(必死に何かを書いている)


(飛行機を作っている)

バイト
「(部屋に入ってくる)あの・・・すみません。」


「はい?」

バイト
「あの・・・、バイト募集のチラシを見て来たんですけど。(紙を出す)」


「バイト募集?
 ちょっと見せてもらっていいですか?」

バイト
「あ、はい。(チラシを渡す)」


「(チラシを見て)あぁ、また兄さんだな・・・。(兄の方を見る)」

バイト
「あの・・・、えーと・・・。
 ライト兄弟がバイトを募集してるって・・・。」


「あ、後でお話聞きますね。
 もうすぐ最新の試作機ができるんです。」

バイト
「あ、最新の。」


「(作業をしながら)申し遅れました。弟のオービルです。」

バイト
「よろしくお願いします。」


「あっちにいるのが、兄のウィルバーです。」


(必死に何かを書いている)

バイト
「・・・何を書かれているんですか?」


「自伝です。」

バイト
「あ!お兄さんの自伝!
 僕読みました。
 (カバンから本を取り出す)ウィルバー・ライト自伝『だから言ったのに・・・!!』」


「あぁ、ありがとうございます。」

バイト
「(パラパラめくりながら)いやぁ、自伝というか・・・
 なかなか鬼気迫るものがありますよね。」


「えぇ・・・まぁ・・・はい。」

バイト
「・・・ん?
 あれ、もしかしてお兄さんの自伝、読まれてない?」


「自伝に関しては完全に兄個人の活動なので、私は関与してないです。」

バイト
「そうなんですね。」


「ここをくっつけて・・・よし出来た!」

バイト
「おぉ、新型試作機完成ですか!」


「ちょっと試運転して来ます。」

バイト
「あ、僕は・・・。」


「待っててください。すぐ終わるんで。」

バイト
「あぁ・・・はい。」


「兄さんー!行くよー!」


「(ペンを置き)やだぁ!行きたくない!!」


「はい、そんなこと言わない。」


「やだぁ!やだぁ!絶対行かないー!!」

バイト
「行かないって言ってますよ?」


「あぁ、大丈夫です。
 (ウィルバーを羽交い締めにして)はい。行くよ、兄さん!」


「やだぁ!やだぁ!もうやだぁ!絶対やだぁ!!」


(二人が出て行き扉が閉まる)


バイト
「・・・?」

物音
「(外から)ヒューン・・・ドン!!」

バイト
「っ?!」


(首をかしげながら戻ってくる)


「(ボロボロになって泣きながら戻ってくる)ぐすんぐすん・・・ぐすんぐすん・・・」

バイト
「あの・・・試作機の方は?」


「誰しも失敗はあります。」

バイト
「墜ちたんですね。」


「よし、改良しよう。」

バイト
「えーと、弟さんが飛行機を作られて・・・。」


「はい。」


「ぐすんぐすん・・・。」

バイト
「お兄さんが乗る・・・?」


「そうです。」


「やっぱり飛ばなかったじゃん!!」


「おかしいなぁ。」


「だから言ったのに・・・!!」

バイト
「あ。(兄の自伝を取り出し、表紙と二人を交互に見る)」


「次は飛ぶから。」


「うぅー!!(一心不乱に紙に何か書き始める)」

バイト
「えーと、このバイトのチラシ、お兄さんが書かれたってことですけど、
 もしかしてバイトの内容って・・・。」


「(バイトを見つけて)はっ!!代わってー!!パイロット代わってー!!」

バイト
「あの・・・、バイトの件、無かったことにしてほしいのですが。」


「ほら、兄さん。お客さんから離れて。
 みっともない。」


「代わってー!!パイロット代わってー!!」

バイト
「・・・お兄さんの自伝。
 開けるとお兄さんの殴り書きで『ヤダー!』とか『帰るー!!』って文字が120ページに渡って書かれてるんですけど・・・。
 なんとなく理由がわかった気がします。」


