目次は製作順ではなく、小説のように題がついている

蛭の履歴

なべてあの世の僕の梨

吾輩は蛸である骨はまだ無い  

など。

キュビスムの絵画を見るように意表を突く作品の数々に

心踊って最後まで飽くことがない

ピュアで正直な表現が生々しさを生み、それでいて温かい

人の想像を超える空想力が絡み合い、

作者の思わず吐く息づかいに

フッと笑いが誘われもする

 句集の物語の始まりは、

 

蟹星雲産んで溽暑のとほき股     一郎

 

生むではなく敢えて「産む」股と書いて読者を驚かす

ホスピスの月待ちの看護婦の呼気    

ここでも看護師ではなく「看護婦」と書いて無機質なものから遠ざかる

あやとりの句にも一郎さんの幼い頃の自我

又は心の奥のトラウマが見え隠れするけど

私たちに背中を向けて決して覗かせてはくれない

 

あやとりの砦は父母を拒みけり    一郎

あやとりに魂からみ動けまい

あやとりの紐切れるまで眠らない

 

つづく・・・・ラブラブ!