囚人52番
「刑務所に収監されて10年。
 明日、ついに出所の日。
 妻よ・・・、娘よ・・・。
 待っていてくれ。」

サイレン
「ウー!ウー!ウー!ウー!」

囚人52番
「ん?何だ?」

館内アナウンス
「緊急事態発生!緊急事態発生!
 囚人の脱走が発覚!
 所内の看守は緊急配備に入れ!」

囚人52番
「だ、脱獄?」


(外の方で大量の人が走る足音)


囚人52番
「なんか、物々しい雰囲気になってる・・・。
 なにこれ・・・。」

物音
「ドゴッ!(突然壁が反対側から破壊される)」

囚人52番
「っ!!」

囚人64番
「(穴から顔を出す)おい!逃げるぞ!!」

囚人52番
「逃げるぞ・・・って、何これ?」

囚人64番
「何って、脱獄だよ!」

囚人52番
「脱獄?!」

囚人64番
「前々から計画してただろ!」

囚人52番
「いや知らないし・・・。」

囚人64番
「早くこいよ、待ってるぞ!(穴の奥に入っていく)」

囚人52番
「待ってる・・・って。
 いや、なんでよりによって今日なの?
 俺、明日出所だよ?
 出所前日に脱獄計画実行って・・・。
 しかも、壁にこんな大きな穴を開けて・・・。」

