伊吹山北尾根の弧峰 国見岳直登 | 強化人間331のブログ

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サイボーグである強化人間331の、つれづれ山行記録。
さしておもしろくもないのは、ご愛嬌。

3連続同地域!

 

になってしまいました。今回は伊吹山へこそ行かないものの、前回山行と似たような地域からのアプローチであります。なぜこうなってしまうのか? いささか言いわけじみてはいますが、下記に列挙してみましょう。

 

1、近いから

前回記事にも書きましたが、近いことはよいことです。経済評論家の山崎元氏も著書で次のように書いておられました。

 

家賃の安さに惹かれて郊外から都心へ通勤すると一見、コスト削減できているように思える。しかし往復2~3時間以上も時間を無駄にしており、なおかつ満員電車で体力を削られ、睡眠時間もとれず、出社時にはすでにパフォーマンス4割減。こんな状態では仕事も満足にこなせず、出世は遠のく。したがって家賃を多めに払ってでも会社の近くに住むほうが結果的に得である!

 

とのことです。確かに一理あるでしょうが、これは出世したら莫大な年収アップが望める大企業勤務サラリーマンの話でしょうね。わたしのような中小零細企業では役職がついたところで高が知れてますし、責任だけ増えて残業はつかないとかざらですからね……。

 

いきなり脱線してしまいましたが、山に関してはそら、近いほうがええよ。近くて登りごたえがあればなおよし。おまけに人が入っていなくてラッセルを堪能できれば言うことなし。それら条件をすべて満たした山域が裏伊吹※なのです。

 

※著者独自の呼び名。滋賀県上野からのアプローチを表伊吹、岐阜県春日村からのアプローチを裏伊吹と定義してます。北アルプスの裏劔にちなむ。この名称、流行らせコラ!

 

2、起きられないから

1項と似たような内容なんですけど、厳冬期はアパート内ですら凍るような寒さであります。特にわたしの場合、暖房器具は炬燵のみという硬派を地で行く人間※ですので、布団から這い出るのに途方もない労力を要します。

 

そうなると勢い出発が遅れて遠出は不可能となり、近場に限定されます。近場でラッセルのできる広大なフィールドとなれば……? そうみなさんご存じ裏伊吹ですね。厳冬期はむしろ裏伊吹ばっかり行ってればいいのでは? そんな気さえしてきます。

 

※なぜ暖房器具を使わないのか?

化石燃料を使わないことで二酸化炭素の排出を抑制するエコ思想の持ち主――だからでは全然ないです。理由は簡単、お金の節約のためです。寒さは着れば緩和されますので、冬は室内でダウンジャケットを羽織ってますね。

 

3、バリルートの宝庫である

裏伊吹周辺は多数の香ばしい尾根が走っており、これらを使えば北尾根のどこへでも登れるようです。こうしたフィールドを目の当たりにして登行意欲が湧かないならば、そいつは山屋ではありません。したがってどうしても当該フィールドに――。

 

お話が長いよ!

 

わかった、わりかました。言いわけ大会はこのへんで切り上げ、早速コース紹介といきましょう。

9:10 春日村中郷の路肩へ駐車~9:40 NYK電波塔~13:15 980メートル付近でランチ(40分)~15:05 国見岳~16:40 国見岳スキー場跡地~17:10 除雪ポイント~17:35 春日村中郷の路肩(車回収)

 

日時 2024年1月27日(土曜日) 

天候 快晴

メンバー 強化人間331(単独)

装備 軽量化装備(調理器具、雨具、食料、非常食、水3リットル)

距離 約11キロメートル

推定累積標高差 1,000メートル

所要時間 8時間25分(うち昼休憩40分、その他小休止含む)

備考 登りのみバリルート

 

1 積雪に恵まれる

なんの因果かこの週末も前日に雪がどっさり降り、ラッセルしたくてうずうずし始めたワタクシ。えいくそ、なぜ部屋でゆっくりエロ動画漁りをしてられないのだ? なぜわざわざただでさえ寒いのにもっと寒い場所へ行きたがるのだ? ほとほと嫌になってきます。

9:10、春日村中郷近辺へ到着。準備をして出発です。裏伊吹の起点となる春日村は、岐阜市からでも1時間圏内で着いてしまいます。なぜこんなに早いのか? ずばり信号がほとんどないからです。

 

わたしは春日村へのアクセスを厳密な検証を重ねて最短ルートを構築しており、信号は10か所以下という驚嘆すべきスコアを叩き出しております。昨今のZ世代とかいうガキどもは、備え付けのGPS音声案内(笑)に頼らねば自宅にも帰れないそうですけど、そこは昭和生まれ、紙の地図で培った読図能力を駆使して経路構築ができる。女にィ――モテる!(byクレヨンしんちゃんのバレル)

 

そういうとこやぞ!

