ろくじょうのおとしあな -156ページ目

埃 椅子の上の。

じゃがいもを牛乳でとろとろと煮立たせたら、

なんだかとても甘くなった。



野菜の甘みはイコールやさしさである。



泣いているひとに、大丈夫よ。とかける声とおなじである。








かなしい夜だった

なにが、というとわからないけれど

ただそれは温度として、感覚として、湿度として、

ふたりはただただ各々のかなしみの中に沈んでしまって

ことばが出ない、思考ができない

霧雨のような寝床で

ぐるぐるすることに疲れて眠ってしまった

冷たい夜だった





 カーテン越しに入るひかりが、

風でゆらゆらとゆれる様。









触覚。

輪郭を確かめていないことには、



ことには。









知らず知らずのうちにうつってしまう口癖やら

それでもやっぱり交わらない思考の方法やら

わからないけれど、

でも今、今、ここ、

真昼のうちは、まだ大丈夫。

駅にて。

夢の中で

あのこに出会った




懐かしい駅の、

暮れ時のふんわりとついた灯りの下で




私たちはお互いに制服を着ていて

もう21なのに、と頭の片隅で思って

彼女の腕はやっぱり棒のように細くて

なにも言えずにいた私より先に、

今月は会いたくなかった、と彼女が口を開いた





また痩せたね、と私が言うと

そうなの、と彼女は言い、

二の腕の蚯蚓腫れを見せながら

お客さんの話などしたりする





私はでも上の空で、

チュッパチャプスのすっかり飴のなくなってしまった残りを

口の中に入れてみたり出してみたり

そんなことに夢中になっている

少し残ったストロベリーの香りに、

もうずっと遠い

記憶の底を見た

気がした。

spoonful

ふわあんと

とろおりと

お皿の上に流れる卵のようなあのひとを







きっとわたしはうしなわないことでしょう






きっときっときっとね、












にゃあんと

猫が短く泣いた

遠くで

そんな気がして

カーテンはひとりでに揺れた

スプーンの上に、角砂糖ひとつとそれに付随する何か。