先日行われたストライクフォースのメインイベントにて、アリスター選手がロジャース選手を相手にストライクフォースのヘビー級タイトルを防衛しました。

ロジャース選手に何もさせず、圧勝といって良い内容でした。

常人離れしたその体つきから、アリスター選手はステロイドの使用疑惑が囁かれていました。アメリカで試合をしないのは、試合前の検査に引っかかるからだとも一部で言われていました。

しかし、この度アメリカの地で試合を行い、しっかりと圧倒的なかたちで勝利をものにしたことにより、アリスター選手の幻想は更に強まったと思います。

「ヒョードル選手に勝てる!」という声が既に多く挙がっています。

しかし、ここ最近常に打倒ヒョードル選手の最右翼の一人としてよく名前が挙がるアリスター選手ですが、このロジャース選手との試合で、ヒョードル選手にも勝てるというのは少し短絡的すぎると思います。

もちろん勝負事なので、絶対ヒョードル選手が勝つとは言い切れませんし、アリスター選手が勝つ可能性もあると思います。

ただ、ロジャース選手との試合ではアリスター選手が圧勝したため、アリスター選手の良いところばかりが目立ちましたが、この試合とこれまでのヘビー級でこなしてきた試合だけでは判断材料がやや少ないような気もします。

今回の試合の結果を受けて、アリスター選手がヒョードル選手に勝てると言われている要因として、ヒョードル選手が熱戦を繰り広げた末に下したロジャース選手に対し、アリスター選手はあっさり1Rで片付けてしまったことにあると思います。

確かにアリスター選手の勝ち方は圧巻でしたが、これはロジャース選手との相性やそれぞれのファイトスタイル、その時の戦略にも影響されるので、単純にヒョードル選手の勝ち方と比較することは出来ないと思います。

また、アリスター選手はヘビー級に転向後、ほとんど1R以上試合をしたことがありません。そのほとんどが格下の相手で短時間で勝負を決めてしまっています。以前指摘されていたスタミナ面は克服したと言っていましたが、実際のところはまだ分かりません。

例えば仮にヒョードル選手が今回のロジャース選手と同じような体勢になったとしても、何も出来ないということはないと思います。不利な体勢になっても十分に耐え凌ぐ技術は持ち合わせています。

加えてヒョードル選手は非常に賢いファイターです。戦略に優れています。(これはヒョードル選手自身の他に陣営の力もあると思いますが)全盛期のミルコ選手も、ヒョードル選手との試合において戦略で敗れた部分が大きいとも言われています。ヒョードル選手がアリスター選手と試合をする際には、長期戦を狙うかもしれません。そのときにアリスター選手は最後までスタミナを維持し続けることが出来るかはまだ謎です。

ただし、ヒョードル選手がアリスター選手と比較して明らかに不利なのが、パワー面だと思います。ヒョードル選手のPRIDE時代のライバルであった、ノゲイラ選手やミルコ選手は100kg台の選手でした。それが平均的なヘビー級の体重でした。

しかしながら、現在のヘビー級トップファイターの中には110kgを超える選手も多く、アリスター選手も有に110Kgを超えています。ヒョードル選手よりも10kg以上重いと思うので、もはや1階級上の選手と言っても良いと思います。

単純にパワー差だけですとアリスター選手に分がありますが、ヒョードル選手は体全体を使ってパワーを最大化させるのに優れた選手です。ヒョードル選手がいかに体をうまく使ってパワー差を克服するのかも一つの鍵となると思います。

ヒョードル選手が圧倒的に回っているところといえば精神面でしょうか。ヒョードル選手の精神面はもはや人類のそれを超越しているような印象があります。パット・ミレテッチ氏も“ヒョードル選手の精神面の強さはいかれている”といった発言をしているほどです。

