http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11536126502.html
北海道でのメガソーラー建設見直しの件で、コメント1のご指摘に納得いたしました。
原発とは違いますが、TPPの件は、本当に危険な状態になってきたと、三橋氏に共感します。拡散希望と言うことで、原発と話題は違いますが、三橋氏のブログ記事を転載したいと思います。
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http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11513591485.html
さて、昨日の続きです。
アメリカにせよ、ニュージーランドにせよ、日本とのTPP交渉事前協議では、「自国の国益」、より具体的に書けば「自国のビジネス」あるいは「自国民の所得拡大」を目的に臨んできます。国際収支の統計的に言えば、
「より、日本から貿易の黒字を稼ぐにはどうしたらいいだろうか。農産物や自動車などをできるだけ日本に売り込み、我が国は買わなければいいのだ」
「より、日本からサービス収支の黒字を稼ぐには、どうしたらいいだろうか。我が国のサービス(保険など)の販売拡大の邪魔になっている非関税障壁を撤廃させればいい。特に目障りなのが、簡保だ」
「より、日本から所得収支の黒字を稼ぐには、どうしたらいいだろうか。投資を自由化させ、我が国の投資家を日本に内国民待遇させればいい」
上記を目的に交渉すればいいわけです。
結果的に、アメリカやニュージーランドは貿易収支、サービス収支、所得収支、そして「経常収支」の黒字を稼ぐことができます。すなわち、米国民やニュージーランド国民の「外国から獲得する所得」が増えます。何というか、実に「重商主義」的でございますなあ。
もちろん、
「本当に『国民』の所得が増やせるのか? 特に、アメリカは一部の資本家や企業の所得が増えるだけではないのか?」
という疑問が浮かんできますし、それは確かにそういう面が強いのでしょうが、少なくとも「国家全体」としては、「国民が外国から得る所得を増やす」となっているわけです。(所得の配分がおかしくて、格差が拡大傾向にあるのは、あくまでアメリカの国内問題です)
それに対し、現在の我が国は、
「TPP交渉に参加する」
ことが目的になってしまっており、完全に非対称な交渉と化しています。
『TPP交渉、NZ・豪・カナダが条件 「例外なし」要求
http://www.asahi.com/business/update/0417/TKY201304170577.html
「環太平洋経済連携協定」(TPP)の交渉に参加表明した日本に対し、米国以外の国々も交渉条件を示していることがわかった。農業国のニュージーランドやオーストラリア、カナダが「すべての品目を交渉の対象にする」「高い自由化を実現する」などと求め、カナダは米国のように日本車にかける税金(関税)を残すことも主張している。
複数の交渉関係者が明らかにした。日本はTPP交渉で農産物にかける関税を守りたいと訴える方針だが、日本に農産物を売りたい農業国の理解を得るのは難しくなるおそれがある。
日本は交渉参加のために、すでに参加している11カ国から承認を受ける必要があり、米国のほか、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ペルーの手続きが終わっていない。 』
そりゃまあ、先方は日本のTPP交渉参加を認める以外には、別に譲歩をする必要はないので、こうなるに決まっています。この非対称な交渉をくぐり抜け、日本の「国益」を守れるのか。具体的には、自民党の6つの判断基準を貫き通すことができるのか。
無理に決まっています。現在の日本が置かれた状況は、「交渉力」などと言った抽象論では突破できないのです。というか、この種の抽象論を言い出さなければならない時点で、負けなのだと思います。
注意しなければならないのは、アメリカにせよ、他の国々にせよ、「国益」とはあくまで(TPPの場合は)自国のビジネス、もしくは自国民の所得拡大であるという点です。そこに、「中国包囲網」だとか「日米安全保障強化」といった「ビジネス」「所得」と無関係なことを持ち出さなければならない時点で説得力がないのです。
くどいですが、TPPはアメリカの「陰謀」とやらでも「中国包囲網」とやらでもありません。単なる(アメリカにとっては)ビジネス、所得拡大政策の一環です。確かに、「企業」が政治家と結びつき(ロビーイングにより)、この種の内政干渉的な対外交渉をやらせるという点で奇妙なのですが、それが世界の、あるいはアメリカの現実です。
参考:TPPのための米国企業連合
http://www.hatatomoko.org/tpp-americakigyorengo.html
そもそも論をしておくと、日本市場の「非関税障壁」とやらを撤廃させなければビジネスが拡大できないというならば、企業側が市場に合わせたサービス・製品を開発すればいいのです。
また、国家には各国ごとの「完全自由化してはならない分野」「非効率でも自国の供給能力を維持しなければならない分野」というものがあります(これが今書いている本のテーマ)。
さらに、「市場原理主義」を標榜する企業や投資家が「政治家」と結びつくことは、民主主義を歪めてしまいます。
日本国民は、特に日本の政治家は、上記のTPP,あるいはグローバリズムの「本質」を今こそ理解しなければなりません。そして、明らかに日本の国益を害する「非対称な交渉」を続けている日本政府、官僚をコントロールしなければならないのです。
ちなみに、先日の日米の「非対称な交渉」合意を受け、アメリカの農業団体は以下の通りの状況になっています。
『舞い上がるような気持ち」米農業団体は大歓迎