「まぁ、私は関与してないので・・・。」

バイト
「ですよね。
 (奥の棚を見て)ん?歴代の試作機?」


「あ、はい。
 過去の試作機のレプリカを並べたコーナーです。
 訪問者の方に見てもらおうと思って。」

バイト
「手に取っていいですか?」


「どうぞ。」

バイト
「(棚に置いてある布を手に取る)これは・・・
 (棚の札を見て)フライヤー1号・・・?」


「それが記念すべき1号機です。」

バイト
「1号機も何も・・・布?」


「はい。背中に取り付けます。」

バイト
「あぁ、マント・・・。」


「1号機はどれくらい飛んだっけ、兄さん?」


「すぐ堕ちたよ!!(必死に自伝を書く)」


「・・・まぁ、トライアンドエラーです。」

バイト
「トライする価値あります?」


「1号の失敗を受けて作ったのが、そこにあるフライヤー2号です。」

バイト
「(手に取る)・・・ダンボール?」


「ダンボールで鳥の翼を作りました。」

バイト
「こういうの、欽ちゃんの仮装大賞で見たことある。」


「まぁ、結果はおちましたけど。」

バイト
「それは空からですか?
 仮装大賞にですか?」


「どっちもです。」

バイト
「どっちも。」


「できたー!」

バイト
「あ、また試作機ができたんですね。」


「行くよ、兄さん!」


「(バイトにすがりつく)代わってー!!パイロット代わってー!!」

バイト
「ごめんなさい。
 こうはなりたくないので。」


「(兄を引っ張っていく)はい行くよ。」


「やだぁ!お腹いたい!!お腹いたいもん!!」


「はい、いたくないから。」


「帰るー!!やだぁ!!どうせ堕ちるもん!!」


「あんまりワガママ言うと、また1号機に乗せるよ!!」


「・・・っ!!」

バイト
「(1号機と書かれた布を見て)もはや、脅しの道具じゃん。1号機。」


「1号機乗りたくないでしょ?!」


「乗りたくない!!」

バイト
「乗るもなにも、布をつけて突き落としてるだけなんじゃ・・・。」


「じゃあ飛行機乗る?」


「乗る・・・。」


「はい、いい子。飛行場行くよ。」


「うん・・・。」


(外に出て行く)

バイト
「ここ、ライト兄弟の工房で合ってるよな・・・?」

物音
「(外から音がする)ブーン・・・!!」

バイト
「ん?」


「(走りこんでくる)やりました!!飛びましたよ!!」

バイト
「おめでとうございます!!
 えーと、お兄さんは・・・?」


「あ、飛んだことに興奮して最後まで見届けてなかった。」

バイト
「ちょっと!戻ってくるまで見届けないと!」


「まだこの辺りを飛んでるはず・・・。
 (窓の外を見て)あ、兄さんだ!
 (窓を開ける)おーい!兄さーん!!」


「(外から)やだぁ!降りるー!!帰るー!!」


「兄さん!飛んでるよ!!鳥になってるよ、兄さん!!」


「(外から)もうやだぁ!!帰るー!!帰るー!!」

バイト
「ギャン泣きじゃないですか。」


「歴史的な瞬間に立ち会ったね。」

バイト
「ごめんなさい・・・。

 なんだろ。かすむ・・・。」
 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

最初は兄と弟が飛行機を作り、バイトを強引に乗せる展開を考えたのですが、

ちょっとワルっぷりが強くなってしまったので、もうちょっと罪悪感を感じさせないスタイルに…と思い、この形になりました。

 

【上演メモ】

人数:3人

バイト

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★☆☆☆
備考:工房のシーンを舞台上で演じ、外でのシーンはセリフなどでカバーする形が現実的だと思います。

フライヤー1号(布)、2号(ダンボール)、自伝などは小道具を用意した方がいいと思います。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】避難訓練#2
【コント】山さん
【コント】はなさかじいさん
【コント】ダイエット
【お題コント】同姓同名

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

・お題をいただいてから、公開までに数か月かかることがあります。

・公開までにアメブロを退会された場合、公開を見送る場合があります。

 

↓こちらでも面白いブログがきっと見つかる!はず。
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