いつもブログをお読みいただき、誠にありがとうございます。
ここでは、神々からの御言葉を綴っていますが、今回は文学界の神様である、夏目漱石先生から御言葉を戴き、物語を綴る事となりましたので、紹介致します。
KU
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≪夏目漱石先生≫
一応そう長編で無く、短編で行ってみたいと思います。
どうなるか分かりません。
はじめに
これは、私の思いつくままに、語る物語であので、いったいどの様な、文章になるかは分からないが、その中にたとえ一文でも、誰かの心にとまれば幸いと思い、ここに記(しる)す事と致します。
第1章
今日は、若干憂鬱(ゆううつ)な思いである。なぜなら、いつもの如く現れるはずのあの少女が、今日は未だ姿を見せないからである。いつもなら同じ時間を、同じこの場所を通るはずであるが、何かあったのであろう。
今日は未だ姿を見せない。
二階の窓を少し開け、窓越しにその少女が通るのを密かに楽しみにしている私にとっては、その姿が今だ見えない事は憂鬱以外の何ものでもない。
いつもなら、こうだ。
もう遙か向こうから爽やかな風に誘われて、私は彼女の気配を感じている。
不思議なもので、その様な事に関しては勘が鋭くなるものだ。遠くから、彼女の足音が聞こえる様な気がするのである。
ただ、これは実際に聞こえているものではない。しかし人間と云うのは、自分がそう強く望んでいると、その足音が聞こえたりするものであるらしい。
私には、彼女の足音が聞こえる。
そしてその軽やかな靴の音は、私のこの間借りの二階の窓から、見下ろすにちょうど良い前の通りを通り過ぎるのである。
ただこの一瞬だけが、私の青春であると云うにはあまりにも情けないかもわからないが、それでも良い、そう思えるほど、私は彼女がこの前を通るのを楽しみにしているのである。
いつもは、柔らかな花柄のブラウスに、軽やかに風にゆれる淡い水色のスカートを穿(は)いて、この前を通るのである。
あ~ 彼女は知らない。
私が名も知らず密かに、彼女に恋心を寄せていると云う事を、何も知らない。
それでも良い。一日の内のこの時間に、ほんの数分、彼女の姿を見るだけで、私の今日の一日はバラ色になるのである。
私には、彼女の前に名のり出る勇気は無い。
何故なら、私は苦学生であり、この様な家賃の安いアパートに住むのが精いっぱいの男であるから、着るシャツもほんの二枚しか持たず、年がら年中同じ様な服装をしているこの様な自分で、彼女の前に姿を現わす勇気は無い。
しかし、これが恋心と云うものなのか。この様なむさ苦しい男でさえ、青春の春風と云う奴が吹いてくるものなのだ。
その彼女が今朝は通らない。
あ~ どうした事か
私は今日一日、暗い思いで過ごす事になる。
このほんの小さな出来事に、自分の心の内の世界がすべて支配されてしまっている事を、私はとおの昔に認識しておる。
あ~ この様な堅苦しい事を語る私を、彼女が見たらどう思うだろうか、その様な事を思いながら、今朝は窓の外に目をやり憂鬱な思いで、朝の時間を過ごしていた。
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