「大塚国際美術館」に伺い「地下三階」で「システィーナホール、

   スクロヴェーニ礼拝堂、聖マルタン聖堂、聖ニコラオス オルファ

   ノス聖堂・聖テオドール聖堂、古代・中世の陶板名画」を拝見し、

   「地下二階」に移動すると、この階では「ルネサンス・バロック」

   に加えて「モネ・大睡蓮」が拝見できるようです。

 

 

   「受胎告知と二聖人」  

   1333年 シモーネ・マルティーニ

   イタリア・フィレンツェ ウフィツィ美術館

   「大天使ガブリエル」が「めでたし 恵まれた女よ。 主は あなたと

   ともに」と「マリア」に告げています。 「聖母」は祈禱書を読ん

   でいるところを訪問されたように閉じたページに指を挟んで当惑し、

   上半身を捻り、マントを襟元で合わせて恥じらっているが、それは

   「マリア」の謙遜と純潔を証明する身振りである。 父なる神は現

   れていないが、中央のアーチに「黄金の聖霊・鳩」がいる。 これ

   によって天と地の三角形が成立しているとされます。

 

 

   「受胎告知」

   1430年代末 フラ・フィリッポ・リッピ

   イタリア・フィレンツェ サン・ロレンツォ聖堂マルテッリ礼拝堂

   「聖母」は右端で部屋の隅に隠れるように祈禱台の前に立ち、驚い

   た身振りで「天使」を見ている。 だが、表情には驚きが無く自分

   の運命を受け入れているようである。 「天使」は膝まづき、ユリ

   を手に「聖母」に神の言葉を告げている。 神の威圧的な姿や神秘

   的光線は無いが、左の「天使」の頭上を「聖霊の鳩」が飛んでいる。

   立体感や遠近感、光線の描写などは近代的な技巧だが、その精神は

   宗教的事件を庶民に分かりやすく説明して見せる写本挿絵と同じと

   云います。

 

 

   「受胎告知」

   1500年 ジョヴァンニ・ベッリーニ

   イタリア・ヴェネツィア アカデミア美術館

   この絵は本来ヴェネツィアの聖堂のオルガン外壁用に描かれ、オリ

   ジナルでは左右に分かれていたと云います。 左のドアから急ぎ足

   の「天使」とともに外光が部屋に射し込んでいる。 窓枠と天使の

   影が床と壁に柔らかく落ちて、まるで普通の部屋に訪問者が来たか

   のような晴朗な日常性が感じられ、「聖母」も静かな表情である。

   「受胎告知」を、このような日常性の中で、しかも明るい静けさの

   中で描けたのは「ヴェネツィア」のこの時代だけだったとの事。   

 

 

   「受胎告知」

   1440年代後半 フラ・アンジェリコ

   イタリア・フィレンツェ サン・マルコ美術館

   この画面構成は伝統的な中世の「受胎告知」に比べ極めて斬新で、

   空間は遠近法で合理的に構築され、人物の立体感、光の効果も新

   しい「フィレンツェ派」の造形法を十分マスターしている。

   神秘の光線も父なる神も聖霊の鳩さえ居ません。 「聖母」は女

   王のように豪華ではなく、粗末な椅子に座り、衣服も簡素で敬虔

   に「天使」の言葉を聴き、「天使」も対等に「マリア」に対して

   敬虔に手を組んでいます。 天と地が対等に相まみえる、この併

   置構造は まさに「ルネサンス的」と云える。

 

 

   「受胎告知」

   1488~89年 サンドロ・ボッティチェッリ

   イタリア・フィレンツェ ウフィツィ美術館

   画家はここで「聖母」と「天使」が穏やかに対等に出逢うと云う

   「トスカーナ」の「ルネサンス形式」を破っています。 

   「天使」は急いで「聖母」のもとに現れ、緊張した面持ちでやや

   脅迫的に「聖母」に迫ります。 「聖母」はその勢いに押された

   ように退くが、思い返したように「天使」の方を振り返り、自ら

   の運命を観念したかのように目を閉じています。 二人の身振り

   と表情には、この告知が「キリスト」の死によって成就される贖

   罪のドラマの始まりであるような悲壮感がある。

 

 

   「受胎告知」

   1582~87年 ティントレット

   イタリア・ヴェネツィァ 

   スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ

   この絵が伝統的な告知画と異なる点は、まず「天使」と「聖母」の

   静かな出会いが見られないことで、裂けた天井からは「小天使」が

   大挙して「マリア」を襲い、彼女は圧倒されている。 もう一つの

   点は「ガブリエル」が地面に立っていないことで、天から飛来して

   逞しい腕で「黄金の鳩」を指しています。 これはこの命令が神の

   意志であることを示している。 宗教改革によって「聖母」の聖性

   が否定されたため、「カトリック教会」は「聖母」の「懐胎」が神

   の意志であることを強調する必要があった。