伊吹山北尾根バリルート 国見岳直登ルート~虎子山~笹刈山~ブンゲン 前編 | 強化人間331のブログ

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サイボーグである強化人間331の、つれづれ山行記録。
さしておもしろくもないのは、ご愛嬌。

タイトルが

 

野暮ったくてすいません。昔はSF小説のタイトルをもじったりしてオシャレにキメていたものですが、どうもそうしたセンスが――もともとあったとしての話ですが――すっかり枯渇して久しいようで。

 

こういう長ったらしい、タイトルだけですべてを説明しようとするやり口は昨今流行りの異世界転生小説に通底するものがある。転生したらスライムだったとか、お母さんが二段攻撃だとか、ああいうのホンマなんとかならんか。

 

政治は世論を反映するといいますね。政治家があかん、政府があかんという状況はすなわち、国民のレベルがあかんのです。だって政治家は国民の要望を叶えるのが仕事なんですから(本当はそうではなく、50年、100年先の国の未来を考えてかじ取りするのが責務なのですが、日本は憲法に〈国民の代表たる国会が主権を持つ〉という途方もないトンデモ条項を載せてしまっているので、国民主権が横行、政治家は利益誘導マシンと化してしまいました)。

 

やれ生活保護費が足りん、やれ年金が足りん、やれ賃金を上げろ、やれ派遣をなくせ――。こんな乞食意見ばかりが声高に叫ばれている国の政治は、そら同じ土俵に堕ちるしかないですわな。自助努力を放棄した国は気品と道徳が衰退し、必ず堕落していきます。国民主権などという気ちがい沙汰を憲法条文にうたうからこうなるのです(米国や英国はそんなこと、一言もうたっていません)。

 

その最たるものが旧ソ連や北朝鮮ではないですか。社会主義とは共産主義への滑りやすい坂道に至る導火線であり、芽のうちに摘み取っておかねばならない。しかしまあ、もうそんな意見は現今の日本では誰も支持しないでしょう。福祉国家という恐るべき猛獣に平伏した、1億総乞食社会化した日本ではね。

 

話が大幅にそれましたが、政治が世論を反映するように、流行っている娯楽作品も世論を反映すると思うのですよ。異世界転生もののようなどうしようもない、程度の低い娯楽作品が流行るのはそれだけ、若者たちの知的退廃が加速していることの証左ではないでしょうか。

 

わたしはなにも〈カラマーゾフの兄弟〉とか〈怒りの葡萄〉とかを読めと言っているわけではありません(正直に言って、あんなモンは全然つまらん)。せめて名作古典である〈幼年期の終り〉とか〈タイタンの妖女〉とか、日本のものなら〈痴人の愛〉くらいは読んでおけと言いたいのです。

 

異世界転生ものというのはネットゲームのMMORPGをプレイしていることが大前提の、いわば〈身内の文学〉であります。レベル、HP、攻撃力などのステイタス数値がなんの説明もなく出てくる。プレイしてない者にとっては意味不明でしょう。なにも文学に限らず、こうした現象は昨今のアーティストにも同じことがいえる。

 

髭男など若者向けJ-POPの歌詞にはネットスラングがしばしば混じっていますね(キャパオーバーなどの若者語)。メロディや歌唱力はすごいのかもしれませんが、ああいう同世代にしか通じない、いわば符牒的な言葉遣いにはわたくし、たいへんな嫌悪感を覚える。まるで若者以外聴くなと宣言されているようではありませんか(なにより歌詞としてのレベルが低すぎる)。ですからわたしは彼らのメッセージ通り、あんなモン全然聞いていませんし、聴く気も起きない。

 

真に優れた文学や音楽とは、どの世代が読んだり聞いたりしてもよいものであり、それが読み継がれ聴き継がれてきた古典文学、音楽なのであります。若者たちはある意味気の毒ですらある。あんな身内にしか通じない、数年経てば誰からもすっかり忘れ去られているであろう消費娯楽に踊らされて、視野狭窄に陥っているんですから。本当によいものを楽しむ選定眼、これを若者たちは身に着けるべきなのでは?

 

つーかこのおじさん、さっきから説教臭くね?

