受け渡し役
(ジュラルミンケースを抱えて立っている)

ベテラン刑事
「(少し離れたところから受け渡し役を見ている)・・・あと5分。」

新人刑事
「・・・犯人、身代金を取りに来ますかね。」

ベテラン刑事
「向こうが時間と場所を指定したんだ。必ず来る。」

新人刑事
「・・・先輩。」

ベテラン刑事
「・・・ん?」

新人刑事
「ひとついいですか?」

ベテラン刑事
「・・・なんだ?」

新人刑事
「何故、犯人はこの場所を?(受け渡し役の方を見る)」

受け渡し役
(ジュラルミンケースを抱えて立っている)

お姉さん
「(受け渡し役の前にやってきて)よいこのみんなー!こーんにーちはー!!」

子供たち
「こーんにーちはー!!」

お姉さん
「はーい!
 今日は『けっぱれ!アンパンさんショー』にやってきてくれてありがとう!」

新人刑事
「・・・キャラクターショーの舞台の上ですよ?」

ベテラン刑事
「(受け渡し役の方を見ながら)向こうがイベント広場を指定したんだ。
 犯人にとっても思うところがあったんだろう。」

新人刑事
「いや、でも僕調べたんです。
 このキャラクターショー、今日は2回公演の予定だったんです。
 でも、お客さんが多すぎて会場に入りきらなかったので、急遽3回目を開いたみたいなんです。」

ベテラン刑事
「(受け渡し役の方を見ながら)・・・犯人にとって思うところがあったんだろう。」

新人刑事
「うん、だからないですよ。
 急遽なんです。
 本来ならもうバラしてる時間なんです。
 犯人にとってアクシデントなんです。」

お姉さん
「みんなはアンパンさんにあいたいかなぁー?」

子供たち
「あいたーーーい!」

お姉さん
「いいへんじだね!
 みんなが待ってるのならきっとくるよ!!」

受け渡し役
(舞台の真ん中でジュラルミンケースを抱えて立っている)

ベテラン刑事
「つつがなくショーは続いてるな。
 やっこさん完全無視で進んでる。」

新人刑事
「でも、若干ザワついてはいますよ。」

ベテラン刑事
「(受け渡し役を見て)やっこさん、顔を真っ赤だな。」

新人刑事
「こんなはずかしめないですよ。
 ときおり会場から『だれー?』って声、聞こえますし。」

ベテラン刑事
「確かに観客も違和感を感じてるようだな。」

お姉さん
「(大きな動きで辺りを見回し)あれぇー?
 アンパンさん、どこにいったのかなぁ?
 そうだ!カバ男くんにきいてみよう!」

新人刑事
「カバ男くん?」

お姉さん
「(受け渡し役に)すみませーん!アンパンさん知りませんかぁー?」

ベテラン刑事
「アドリブでショーの登場人物ってことにしたな。」

新人刑事
「無理ないですか?
 『アンパンさん』にジュラルミンケースを抱えたキャラなんていませんよね。
 見た目完全に人間ですし。」

受け渡し役
「(舞台下手を指差して)あ・・・、あっちで見ました・・・。」

ベテラン刑事
「やっこさん、アドリブに乗ったぞ!
 これで舞台上に立ってる意味も出た。」

新人刑事
「でも、これで子どもたちの興味はアンパンさんよりもカバ男くんになっちゃったんじゃないですか?
 『カバ男くん、何してるのー?』『そのカバンなにー?』って言われてますよ。」