最序盤からツボ足ではキツイ積雪です。なんとこんな低山領域で、アプローチからスノーシュー装備というスタートになりました。これはハードなラッセルが期待できます。山屋はドM、はっきりわかんだね

標高300メートル台でこれですからね。先が思いやられます。ちなみにわたしのトレースの右側に、人間がつけたとは思えない細いトレースがありますね。これは文字通り人間のものではなく、アニマルトレース。人の入らない尾根のため、動物たちが百鬼夜行をやらかしてるようです。

9:40、NYKの電波塔着。まだまだ序の口、先は長い。いまのところ風もほとんどなく、身の引き締まる低温ではあるものの、体内の発熱と相まってちょうどよい塩梅。どんどん行きましょう。

国見岳北東尾根(仮称)は一直線に北東へ向かって伸びているわけではなく、途中に屈曲ポイントがあります。脳死で登っていると変な谷へ降りていってしまうので、ピークに乗り越す都度、GPS等で現在地の確認を怠りなく。

791メートルピークで一息入れます。新雪はあたりがたいけれども、ちょっとこれは深すぎるかなあ。標高400メートル程度を稼ぐのに2時間以上かかってます。実はエスケープルートを考えずに登り始めてしまっており、さすがに計画性なさすぎました。

 

とはいえ厳冬期はラッセルが絡む場合、普段の予測タイムが大幅にずれ込んであてにならないことがしばしばあります。計画を念入りに練ったところでタイムがずれ込めば全部無駄になる。したがってわたしは大雑把にだけルートを決めて、どっかのピークに登頂して満足したのちにエスケープルートを決める方式でやっています。柔軟なオリジナルチャートは単独行者の特権ですね。

この日も快晴(というか快晴でなければ山へ行ってません)、白銀の尾根を着実に詰めていきます。

困るのがこういうなにを意図して撮影したのかわからん写真。せっかくなので全数解放してますけど、コメントに詰まります。美しいは美しいんですけど、似たような写真ばかりでは読者も飽きるでしょうしね。

国見岳北東尾根(仮称)はけっこう下生えがうるさいんですけど、積雪期はご覧の通り快適です。無雪期にもチャレンジしているので、興味のある向きはこちらの記事をご参照ください。

伊吹山方面。これほどの遠距離からでもドライヴウェイが山を分断しているのがよくわかります。全然自然保護派とかではないんですけど、景観を損なうような開発はちょっぴり残念ですね。

 

わたしが自然保護派と相いれない点は、彼らがダブルスタンダードを行使していからです。まず誤解しないでいただきたいのは、わたしだってそら美しい自然は好きだし、都市部などの人工的な場所は嫌いです。そうでなきゃ山なんてやってるはずないですからね。

 

自然保護は無条件でできることではありません。お金もかかるし、保護地域を決めれば当然、そのエリアの開発は不可能になります。これはなにを意味するのか? 開発できなければ経済成長はマイナスとなります。昨今では実質GDPの伸びが0.1パーセントとかです。で、どうなりましたか? 外国要因のコストプッシュインフレで物価だけ上がり、国民は負担感に喘いでいますね。この現象は図らずも、〈持続可能な成長〉とやらがいかに空疎なお題目であるかを間接的に証明してもいます。

 

それだけではなく、山林の開発が止まれば水力発電は不可能になるので、エネルギー問題にも波及します。再生可能エネルギーの筆頭候補である太陽光や風力も、多くは山を切り開いて造成してますよね。これらもダメ。原発は放射能(笑)が危ないのでダメ。火力も二酸化炭素を出すのでダメ。

 

電力供給が止まればまともな文明生活は不可能になります。夏は猛烈な暑さに耐えながら汗だくで眠り、冬は身に染みる冷気のなか歯の根も合わない。お風呂は薪を集めて1~2週間に1回、頭や陰毛にはシラミが湧いて痒くてたまらん。デンタルケアもおぼつかないので歯はボロボロ、息は汚水のような臭いでキスなんてもってのほか。食料は常時不足しており、お腹いっぱい食べたのは何か月前のことやら――。

