ブログラジオ ♯187 Let’s Wait Awhile | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ジャネット・ジャクソンである

Number Ones/Janet Jackson

Amazon.co.jp

いわずもがなだが、妹さんである。

最初に告白しておくと
ぶっちゃけこの方には
僕はほとんどハマらなかった。

彼女の再デビューというか
実質的なブレイクは
86年の出来事だったので、

時期的には明らかに
ちゃんと聴いていて
おかしくはないはずなのだが、

なんとなく覚えていたのは
Nastyくらいのものだった。

曲とタイトルが一致するほど
印象に残っていないのである。

むしろ自分でも
正直不可解なほどである。

たぶん彼女のように
最初から十分過ぎるほどの
知名度があることに

ちょっと斜に構えて
しまったところが
あったのだろうと思われる。


実は同い年であったことさえ
今回確かめてみて初めて知った。

ちょっといい訳めいてしまうが、
80年代が後半を迎えたあの時期

ホイットニー(♯185)に
マライア・キャリーといった

強烈な個性の
まさにR&Bのシンガーという
タイプの二人が
相次いでデビューしてきた上、

さらには当時は確か
ヴァネッサ・ウィリアムスとか
ポーラ・アブドゥルなんかも


結構な勢いで
押されていたものだから、

クロ系の
フィメール・ヴォーカリストは
間に合ってるかなくらいの
ことは考えていたかも知れない。

いや、実をいうと
ポーラ・アブドゥルは
ひょっとしてこの範疇には
入らないのかもしれないのだが、

まあとにかくだから、
今回このテキストを
起こすに当たって

上にジャケットを掲げた
ベスト盤でいろいろ聴いてみて
正直なかなかに新鮮だった。

ただこれは
書いてしまってもいいものか
ちょっと迷わないでも
ないのだけれど、

たぶんジャム&ルイスと
レコード会社との
戦略の一部でも
あったのだろうと思うのだが、

何となく元ネタというか
目指している手触りの

明らかな曲が
とりわけ初期の楽曲には

多いような気がしたことも
同時に本当だったりする。


When I Think of Youの
ベースの手触りなんて

あのTighten Upを
思い出させずにはいなかった。

ラインは違うが
リズムは明らかに
同曲を参照しているだろう。

いや、非難するつもりはなく
これはこれでありだよなあと
思ってこそはいるのだけれど。


さて、このジャネットの
転機となったアルバムが


上でブレイクと称した
86年発表の
CONTROLという作品なのだが、

当時二十歳の彼女と
この作品からタッグを組んだのが、

ジャム&ルイスという
プロデューサー・チームであった。

90年代のこの人たちの活躍には
本当に目を瞠るものがあったのである。

そもそもはこの二人組、
一応は殿下(♯138)の
影響下から出てきている。

映画『パープル・レイン』を
御覧になった方は
わかるかと思うのだが、

あの作品の中で、
プリンス演じるキッドの

ライヴァル的な存在として
登場していたのが、
モリス・デイという人物だった。

この彼は役名もそのまま
モリスだったのだけれど、

このモリス・デイが
所属していたバンドを
ザ・タイムといい、


ジャム&ルイスこと
ジミー・ジャムと
テリー・ルイスの二人は

このバンドのサウンド面の
たぶん中心人物だったのである。

そもそもがザ・タイムの
原型となったバンドを

立ち上げたのが
彼らだったらしい。


さて、つまりそれぞれに
マイケル・ジャクソン(♯143)と
そしてプリンスという二つの巨大な、


たぶん越えるべき目標でもあり、
同時にある種の壁としても
立ち塞がってもいたであろう

押しも押されぬ
ビッグネームの影響下にあった
この両者がタッグを組んで

世に産み落としたのが、
このCONTROLという
一枚だったのである。

ジャネットの方に話を戻すと、
この作品よりも以前にも彼女は
二枚のアルバムを
同じA&Mから発表している。

だがそれは当然ながら
ジャクソンズの末っ子であり、
マイケルの妹であるという

そういうしがらみがあればこそ
起こり得た事態だということは

たぶんジャネット本人が
一番痛感していたのでは
なかろうかとも思われる。

どうやら本人も
このCONTROLの方を、

自身の真の意味での
デビュー作だと
位置づけているのみならず、

後に発表されることになる