確かにアリスター選手は強いです。あの体つきから、総合ルールであれば誰も勝てないのではないかという幻想を抱かせます。

ただし、ヒョードル選手も神懸かり的な強さを見せるファイターであり、今なお人類最強の名の下に、無敵という幻想を抱かせるファイターです。

アリスター選手も驚異的に強いと思いますが、ヒョードル選手とアリスター選手が戦う際には、ヒョードル選手の持つ幻想の方に賭けてみたいと思っています。






先ほど、カナダのモントリオールで開催されたUFC113にて、リョート選手とショーグン選手がUFCライトヘビー級のタイトルを賭けて再戦しました。

前回UFC104で対戦した際にはリョート選手が3-0の判定勝ちを収めたものの、その判定が物議を醸しました。

この両者の実力差はほとんどなく、今回の再戦でもなかなか勝負はつかないのではないかと想定されていました。試合前に各方面で行われていた勝利者予想でも、どちらが勝つのかの名言を避ける人がほとんどでした。

しかし、蓋を空けてみればショーグン選手の1RTKO勝ち。ショーグン選手が新たにUFCライトヘビー級の王座に就きました。

この両者の対戦がKOで終わると予想していた人は少なかったと思います。特に総合格闘技無敗のリョート選手のKO負けを予想していた人は、ほぼいなかったのではないでしょうか。

それほど今までリョート選手の強さは安定していましたし、特にKO負けを喫するシーンを想像するのは難しいファイターでした。

よく盤石であった王者に土がつくと、“この戦い方はもう通用しない”、“もう王者に返り咲くのは難しいのでは”という声も出てきま。今回もリョート選手の後ろに下がりながらの戦法はもう駄目なのではないかという声が早くも聞かれていますが、今回は純粋にショーグン選手の対策が、リョート選手のそれを上回っていたと思います。

今までリョート選手と戦うファイターは、カウンターを警戒するあまり、リョート選手のことを深追いすることが出来ませんでした。それ故リョート選手の、相手を軸にして、後ろに下がりながら距離を取りつつ回っていくという戦法が活きていました。今までリョート選手に敗れていった選手は中々自身のペースがつかめず、徐々にリョート選手のペースに引きずり込まれていました。

今回ショーグン選手はリョート選手のカウンターを恐れずに、どんどん前に出て行きました。これは前回の試合でも功を奏した作戦だったので、今回もリョート選手のペースに持ち込まれず、ショーグン選手のペースで試合を進めることに成功しました。

また、前回の試合でショーグン選手ははローキックを主体に試合を組み立てました。リョート選手、そしてリョート選手陣営は今回もショーグン選手のローキックを警戒し、その対策をしてきていたと思います。

ところが、ショーグン選手はパンチも多く織り交ぜて攻めて来ました。この部分でショーグン選手の作戦が、リョート選手の作戦を大きくに上回った点だと思います。

さらに決定的となったのが、カウンターだと思います。カウンターといえばリョート選手の代名詞でしたが、今回はショーグン選手もカウンターを狙っていたと思います。

リョート選手は距離をつめてのボデイへの膝蹴りを得意としています。その膝蹴りに対してのカウンターをショーグン選手は試合前から狙っていたと思います。

試合の決定打となったシーンですが、まずリョート選手が膝蹴りをショーグン選手のボディに突き刺しています。その後にリョート選手はさらに左ストレートで詰めていきますが、結果ショーグン選手の右のカウンターを貰ってダウンを喫してしまいました。

結果としてリョート選手は左ストレートを放ちましたが、このときショーグン選手はリョート選手の2発目の膝蹴りが来ることを想定していたと思います。膝蹴りを想定して放ったショーグン選手の右カウンターが、左ストレートを放ってきたリョート選手のテンプルを思わぬ形で捉え、TKO勝ちに繋がったと思います。


UFCのライトヘビー級は王座が目まぐるしく入れ替わる状況が続く中で、しばらくはリョート選手の王座の時代が続くのかと思われましたが、またもや群雄割拠となったような気がします。

UFCライトヘビー級の王者となったショーグン選手がこの後、王者としてどのような戦い振りを見せていくのかは見物です。

また、今回総合格闘技の戦績に初黒星がついてしまったリョート選手ですが、復帰して更に進化した姿を見せてくれることに期待しています。







先日、K-1 MAXでは初となる63Kg級の大会が東京のJCBホールで開催されました。

70Kgのミドル級では魔裟斗という一般層にも訴求効果のあった選手が引退してしまったことにより、次の目玉となる階級・選手を打ち出していこうというもくろみがあったと思いますが、第一回目の大会は主催者の思惑通りには行かなかったようです。

