おばあさん
「ただいま。」

おじいさん
「あー、疲れたー。」

おばあさん
「今ご飯を作りますからね。」

おじいさん
「あぁ、頼む。
 あ、そうだ。不在連絡票が来てたな。
 (不在連絡票を見る)んー?」

おばあさん
「誰からですか。」

おじいさん
「『あのときのツル』さんから。」

おばあさん
「あのときのツルさん?」


おじいさん
「『伺いましたが留守でした』。」

おばあさん
「留守中に来られたみたいですね。」

おじいさん
「再訪問の依頼を出そう。
 いつがいいかな。
 明日でいいかな。」

おばあさん
「明日はすずめのお宿に行くんじゃなかったでしたっけ。」

おじいさん
「あぁ、そうか。
 (不在連絡票を確認して)んー?」

おばあさん
「どうしました?」

おじいさん
「『直接会うことができなければ、ビデオチャットでも構いません』だって。」

おばあさん
「それでいいんじゃないですか?」

おじいさん
「そうだな。
 時間調整する。」


(翌日)


(ビデオチャットの画面におじいさんとおばあさんと娘さんが映っている)


おじいさん
「あー、あー、聞こえてますか。」

娘さん
「聞こえてます。
 わたしの声と映像も届いてますでしょうか?」

おばあさん
「はい。大丈夫ですよ。」

娘さん
「ありがとうございます。
 今日はよろしくお願いします。」

おじいさんおばあさん
「よろしくお願いします。」

娘さん
「では、始めます。」

おじいさん
「お願いします。」

娘さん
「夜分遅くにすみません。
 夜道を歩いていたら道に迷ってしまいまして・・・。」

おじいさん
「あ、そのくだりやります?
 ビデオチャットになったから、その設定は変えた方がよくないですか?」

娘さん
「見ての通り、雪も降ってきまして・・・。」

おじいさん
「そこ室内ですよね。
 背景は夜の雪道が映ってますけど、画像ですよね。」

娘さん
「大変申し訳ありませんが、一晩泊めていただけないでしょうか?」

おじいさん
「アドリブきかない娘さんなのかな。
 設定そのまま持ってきたけど。」

おばあさん
「いいですよ。
 狭い家ですが。」

おじいさん
「ばあさんも続ける?
 ワシの方がむしろ順応できてない?」

娘さん
「では、お邪魔します。」

おじいさん
「ばあさんに感謝しなさい。
 ばあさんもワシと同じ疑問抱いてたら、先に進まないところだったよ。」

娘さん
「改めて、本日は泊めていただきありがとうございます。」

おばあさん
「いえいえ。
 困った時はお互い様ですよ。」

おじいさん
「2人にはこの設定に迷いがないんだね。」

娘さん
「一宿一飯のお礼に、はたを織らせていただけないでしょうか?」

おばあさん
「構いませんよ。
 おじいさんも構いませんよね?」

おじいさん
「別に構わんよ。
 そんなことより、今この会話は成立してるのかって考えてるところ。」

娘さん
「ありがとうございます。
 では、失礼して・・・。
 あ、ひとつだけお願いがあります。」

おばあさん
「何ですか?」

娘さん
「わたしがはたを織っている姿を決して覗かないでください。」

おばあさん
「わかりました。
 おじいさんもいいですね。」

おじいさん
「それ、別にカメラをオフにすればいいんじゃないかね。」

娘さん
「では、失礼します。」

おばあさん
「覗いちゃダメですよ、おじいさん。」

おじいさん
「覗かないけど、カメラを切ればその心配は無用だよ。
 なんなら、一旦解散しようか?」

娘さん
(カメラの目の前でツルの姿に変わる)

おじいさん
「出ちゃってる出ちゃってる!
 カメラ切れって!」

ツル
(はたを織り始める)

おじいさん
「丸見えだよ!
 ガンガン映ってるよ!
 このくだりをやるんだったら、ビデオチャット提案しちゃダメだよ!」

おばあさん
「おじいさん。」

おじいさん
「なに?」

おばあさん
「覗いちゃダメですよ。」

おじいさん
「覗いてんじゃないよ!
 普通に進行してることに驚いてんだよ!」

ツル
「はっ!
 (カメラの方を見て)見ましたね?」

おじいさん
「見ましたよ。」

ツル
「覗かないでくださいって言ったのに!」

おじいさん
「ワシのせいなの?
 10:0でそっちに非がない?」

ツル
「・・・はい。御察しの通りです。
 わたしは・・・あのときのツルです!」


おじいさん
「知ってる。
 不在連絡票に書いてあったから。」

ツル
「(織った反物をカメラに見せて)この反物はお二人に差し上げます。」

おじいさん
「話を最初に戻すようで悪いけど、
 これをビデオチャットでやる必要あったのかな。」

ツル
「では、失礼します!(フレームアウトする)」

おばあさん
「ツルさぁーーーん!!」

おじいさん
「おばあさんはこのくだりビデオチャット賛成派なんだね。」


(娘さんの画面には床に置かれた反物のアップが映し出されている)


おじいさん
「・・・今映ってる反物は後日郵送になる認識であってる?」

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

このコントは2021年1番といっていいほどいい出来だったと思います。

昔話と現代のミックスはよくやる手法ですが、キレイにハマりました。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ルパンと銭形
【コント】美容室
【コント】エンマの裁き
【コント】大きなツヅラと小さなツヅラ
【お題コント】汗と涙のシンデレラストーリー

 

 

 

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