積極参加・強制参加にかかわらず、このたびのStayHomeプロジェクトの一員に加わっておられる皆さまにおかれましては、さぞブログの執筆が捗っておられることと存じます。
 よりによってGW期間に被さってしまってるため、GWの有難みが吹き飛んだばかりか曜日感覚すらままならなくなってしまった方も多数いらっしゃるのではないかと予想しています。
 当ブログとしては前回のような心にパワーを要する記事、そして今回みたいに時間がないと作れないような記事を、この状況を利用しつつ進めていきたいと思っております。
 
 よいこのデンジャラスセレクションシリーズ。【In The City】と題しました15回目ですけど、要するに街や都会にまつわる曲の特集であります。街から灯りが消えてしまっているこのご時世に、はからずもタイミングを合わせるかのような様相となっております。
 いつもこの企画で最初にぶち当たるのが「テーマに沿った曲の数がうまく出揃うか?」という問題。ですが今回は、比較的そのハードルは簡単にクリアできそうなんです。だって、前回やったときに、もう次にやるときのオーダーが、ほぼ決まってるくらい出揃ってましたのでね。なんなら、すぐにでも書けるよってほどのテンションだったくらい。
 問題は、構成ですね。曲の順番をどうするか。とくに最初と2番目の曲で、どっちを先にしたほうがいいか――これだけで何ヵ月も悩み、つい先ほどまで考えていました。そして逆転につぐ逆転の末、以下のような打順となりましたのでご覧あそばせ。
 
 
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音譜まがじん『愛の伝説<作詞:万里村ゆき子/作曲:坂田晃一>
 
 結局、トップバッターとなったのは、前回の当シリーズに続き万里村ゆき子&坂田晃一のコンビにより誕生した楽曲になりました。とくに坂田晃一作品については我ながらプッシュしすぎなんじゃないかと懸念を抱いたりもするが、イイんだからしょうがないのです。これまでも当コーナーで何度もエントリーされながら、諸事情によりボツになっていた曲です。このたび満を持しての登場と相成りました。
 本曲は1973年に放送されたテレビドラマ『さよなら、今日は』のオープニング主題歌だったそうです。同番組では朝倉理恵の『さよなら、今日は』(※2017年9月の「よいこのデンジャラスセレクション⑧【風を感じて】」で扱ったものの、up後わずか3日で動画の再生が不能になってしまった)も主題歌で、そちらも坂田晃一作品でした。
 ふたつの主題歌が存在していたことになるのですが、私が番組を見たことがないので、どのような使い分けをされていたのかは不明です。ご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。
 さて。問題なのは、これを歌ってる「まがじん」なるグループ。調べようとしたんだけど情報が薄い。フォークグループらしいんだけど「フォークにしちゃ大人数だな」「いや、ぜんぶの楽器を自分たちだけで演奏するスタイルだったのかな?」・・・などと想像するくらいしかすべがない。ジャケ写を見たかぎりではダサダサで、いかにも頼りなさげな出で立ち(『ガッチャマン』の主人公たちの普段着みたいなファッション。ただし全員がみみずくの竜寄り)なので、当初はまったく期待はしておりませんでした。
 でも実際に曲を聴いてみますと「お見事!」と手放しで称賛したくなる出来でした。とくにヴォーカルは歌の基本ができていて耳に心地よい。ピアノのフレーズも痛快。これが坂田晃一の得意とするセミクラシック調(?)のアレンジやメロディにマッチしていて、心洗われる気分にさせてくれるのです。
グッド!
 これほどの佳曲でありながらwishy-washyさんのブログで企画された坂田晃一作曲シングルの独偏ベストテンにはエントリーすらされていないのはなぜだ、なぜなのだ⁉ そこらへんを問いたいのだけれど、wishy-washyさんがもう3年近くも更新を滞っておられるので目下のところはwishy-washyさんのご無事を祈るばかりなんである。 (-人-;)
 

 
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音譜OSAMU'S『FANTASTIC CITY<作曲:鈴木修>
 
 蝶野正洋の入場テーマ曲。“黒の総帥”と呼ばれるようになってからの蝶野のテーマはロイヤル・ハントが演奏するヘビメタ調の『CRASH ~戦慄~』が定着し今日に至るが、個人的にはまだ闘魂三銃士のなかでもっとも出遅れていた時期に使用されていたテーマ曲のほうが好みであります。
 方向性が定まってなかったころの蝶野には未完成ならではの魅力のようなものを感じられた。そのころの曲である。じつは闘魂三銃士の使用曲のなかではコレがいちばん好きでした。
 1991年の新日本プロレス、第1回G1 CLIMAXで優勝を遂げたときが、おそらく本曲のもっとも輝いた瞬間であったことだろう。ただ翌年からは『FANTASTIC CITY '92』という、本曲をスローテンポにしたものに差し替えられてしまった。あれは重々しくなっただけで躍動感は失せてしまい、プロレスラーの入場曲としては少々疑問を抱いたものだ。
 ところで蝶野といえばプロフィール上では「ワシントン州シアトル生まれ」らしいのだが、私はどうしても彼が三鷹で暴走族やってるイメージのほうが強い。だから「FANTASTICなCITY」というのは三鷹市のことだと思っていた。東京都下ですけど。
 蝶野が「もうこの曲いらない」って言うんだったら、本曲は三鷹市のテーマとして使っちゃえばいいんじゃないのって思う。
 

