こちらは、現在活躍中の彫刻家・須田悦弘さん (1971年~) の過去最大級の個展です。
須田悦弘さんは、僕の好きなアーティストの一人。
現在活躍されている彫刻家の中でも、
須田さんの実力は、頭一つ・・・いや、二つくらい飛び抜けています。
そんな彼が作り出すのは、
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《泰山木:花》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/05/98/j/t02200165_0800060012274943189.jpg?caw=800)
こちらの 《泰山木:花》 のような超リアルな花や草の木彫作品の数々。
花弁や葉の質感が、本物そっくりなのは、当然のこととして、
息を吹きかけたら揺らいでしまいそうな、植物のはかなげな存在感までもが、完璧に再現されています。
見つめるだけで、こんなにも心を震わされる木彫作品が、他にあるでしょうか?
しかし、ただ巧いだけなら、須田さんの実力は、単なる神レベルということになります (←?)
彼の実力が、頭二つ分飛び抜けているのは、
そんな自身のリアルな木彫作品を、 「どのように見せるか。」 というところまで、こだわっていることにあります。
例えば、先ほど紹介した 《泰山木:花》 。
こちらの作品は、実は、インスタレーション作品の一部。
実際は、このような大きな細長い箱の中に収められています。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《泰山木:花》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/b5/dc/j/t02200165_0800060012274961082.jpg?caw=800)
正面から見ると、このような感じ↓
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《泰山木:花》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/f0/1a/j/t02200293_0800106712274963225.jpg?caw=800)
こちらの中には、一人ずつ入れるようになっており、
奥に設置されている 《泰山木:花》 まで近づくことが出来ます。
(靴を脱いで、入ります)
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《泰山木:花》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/6e/0f/j/t02200293_0800106712274965272.jpg?caw=800)
かくして、一人だけの空間で、 《泰山木:花》 と向き合うことになります。
もし、普通に、そこら辺の展示ケースに展示されていたなら、
「あ、リアルな木彫だなァ」
としか感じなかったかもしれませんが。
須田さんの生み出した、この空間の中で、
彼の木彫を観ることにより、その作品から、より多くのことを感じ取れた気がします。
彫刻を完成させて終わり、ではなく、
完成した彫刻作品を、いかに最高の形で観賞してもらうか、そこまで考え抜かれた須田悦弘さんの世界。
これまでの “観る” だけの彫刻から、 “体感する” 彫刻へ。
須田さんの登場で、彫刻界は、一段階先にステップアップしたのではないでしょうか。
ちなみに、今回の須田悦弘展には、
《泰山木:花》 のような大型作品が、5点ほど展示されています。
作品の中で座って観賞する茶室を思わせるタイプの 《睡蓮》 という作品や、
彼の実質デビュー作である 《銀座雑草論》 も、出展されていましたが。
僕的に一番お気に入りなのが、新作の 《芙蓉》 という作品。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《芙蓉》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/df/0b/j/t02200165_0800060012274994404.jpg?caw=800)
内部が全て漆塗りされているため、漆臭いのは、やや難ですが (笑)
その漆臭さを補って余りあるほど、幻想的な空間が広がっていました!
