A男さんは来月 “還暦” を迎えます。と同時に、
38年間勤めた会社を定年退職します。
いまの率直な気持ちを話してくれました。
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はい、会社からは再雇用の打診はありました。
でも、即座に断りました。だって・・・
これまで部下だった人間の下で働くなんて、
私はイヤだし、相手もやりづらいですよ。
定年については、すでに覚悟はできています。
これまで先輩方のさまざまな行動を
しっかり観察してきましたから。
たとえば、こんな方がいらっしゃいました。
定年から数ヵ月も経っているのに、
古い名刺を持ち歩いているんですよ。
ええ、会社名と肩書きが入った名刺です。
「いま新しい名刺を作っているんですが…」
なんて断りながら手渡すんです。
あれは、みっともないですよ。
私は古い名刺は捨てて新しいのを作ります。
やっぱり名刺は〈男の顔〉ですから。
肩書きは「元〇〇会社・経理部長」にします。
「元」をつければ官名詐称にならないでしょ。
え、マズイですか? うーん、そうかな?
経理畑に明るいってことは言いたいです。
これまで一生懸命働いてきて、
自信があるのはそれだけなんですから……。
はい、これからは家族と楽しく過ごします。
女房には苦労のかけっぱなしでしたから、
せいぜい女房孝行させてもらいますよ(笑)。
旅行ですか? 女房と旅行なんて、
一度もしたことありません。
女房はいつも友人たちと旅行。
私と出かけると気疲れするんですって。
え、これからは一緒に行ってくれるかって?
そりゃあ、私の金で行くわけですから、
行かせますよ。ついてくるでしょ。
孫は二人います。ええ、かわいいですね。
これまでは忙しかったけど、これからは
孫の面倒もしっかり見るつもりです。
もちろん泣きだしたりしたら
女房に任せますけど(笑)。
え、それも女房がイヤがるって?
なんかこんな話をしていると、
だんだん気が重くなってきますね。
でもね、定年になったらね、
ワガママ言わせてもらいますよ。
だって私、これまでずっと我慢して、
精一杯、頑張ってきたんですから!
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