 

よろしいか、電力が潤沢に行きわたらない非文明的な生活とは、上記のようなものなのです。これが自然保護を推し進めるうえでのトレードオフ的な要素なのであります。さてこうした環境にわれわれ文明人は耐えられるでしょうか? 耐えられるわけがない。誤解を覚悟でいえば、自然保護派の論客は女性に多いですよね。これはおそらく共感能力の高い女性ならではの慈悲心が発揮されているのでしょう。

 

その理念自体はまことに素晴らしい。しかし快適さをより多く求めがちな女性たちが、上述のような過酷な環境をよしとするのでしょうか。それをわかったうえで環境保護論を唱えているのでしょうか。違いますよね。意地悪な言い方をすれば、「環境保護に興味のわるアテクシ」を演出してるだけです。たとえポーズではなく本気で保護を標榜していたとしても、その結果どうなるかを考えていないのなら同じことです。

 

ですから真の環境保護論者は、①自然保護を最優先に考え、②その結果トレードオフで犠牲になる文明水準を受け入れる覚悟がある、という2点を具備していなければなりません。②を(意図的にせよそうでないにせよ)無視するのなら、そいつはダブルスタンダードを振りかざした偽装論者なのであります。

 

ここでようやく冒頭に戻ってきますが、この世に存在する自称環境保護論者の九分九厘がおそらく偽装の立場でしょう。したがって彼らとわたしは相いれない。以上、照明終わり!

 

あれ、オチは……?

オチのないまま強行突破していきますよ。標高が上がってきました。800メートルくらいまでは比較的歩きやすいです。特に冬季は下生えや藪が隠れるのも嬉しい。

雪がお好き? けっこう、ますます好きになりますよ。さあどうぞ。新雪の奥美濃です。――不快でしょう? んああおっしゃらないで。スノーハイクは沈み込みがしんどい。でも無雪期のバリルートなんて藪は深いわ虫は多いわ、ロクなことがない。積雪もたっぷりありますよ。どんなマニアな方でも大丈夫。どうぞ歩いてみてください。いい雪質でしょう? 余裕の量だ、深さが違いますよ。

 

雪の深さに辟易し、〈コマンドー〉の自動車ディーラーも出てこようというもの。ひたすらラッセル、ラッセル。

本ルートは上部に藪が集中しており、コース取りを間違えると藪の海へダイヴする破目と相成ります。冬季はご覧の通りある程度隠れるとはいえ、藪を下敷きにした積雪は空洞になっていることが多く、体重をかけるとクレバスよろしく踏み抜いて全身これ雪まみれになること必定。特に苦戦するであろうか所を図示しておきます。

791メートルピークまでは斜度もなだらか、尾根も広くて比較的平和です。ところがご覧の通り、それより上はいっときも気の休まるエリアはありません。

 

痩せ尾根ゾーンもまあ大概ですけど、特筆すべきは850メートル近辺の急傾斜。ただ傾斜がキツイだけならなんとでもなりますが、このあたりは巨岩が点在しており、坂というか崖みたいな塩梅になってますね。このあたりはよく地形を観察して、右から巻くなどの工夫を凝らしてください。巻いても大概ですが、巻けばなんとか進んでいけます。

再掲します。850メートル近辺を乗り越しても、950メートル近辺のデンジャラスゾーンが待ち受けています。急坂だけでもしんどいのに藪まで出てきて、おまけにこいつらは丈が高くて雪が深くても隠れ切らない。藪に積もった雪は内部が空洞になっていることが往々にしてあり、踏み抜くとクレバスに落ちたがごとしで、天然の落とし穴が無数に仕掛けてあるような地雷原であります。

 

それらをクリアするといったん平和になるのですが、現実世界と同じで平和は長続きしません。国見岳へ詰め上げる直下も藪やら急坂やらでとどめを刺しにきます。無雪期でも3時間弱かかったのですが、今回は何時間かかったのでしょうか?

 

その前にランチ情報をば。

980メートル付近で空腹が限界に達したのでランチとしました。13:15から食べ始めたはいいけれど、大気はヘリウムが凍るくらい冷たく、ガスの漏出が鈍ってちっとも湯が沸きません。

 

吹きさらしの尾根ではなく、なるべく雪壁の陰に隠れていたのですがそれでも寒く、湯が沸くのを震えながら待ちます。つくづく思うんですけど、厳冬期の3,000メートル峰に登ってる人たちってどういう身体の造りをしてるんでしょうか?