看守の声
「(遠くから)おーい!
 こっちの牢はどうだ?」

囚人52番
「やばっ!!(穴の前に立って足で穴を隠す)」

看守
「おい!脱獄犯がこっちに逃げて来なかったか?」

囚人52番
「いや、こっちには・・・。」

看守
「くそっ!
 どこに逃げやがった!!(走り去る)」

囚人52番
「(看守が走り去ったのを見届けて、足をどけながら)あぶな・・・。」

囚人64番
「(穴から顔を出す)おい!何してんだよ!
 早く逃げるぞ!」

囚人52番
「いや、逃げないから!」

囚人64番
「はぁ?!」

囚人52番
「俺、明日出所だし!」

囚人64番
「お前、裏切るのか?!」

囚人52番
「裏切るも何も刑期を全うしただけだから!」

囚人64番
「『出る時は一緒に出ようね』って言ったじゃん!」

囚人52番
「なにその約束!
 具体的にどう調整するつもりだったの?」

囚人64番
「だから脱獄計画を練ったんじゃないか!」

囚人52番
「そもそも、そんな計画知らないし!」

囚人64番
「いやいやいや。
 この3ヶ月の間、ずっと食事をしながら計画してただろ!」

囚人52番
「3ヶ月前から食事の時間に・・・?」

囚人64番
「そう!」

囚人52番
「あぁ、そのときは『もうすぐ出所だ』ってことで頭がいっぱいで
 話半分に聞いてたかも・・・。」

囚人64番
「・・・確かに脱獄の話をしてても、お前ずっと遠い目をしてたな。」

囚人52番
「多分、外に出た時のことを考えてたんだと思う。」

囚人64番
「とにかく、脱獄にはお前の力も必要なんだから!
 待ってるぞ!(穴の奥に入る)」

囚人52番
「いや、だから行かないって!!
 余計なことしないで!
 何もなければ明日出所なんだから!
 ・・・ちょっと!聞いてる?!」

看守2の声
「(遠くから)そっちにはいないか?!」

囚人52番
「またきた!(穴の前に立って足で穴を隠す)」

看守2
「おい!
 どうやらこの脱獄計画はかなり前から練られていたらしい。」

囚人52番
「そうですか。」

看守2
「お前!
 脱獄について何か知らないか?」

囚人52番
「知りません!
 何も知りません!」

看守2
「そうか。」

囚人64番の声
「(穴の向こうから顔を出そうとするが、52番の足が邪魔で出て来られない)おい!おい!
 塞がってる!おい!」

看守2
「ん?何か聞こえないか?」

囚人52番
「なにも!なにも!」

囚人64番の声
「(52番の足を叩く)おい!おいったら!!」

看守2
「んー。
 やはり、何か聞こえないか?」

囚人52番
「(64番の声を遮るそうに)あーー!!あーー!!
 何も聞こえなーい!何も聞こえなーい!」

看守2
「何かわかったことがあったら知らせろよ!(走り去る)」

囚人52番
「はーーーーい!
 はーーーーい!!」

囚人64番
「(52番の脚を跳ね除けて穴から出てくる)何で塞ぐんだよ!」

囚人52番
「空気読め!!
 危なかったんだぞ!!」

囚人64番
「はい、これ!(スコップを渡す)」

囚人52番
「え、何これ?!」

囚人64番
「お前が処分する段取りだろ!」

囚人52番
「知らないよ!
 そんな段取りになってるの?!」

囚人64番
「おとといの食事の時間に決まったろ?」

囚人52番
「おとといの?」

囚人64番
「まぁ、確かに俺たちが何しゃべっても、
 ぽけーっとした表情で『ぽやや~』ってリアクションしかしなかったな。」

囚人52番
「俺、そんなだったの?
 完全に抜け殻になってるじゃん!
 そんなやつに脱獄の段取りの話をしてもダメだろ!」

囚人64番
「とにかくスコップ渡すから段取りの通り処分してくれ!」

囚人52番
「待って!!
 脱獄が起きたタイミングでスコップ持ってたら
 『わたしが掘りました』って言ってるようなものじゃん!!」

看守3の声
「(遠くから)こっちにはいないか?!」

囚人64番
「ヤバいヤバいヤバい!!(穴に隠れる)」

囚人52番
「ヤバいヤバいヤバい!!(渡されたスコップを穴に押し込み、足で穴を隠す)」

看守3
「(やってくる)こっちはいないか?!」

囚人52番
「看守同士連携してください!
 各々が思い思いに走り回るんじゃなくて!」

看守3
「なるほど。賢い!」

囚人52番
「普通です!」

看守3
「52番、今日はちゃんと受け答えしてるな。」

囚人52番
「ちゃんと受け答え?」

看守3
「ここ3ヶ月くらい、
 何話しても上の空で『ぽやや~』としか言わなかったから。」

囚人52番
「看守さんにもそんな対応してました?
 これ間違いなく3ヶ月前の時点で心だけ仮出所してますね。」

看守3
「とにかく今は脱獄犯を捕まえないと・・・。」

囚人64番
(穴から52番の脚をつかみ、穴に引きずり込もうとする)

囚人52番
「(必死にその場に留まろうとする)がっ!ぐぐぐ・・・!!」

囚人64番
(穴から52番の脚をつかみ、穴に引きずり込もうとする)

囚人52番
「(必死にその場に留まろうとする)早く・・・早く行ってください・・・っ!!」

看守3
「そうだな!どこ行きやがった!(走り去る)」

囚人52番
「(64番の手を振りほどいて)怖ぇよ!!」

囚人64番
「(穴から顔を出して)早く行くぞ!!」

囚人52番
「足引っ張るなよ!」

囚人64番
「計画の足を引っ張ってるのはお前だろ!」

囚人52番
「そういう意味じゃねぇよ!
 足をつかまれて穴に引きずり込まれるって、
 ジャパニーズホラーの世界だからな!」

囚人64番
「ほら、スコップ!」

囚人52番
「だから、俺に託すな!!」

囚人64番
「刑務所の地図!!」

囚人52番
「ちょっとやめて!ホントに!!」

囚人64番
「牢屋のカギ!!」

囚人52番
「物的証拠をここに残すのやめろ!!」

囚人64番
「脱獄計画のメモ!!」

囚人52番
「決定的なの出すな!!」

囚人64番
「脱獄計画の話を録音したレコーダー!!」

囚人52番
「どうやって持ち込んだんだよ、これ!!」

囚人64番
「計画通り全部処分しろよ!(再び穴に入る)」

囚人52番
「俺、すげぇ大役担ってんじゃん!!
 ・・・ちょっと、どういう計画になってるの?(レコーダーのスイッチを入れる)」

レコーダーの声(囚人64番)
「改めて脱獄計画をまとめるぞ」

レコーダーの声(囚人52番)
「ぽやや~。」

レコーダーの声(囚人64番)
「14時25分、
 すべての穴掘り完了。」

レコーダーの声(囚人52番)
「ぽやや~。」

レコーダーの声(囚人64番)
「14時30分、
 自由時間のチャイムと同時に行動開始。」

レコーダーの声(囚人52番)
「ぽや~。」

レコーダーの声(囚人64番)
「すべての証拠の処分は52番が引き受けてくれた。
 52番!よろしく頼むぞ!」

レコーダーの声(囚人52番)
「ぽや!ぽやや!ぽや!」

レコーダーの声(囚人64番)
「よし!」

囚人52番
「(レコーダーを止める)『よし!』じゃねぇ!!」

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

出所前日に大脱獄計画・・・。

果たして翌日、彼は出所できたのでしょうか。

 

さて、やはり2週間に一度の更新だと「いつの間にか更新されてる」という感じになってしまうので、

毎週土曜日の更新に戻したいと思います。

週に一度の楽しみになっていただければ幸いです。

僕もみなさんからの感想を楽しみにしております。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】黄門さまのおさばき#3
【お題コント】特異体質
【コント】大型アップデート
【コント】アインシュタイン
【コント】居酒屋

 

 

 

【コメント募集中】

今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。

 

【実演したい方へ】

本ブログのコントは自由に演じていただいて構いません。

アレンジや改変も自由です。

アメブロのメッセージ機能やtwitterのDMで一言いただけると、励みになります。