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130417-OYT1T00330.htm
米国のコメや豚肉、乳製品などの農業団体は15日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加をめぐって共同記者会見を開いた。
団体の代表者からは、「舞い上がるような気持ちだ」などと、日本市場への輸出拡大を期待し、歓迎の声が相次いだ。
会見には、全米豚肉生産者協議会(NPPC)、穀物商社大手のカーギル、全米農業連盟、USAライス連合会などが参加した。
関税撤廃には長い移行期間を置いたとしても最終的には撤廃し、関税を残す例外は認めるべきではないとの主張も相次いだ。』
さて、「アメリカの農家の所得増大(=日本の農家の所得縮小)」な交渉をやってしまったようにしか見えない安倍政権ですが、自民党側はどうするのでしょうか。一度動きだしてしまい、なかなか方向転換できない「政府」をコントロールすることも、与党の役割の一つだと思うわけでございます。
原発とは違いますが、TPPの件は、本当に危険な状態になってきたと、三橋氏に共感します。拡散希望と言うことで、原発と話題は違いますが、三橋氏のブログ記事を転載したいと思います。
---以下転載---
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11512926911.html
さて、ニュージーランドが日本のTPP交渉参加に難色を示しています。
『TPP関税撤廃「例外認めず」=ニュージーランドが強硬
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013041600793
日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた事前協議で、米国政府の承認後もニュージーランドが関税撤廃の例外を一切認めない方針であることが16日、明らかになった。コメをはじめ重要品目を例外としたい日本側は、こうしたニュージーランドの姿勢について「絶対にのめない」(政府関係者)と譲歩する考えはなく、ニュージーランドの承認が得られる見通しは立っていない。』
農業国であるニュージーランドの国益は、アメリカ(日本ではなく)に農産物の例外を認めずにTPP交渉を妥結することです。日本の交渉参加に関する事前協議で、農産物の「例外」を認めてしまうと、TPP交渉においてアメリカにも認めざるを得なくなります。結果的に、ニュージーランドは日本の交渉参加に拒否姿勢を示しているわけです。ニュージーランドの国益から考えれば、当然でしょう。
とはいえ、日本政府はTPP交渉に参加しようとしています。そうなると、最終的にはどうなるか。
「日本のTPP交渉参加」
と、
「ニュージーランドが日本に譲歩させる」
ことが「交換」されるタイプの交渉になってしまうわけです。
先日のアメリカとの事前協議で明らかになった残酷な事実は、現在の日本政府が行っている交渉は「目的が非対称」になっていることです。先方は、
「日本に譲歩させること」
が目的であるにも関わらず、こちらは、
「日本をTPP交渉に参加させてもらうこと」
が目的にならざるを得ません。こうなると、交渉力も何もあったものではないのです。
本来は、日本は
「相手国に譲歩させる代わりに、自国も譲歩する」
交渉をするべきなのですが、現実には、
「TPP交渉に参加させてもらう代わりに、自国が譲歩する」
スタイルになってしまっています。すなわち、事前協議の段階で、日本が得られるものは「無い」という話です。何しろ、先方は日本に譲歩させるのと引き換えに、「日本のTPP交渉参加を認める」だけでいいのです。
さらに問題なのは、事前協議による合意事項は、例え日本がTPP交渉に参加しなくても「有効」になってしまうという点です。日本がTPPに参加しようがしまいが、事前協議の合意は実質的な(名目的にも?)EPA、すなわち経済連携協定になってしまうのです。(まあ、国会の批准が必要という点はTPPと同じですが)
何を言いたいかと言えば、先日、合意したかに見えたアメリカとの協議は、今後も続けられるという話です。具体的には、保険、透明性/貿易円滑化、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便及び衛生植物検疫措置の分野(外務省の資料から)といった「非関税障壁」について、TPPと同時並行的に協議をアメリカと続け、その場で日本が各種の譲歩をしてしまうと、我が国のTPP参加と無関係に「過激なEPA」として成立してしまうのです。(外務省の書簡によると、これら非関税障壁に関する交渉は、日本のTPP交渉参加と同時に始まります)
これでは、たとえTPP参加、あるいはTPP参加の国会における批准を食い止めたとしても、ほとんど意味をなさないという話になってしまいます。そもそも、TPPとは日本が交渉に参加したとしても、日米両国で全GDPの八割を占めます。日本にとって、TPPとはいずれにせよ対米問題です。
アメリカ側としては、日本に各種の非関税障壁の撤廃(要は法律をアメリカ式に近づける)や投資の自由化を「並行協議」で押し付けることができれば、
「あ、じゃあ、別にTPPに参加しなくてもいいよ」
という話になってしまうわけです。何しろ、当初の目的は達せられたことになりますので。
これは、ちょっと洒落にならない状況になってきました。何しろ、日本の「世界の覇者」の如き交渉力があり、TPPの各合意事項を覆したとしても、並行協議でアメリカに「非関税障壁」について譲歩すると、結果が同じことになってしまうのです。
まずは、TPP交渉参加以前に、アメリカとの協議について問題視していかなければなりません。というわけで、明日に続きます。
わたくしは滅多にこの頼みごとをしないのですが、本日と明日ばかりはお願いいたします。本エントリーを拡散してくださいませ。