 

わたしはそこらのパンピーに比べれば寒さには強いほうです。それでも1,000メートル付近の強風と気温は身に染みるし、耐え難いレベルなのですね。気候の穏やかな南アルプスならまだしも、北ア厳冬期とかいったいどうやってランチを摂ってるんでしょうかね。こんなふうにのんびり30分も40分も休憩なんてできませんよね。

 

数年前になにを血迷ったか、ゴールデンウイークに槍ヶ岳へ登ったことがありまして。そのときの寒さときたら! たまたま低気圧が上陸してたとはいえ、あまりの寒さと風の強さに槍の穂先の登頂を諦めたほどです。あの環境で5月なんでしょ、厳冬期なんて推して知るべしであります。

 

それとも耐寒性の個体差はそれほどはなはだしいわけではなくて、装備の問題なんでしょうか? お金を出せば厳冬期でも十分耐えられる、現代科学の粋を集めたような代物が売ってるのでしょうか? 尽きぬ謎であります。ひとつ言えることはわたしはもう、厳冬期3,000メートル峰とかいう気ちがい環境にはいかない、という点だけです。

 

幸い1,000メートル環境は十分耐えられるレベルだったので、なんやかやモジモジしているうちに時間が経ってしまい、再出発は13:55でした。歩き始めてまる4時間で標高差およそ700メートル程度。国見岳北東尾根(仮称)はまこと手ごわいです。

昼食後もえんえんと続く終わりなきラッセル地獄。もうちょいのはずや。

 

「終わりなき」の連想でまたぞろ脱線するけれども(もうええっちゅうねん!)、これだけはご紹介しておきたい。わたしは海外SF小説オタクでして、この分野に関しては一家言あるのですね。SFはサブジャンルが大量に枝分かれしていてちょっと収拾がつかないんですけど、そんななかでも比較的メジャーなジャンルに戦争SFというのがある。さらにさらに、戦争SF御三家というくくりがあり、それは

 

1、宇宙の戦士(ロバート・A・ハインライン)

2、エンダーのゲーム(オースン・スコットカード)

3、終りなき戦い(ジョー・ホールドマン)

 

であります。どれも間違いなく傑作なんですけど、〈宇宙の戦士〉は中期ハインライン(極右思想が色濃く残っている時期)なので人を選ぶふしはあります。強い国家を造るために体罰が当たり前とかね。その代わり(?)パワードスーツというガジェットは本作が走りでして、その描写は圧倒的です。ズイム軍曹のカッコよさときたら……。

 

〈エンダーのゲーム〉は映画化もされたのでご存じの方もいらっしゃるのでは? 映画は視聴していませんが、視聴した妹の感想から察するに絶対、原作のほうが面白いです。バトルスクールに入学した10歳にも満たないエンダー少年が、地球の未来を担ってコマンド参謀として成長していく物語ですね。本作はただの異星人戦争小説ではなく、最後の最後で敵対宇宙人であるバガーの秘密が明かされます。ぜひ続編の〈死者の代弁者〉もお読みください。

 

そしてきました〈終りなき戦い〉。海外SFのオールタイムベストを決めろと言われたら、本作は(体調にもよりますが)必ずベスト1~3にランクインするでしょう。これほどの完成度を誇る戦争SFをわたし、寡聞にして知りません。一般的に娯楽作品は最近になるほど(過去作の要素やスタイルを取り入れられるので)質が向上するものですが、本作は1985年出版なのにもかかわらず、色あせない輝きを放っていますね。いやむしろ、輝きに磨きがかかっているふしさえある。

 

ストーリーは単純です。トーランと呼ばれる異星人の攻撃で人類側の旅客宇宙船が破壊され、これが契機となって星間戦争が始まる。そんだけ。序盤は徴兵された主人公たちを鍛える訓練編で、中盤以降から実際に戦地へ赴いてバトルがおっぱじまるわけですが、本作には戦争SFには欠かせないはずのヒーローが存在しません。主人公のマンデラはのちに昇進するとはいえ最後まで軍隊の歯車でしかなく、超人的な活躍なんかいっさいなし。ひたすら命ぜられるままに戦争へ駆り出されるばかりです。

 