 

説教臭いのがおじさんなのだから仕方ない。論理的に表現すれば、

 

命題:おじさんは説教臭い

対偶:説教臭くないならおじさんではない

 

これにてわたしがおじさんであることが証明されました。参ったねどうも、すっかりわたしもおじさんの仲間入りを果たしていたというわけです……。

 

1 今回の趣旨

ようやく山の話題ですけれども、今回は珍しく目的が決まっておりました。かねてよりわたくし、伊吹山北尾根の国見峠以北を歩いてみたいと熱烈に希望していたのですね。

 

北尾根といえば国見峠以南というイメージがありますが、実は以北に走る、岐阜県-滋賀県間の県境稜線にトレラン畑の人びとが苦心惨憺して、2000年代に道を通していたのですね。これは青函トンネル開通に勝るとも劣らない偉業でありましょう。

 

せっかくそのような道があるのなら、ぜひとも歩いてみたい。ワンデイで実行できるコース取りを考えに考え抜いたあげく、下記のようなルートとなりました。

春日村中郷周辺~とりつき~NYK中継局~791メートルピーク~国見岳~国見峠~虎子山南峰~虎子山~1013メートルピーク~笹刈山~ブンゲン~奥伊吹スキー場リフト最高点~ドロップ地点~エスケープ地点~林道合流~林道歩き~春日村中郷周辺(車回収)
 

日時 2023年4月23日(日曜日) 

天候 快晴 快晴、若干風あり

メンバー 強化人間331(単独)

装備 テント泊一式、ほか

距離 約21キロメートル

所要時間 9時間40分(うち昼休憩30分、その他小休止含む)

備考 ほぼ初ルート

 

3 最後のマーガリン補給

3.14マーガリンショックにて、生協から補給を受けられなくなったといつぞやの記事で嘆いた気がします。ところがどっこい、母親が最後の注文を敢行しており、4つも補給を受けられたのでした。援強ルート(第二次大戦時、アメリカが国民党党首の蒋介石へ支援物資を送っていた援蒋ルートにちなむ)、最後のあだ花を咲かせたのですね。

 

しかしこれにて本当に、価格高騰が収まるまで当該マーガリンは得られなくなってしまった。これを4.22マーガリン再ショックと呼びます。というわけで前日に実家入り、翌日出撃と相成りました。

 

例によってさんざんっぱら女性の愚痴を妹に垂れ流したあと、眠い目をこすりながら春日村中郷へと車を飛ばします。なお今回の国見岳直登ルートについては、先駆者様の情報を参考にいたしました。敬意を表する意味でもリンクを貼っておきます。

 

 

しかしこの方、お花を追いかけているばかりで直登尾根は楽勝だったと記述されています。後述する通りわたしは大苦戦を強いられました。上記レポートはホンマの強化人間が書いたものである旨、あらかじめ割り引いて読むことをお勧めします……。

とりつき点はなんの変哲もない道路際です。車は正面に写っている、材木置き場の邪魔にならないところに停めておきました。さてここからどうやってとりつくか。

雑然とした急角度の尾根がスタート。明確な道はなく、踏み跡を辿ってだましだまし登っていけばOK。

しばらく急登が続きますが、次第に斜度は緩くなり、道も比較的よくなります。出だしは好調、これは参考にしたレポート通り楽勝そうです。※死亡フラグ

9:00、NYKの中継アンテナに到着。こんな山奥にまで電波の送受信装置があるとは驚きです。これの維持管理のためでしょう、別の尾根にペナントが巻いてありました。

どんどんいきましょう。ヤドリギですかね? あまり品種に詳しくないのですが、たぶん合ってるはず。道はけっこう踏まれているような印象で、さしたる苦労はここまではなし。

一部藪も出てきましたが、尾根が比較的広いので巻くのは容易です。このときはまだ、ね。

10:05、791メートルピークに到着。このあたりから苔むしたカレンフェルトの岩石が散見されるようになり、同時にほとんど踏み跡がなくなりました。誰がどんな目的で登ってきたのかはわかりませんが、みなさんだいたいここらへんで撤退している模様。

 

791メートルピークは地形図通り広々としており、解放感があります。4月下旬なのでまだ大丈夫でしょうが、地質的にヤマヒルが出るのはまちがいない。あまり休憩せず、水だけ補給してとっとと歩き出します。

新緑の季節に入り、緑が目に痛いほどです。下生えもけっこううるさくなってきました。基本的には尾根芯を辿りますが、藪などでキツイ場合は巻く。このへんまではそう大騒ぎするような難所はありませんでした。

860メートルあたりからだんだん怪しくなってまいりました。巨岩が尾根の直上にドカッとあるせいで、非常に歩きにくい。巻こうにも尾根の幅も狭く、おまけに藪藪しくなってきています。参考にしたレポートでは常時快適、楽勝みたいな書かれ方だったんだけど……。

こらあかん! 900メートルより上はもうほとんど常に藪のディフェンス状態です。おまけに一部すさまじい傾斜の部分があって、岩に掴まりながら無理やり身体を持ち上げたようなシチュエーションも。一部だよな、これここら辺だけだよな?

