講座などを行っていると、ときどき「自分はクライアントなのだから、講師が自分に合わせるべきだ」と主張する受講生に出会うことがあります。

しかし、講座という場においては、講師と受講生の関係は発注者と業者の関係ではありません。

講師は、自身の知識や経験をもとに、受講生がより理解しやすく、実践的に学べるように内容を設計しています。

そして、受講生はその学びを吸収し、自分の人生や仕事に活かしていく立場です。

つまり、講座における「お客様」とは、サービスを購入する消費者ではなく、「学びを受け取る主体的な存在」であると言えます。

 

 

ところが、中には「お金を払っているのだから、お客様である自分が神様だ」と勘違いし、横柄な態度を取る人がいます。

こうした姿勢は、講師のモチベーションを著しく下げる原因となります。

講師も人間ですから、真剣に学ぼうとする人には惜しみなく知識を伝えたくなりますが、尊大な態度を取る人に対しては、必要最低限の範囲でしか教えなくなってしまうものです。

特に、経験に基づく実践的な知恵や、資料には載っていないような細かな工夫は、講師の善意によって伝えられるものだったりします。

その善意を引き出せるかどうかは、受講生の姿勢次第なのです。

 

つまり、学びというのは、結局のところ姿勢によって結果が大きく変わります。

どれほど質の高い講座であっても、受ける側が「教えてもらって当然」という態度で臨めば、理解は浅くなり、実践にはつながりません。

逆に、素直な気持ちで学びを受け止め、自分なりに活かそうと努力する人ほど、より多くの気づきと成果を得ることができます。

実は、この「学ぶ姿勢」こそが成功の鍵を握っているのです。

 

効率的に学ぶためには、まず「素直さ」と「謙虚さ」が欠かせません。

講師の言葉を否定から入るのではなく、一度受け入れてみる。

そして、自分にとってどう活かせるかを考える姿勢が、学びの質を高める最大のポイントです。

一方で、「費用対効果」や「コスパ」といった言葉ばかりを口にする人ほど、実際には自分の得られる効果を下げてしまっていることが多いのも事実です。

なぜなら、学びを「投資」ではなく「取引」としてしか見ていないから。

「お金を払ったから教えてもらえる」「高い金額を払ったのだから、自分の希望を通すのが当然」という考え方では、学びの本質にたどり着くことはできません。

結局のところ、学びの成果を決めるのは、お金でも環境でもなく、自分の姿勢なのです。

 

エンジェル税制という制度をご存じでしょうか。

これは、個人が未上場企業に投資をしたときに、一定の条件を満たすと所得税の控除など税金面で優遇を受けられる仕組みです。

投資した金額を所得から差し引けたり、将来その企業が上場して株を売却したときの利益に対する税金が軽減されたりするため、うまく活用できれば、資産形成を加速させる有力な選択肢になり得ます。

FIREを目指している人にとっては、株式や不動産といった一般的な投資だけでなく、こうした制度を利用した投資も視野に入れることで、より戦略的に資産を増やすことが可能になります。

 

 

ただし、メリットだけを見て飛びつくのは危険です。

エンジェル税制の魅力は、税負担を軽くできる点にありますが、投資先となる未上場企業は、そもそも事業が安定していない段階にあるため、倒産や計画未達によって投資額が失われるリスクが非常に高いという現実があります。

株式市場に上場する前の企業は、情報が限られており、判断材料が少ないのも特徴です。

上場後に株を売って利益を得られれば大きなリターンが見込めますが、その道のりは決して平坦ではありません。

 

実際に、SBIソーシャルレンディングという会社の事例では、投資家から多くの資金を集めたものの、一部の案件で資金の使い道が当初の説明と異なっていたことが問題になり、最終的に事業が終了する事態となりました。

融資であれば返済義務がありますが、出資の場合は企業にとって返済義務がないため、経営陣のモラルや資金管理の甘さが表面化すると、投資家の資金がずさんに扱われるリスクが高まります。

このように、制度や仕組みだけでは投資リスクを完全に防ぐことはできません。

 

ここで重要になるのが、経営者の資質です。

私は起業して30年になりますが、創業当初、資金が足りずに親にお金を借りに行ったとき、一括では貸してもらえず、毎月必要な金額を申請するように言われました。

当時は厳しいとも感じましたが、結果的にはこの方法が会社経営にとって非常に良い効果をもたらしました。

毎月必要な金額を伝えるために事業を振り返り、少しでも経営を良くしようと努力し、前月より申請額を減らすよう意識しました。

余計な支出を避け、資金を効率的に使う習慣が自然と身につき、最終的に借入額は最小限に抑えられました。

もし最初から多額の資金を手にしていたら、気持ちが緩み、無駄な支出をして経営が失敗していたかもしれません。

 

