(殿さまがお城から外を見ている。)


殿
「うむ。今日も我が国は平和じゃ。」

物音
「(外から)ドタドタドタ!!」

殿
「ん?」

町娘
「(飛び込んでくる)すみません!
 助けてください!」

殿
「ん?ん?ん?」

町娘
「悪い奴らに追われているんです!
 助けてください!!」

殿
「え、え、え。
 ここまでどうやってきたの?
 誰にも会わずに城の最深部まで来れるものなの?」

町娘
「どこか隠れるところは?!」

殿
「え、そこの屏風の裏とか。」

町娘
「失礼します(屏風の裏に隠れる)!!」

殿
「え、え、え。
 ごめん。まだ状況が整理できてない。
 こういうシチュエーションってある?
 殿様自らが町娘をかくまうって。」

悪党
「(勢いよくふすまを開ける)やいやいやいやーい!!」

殿
「なに?次から次へと。」

悪党
「女は逃げて来なかったか?」

殿
「え、君たちも誰にも会わずにここまで来れたの?」

悪党
「隠し立てするとタダじゃ済まねぇぞ!」

殿
「タダじゃ済まないの?
 殿様をどうするつもり?
 タダじゃ済まないのはそっちだと思うよ?」

悪党
「女は見てねぇのか?」

殿
「はい、あの、見てないです見てないです。」

悪党
「チクショ!ここも違うのか!!
 (部下たちに)他の部屋を探せ!!
 まだこの辺りにいるハズだ!!」

部下たち
「おー!!」

殿
「どこか違うところでやってくれない?
 今、外を見ながら平和に浸ってるとこだから。」

悪党
「やいやいやいやーい!!(部屋を出て行く)」

殿
「大丈夫?この城の警備。
 ものすごい数の部外者の侵入を許してるよ、殿様のところまで。」

町娘
「(屏風の裏から出てくる)もう大丈夫ですか?」

殿
「ん?
 あぁ、行った行った。」

町娘
「どこの誰だか存じませんが、助かりました。」

殿
「どこの誰だか存じないの?!
 殿様だよ?一国の!」

悪党
「(部屋の外から)やいやいやいやーい!」

町娘
「はっ!!また来た!(屏風の裏に隠れる)」

殿
「あの・・・、ここを舞台にしないでもらえる?」

悪党
「(部屋に入って来ながら)女は来てねぇか!!」

殿
「来てないって。」

悪党
「無礼者!!」

殿
「キミがね。」

悪党
「貴様!名を名乗れ!!」

殿
「うん。だから、殿様。」

悪党
「(部下に向かって)くそぉ!
 女はこの辺りにいる!徹底的に探せ!!」

部下たち
「おー!!」

殿
「あー、なるほど。
 話がわかる相手じゃないのか。」

悪党
「やいやいやいやーい!!(部屋を出て行く)」

殿
「うん、あの、うるさい。」

家臣
「殿、失礼いたします。(部屋に入ってくる)」

殿
「あ、おつかれ。」

家臣
「今日も穏やかな1日ですなぁ。」

殿
「あ、外はそうなの?
 この部屋はだいぶ騒がしいよ。」

家臣
「今日はどんな1日にしましょうか?」

殿
「とりあえず、警備を厳重にしてほしい。」

家臣
「警備ですか?」

殿
「今の状態はザルだとわかったから。」

家臣
「わかりました。
 すぐに取り掛かります。(部屋を出る)」

殿
「よろしくね。」

町娘
「(屏風の裏から出てくる)どこの誰だか存じませんが、ありがとうございました。」

殿
「であればこれを機に覚えて。
 殿様です。」

悪党
「(部屋の外から)やいやいやいやーい!!」

町娘
「はっ!また来た!!(屏風の裏に隠れる)」

殿
「この城の警備どうなってるの?
 そもそも警備ってやってる?」

悪党
「(入ってくる)100人体制でこの辺りを探しているが女は見つからん!!」

殿
「100人も不審者いるのに、誰も警備と遭遇しないの?
 キミたちがスゴイの?
 こっちがザルなの?」

悪党
「ホントにここに女はいないだろうな。」

殿
「いません。」

悪党
「チクショ!!どこ行きやがった!!」

殿
「(屏風の方を見て)案外、キミたちもザルなのかな。」

悪党
「もっと応援を呼べ!!
 ローラー作戦だ!!(部屋を出て行く)」

殿
「できる?
 警備をかいくぐってローラー作戦ってできる?
 ・・・いや、まぁ、ここならできるのかもしれないけど。」

町娘
「(屏風の裏から出てくる)どこの誰だか存じませんが、ありがとうございました。」

殿
「うん。だから覚えて。
 よく見て。見たことあるでしょ?広報とかで。」

町娘
「(殿様をじっと見る)・・・。」

殿
「・・・。」

町娘
「・・・。」

殿
「・・・どう?」

町娘
「・・・キヨエおばあちゃん?」

殿
「違うよ!」

町娘
「3年前に死んだキヨエおばあちゃん!!」

殿
「違うって!
 3年前に死んだおばあちゃんの幽霊に天守閣でかくまわれるって何?」

家臣
「(部屋の外から)殿!!」

町娘
「はっ!隠れないと!(屏風の裏に隠れる)」

殿
「何で隠れるの?
 キミを追ってる人じゃないよ。」

家臣
「(部屋に入ってくる)殿。城の警備の人数を3倍に増やしました。」

殿
「3倍程度じゃ足りないと思うよ。
 監視カメラとかドローンとか吉田沙保里とかいろいろやってこ。」

家臣
「かしこまりました。(部屋を出て行く)」

殿
「やってこやってこ。
 どんどんやってこ。
 今、城中に悪人100人いるから。
 ローラー作戦してるから。」

物音
「(部屋の外から)ドタドタドタ!!」

殿
「ん?」

町娘2
「(部屋に飛び込んでくる)どこの誰だか存じませんが、助けてください!!」

殿
「あの、ごめん。
 ここ、『どこの誰だか存じないけど、とりあえずかくまってくれる施設』じゃないから。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

前回のコントを書いている最中に「殿さま自ら町娘をかくまう」という設定を思いつき、そこから広げていきました。

明らかに周りがおかしいのに、強く責めない殿さまというキャラがなんか面白かったので、もしかしたらまた再登場するかもしれません。

 

【上演メモ】

人数:5人以上

殿

町娘

町娘2

悪党

家臣

(悪党の部下たちは任意)

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★☆☆☆
備考:時代劇ものなので、衣装が大変だと思いますが、あとは実現不可能な展開はないと思います。

殿さまのいろんな言い回しのツッコミがカギのコントなので、殿さま役の負担は特に大きいです。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】博士のひらめき
【お題コント】保険
【コント】黄門さまのおさばき#2
【コント】エクスカリバー
【コント】ブラックジャック

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

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