ろくじょうのおとしあな -4ページ目

よる

風通しの良い部屋が
ふるえている
夜の到来に
ふるえている
ふるえている
網戸の影に
ふるえている
ふるえている
ふるえている
葉脈の不確かさに
ふるえている
ふるえている
ふるえている
ふるえている
風通しの良い部屋が
ふるえて
わたしはすこしも うごいていなくて
ふるえている
ふるえている
ふるえている
そとがわのものばかりが
ふるえている
ふるえている
ふるえている
風通しの良い部屋で
ふるえるみたいに
うけいれること はたぶん、できずに
こぼれおちたそれが
この部屋をふるわせている
風通しの良い部屋が
ふるえている
ことばになる前の
こぼれおちている それらが
音もさせずに
ふるえている
ふるえている

変なゆめ




夕方の部屋の中に、パンダの着ぐるみがいる

おそらく、中は男の人でとても背が高い

「ファンタジー」みたいなものをレンタルしている、という前提になっていて

一日にいくらか払って来てもらっているのだけれど

そのパンダが元気がなく、話さなくなってしまうので

「どうしたの?」

と聞くと

「お腹がいたい」

との返事。

「じゃあもう上がりなよ。いつもと同じお金は払います。お母さんにも会社にも、早く帰ったってことは内緒にしていてあげるから」

と私はいやにてきぱきと言う

しかしあちらもプロのパンダ、

「いえ、時間まではきちんといますので。」

ふん、生意気ね、と心の中で思いつつ(やなやつ)

「じゃあ座ってていいよ」

と言って一階に降りると

小学校のときのともだちと、今度は半分うさぎの着ぐるみがいる

半分というのは、上半身だけ着ぐるみを脱いでいて来ていた白いTシャツが見えていたのである。

うさぎは大層かなしそうな顔をしてパンダのいる二階へあがってゆく

このうさぎは、破産をして一家心中に失敗した後である、という認識がなぜかともだちとお互いになされていて、

うさぎはやせ細って青白い男前である、という認識もなされていて、

それでともだちはうさぎを助けてあげたいわ。という気持ちになっているという認識もなされていて、

わたしはパンダの件もあり、うさぎの個人的事情なんて知らないし 何その軽はずみな愛情?同情?性欲?みたいな感覚でなぜだかひとりでとても苛々としている。

ともだちがチラチラ二階を気にしているなあ、と思っていたけれど、ついに走って昇っていってしまうので私も仕方なしに追いかける

パンダとうさぎが抱き合っていて、ともだちはそれを見て立ちすくんでいて、天井からなぜか雨漏りがしていて、床に水たまりどころではない、河をつくりだしている

わたしはそれを見てさらに苛々とする

「17時になったよ。早く帰って!」

そう言いたいのに言えない。

言いたいのに言えないところで目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

ほわんと薄暗くなった夕方のベッドに寝転んで落語を聞いていたらねむってしまった

ことばが全然拾えなくなってゆくのがわかった

起きたときには、部屋の中はすっかり墨のようにしずかで

現実なのか夢なのかわからなくなってしまう

こんな睡眠は久しぶりだなあと思った。

 

 

 

たまごぼーろのようなあめ




すっかり蝋の溶けた キャンドルの
液体の中に炎がゆれる様子に
目をみはってしまった
液体は
傾ければすぐに固まる
いや
凍る、といった方がいいのかもしれない










「喪失以前」のわたし
中学生の 高校生の 大学生の
まだ何も所有していなかった頃のわたし
とうめいな倦怠を帯びた
あの頃のわたし

わたしはやっと、終えたのだと思った。



所有するということは、喪失するということだ




それは地続きで
だからこそ喪失するのが本当におそろしくて
だからこそことばは
終わりを発することすらできなかった
詩は、祈りにしかならなかった











タクシーの、サイレンの、空車の表示の、
その頃に
本当にこわかった うたを
ききながら、
おしまいを書くことだって
できるのだよ、と
わたしは伝えたい
喪失以前のわたしに、伝えたい












ひさしぶりにひとりでお酒を飲んでいる
この部屋の暗さも
アルコールの池も
何もかもが
心地の良いコットンの肌触りなので
委ねてみようかしらとすら思う
コットンの方向へ
重力をあたらしく、そこへ そこへ。