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クロヤギ頭の読まず買い

ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

ふくろうの叫び (河出文庫)/パトリシア ハイスミス

クロヤギ頭の読まず買い

¥693

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11の物語 』『動物好きに捧げる殺人読本 』と短編を2つ読んだハイスミス女史の長編に初挑戦です。


この本がおもしろいらしいと教えてくれたのはjettさん ですが、アフェリエイトで検索したら7kichiさん 提供の画像が出てきました。


いやー、本読みの世間は狭いということでしょうか(笑)


これは41歳中期の代表作だといい、『見知らぬ乗客』という映画の原作はなんと処女長編だったんだそうです。


続けて『太陽がいっぱい』も映画化されるという、才能と幸運に恵まれたスタートだったんですね。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


舞台はぺンシルヴァニア州の田舎町。


幸せと感じた短い期間が終わった後にロバートへの日常的な侮辱に加え別の男に心変わりした妻・ニッキーと別居し、ラングレー・エアロノティックスに就職した傷心のロバートは、ニッキーからの嫌がらせ電話を疎ましく感じる中、郊外にドライブした際にたまたま家の前で見かけた若い女性(ジェニー)のくつろいだ幸せそうな姿が心に焼きつき、それからは時折就業後に車を走らせ、彼女の日常の姿を物陰から眺めるのが密かな楽しみで癒しであると感じている。


彼女に恋人(グレッグ)がいることも承知の上、これが最後と思いつつ出かけたある夜、見つかってしまったロバートは警察に通報されることを覚悟するが、意外にもジェニーは鬱や不眠といった精神的な問題をいくらか抱えて生きてきた彼に理解を示し、家に招き入れる…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


主な登場人物は今あらすじに書いたこの4人。


たまたま、もしくは起こるべくして起こったこのロバートとジェニーの出会いが、この4人の運命を弄ぶかのように事態はエスカレート。


そしてこの4人とは別に大きな存在感があり、ロバートを追い詰めるのは、隣人や知人の無責任な想像や思い込みから生じた悪意や疑惑。


今まで読んだものとは違い長編なのですが、最後まであの短編で感じるような緊張感なしには読めません。


ハイスミスの作品には本来の意味での"サスペンス"という言葉が相応しい。


ごく普通の人が追い詰められていく、この出来事がついそこにいる隣人や自分に起こっても不思議ではないのではないか…そんな近しさが迫ってきます。


いろいろな小説を読んでいて天才というのはこういう人のことをいうのだろうなぁとたまに思いますが、このハイスミス女史もその一人ですね。

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)/河治 和香
(2007)
¥560
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「通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進」「源頼光公館土蜘作妖怪図」と全身に"彫り物"を施した武者などの勇ましい極彩色の錦絵に時に風刺を効かせ、江戸末期の画壇の声望を一身に担ったという歌川国芳の娘、お侠な江戸っ子・登鯉(とり)を主人公にした連作時代短編。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


壱 生首(なまくび)

弐 紋紋(もんもん)

参 お侠(おきゃん)

肆 口吸(ちゅう)

伍 化物(ばけもの)


同じ歌川一門といえども、裕福な育ちの兄弟子・国貞とは気性も画風も違い、国芳の門下といえばやさぐれ者ばかり。


十五になる登鯉は見事な彫り物を背負った男が好きで、幼い頃自分の背中に弟子たちに墨で絵を描いてもらい、国芳の不興を買ったほど。


門下の弟子について平気で賭場に出入りし、気に染まない誘いはサラリとかわし、歯に衣着せぬが皆に愛される粋な美少女だ。


歳の若いさばけた気性の継母と異腹の妹、弟子たちに囲まれて賑やかに暮らし、一方で叶わぬ想いに身を焦がす年頃でもある。


斬られた女の生首を写生のためと持ち帰る年少の弟子。


過去を断ち切るため痛みに耐え文身師(ほりものし)の許に通う男と女。


男のように絵師として吉原に通う登鯉の傍らで、芸者や花魁として芸や体を売って生きる幼馴染の娘たち。


彫物師"乃げん"との出会いと別れ、そして国芳の捕縛…


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


十二代家慶の時代、水野忠邦の改革により、戯作本、役者絵、髪結い…全て贅沢として禁じられていく中、時勢の波を掻い潜り、たくましく生きる江戸っ子の姿を登鯉のぶつかる出来事とその成長を通じて描いた物語ですが、難しいことはさておき登鯉を囲む国芳&やさぐれブラザーズの面々が粋で楽しくて。


皆それぞれに抱えるものもあるけれども、宵越の涙は持たねえ!ってなもんでしょうか。


弟子の副業が鮨屋の酢飯扇ぎだとか、そんな江戸の風俗ネタも新鮮。


著者は葛飾柴又生まれ、日本映画監督協会のスタッフとして働く傍ら江戸の風俗画家に師事したという本格派だそうです。


2作目以降も追加購入決定の楽しいシリーズ。

海賊丸漂着異聞 (創元推理文庫)/満坂 太郎
(2005)
¥672
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☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


文久三年(1863年)、アメリカの商船・バイキング号が座礁し、三宅島の隣島である御蔵島の沖に漂着した。


本土は攘夷論に沸く折、名主・吉兵衛の留守に起きた一大事に島の書役である市左衛門は、地役人の伊織、年寄の作右衛門らと相談し、労働力としてアメリカの鉱山に渡る広東人と、米人の乗組員の住居などの世話をすることに。


