①川柳にみる「江戸のたべもの」 | 明日通信

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 江戸に関係する本や雑誌の類は僕の書棚に一体どれくらいあるだろう。書き物をしていて「あれ、どうやったかな」と言う時、立ってそれらしき本を引っ張り出して確認するのだが、いつも座って手の届くところに置いて、ヒマがあれば開いて読んでいるのが江戸の暮らしを綴った本の数々。その中でもとくに好きなのが浜田義一郎さんの「江戸たべもの歳時記」(中央公論社 1932年刊)だ。歳時記そのものに関心があるため関連する本と並べて繰り返し読み、時折りブログで紹介することがある。

 

 そこで今回から、この本に収録された川柳を中心に江戸の暮らしぶりや江戸の色々な食べものを紹介していきます。(すべての紹介は無断転載になりますのでかいつまんでの紹介になります。古い本ですが、興味のある方はお買い求めください)

 

1)【江戸前】

 

    江戸前売りの江戸という面(つら)

 

 江戸前を鼻先へぶらさげたうまい物屋のおやじの顔を皮肉っています。ただ、「夜の明けないうちに河岸へとんで行って、吟味して仕入れた魚だから、客に食わしてやらァという気になるのは無理もない」とも……。

 

    高輪は出来たての日を見る所

    高輪の朝は眩しい飯を喰い

 

 高輪と江戸前、どう結びつくの?とみなさん思うでしょ。仕入れた生きのいい魚を「芝肴」といい、芝の海でとれた魚、つまり「江戸前」なんですが、むかしは東海道の東側はすぐ海で、高輪辺りにある土塁が大木戸、ここから品川まで十八丁(およそ2㎞)が海沿いの道で、芝高輪の道に立てば水平線から朝日が昇るのが見えたということ。川柳はそれを詠っています。