複数のベスト盤からも


同作以前の
カタログからの楽曲は、

ほぼ完全に
オミットされているという
徹底ぶりである。

翻ってジャム&ルイスの方も
確か当時は、

遅刻かなんかで殿下の逆鱗に
触れてしまったなんて噂も

まことしやかに
囁かれていたはずだった。


反発心といってしまうと
些か安っぽくなってしまうが、

ある意味では両者が両者とも
最初から高い位置に
自身での中での目標を

置いている中で
制作されたのが

この一枚だったろうことは
断言して間違いはない。

実際同作は6枚の
シングル・ヒットを産み、

しかもそのうちの五曲が
トップ5を記録するという
大ヒット作品となるのである。

今回表題にした
Let’s Wait Awhileも

このうちの一曲で、
87年に二位まで上昇している。

いや、いわれてみれば
確かにこの曲はよく
耳に入ってきたようでもある。

それまでのシングルが
完全にダンス系というか


ヒップホップに
寄せてきていたところで、

こういうバラードを押すのは
定石というか反則というか
そんなふうに眺めていた気もする。

いや、やはりあまりよくは
覚えていないのではあるけれど

それでもいい曲はいい曲である。

ジャネット自身も
同曲に関しては
非常に気に入っているというか
大事にしているようで、


同曲のアンサーソング的な
トラックであったり、
あるいは同じテーマに
もう一度挑んだりといった作品を

後年になっても複数
発表しているらしい。

しかしながらジャネットの
一番すごかったところは

このCONTROLに続いた
RHYTHM NATIONが、

さらにそれを上回る
実績を残したことであろう。

89年に発表された同作からは
翌々年の91年にまでかけて

七曲ものシングルが切られ、
すべてがトップ5入りを果たし、

のみならずそのうちの
四曲が一位に昇り詰め、

惜しくも二位に甘んじたのが
二曲ある。

いや、しかしあの頃からもう
こんなに売れてたんだなあと、
そんな思いを強くした次第。


もっと90年代の後半に
ピークが来ていたように

どこかで思い込んで
しまっていたのである。

どうやら最初に
すっかり乗り遅れてしまった
その感覚を

そのまま引きずって
しまったようである。

ちなみにジャネットの
トップ・ワン獲得曲は、


本年17年現在までで
実に10曲を数えている。

これが歴代の女性シンガーの中で
どのくらいの位置にあるのか、

正確なデータまでは
今回はたどり着けなかったのだが、

もちろん相当の上位で
あるだろうことは間違いがない。

その後も彼女は2015年の
UNBREAKABLEまで
出すアルバムごとに

市況の関係もあった
売り上げ枚数こそ
落ち込んではいるけれど、

それでもきっちりチャートでは
一位を取るか、
逃しても二位にはつけているので

これもやはりすごいとしか
いいようがない実績である。

ついでながら06年発表の
20 YEARS OLDという
アルバム・タイトルは、

ジャム&ルイスとの
パートナーシップが


20年目を迎えたという
意味なのだそうで、

両者の関係が
そんなに長く続いていたことも
それはもちろんなのだが、

それをこういう形、
つまり自身の作品の
タイトルとして残すことで
祝ってしまえるなんて、

なかなかできることでは
ないよなあとも思った。

本当にこのリレーションシップは
お互いに意味のある
充実したものであったのだろう。



では今回の小ネタ。

実はこのジャネット、
今年の一月に

なんと49歳にして初めての
お子さんを授かっている。

産もうと思ったそれだけで
すごいなあとも感じたのだが、

同時に、きっとずっと
ショウ・ビジネスの世界に
身を置いてきて、

そういうこともどこかで
我慢し続けなければ
ならなかったんだろうなあ

とか、
ついつい考えてしまった。

これは12年にたぶん彼女の
三度目の結婚相手となった

カタール出身のご主人との
間にできた子供なのだが、

しかしながら御両親の方は
今年の四月には
すでに離婚の調停に
入ったというニュースも


どうやら流れた模様である。

なんかいろいろ
大変なご様子ではあるが、

当時からずっと
第一線に立ち続けることの
できている

希有な存在で
いらっしゃることは
間違いがないので、

まだまだ頑張って
ほしいなあと思う。


――同い年だし。

でもあれですかね、
あちらには当然

丙午なんて考え方は
きっとまったく
ないんでしょうね。