これは作者のホールドマンがベトナム戦争従事者だったことと無関係ではなく、物語の節々にベトナム帰還兵の孤独感を(相対論的ジャンプという手法で)表現しており、まったく見事というほかない。そうした社会的なメッセージ抜きでもパワードスーツなどの男子垂涎ガジェットが多数登場、エンタメ部分だけですでに100点満点、そこへベトナム戦争批判とは恐れ入りました。

 

ベトナム戦争関連では映画〈ランボー〉シリーズが有名ですし、第一作めで帰還兵の心情を吐露して泣いてしまうランボーのシーンなんて、熱いものがありますよね。本作はその点、最後の最後で主人公が救われるのがよいです。「帰る場所が見つかったのさ」。また読みたくなってきました。

 

作品名 終りなき戦い

著者 ジョー・ホールドマン 訳 風見潤

ジャンル ミリタリーSF

おススメ度 ★★★★★★★★(5点満点中8!)

一言コメント ヒューゴー、ネビュラ、ローカス3賞総なめも納得の傑作

やれやれ、国見岳(1,126メートル)に着いたの、何時か想像つきますか? 呆れ返ることに15:05でした。えっ、ちょっと待ってください、たかだか800メートル程度の標高差をやっつけるのに6時間かかってんの? 積雪が深かったとはいえ、さすがにかかりすぎやろ……。

国見岳という大仰な名前だけあって景色は一級品(一休さんの主題歌的な。→とんちはあざやかだよ一級品)。眼下に深い谷があるかと思いますが、あそこから這い上がってきたわけです。

当初はここから南進し、適当なところでドロップするつもりだったのですが、予想以上に時間がかかりすぎました。素直に国見峠へ降りて、林道を経由して車を回収しましょう。休憩したいのですが、寒すぎて歩いていないと身体が冷えてしまう。

 

さて国見岳直下はすさまじい急傾斜+巨岩のコンボのため、直登、直降りは不可能です。そのため夏道は大きく尾根を迂回してつけられていますね。地形図は以下の通り。

ご覧の通り、国見岳台地(と呼べるほど周辺は広大なスペースになってます)の直下は等高線が目詰まりを起こしてますね。しかも現場は巨岩がでんと居座っており、もしどうしても尾根芯を辿って降りたければロープを使った懸垂下降となります。

 

夏道は急傾斜を避けるように大きく西へ巻いているので、無雪期はその通りに歩いたらよかろうかと思います。問題は冬季ですね。適当に巻けばよいんですけど、なんやかや夏道は巻き具合が絶妙なので、できれば夏道をトレースしたいところ。

トラバースポイント。積雪を免れた木々に夏道用のペナントが巻いてあったので、それを愚直にトレースしました。正直なところペナントがなければ、どうやって巻いていいのかわからずに右往左往してたかも。冬季のトラバースは滑落の温床ですが、幸い新雪だったのでスノーシューによる踏み固めがてきめんに効きました。

踏み固めた事後はこんな感じ。これが2月後半くらいの根雪で、カチコチに凍っていると難易度は劇的に上昇したでしょう。一歩たりともムーヴのミスは許されず、甘い足取りをやらかした瞬間即、滑落。雪が積もっててよかった……。

 

国見峠への下りで肝を冷やしたのはここだけで、あとは峠まで非常に平和な道のりでした。

再掲します。ご覧の通り直下さえクリアすれば、尾根はなだらかに下っています。支尾根があちこち派生こそしているものの、ペナントも多く巻いてあり、冬季でも迷うような心配はないでしょう。

樹林帯は雪も少なく、快適に飛ばせます。ルートは明瞭で、たまに地肌が露出しているか所も。樹林に阻まれて積雪しづらいのでしょうか?

緩やかにアップダウンをくり返しながら、徐々に国見峠へ向かって標高を下げていきます。稜線上では猛烈な勢いで吹いていた風も、いくぶん和らぎました。

歴史上の遺物があるようですが、結局一度も訪れたことがありません。国見峠をショートカットできるルート上にあるので近道になるのですが、この日は国見岳北東尾根(仮称)の登攀で全精力を使い果たしており、とてもこの時間(16時台)から冒険しようとは思えませんでした。鉈ヶ岩屋、お許しください! →ボルガ博士、お許しください!

