美術館というと以前は絵画一辺倒。

それがいつの頃からか、建築の展覧会が増えたなぁと感じ、徐々に興味を持ち始めました。

これまでに見た建築関連の展覧会を思いつくままに列挙してみるとこんな感じ:

 

2011年「メタボリズムの未来都市展」森美術館

2013年「日本の民家一九五五年 二川幸夫・建築写真の原点」 パナソニック汐留美術館

2014年「建築家ピエール・シャローとガラスの家」パナソニック汐留美術館

2014年「ジョージ・ネルソン展-建築家、ライター、デザイナー、教育者」目黒区美術館

2015年「村野藤吾の建築 -模型が語る豊饒な世界」 目黒区美術館

 

そして、もっとも体系的に建築攻めでインパクトがあったのがこちら↓

2018年「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」森美術館

 

大いに感化されました。

実際、本展の写真展示で見た鈴木大拙館にどうしても行ってみたくて、翌2019年、金沢へ。

幸運にも、丁度谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館が開館して1か月も経たない頃でした。


その「建築の日本展」でもうひとつ、実物を見たい!と思ったのが旧帝国ホテル本館(ライト館)です。

展示自体はやや地味で、設計図や写真資料・解説などがそろってはいたものの、

丹下健三の自邸や伊藤忠太の建造物が大きな模型でアピールしていたのとは対照的。

出口直前、鑑賞者もやや疲れてきた頃、学芸員も疲れてきたのか、畳みかけるように

ざざざっといろいろ集めたコーナーの一角でした。

それでもあの広い全体空間のなかで、妙に印象に残ったから不思議です。

 

フランク・ロイド・ライトは、帝国ホテル建設のため、折角アメリカから招へいされたものの、

予算オーバー、工期ずれ込みなどで解任の憂き目に遭った、弟子の遠藤新が継承、、

といういきさつもユニーク。

竣工が関東大震災の年、1923年(大正12年)の7月で、直後の震災で被害が

ほとんどなかったという逸話にも目を見張りました。

 

で、念願かなって今回訪問、というわけです。

 

 

といってもこれは正確には移設、ではなくて再構築。

一旦解体されたあと、残りの部材を一部使いつつ、ホテルの建物の玄関周りのみを

復元したものです。

だから明治村での呼称は「帝国ホテル中央玄関」となっているわけです。

 

 

入り口を入って突き当り、正面にピンクのカーテンがありますが、この先は食堂でした。

でも、復元のこちらの建物は、あのカーテンの部分で終わり。

食堂は再現されておらず、奥行きは途中でカットです。

 

 

到着したときに丁度ガイドツアーが始まったところでした。

でも、時間的余裕を図りかねたし、とりあえず自由に見たかったので参加せず。

最後に大体見終えたときに、ツアーの最後の部分に飛び入り。

以下●部分はそこで聞いたお話です。

 

●ライトはイメージソースはなくオリジナルといっているが、ピラミッドや

 南米の遺跡、インカやマヤなどの影響がみられる。例としては車寄せ前の

 相対する巨大人物像のようなモニュメント(↓と、その対面にもうひとつ)


 

 

このライト館の概要・専門的なことは、明治村のサイトやWikiなどにふんだんに出ているので

ここで繰り返すことはせず、代わりにツアーガイドで初めて知ったことなどを中心に。

 

 

 

●壁の仕切りはなく開放感抜群

 

 

 

●戦時中はGHQが占拠。ペンキを塗った跡がある。
 例えばこの部分などは、まだらになっているので、そこはオリジナルの部材が

 使われている可能性がある。(どの部分が実際オリジナルか本当のところはわからない模様。)

 

 

●内部装飾の要は、大谷石、スダレ煉瓦、テラコッタなど。

 

 

こちらに見える3階部分は立ち入りできませんが、↓

●3階はせまく修道院風、

とのこと。

 

 

 

正面に見えるオブジェは新たに作られたものですが、

オリジナルの残骸が敷地内に置かれていました。

 

 

それがこちら。(左側)↓

風雪で丸みを帯びていています。

上の写真にある復元品も、もう少し年季を演出すべく”面取り”して

シャープな感じをそぎ落としてもよかったかも。

 

 

食堂にあった柱の一部。

 

家具やランプなども一緒にデザインされたのでしょう。

この椅子などは、ライトが同時期に手掛けた自由学園 明日館の椅子を思い起こさせます。

 

 

幾何学模様が多いなぁと感じました。

このあたり、小笠原伯爵邸の喫煙室の窓に似ていてやや既視感。

ここでボランティアの人が二胡の演奏をしていました(写真左手にちらっと手が写ってる。)

 

 

石づくりのいかめしさも手伝って、想像以上にライト版帝国ホテルは、ごつかったです。

 

 

 

遺跡っぽい、という意見もなるほどと思うけど、これと同じものは見たことがなく、

想像/創造の翼を広げて思い切りやりたいことをやろうとした、そんなロイドの姿も

伝わります。

実際、自由にやりたいようにやろうとして、解雇。ツアーで聞いた情報を考えれば

やむを得ず、といったところでしょう。

 

●当初予算は150万円。それがどんどん膨れ上がり、最終的に900万円になった。

 当時東京駅の工費は500万円であった。

 

 

 

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