大工
「んん？」
市の担当者
「なんで・・・、
なんでピサの斜塔をまっすぐにしたんですか？」
大工
「基礎を見たところ傾いてたからよぉ。
基礎から見直してバッチシ直してやったぜ！」
市の担当者
「直さなくていいんです！」
大工
「あぁ？」
市の担当者
「直さなくていいんです！
ピサの斜塔なんだから！」
大工
「なんかよくわかんねぇけどよぉ。」
市の担当者
「なんでわからないんですか！」
大工
「最初に依頼が来た時に中に入って確認したらよぉ、
なんか斜めに傾いでる気がしてよぉ。」
市の担当者
「傾いてるんです！
ピサの斜塔なんだから！」
大工
「ビー玉置いてみたら案の定傾いてたからよぉ。」
市の担当者
「いや置かなくてもわかるでしょ！
外から見た時点でしっかり傾いてますよ！」
大工
「だから、バッチシ直してやったぜ！」
市の担当者
「だから直さなくていいんです！」
大工
「オレはよぉ、曲がったことが大嫌いだからよぉ。」
市の担当者
「なんだ、この一向に噛み合わない感じは。」
大工
「見てくれよぉ。このピサの斜塔！
ビシッと決まってらぁね！」
市の担当者
「うん、斜塔じゃなくなっちゃったんですよ！
あなたがまっすぐにしたから！」
大工
「これで安心して住めるぜ！」
市の担当者
「いや、住む場所じゃないんで！」
大工
「今までこういう傾いた物件をいくつも見てきたがよぉ。
ここまで傾いてた物件は初めてだぜ。
よく周りも放ってたよな。」
市の担当者
「放ってたわけじゃないんです！」
大工
「でもオレがまっすぐにしてやったからよぉ。」
市の担当者
「うん。
あなたの仕業なのはわかってます！」
大工
「これで安心して住めるぜ！」
市の担当者
「だからすみません！」
大工
「謝らなくてもいいぜ！」
市の担当者
「・・・？」
大工
「・・・。」
市の担当者
「・・・いや、『すみません』ってそういう意味じゃなくて。
この流れで私が謝るってどういう流れだと思ったんですか？」
大工
「いや、それにしても見てくれよ！
キレイなほどまっすぐだ！
我ながら惚れ惚れするね！」
市の担当者
「あぁ・・・、上に何て報告すればいいんだ・・・。」
大工
「『なんということでしょう』って言えばいいんじゃねぇか？」
市の担当者
「ホント、なんていうことをしてくれたんですか！」
大工
「礼にはおよばねぇよ！」
市の担当者
「礼なんかしないですよ！
何だろう、一向に平行線なんだけど・・・。」
大工
「平行線・・・？
でも、塔は垂直だ！」
市の担当者
「戻してください！」
大工
「はぁ？」
市の担当者
「戻してください！
塔を斜塔に！」
大工
「わざわざ欠陥住宅にしろってか！」
市の担当者
「だからすみません！」
大工
「それはどっちの意味だ？
居住しないという意味か？
依頼の意味か？」
市の担当者
「どっちもです！！」
大工
「わざわざ斜めにする建造物なんて聞いたことねぇよ！」
市の担当者
「ここは例外なんです！
ワザと傾いてるから観光客も来るんです！
下で支えるパントマイムをして写真を撮るんです！」
大工
「それなら大丈夫だ！
もう支えるパントマイムをしなくても塔はまっすぐだ！」
市の担当者
「ちょっとは茶目っ気というものを知れ！」
大工
「わかったよ！
今度、お前んちの台所、斜めにしてやるよ！」
市の担当者
「それはなんですか？
腹いせですか？」
大工
「『まっすぐ建ってる塔を斜めにしてくれ』なんて初めての発注だよ！」
市の担当者
「わたしも初めての発注ですよ！」
（１ヶ月後）
大工
「（遠くに建つ塔を見ながら）一度しっかり基礎を作り直しちまったから、もう一度斜めにするのは難しくてよぉ。
苦肉の策で、塔の外壁に等間隔で斜線入れてみた。」
市の担当者
「（遠くに建つ塔を見ながら）不思議・・・。
錯覚で斜めに見える・・・。」
ピサの斜塔×リフォームという組み合わせのコント。
一向に話が進まない堂々巡り。
演じるときは展開の順序を間違えないように注意が必要です。
【コント】北斗の拳
【コント】ルターとルソー
【コント】ドラキュラ
【コント】またつまらぬものを斬ってしまった
【コント】ある作家の日常
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