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《芙蓉》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/0c/98/j/t02200293_0800106712274996569.jpg?caw=800)
芙蓉の木彫作品そのものも、もちろん美しいのですが。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《芙蓉》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/08/3d/j/t02200165_0800060012274998905.jpg?caw=800)
漆に映った芙蓉の姿も、また美しい。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《芙蓉》](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/fb/b5/j/t02200165_0800060012274998906.jpg?caw=800)
いつまでも、ここに居続けたいくらいですが、
一人ずつしか入れないので、あまり長居は出来ません。
(僕が訪れた時は平日で、空いていたから、まだ良かったですが、
会期終了間近の土日に、お客さんがたくさん入った場合、どう対処するのか心配です・・・)
さてさて、こうした大型作品も、須田さんらしい作品ではあるのですが。
僕の中での須田悦弘さんのイメージは、
“超リアルな草や花の木彫作品を、超さりげな~い形で展示する作家さん” というもの。
ヴァンジ彫刻庭園美術館での展覧会 でも、超さりげな~い形で作品を展示していましたが、
今回の千葉市美術館の須田悦弘展でも、
それと同じくらいに、いや、それ以上に、超さりげな~い形で作品を展示しています。
例えば、こちらの展示室。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-須田](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/53/55/j/t02200165_0800060012275012889.jpg?caw=800)
巨大な展示ケースの空間は、空っぽです。
しかし、美術展の冒頭で貰う展示リストを見ると、確かに、この部屋に、須田さんの作品があるはずです。
「う~ん。どこだ??」
何もない展示室を、しばらくキョロキョロと見回していると・・・
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-須田悦弘](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/51/17/j/t02200165_0800060012275017475.jpg?caw=800)
「!!!!!」
なんとなんと監視員さんの椅子の下に、 《雑草》 という作品が (笑)
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-須田](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/18/artony/0e/c3/j/t02200165_0800060012275019303.jpg?caw=800)
さらに、この展示室には、もう1つ 《スミレ》 という作品があるのですが。
見つけるのに、リアルに5分もかかってしまったので、皆様にも教えません (笑)
ちなみに、この 《スミレ》 を筆頭に、
7階に展示されている 《葉》 という作品と、
今回は、特別に会場となっている1階のさや堂ホールにある・・・
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-さや堂](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/97/8f/j/t02200293_0800106712275025140.jpg?caw=800)
《桔梗》 という作品が、 『探すの大変な作品ベスト(ワースト?)3』 です。
宝探しに自信のある方は、是非チャレンジしてみてくださいませ (笑)
探しに探しても見つからない。
そんな時は、監視員さんに尋ねてみましょう。
決して、答えは教えてくれませんでしたが (笑) 、ヒントはくれました。
・・・と、これだけでも十分すぎるほど、
千葉まで通う価値がある素晴らしい美術展なのですが。
“須田悦弘展” と同時開催中の “須田悦弘による江戸の美” が、輪をかけて、素晴らしい美術展だったのです。
こちらは、千葉市美術館のコレクションの中から、
須田さんが展示する作品を選び、なおかつ須田さんの演出で展示している美術展。
これまでの美術展の概念を覆す、アーティストならではの斬新な展示に、思わず興奮していしまいました。
例えば、こちらの展示室。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-浮世絵](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/45/c5/j/t02200165_0800060012275045990.jpg?caw=800)
一体、何が展示されているのかと言いますと・・・
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-浮世絵](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/e0/38/j/t02200165_0800060012275047777.jpg?caw=800)
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-浮世絵](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/e4/28/j/t02200293_0800106712275047776.jpg?caw=800)
そう。浮世絵です。
一つ一つのケースに、浮世絵が1点ずつ展示されており、
上から眺めるようにして、観賞することが出来るのです。
これまでに数多くの浮世絵展を観賞してきましたが、こんな観賞スタイルは初めて。
ライティングが直接当たることで、雲母擦りのキラキラ感を、強く感じることが出来ました。
ちなみに、このケースは、今回の美術展のために作られたのだとか。
今後も、是非、活用して欲しいものです。
また、千葉市美術館のコレクションと須田作品とのコラボも。
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-須田悦弘](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/32/17/j/t02200165_0800060012275055014.jpg?caw=800)
この他にも、屏風作品と須田作品のコラボなんかもありましたが、
個人的に一番感銘を受けた 『千葉市美術館コレクション×須田悦弘の彫刻』 の組み合わせが、こちら↓
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-花鳥](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/0e/e8/j/t02200165_0800060012275060154.jpg?caw=800)
長澤芦雪の 《花鳥蟲獣図巻》 の中で雀たちが描かれている部分に・・・
![アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-花鳥蟲獣図巻](https://stat.ameba.jp/user_images/20121107/19/artony/32/96/j/t02200165_0800060012275062986.jpg?caw=800)
須田さんが木彫で作った米粒が (笑)!!
もはや神がかり的な演出です。
こんな斬新な演出をした須田さんも素晴らしいですが、
それに全面的に乗っかった千葉市美術館も素晴らしいと思います。
![星](https://emoji.ameba.jp/img/user/ri/rikatori/56300.gif)
![星](https://emoji.ameba.jp/img/user/ri/rikatori/56300.gif)
![星](https://emoji.ameba.jp/img/user/ri/rikatori/56300.gif)
この美術展を観なかったら、絶対に後悔します!
自信を持って、3つ星。
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