蛸と住むひとは霜夜の蛸の色     一郎

不夜城に幸せならば蛸叩く

 

ユーモラスな姿に反して

蛸は高い知能を持っていることに拠るのか、

春画などに書かれた蛸に妙なリアリティーが感じる

蛸と同じ色と化して過ごす霜夜

対象がグロテスクゆえ、良いのか・・・

幸せだから壁を叩くでもいいものを「蛸叩く」

共感出来ない、永遠に理解出来ないことだけど、

謎の解けない無意味さに心が騒ぐけれど、

人の感性に素直に添うてみることも快い

 

千代ちやんの舌吸ふ秋の蛸断片

と微笑ましい光景に一息ついていると

 

わが舌は長夜の獄を舐め熔かす

 

舌は空間を自在に行き来して

一時もじっとしてないようだ

 

まだまだつづく・・・ラブラブ!

 

目次は製作順ではなく、小説のように題がついている

蛭の履歴

なべてあの世の僕の梨

吾輩は蛸である骨はまだ無い  

など。

キュビスムの絵画を見るように意表を突く作品の数々に

心踊って最後まで飽くことがない

ピュアで正直な表現が生々しさを生み、それでいて温かい

人の想像を超える空想力が絡み合い、

作者の思わず吐く息づかいに

フッと笑いが誘われもする

 句集の物語の始まりは、

 

蟹星雲産んで溽暑のとほき股     一郎

 

生むではなく敢えて「産む」股と書いて読者を驚かす

ホスピスの月待ちの看護婦の呼気    

ここでも看護師ではなく「看護婦」と書いて無機質なものから遠ざかる

あやとりの句にも一郎さんの幼い頃の自我

又は心の奥のトラウマが見え隠れするけど

私たちに背中を向けて決して覗かせてはくれない

 

あやとりの砦は父母を拒みけり    一郎

あやとりに魂からみ動けまい

あやとりの紐切れるまで眠らない

 

つづく・・・・ラブラブ!

 

師と隣り膝緩めざる櫻かな        鶴岡行馬

 

水原秋桜子がいう指導者の資格とは、

簡単に纏めると、

1、自身が立派な現役作者である

2、深い教養があること

3、指導が巧み

4、功を誇らない

このような師を持ち得、

尊敬し慕う行馬さんは誰よりも幸せだラブラブ!

 

 

蟲の闇土より酒器の生れけり      鶴岡行馬

 

陶器、磁器は勿論、

ガラス、木、漆、錫など様々な材質の酒器が出回っており

気分や雰囲気を変えるのに効果的

酒好きのささやかな贅沢だ

この句は「土より」だから、

ぐい吞み又は湯呑くらいの陶器だろう

酒器の肌触りを手に、物思いに耽る

幽かに虫の声が聞こえる闇夜

縄文時代の人たちも、

手作りの土器で酒を愉しんだかもしれない

悠久のときの流れにわが身を置きつつラブラブ!

春の夜や冷たき笛を懐に        鶴岡行馬

 

行馬さんの住む涌谷町を地図で見ると

宮城県北部に位置する

東に石巻市

町花は桜だというから、人々の思いが胸にささる

まだ寒さの残る春の夜、冷え切った笛を懐に

朧月を眺めている行馬さんの心中は誰にも分からない

本人でさえ分からない不可解な、

いつもの自分でない摩訶不思議な感情を持て余しつつ

愛おしく思うのも春の夜だからラブラブ!

 

 

 

 

大虚子の忌の荒草機械刈      鶴岡行馬

 

田辺聖子著『花衣ぬぐやまつわる…わが愛の杉田久女』

での久女の印象は、同人を除名されても尚投句し、
虚子からの冷たい仕打ちに屈することなく、

何かに憑りつかれたように虚子に執着した

場の空気が読めないことで疎まれることもしばしば

疎まれていることに気づきもしない一途さ

そして次第に精神が病んだ

(私の記憶の断片)

虚子の「初空や大悪人虚子の頭上に」と自らを詠んだ

機械で一網打尽に刈れた荒草がどこか久女のようで傷ましく思うけれど、

虚子と「荒草機械刈」が響き合うと

直感した行馬さんの感性は素晴らしいガーン

 

  

 

 

 

酒ほがいとは酒宴して祝うこと

宮城県涌谷町在住の鶴岡行馬さんの

句集の名『酒ほがひ』が誘う作品世界、

藤田湘子先生、小川軽舟主宰の文章が醸し出すもの、

鶴岡行馬さんのイメージが徐々に立ち上ってきた

 

蕗の薹日は眞東に昇りけり     行馬

 

春分、秋分の日の年に二回、

太陽は真東から昇る

立春は名のみの寒さ、

春が遅い陸奥は春分の日の頃、

ようやく春めいてくるのだ

待ち望んだ春分の日の朝

蕗の薹を見つけた喜びは

如何ばかりだろうラブラブ!

 

 

弥勒山→金山北岳→金山南岳と縦走してきました

縦走と言っても、弥勒山230m、金山317m

北岳から南岳まで約10分

時間は掛からなかったけれど、かなりの急斜面

ロープなしでは一歩も前に進むことができませんショック!

秋深し酒場の壁の帽子掛        荒木かず枝

 

馴染みの客で成り立っているような

古くからある酒場

帽子掛に帽子を預けず、

外套などを掛けて

あるいは足許の籠に手荷物を入れて

秋の夜を一人、

大将を相手に一人熱燗をちびちび飲みたいラブラブ!

 

狂ふこと知らざる雛流しけり     荒木かず枝

 

かず枝さんのいう狂うとは

精神が正常でないこと

物事に異常に夢中になること

つまり、俳句に狂う、男(女)に狂うの意味

川を流れてゆく男女一対の雛人形に

無病息災を願いつつも

長じて、身をやつす程の恋に溺れ

一人苦しむ夜を幾度過ごすのだろう

とわが身を振り返り

遣る瀬無い、狂おしい気持ちにしばし耽るのだラブラブ!