除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
(こたつに入りながら、手元のカウンターを1つ進める)

優子
「(台所からやってくる)年越しそばできたよー。」

光一
「お、いいね。」

優子
「もう今年も終わりねー。」

光一
「なんだか、いろいろあった一年だったな。」

優子
「そうねー。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
(手元のカウンターを1つ進める)

優子
「そば、食べよ。」

光一
「うん。」

優子
「あー・・・、あったかい・・・。」

光一
「こたつに入りながらのそば、最高だね。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
(手元のカウンターを1つ進める)

優子
「今年、あたし、何したっけ?」

光一
「仕事変えたの、今年じゃなかった?」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
(手元のカウンターを1つ進める)

優子
「そうだ。今年の頭だ。」

光一
「そのあと、すぐにコロナになっちゃったからね。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「(外を見て)また鳴った・・・。」

光一
「またか・・・(手元のカウンターを1つ進める)。」

優子
「今、カウンターいくつ?」

光一
「えーとね・・・、(手元のカウンターを見て)875。」

優子
「(外を見て)・・・。」

光一
「(外を見て)・・・。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
「いや、さすがに多いだろ!」

優子
「875って!
 108とっくに超えてるし!」

光一
「そもそも、『鐘の回数多すぎない?』って気付いてからカウントし始めて875だから!」

優子
「もう1000余裕で超えてるから!」

光一
「煩悩の数4桁って・・・。」

優子
「確かに今年いろいろあったけど、煩悩4桁って。」

光一
「今年は煩悩が多い年なのかもしれないな。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「・・・え、煩悩の数って毎年変わるの?」

光一
「変わるだろ。
 逆に毎年108ジャストで揃える方が難しいし。」

優子
「言われてみればそうね・・・。
 3日半に1個ペースって難しいもんね。」

光一
「今年はステイホームとか、在宅勤務とかあったからな。
 煩悩が溜まりやすかったのかもしれないな。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「だとしても多くない?
 いろいろあったにしても、煩悩ってここまで増える?」

光一
「あれかな。
 来年分まで煩悩を前借りしたとか。」

優子
「煩悩の前借りって制度あるの?」

光一
「わからないけど、来年、除夜の鐘が鳴らなかったら、
 前借り説が正しかったことになる。」

優子
「・・・そもそも前借りしてまで欲しいもの?煩悩って。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

光一
「和尚さんも大変だなぁ。
 定期的に1000回以上も鐘を撞いて。」

優子
「体力と持久力の勝負よね。
 あと、モチベーション。」

除夜の鐘
「ゴンゴーーーーーーン・・・。」

優子
「・・・聞いた?
 鐘のつき方にバリエーションを入れてきたわよ。」

光一
「飽きないための工夫だろうね。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「・・・これ、もしかしたら、『事件』ってことないわよね?」

光一
「・・・どういうこと?」

優子
「和尚さんがアリバイを作るために、自動で鐘を撞く装置を作ったのよ。
 それで、鐘を鳴らしている間に犯行現場に向かってるとか。」

光一
「鐘を聞いてる街中の人が証人ってこと?」

優子
「そう。だけど、どこかでアクシデントがあって帰る時間が遅れたのよ。
 で、装置が動きっぱなしになってて・・・。」

光一
「だとしたら、完全犯罪大失敗だな。
 逆に街中の人に多すぎる鐘の音を聞かれちゃってるんだから。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「警察に連絡する?」

光一
「いや、まだ完全犯罪説が確定じゃないから。
 俺、ちょっと鐘の様子見てくる。
 自動装置が付いてたら、警察に連絡しよう。」

優子
「写真も撮ってね。動かぬ証拠を。」

光一
「わかった(部屋を出て行く)。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「なんか画が浮かぶわ。
 除夜の鐘をバックに和尚さんが必死な顔で原付を飛ばしてる画。」

光一
「ただいま。」

優子
「どうだった?」

光一
「和尚さんが撞いてた。」

優子
「完全犯罪説じゃなかったか・・・。」

光一
「鐘が多く鳴ってた理由だけど、
 なんか、和尚さん同士で連携が取れてなかったみたい。」

優子
「・・・どういうこと?」

光一
「なんか、あの寺では毎年、除夜の鐘をつく担当の和尚さんを決めてるらしいんだ。」

優子
「うん。」

光一
「ただ、今年、いろいろあって鐘を撞く担当を決めてなかったんだって。」

優子
「うんうん。」

光一
「だから、それぞれの和尚さんが『今年は俺だ』と思い込んで、
 和尚さん一人一人時間差で108回撞いちゃってるらしい。」

優子
「ちゃんと、作業終了報告をチーム全体に上げないと。」

光一
「さっきお寺側に『除夜の鐘多すぎです』って伝えたから、もう今日はならないと思うよ。」

優子
「大丈夫?」

光一
「『あぁ、すみません。グループLINEで周知します』って言ってたから。」

優子
「完全犯罪じゃなくてよかったわ。」

光一
「前借りでもなかったね。」

優子
「・・・もう寝る?」

光一
「そうだね。」

優子
「(布団に入る)おやすみ。」

光一
「(布団に入る)はい、おやすみー。」

優子
「スー・・・。スー・・・。」

光一
「グー・・・。グー・・・。」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

優子
「(飛び起きる)ん?ん?ん?ん?ん?」

光一
「どういうことだ?」

優子
「連絡行ってない和尚さんがいるんじゃない?」

光一
「『LINE見て』って言ってくる(外に走って行く)!」

優子
「いってらっしゃい!」

除夜の鐘
「ゴーーーーーーン・・・。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

「除夜の鐘がいつまでも終わらない」の発想から広げていったコント。

 

本当は別のコントのアイディア出しをしていたのですが、

そのコントを文章にする前に、こっちの設定を思いついたので、先にこちらのコントを作りました。

 

さて、2020年も毎週1本、全部で52本のコントを作りました。

これで通算342本。

目標の1000本までようやく3分の1来ました。

2021年も変わらないペースで作っていきますので、よろしくお願いします。

 

【上演メモ】

人数:2人

光一

優子

 

所要時間:3分~4分
上演難易度:★★☆☆☆
備考:舞台の上の2人だけでなく、除夜の鐘の音を出す裏方さんのタイミングも大事です。3人目の出演者といっていいくらい。

何度も練習して、いい間で鳴らしてください。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ワタシの大切な人
【コント】避難訓練
【コント】自由研究
【コント】整形手術#2
【コント】はなさかじいさん

 

 

 

【コメント募集中】

今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。

 

↓こんなコメントでもOKです!

・今回のコント、実演(アニメ化)するならキャストは誰

お気に入りのセリフは何?

コントのお題も募集してます。