石本
「さ、入って。」

友部
「おじゃましまーす。」


「わんわん!(友部に近寄る)」

友部
「あ、かわいい。」

石本
「犬が好きで。」

友部
「名前は?」

石本
「ゴロた。いつもゴロゴロしてるから。」

友部
「へぇ。」


「ニャー。」

友部
「(鳴き声がした方を見る)へぇ。猫も飼ってるんだ。」

石本
「ペットを買うのが好きなんだよね。」

友部
「ふーん・・・(部屋を見回す)」


(部屋の隅に電柱が立っている。その陰に隠れるようにコートの男が立っている)


友部
「・・・なぁ、石本。あの電柱とあの人は誰?」

石本
「あぁ。ペット。」

友部
「え、ペット?
 ・・・なにあれ?」

石本
「刑事。」

友部
「うん。刑事だね。刑事だよね。
 飼ってるの?」

石本
「飼ってる。」

友部
「ペットショップで売ってたの?」

石本
「いや、以前、外を歩いてたら、電柱の陰にコイツが張り込んでて、
 偶然そのとき、虫取り網持ってたから捕まえた。」

友部
「連れて来ちゃったんだ・・・」

石本
「結構なついてるよ。」

友部
「名前は?」

石本
「山さん。」

友部
「山さんかぁ。

 ご飯は?何食べるの?」

石本
「パンと牛乳。
 ちょうど、ご飯の時間だから、用意するか。
 (台所からパンと牛乳パックを持ってくる)ちょっと待ってて。」

友部
「うん。」

石本
「(電柱の元に走っていく)山さん、お疲れ様です。」

山さん
「おぉ、アンチョビ。お疲れ。」

石本
「(張り込み先を見ながら)どうですか?こっちの方は?」

山さん
「未だ動きはない。」

石本
「長期戦ですかね?」

山さん
「まぁ、気長にやるさ。」

石本
「(パンと牛乳パックを差し出す)これ、差し入れです。」

山さん
「おぉ、悪いな。」

石本
「じゃあ、俺はもうちょっとこの辺りを聞き込みしてきます。」

山さん
「頼んだぞ、アンチョビ!」

石本
「はいっ!(友部の元に戻る)」

山さん
(張り込みを続ける)

石本
「エサあげてきた。」

友部
「・・・めんどくさいな。」

石本
「初日に普通にパンと牛乳を渡したら、ピストル突きつけられて・・・」

友部
「こえーよ。」

石本
「それ以来、この渡し方をしてる。」

山さん
(パンを食べ始める。)

友部
「あ、パン食べてる。」

石本
「あー、ホントだ!かわいいねぇ!」

友部
「いや、これをかわいいと思う感覚、ちょっとわからないけど・・・」

山さん
(双眼鏡で張り込み先を見る)

友部
「さっき、山さんからアンチョビって言葉が出てたけど・・・。」

石本
「あぁ、僕のこと。」

友部
「アンチョビって呼ばれてるんだ。」

石本
「そうだね。名前をつけるときに
 『お前は山さんだ!』って名付けたら、」
 『じゃあ、お前はアンチョビだ!』って名付け返されて・・・」

友部
「ペットに名付け返されるってこと、あるんだ。」

石本
「でも、山さん、結構大きくなったんだよ。
 僕が捕まえたときはまだ巡査部長だったんだけど、警部補を経て、今、警部だから。」

友部
「ペットとして飼われながらも出世するんだな。」

石本
「虫でいう幼虫から、さなぎを経て、成虫になるのと一緒だね。」

友部
「ふーん。

 警部補って、虫でいう『さなぎ』なんだ。」

山さん
(双眼鏡で張り込み先を見ながらパンを食べる)

友部
「でも、刑事をペットにするって困ることないの?

 育て方がわからないとか。」

石本
「大丈夫。小さい頃も飼ってたことあるから。」

友部
「小さい頃にも刑事、飼ってたんだ・・・。」

石本
「ジーパンって名付けて。」

友部
「ジーパン。」

石本
「夏休みの宿題のスケッチはジーパンの絵を描いた。」

友部
「先生はその絵を見て何か言ってた?」

石本
「『なんじゃこりゃー!』って。」

友部
「まぁ、そうなるよね。」

石本
「ただね、その年の夏、家族で旅行に行ったんだけど、
 ジーパンを近所の人に預けるのを忘れて・・・」

友部
「嫌な予感・・・」

石本
「帰ってきたら、殉職してた。」

友部
「あらら。」

石本
「帰ってきて、死んでるジーパン見て叫んだもん。」

 

友部

「何て?」

 

石本

「『なんじゃこりゃー!』って。」

友部
「そこも『なんじゃこりゃー!』なんだね。」

山さん
「あ。(双眼鏡で友部を見張り出す)」

友部
「(山さんを見て)・・・なんか、俺のことを張り込みの対象にしてない?」

石本
「本当に?あ、すごい。
 なかなか初対面の人を張り込みの対象にはしないんだよ。
 心を開いてる証拠だね。」

友部
「いや、むしろ、警戒してるんじゃない?」

山さん
(拳銃の弾が込められているか確認する。)

友部
「え、いや、なに?突入する気?!」

石本
「あぁ、あれは『遊んで!』の仕草だね。
 犬がしっぽを振るのと一緒。」

友部
「慣れない。動きが独特すぎて慣れない。」

山さん
(双眼鏡で友部を見ている)

友部
「だけどさ、いいの?」

石本
「何が?」

友部
「山さん。勝手に張り込み先から連れて来ちゃったんでしょ?」

石本
「そうだね。」

友部
「山さんにも家族がいるだろうし、山さんの職場の人も探してるかもしれない。」

石本
「確かに。」

友部
「・・・放してあげたら?」

石本
「・・・そうだね。」

友部
「そうした方がいいよ。」

石本
「(山さんの元に向かい)山さん。」

山さん
「?」

石本
「釈放だ。」

山さん
「・・・いいんですか?」

石本
「あぁ。」

山さん
「ありがとうございます!」

石本
「(窓を開けて)さぁ、出ろ。」

山さん
「お世話になりました!(深々と一礼)」

石本
「もう戻ってくるんじゃないぞ。」

山さん
「失礼します!(もう一度お辞儀して、走っていく)」

石本
「行っちゃったか・・・(感慨に浸る)」

友部
「・・・うん。言いたいことがないわけじゃないけど、今は触れないでおく。」

 

 

 

 

 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

飼えないものを飼うシリーズ。

刑事の設定を思いついて、ペットあるあるを刑事に当てはめて作りました。

 

刑事ドラマにありそうなシーンをいろいろ挟んでみましたが、いかがだったでしょうか。

 

【上演メモ】

人数:3人

石本

友部

山さん

 

所要時間:4分~5分
難易度:★★☆☆☆
備考:電柱の影にいるほうが、「張り込んでいるんだなぁ」というのがパッと見でわかると思うので、

電柱のセットはあった方がいいと思います。

その準備だけが大変ですが、あとは特に問題ないと思います。

 

【お知らせ】

コントのアイディアがたまってきたので、7月はオール新作コントを公開していく予定です。

よろしくお願いします。

 


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(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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