ひゃー、疲れました。16:00、なんとか無事国見峠へ下ってこられました。ここまで来ればあとはもう、林道歩きだけの消化試合となります。

ゲートもすっかり埋没してます。この日はかなりの積雪だったようで、実験的にストックを思い切り突き刺してみました。

1メートル30センチ程度に伸ばして使っているストックがすっぽり埋まってしまいました。この積雪量を10~20センチ程度の沈み込みに抑えられるスノーシューというアイテムの効能は、どれだけ強調してもしすぎることはないでしょう。メモにも「スノーシューすごい」と書いてありました。

林道に入っても依然としてすさまじい積雪です。日陰になっているせいでまったく融けておらず、むしろ稜線より多いくらい。これいったいどこまで続くんでしょうか? さすがに筋力低下が著しく、ラッセルも鈍ります。
奥美濃の山々が眺望できました。メモには「途中に見えた山にノスタルジーを覚える」と書かれており、なんのことやら正直わからんのですが、たぶん奥に写っている山に西日があたり、うら寂しい雰囲気なのでそう感じたのでしょう。まさに深山幽谷の趣であります。
16:40、国見岳スキー場跡地に到着。なにやらおっかない警告文の書かれた道標が。これは法律的に(ドライヴウェイは歩行者立ち入り禁止なので)無理だという意味でして、物理的にはなんらの障壁もありません。ドライヴウェイ自体が通行止めになる冬季は事実上、治外法権状態のようなものです。
国見岳スキー場の遺構が残ってました。わたしの実家から15~20分圏内という信じがたいほどの良アクセスを誇った同スキー場も、ついに2021年あたりで閉鎖と相成りました。
 
小規模ながらローカルゲレンデとしてすみ分けがなされており、シニア層から若者ボーダーまで混在している不思議な空間でした。ちゃんとキッカーやボックスなどのメイクアイテムもあり、わたしはここでピョンピョン飛んだものです。
 
ヤンキーっぽい兄ちゃんに「お兄さんグラトリうまいっすね! ノーリーで回っとるもんで見栄えがええすわ!」などと話しかけられたこともありました。キッカーで飛んで着地失敗、左手首骨折も国見岳でした(寒さでマヒしていたのか、痛がりながらも営業終了まで滑っていたというのですから、いかに当時のわたしがスノーボード気ちがいだったかわかろうというものです)。
 
そんな思い出の残る国見岳スキー場も閉園。寂しいものです。揖斐高原スキー場、遊ランド坂内スキー場も亡き後、西濃圏のスキー場は全滅。若者たちにはもっとウィンタースポーツを楽しんでもらいたいですね。
このラッセル地獄はいつまで続くんやと絶望しかけていたところ、唐突に除雪され始めました。この先あたりから集落がぽつぽつ見られたので、基準は民家があるかないかだったのでしょう。17:10でした。
 
スノーシューを外し、ここからは快速です。足の指がかじかんで壊死しそうなので、少しでも早く岩盤浴に浸らねば。ガンガン飛ばして17:35、車回収。9:10発、17:35着ですので、8時間25分ですか。行程的には短かったのですが、妙に疲れました……。
 
2 コース所感など
国見岳北東尾根は無雪期にトライずみだったものの、積雪期の負担感はすさまじいものがありました。片道6時間て……。国見峠へ降りる際の直下も急峻なトラバースがあり、根雪の固まる2月以降は滑落天国となるでしょう。
 
冬季はもの好きな方限定で登ったらよかろうかと思います。ただ見返りは大きく、ほぼ100パーセント誰も入っていないのでラッセルはし放題。全行程オールラッセルという山屋垂涎のフィールドであります。腕に覚えのある山屋はぜひトライしてみてください。万人にお勧めはしませんので、その点はあしからず。
 
3 反省
反省点なし。国見岳への登攀が予想以上にかかったけれど、柔軟にその後の行程を組み直し、峠へエスケープ。ベテラン山屋のお手本のようなムーヴでしたね。
 
えっ、なんですか? 寒いとか雪が深いとか愚痴が多かった、ですって? 愚痴のひとつくらい書かせてくださいよ。婚活疲れで最近ヘロヘロなんすよホンマ。おかげで2週間以上も山に行けてなくて、身体がなまって仕方ない。そろそろフクジュソウでも見に登りたいものですなあ。
 
さて次回予告。次はチャレンジング企画として郡上方面へ遠征。一度夏季に歩いた大日ヶ岳ループコースをやってきました。さすがに亜高山帯、いままで低山で甘えていたツケを支払わされました。乞うご期待!
 
おわり