やがて帰島した吉兵衛は、同じく自分の留守中に息子に危害を加えて入牢した弥助の極刑を言い渡すが行方不明になり、弥助の姿も牢から消えてしまう。


またバイキング号でも、航海中から錯乱気味だった船長が船内の密室でピストル自殺する事件が起こる。


やがて神奈川奉行所の役人を乗せて現れた黒船・ワイオミング号が広人たちを本土に連れ去り、残ったのは米人と神奈川の役人、そして通詞のジョン万次郎であった。


船長に弱みを握られていたらしい水夫長や、積荷のことで船長と争っていた船主。


船主の妻と親密な船医、ドアを斧で破って死体を発見した一等航海士。


流人の子として弥助を蔑み、その上弥助の想い人まで召し上げた吉兵衛。


謎の深まる中、二つの水死体が発見され、続いて米人の焼死体が…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


第七回鮎川哲也賞受賞作というからにはミステリなのですが、幕末の史実をベースにした歴史小説としても読めるジャンルミックスな感じが楽しめて、日本のミステリでどんなのが好き?と訊かれたら、例に挙げたいような1冊♪


ホームズ役にジョン万次郎を持ってきたのはフィクションではあるものの、全く筋違いでもなく、ちょうどこの頃に万次郎は小笠原で捕鯨をしていたのだとか。


賞の選考に当たった有栖川有栖が、本書の欠点としてジョン万次郎の探偵ぶりが堪能できなかったことを挙げたそうですが、島の指導者の一員として頭角を現し、やがてはこの島を束ねることになる市左衛門だからこそ推測できた一等航海士・スミスのとった行動の理由など、アメリカで育ち航海術にも長け、通詞や鹿児島開成所の教授などと、日本各地を飛び回る万次郎との視点や人柄の違いが描かれていて、万事を万次郎が独りで解決してしまうよりもよかったんじゃないかなぁと思ったりします。


この市左衛門にも栗本市郎左衛門(幼名は市左衛門と同名)という実在のモデルがあり、片言の英語を交えつつこのバイキング号事件の対応に当たった才人だったそうです。

ながい眠り (創元推理文庫)/ヒラリー・ウォー
(2006 法村 絵里 訳)
¥882
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この町の誰かが 』『失踪当時の服装は 』とノン・シリーズから読んできたウォーですが、ようやくフェローズ署長活躍するシリーズの第一作を手に取ってみました。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


コネティカット州ストックフォードにある不動産会社のオフィスに空き巣が入った。

しかし、盗まれたのは賃貸契約書のみ。


誰が、何のために?


ストックフォード警察署長のフェローズは、その理由を推理し、ある短期契約の貸家から胴体だけの女性の死体が発見される。


その家を契約した男はどこへ消えたのか…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


私は元来ぼんやりしていて謎を考えたり犯人を推理したりにはエネルギーを費やさない人間なもので、本格ミステリより実はサイドストーリーの充実したジャンルレスな感じのミステリが好きかもしれません。


こうやって考えてみると、ウォーの作品は事件の物証と証言を求めて地道な捜査を失敗を繰り返しながら本筋とは関係のない寄り道なしに進めていくものですが、それでもまた読もうという気になるのは容疑者や参考人という端役を含む、血の通った登場人物のやりとりがその理由でしょうか。


犯人のとった行動の理由を推理して犯人像に近づこうとするフェローズ署長と、彼の操作方法をホームズ気取りと揶揄する二級刑事ウィルクスの間で繰り返されるやりとりはしつこいほどながら、署長自ら現場に出張り、本当は甘いコーヒーが好きなのに無理にブラックコーヒーを飲み、朝食も昼食もろくに食べずにダイエットに励むメタボオヤジの内にある刑事魂は熱いぞ!


この物言いに遠慮のない刑事間の上下関係もいいですね。


①リアリズムの重視

②存在感のあるヒーローの重要性

③物語の背景をリアルに描写すること

④謎とフェアプレイの精神

⑤結論として社会的なメッセージを有すること


ウォーが警察小説を書くための重要な要素として挙げた項目などについて触れた解説(小山正)がおもしろかったので、またわたくしの備忘録代わりに列挙してみました。


こんな薀蓄はまた忘れた頃に次の作品を読んでみたいと思いますが(笑)

秋の花 (創元推理文庫)/北村 薫
(1997)
¥651
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空飛ぶ馬 』『夜の蝉 』に続く円紫さんシリーズ第三作。


短編、中編ときて今回は長編ですが…


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


高校を卒業して三年目に《私》は母校の文化祭に行くことはできなかった。


文化祭の方が中止になったせいだ。


その原因となったのが、《私》も小学生の頃から知っている少女の転落事件。


校舎の屋上から転落した少女は津田真理子。


屋上への入り口には鍵がかかっていた。


子どもの頃から何をするのも一緒だった幼馴染の和泉利恵は、その後ずっと学校も休みがちで沈んでいるという。


友人のりりしい女子大生・高岡正子が泊まりに来ていたある日、我が家の郵便受けにわけの分からないものが。


「ー《アダム・スミスは『国富論』において自由放任(レッセ・フェール)政策を唱えた》」


和泉さんの言葉から亡くなった津田さんの教科書のコピーらしいと分かるが、その本は棺と一緒に燃えてしまったはずのものだった…


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


お馴染みの《私》の友人たち、学生結婚をして人妻となった江美ちゃんや、ご近所の小さなボーイフレンド・トコちゃんも登場し、「水を飲むように本を読む」という主人公を通じて語られる本の話もまた満載ではありますが、今回は決して微笑ましい話ではなく、舞台がほぼ高校・大学と自宅に終始したのと、ページ数の割には円紫さんの登場や落語話が少なかった物足りなさもあり、特に初めて読まれる大人の方にはあまりお薦めいたしません。


扉書きの久世光彦さんの献辞が一番気に入ったつったら怒られるかな…


『空飛ぶ馬』はこちらのアンソロジーにも収録されています。


きみが見つける物語 十代のための新名作 スクール編 (角川文庫)

¥500
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