大会全12試合中KO決着が2試合のみという結果もさながら、K-1 MAXの63Kg級には3つの懸念点があると思います。

特にそれらはK-1 MAXのミドル級が発展したことと比較すると顕著になってきます。


① 階級としての目新しさ

従来、K-1にはヘビー級というカテゴリーしかありませんでした。そのような状況下でスタートしたK-1 MAX ミドル級は観るものに斬新な印象を与えました。K-1 ヘビー級の選手達に比べれば、K-1 MAXミドル級の選手達は自分たち観る側に比較的近い背格好をしていました。試合もヘビー級にはないスピード感があり、観る側に新しいカテゴリーとしての認識を与えました。

しかし、K-1 MAX ライト級どうでしょうか?

ミドル級と比較した時の、ライト級の選手の試合時の選手の体重差は7Kg。ヘビー級とミドル級の差が約30Kg以上あるのと比較すると、ミドル級とライト級の差は極わずかなものです。

このライト級とミドル級の差というのは、コアな立ち技格闘技ファン以外には、見た目の部分でも、競技性の面でも、違いが響きにくいのではないかと思います。


② 裏目に出てしまっている選手層の厚さ

K-1 MAXのミドル級が開設された際に、K-1側には魔裟斗選手か小比類巻選手を“顔”として売り出していこうという覚悟があったと思います。K-1 MAXの初大会が決まった時点で、焦点はほぼ、魔裟斗選手VS小比類巻選手に絞り込まれていたと思います。

魔裟斗選手は小比類巻選手との直接対決に勝利し、その後、さらに自身を売り込みたい魔裟斗選手の意向と、K-1 MAXをコンテンツとして成長させていきたいTBSとK-1側の意向が一致し、魔裟斗選手ありきでK-1 MAXは発展していきました。

一方のライト級は、ミドル級と比較して日本人選手の実力者の層が遥かに厚いため、売り出していきたい選手に手を広げすぎている印象があります。

既にキックボクシングの興行に関心があるコアな格闘技ファンの人達に取っては、K-1 MAXライト級にエントリーしている選手のほとんどに馴染みがあると思いますが、一般層の人達に取ってはどの選手に注目して良いのか分からないという状況を招くと思います。

どの選手に注目すべきかを絞り込めない結果、選手個人個人への関心が希薄化してしまっているように感じます。

(今回のK-1 MAXライト級の大会は首都圏のみの深夜放送だったので、そもそも一般層をターゲットにしてなかったのかもしれませんが。。)


③ 63Kgという階級設定

K-1 MAXライト級の63Kgという階級設定が今大会を観る限りは少々裏目に出てしまっているような気がします。

山本KID選手を後々参戦させたい、もしくはDREAMのフェザー級の選手を随時参戦させていきたいなどの狙いがあるのかもしれません。

ただ、今回のK-1 MAXライト級の目玉とされていた選手達のほとんどは、普段60-61kgを主戦場としている選手達です。

63Kgという体重設定により、選手のスピードが少し消されてしまったり、他の選手にパワー負けしてしてしまう場面も多々観られました。

優勝候補筆頭に挙げられながらも、今回の一回戦で姿を消した山本真弘選手などは、その最たる例だと思います。


上記にあげた3つのうち、①と③については現状のままで進めるとしかないので、今後ネックとなってくるのは②の部分だと思います。

初年度のK-1 MAX ライト級は、そもそもスターとなるべく選手を模索することが目的なのかもしれません。ただ選手層が多すぎて、“魔裟斗VS小比類巻”のようなストーリーアングルを作ることも難しいので、ライト級の選手達はほぼ試合内容のみで一般層にアピールすることを余儀なくされます。

もちろん試合内容というのが、選手が評価される本質的な部分なのですが、K-1やTBSの後押しがつくような分かりやすい試合が求められてきます。

既に7月の大会には山本KID選手が参戦するとも噂されています。

現時点で山本KID選手以上に一般層に訴求効果のある選手はK-1 MAXライト級にはいません。7月のK-1 MAXライト級では、大会後に山本KID選手以外に、誰か話題となる選手が出てくることを期待しています。