この経験からも分かるように、事業の成否は資金の多寡ではなく、経営者の考え方や姿勢によって大きく左右されます。

エンジェル投資でも同様で、最終的には「誰に投資するか」が成果を決める最大の要因です。

理念やビジョンが立派でも、実行力や誠実さが伴っていなければ企業は成長しません。

資金の使い方に対して責任感を持ち、逆境でも冷静に判断できる経営者を見極めることが、成功のカギとなります。

投資家としては、数字や資料だけでなく、経営者の行動やチームの雰囲気、リスクへの向き合い方を丁寧に観察する必要があります。

 

つまり、エンジェル税制は非常に魅力的な制度ではありますが、これはあくまで「リターンを後押しするための手段」に過ぎません。

税制優遇に目を奪われてしまうと、本質的な投資判断を誤る可能性があります。

FIREを目指す人にとって重要なのは、制度を活かしつつも、投資先の本質を見極め、リスクを正しく管理することです。

経営者の資質を見抜き、信頼できる企業に分散して長期的に投資することができれば、エンジェル税制は強力な資産形成の武器となるでしょう。
 

先日、学生時代の友人と久しぶりに会ってお酒を飲む機会がありました。

その友人は会社員として働いていて、私は起業をしている立場です。

話が進むうちに、友人は「自分も起業して自由に働けたらいいな」と私を羨ましがり、私は「毎月安定したお給料が入るのは安心だな」と友人を羨ましがりました。

私たちは、互いに無いものねだりです(笑)

 

そして、そこには「給与所得」と「事業所得」という二つの所得形態があり、それぞれのメリット、デメリットを互いに知っていたからなんだと思います。

 

 

 

 

給与所得は、会社に勤めて給料をもらう形の収入です。

これは毎月一定額が振り込まれるので生活の計画が立てやすく、住宅ローンやカードの審査など社会的な信用も得やすいのが大きな強みになります。

また、健康保険や年金といった制度にも守られているため、安心感もあるでしょう。

しかし、その一方で、働くのをやめてしまえば収入は途絶えますし、税金は収入が増えるほど重くなります。

さらに、会社や上司の評価によって給料が決まるため、自分の努力が必ずしも収入に直結するわけではありません。

 

一方で、事業所得は自分でビジネスをして得られる収入です。

自分の工夫や仕組みによって収入を増やせる点が魅力であり、努力次第で大きく伸ばすことも可能となります。

経費を使って節税できたり、人や仕組みを使って自分の時間以上の成果を得られたりする点は、給与所得にはない大きな強みです。

ただし安定性には欠け、うまくいかなければ赤字になるリスクもあります。

自分で判断し続けなければならない責任も重いため、安心感という点では給与所得には遠く及ばないでしょう。

 

このように、どちらにもメリットとデメリットがあるため、一方だけに頼ると不安が残ります。

だったら、両方のいいところを組み合わせることです。

会社員としての給与で生活の基盤を守りながら、無理のない範囲で副業を始めて事業所得を少しずつ育てる。

これによって、安定と自由の両方を手に入れることができます。

毎月の生活費は給与でまかない、副業で得た収入は新しい挑戦や自己投資に回す。

この循環を作ることで、経済的な安心感を持ちながら、未来に向けて大きな成長の可能性を開くことができます。

 

ただ、ここで大切なのは、無理に頑張り過ぎないことです。

たとえば、好きなことや得意なことを発信し、それを少しずつ形にしていくことから始めるようにしてください。

小さな副業でも、続けていくうちに収入の柱となり、やがては事業所得へと育っていきます。

これは単に収入が増えるだけでなく、自分らしい生き方を実現する手段にもなります。

 

私の新刊『50歳からはじめる頑張らない起業』では、このような「無理をせず、自分に合った方法で副業を始める」ための具体的な考え方と実践方法をまとめています。

これは50歳からの挑戦を意識した本ではありますが、実際には年齢を問わず参考にできる内容です。

給与所得と事業所得の両方をうまく取り入れたいと考えている方にとって、最適なヒントになるでしょう。

FIRE、つまり経済的に自立し、自由に生きることを目指す方にとっても、この考え方は非常に役立つはずです。

 

 

 

 

安定か自由か、どちらかを選ぶのではなく、両方を組み合わせる。

そうすれば、安心も成長も同時に手に入れることができます。

今の生活を大切にしながら、未来に向けて小さな一歩を踏み出すこと。

その積み重ねが、豊かで自由な人生へとつながっていくのです。