「やーいゆーえよー!!」

お姉さん
「そ、その声は?!」

ばいきんさん
「(舞台上に飛び出してくる)うひゃひゃひゃひゃー!」

お姉さん
「ば、ばいきんさん!!」

ばいきんさん
「アンパンさんはここには来ないぞー!
 オレさまがやっつけてやったのだー!!」

お姉さん
「な、なんですって?!」

ばいきんさん
「(受け渡し役を人質に取る)やーいゆーえよー!!」

お姉さん
「ああっ!カバ男くん!!」

ベテラン刑事
「ばいきんさんまでアドリブを!!」

新人刑事
「もうやめて!
 これ以上カバ男くんをクローズアップしないで!!」


「まてー!!」

ばいきんさん
「その声は?!」

アンパンさん
「(舞台に飛び出してくる)勇気102倍!!アンパンさん!!」

お姉さん
「アンパンさん、来てくれたのね!!」

アンパンさん
「カバ男くんのピンチとあれば、どこだって駆けつけるさ!!」

ベテラン刑事
「アンパンさんもカバ男くんをストーリーに取り込んできたな!
 これで観客もやっこさんが部外者だとは思わないだろう。」

新人刑事
「いや、『なんでカバ男くんジュラルミンケース持って板付きだったんだ』って疑問でいっぱいですよ。」

アンパンさん
「ばいきんさん!カバ男くんを離すんだ!」

ばいきんさん
「やーいゆーえよー!!
 離すもんか、いまからコイツにばいきんエキスを飲ませてやる!
 するとコイツはオレさまの手下になるのだ!!」

ベテラン刑事
「さらなるアドリブをぶっ込んで来た!!」

新人刑事
「もう通りすがりのキャラどころかメインゲストじゃないですか!」

ばいきんさん
「さぁ!ばいきんエキスを飲ませてやったぞ!
 カバ男くんよ!アンパンさんを倒すのだ!!」

アンパンさん
「や、やめろー!!」

お姉さん
「カバ男くん?!カバ男くん?!」

ベテラン刑事
「やっこさん、どう返す?!」

受け渡し役
「(舞台下手を指差して)あ・・・、あっちで見ました・・・。」

ベテラン刑事
「やっこさんがアドリブダメだったーー!!」

新人刑事
「そりゃそうですよ。
 役者でもなんでもない人をメインゲストに据えちゃダメですよ!」

アンパンさん
「カ・・・、カバ男くん、あっちにいるのか!」

お姉さん
「早く行きましょ!」

ばいきんさん
「チクショー!いつの間にあっちに!!」

お姉さんアンパンさんばいきんさん
(舞台下手に走っていく)

ベテラン刑事
「でも、プロの役者さんたちがまたもアドリブで切り抜けた!」

新人刑事
「切り抜けてないですよ。
 『じゃああの人は結局誰だったんだ』ってみんな思ってますよ。
 あと『この物語はなんなんだ』とも。」

バイブ音
「ウィーンウィーン。」

ベテラン刑事
「(スマホに出る)もしもし。
 ・・・ええ、こっちはもう着いてますよ。
 えっ?わかりました(通話を切る)。」

新人刑事
「誰からですか?」

ベテラン刑事
「本部からだ。
 待ち合わせ場所、ここじゃなかった。」

新人刑事
「はぁ?!」

ベテラン刑事
「『イベント広場』じゃなくて、『お弁当売り場』だそうだ。」

新人刑事
「『イベント広場』、『お弁当売り場』。
 確かに似てますけど・・・(舞台上の受け渡し役を見る)。」

受け渡し役
(ジュラルミンケースを両手で抱えて泣いている)

ベテラン刑事
「・・・今は伝えない方がいい。」

新人刑事
「もうちょっとだけ泣かせてあげましょうか、カバ男くん・・・。」

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

身代金受け渡しと不釣り合いな場所というのを探してこの設定にたどり着きました。

この組み合わせはいろいろできそうですね。

 

【上演メモ】

人数:6人以上

ベテラン刑事

新人刑事

受け渡し役

お姉さん

アンパンさん

ばいきんさん

子供たち(任意)

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★☆☆☆
備考:キャラクターショーは着ぐるみを用意するか、逆に生身で演じてツッコミを足してもいいですし、

比較的準備がしやすい戦隊もののキャラクターショーにアレンジするのもアリだと思います。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】レストラン
【コント】またつまらぬものを斬ってしまった
【コント】目薬
【コント】伊能忠敬
【コント】ビフォーアフター#2

 

 

 

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今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。

 

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