一部ではありませんでした。860メートルより上はまともな道はなく、腰くらいまである鋭く尖った藪が密生しています。けっこう頑張って避けよう避けようとしていたのですが、それでもコース取りをミスってすさまじいゾーンに突入してしまいました。藪を漕いでまたいで、まったく辟易してきます。

1,050メートルくらいでしょうか、ようやく気持ちのよい尾根になりました。やれやれ、あとは消化試合だわい、と完全に気が抜けるわたし。タイツにくっついた草を払いつつ、のんびり行きます。

 

……と思ったら、この区間はほんの少しでした。またもや藪が表れて、稜線に詰め上げるまでまともな足場はなかった。ボロボロのメタメタになりながら、よいしょと乗り越すと、

ただっぴろい天国のような場所に。国見岳直登ではなく、若干北に出た格好です。ここでウィンドブレーカーを来たおっさんと出会いました。彼は明らかに道のないような場所から這い上がってきたわたしに驚いており、どこから来たのかと尋ねられました。これほど待ち望んでいた質問もありません。

 

春日村から這い上がってきましたよ、ひどい藪で二度とやりません!

 

こんなモンあなた、マウントとるしかないじゃないですか。バリルートを辿った点を強調することにより、一般ルートを辿ってきた登山者に対して敗北感を植え付ける。いやあ最高の気分でした、これでこそバリルートを開拓した甲斐があったというものです(性格大丈夫かこのおっさん……)。

 

おっさんは国見岳がどこにあるかわからないらしくオロオロしていたので、またもやマウントチャンスであります。もうちょい南ですよと(優越感に浸りながら)告げ、先に国見岳へ。

よっしゃ! 11:35、国見岳(1,126メートル)に登頂。やりました、国見岳北東尾根、開拓です。道中が険しかったのもあり、達成感もひとしおでした。登頂に2時間50分かかっており、たかだか標高差800メートル強を詰めるためにかかった時間としては異例の長さでしょう。ここはキツかった。後発のためにも詳しく図示しておきましょう。

なにかの参考になれば。御覧の通り791メートルピークより上はほぼまたもな道はありません。苦労しっぱなしでした。気になるのはわたしが参考にしたリンク先のレポートと著しい齟齬がある点。考えられる可能性は以下の通りです。

 

1、レポートの著者は強化人間である

2、レポートの著者は事実と異なる内容を挙げている

3、レポートの著者はコース取りに成功した

 

わたしの予想では、どれかひとつではなくすべてが複合しているのではないかと思われます。辿った感覚的にすべての藪を避けられたはずはないでしょうから、多かれ少なかれ藪を突っ切ったはず。藪が平気なのは強化人間の証ですし、ある程度(登山者としての矜持から)自身の苦労話を割り引いて記載しているはず。

 

そしてなによりコース取りさえ気をつければ、もしかしたらもっと楽に攻略できたのかもしれない。この点は十分考慮すべきでしょう。これはぜひもう一度リベンジし、実際の塩梅を確認したいところです。

 

ちなみに参考にしたレポートは踏破時間4時間半、わたしは2時間50分でした。著者は花を撮影していたようなのでそのぶんを差し引いたとしても、わたしも決して遅くはなかったはず。となるとやはり、過酷なのか? 要再調査であります。

国見岳という名だけあって、眺望はすばらしい。対岸に見えているのは貝月山の稜線でしょうか。さあここからは整備された一般道、ざくざく北進します。

国見峠へ下る道。整備が行き届いており、天国のようです。ぼちぼち人ともすれちがいます。国見峠から伊吹北尾根へ歩く登山者はけっこういるようです。

12:05、国見峠(830メートル)着。滋賀県からも岐阜県からも車道が通じており、ぼちぼち停まっています。ロードバイクで登ってきたとおぼしき二人組もおり、度肝を抜かれました。ようやらん……。

 

国見峠に着いたら、休むことなくそのまま北西の尾根にとりつきます。こちらも十分整備されていて、

入り口も申し分なし。けっこうお腹も空いてますが、どこか適当なピークまで頑張りましょう。

見づらいですが、この黄色い道標、これは鈴鹿深部でよく見かける手作りの代物ですね。ダイラの頭の稜線とか、五僧峠から延びる県境稜線とか、ちょっとマニアックなルートに設置されていることが多い。こんなところにまであるとは驚きです。

12:45、虎子山南峰(およそ1,160メートル)着。よい時間なのでここでランチとしましょう。欽ちゃんヌードルとチーズ入りの総菜パン。ちょっと量が少なすぎたのか、この後の山行は常にすきっ腹を抱えてとなりました。

 

13:15、腹を満たして出発です。あとは稜線を北へ辿り、適当なところで降りるだけ。楽勝でしょう。※楽勝ではありません

 

つづく