 
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音譜堀江美都子『ジュンの歌<作詞:浦川しのぶ/作曲:渡辺宙明>
 
 アニメ『グレートマジンガー』の挿入歌であり、ヒロイン=炎ジュンのテーマ曲でもある。
 正直、本曲は【差別】をテーマにした回でやりたいと思っていたのだが、そういう曲の特集なら他でもやりそうなので。そうなるとちっとも「そんなに陽のあたらない名曲」にはならないから、その企画は早々とボツにしました。ひとつ前の記事が「マイノリティ」「差別」を扱ったから、というのはとくに関係ないです(タイトルが「キレンジャーズ」なのでスルーされてしまった向きも多かろうと思われる汗)。
 舞台は冷たい雨の街角。ジュンはアフリカンスキンの父と日本人の母の間に生まれ、さらに孤児院出身ということで苦労続きという生い立ち。劇中では自身の肌の色に思い悩み、血が滲むまで手を洗い続ける様子まで描かれている。
 本曲はそういった彼女の暗い生い立ちを歌い上げるような内容になっているが、堀江美都子の情緒たっぷりな歌唱がコンプレックスむき出しというか“悲劇のヒロイン”ぶりが執拗に強調されてるかのような印象になっているため(上手いけど)、哀しい歌なのに苦笑いしながら聴いてしまうことに。 (;^_^A

 なお本曲は千葉真一主演の刑事ドラマ『大非常線』にて、歌詞を変えたものを主題歌『哀愁のスキャット』として流用していた。
 

 
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音譜寺尾聰『ダイヤルM<作詞:有川正沙子/作曲:寺尾聰>
 
 街や都会にまつわる曲の特集というからには「ハイ、いかにもシティポップです」と呼びたくなるナンバーを扱っておきたい。そこで是非ともご登場していただきたいと思ったのが寺尾聰。代表的なシティポップシンガーのひとりです。
 本曲はシングル『出航 SASURAI』のB面曲およびアルバム『Reflections』の収録曲であるが、それゆえに問題もありました。だって『Reflections』といえば、日本のLPレコードとしては4作品しかないミリオンセールスアルバムのなかのひとつだからです。
 じゃあ有名なんじゃないか? だったら当コーナーで扱うのは如何なものかとも思ったのだが、他のミリオンセールスアルバムである井上陽水の『氷の世界』、松山千春の『起承転結』などと比べると、このアルバムはシングルで大ヒットを飛ばした『ルビーの指環』『SHADOW CITY』『出航 SASURAI』が強すぎるためか、それ以外の曲が話題にのぼることはあまりない。ネット上にも、とくに本曲だけにスポットを当てるような記事はあまりなさそうなんである。だから「そんなに陽のあたらない」に該当すると判断した次第。
 私が本曲を聴いたのは寺尾聰の声ではなく、2016年の記事「同級生がやらかした所業の思い出」に登場する南○一くんの鼻歌が最初であった。まことに残念なことに。 (ノ_-。)
 難しそうな顔をしながら「つーるるーつるるるーるるー♪」と歌う・・・というよりは、お経でも唱えるかのような歌い方をする南。どうやら彼のお母さんが『Reflections』を所持していて、それを聴いて覚えてきたもよう。南はおなじく「同級生がやらかした~」に登場する神○光○くんとともに坊主頭をよくネタにされてたので、ハミングとして「つるつる」を多用する寺尾聰の歌には親近感を抱いていたのかもしれない。もっとも、本曲は彼らのような小学生の小僧に似合うものではなく、大人の世界へ大いなる幻想を抱かせるに相応しい“ザ・シティポップ”だったのであるが。
 いまでは使い方すら知らない層も存在するダイヤル式電話。ジーコロコロコロ・・・とダイヤルを廻し、それが戻るのを待つ時間のなかにもドラマがある。「寺尾聰の歌にはドラマがある」という声もあるが、たぶんその情景には煙草のけむりで靄がかかっているんだろう。
電話タバコ
 

 
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音譜野口五郎『誰かが私を愛してる<作詞:市川森一/作曲:筒美京平>
 
 当コーナー初登場の野口五郎(それ以外の記事では何度かあった)。2月に放送された『歌謡プレミアム』という番組で彼の特集があった。もちろん本人も出演し、歌とトークを披露していたのだが。
甘い生活』がヒットした当時を振り返ったゴローは「デビュー後にアイドルというカテゴリができ、自分も否応なくその枠に組み込まれてしまった。そのため一般の歌手と比べ一段低いポジションという見方をされるような気がして、自分の歌う曲がヒットチャートの1位になることはないだろうと思っていた」というようなことを語っていたのが興味深かった。
 当番組で歌うゴローは口パクなし。堂々と生歌で勝負する。やはり彼はアイドルというよりも「歌手」なのだ。ただ、この日のゴローは体調がよくなかったのか、私には彼が声のコントロールに苦労しているかのように映った。おそらくゴローからすれば不本意な出来だったのではないかと推察する(※本人いわくトークしてるうちに「泣いてしまった」のが真相らしい)。
 でも、歌番組はそれでいい。仮に下手な歌手が出演していたとして、それについてブツブツ言いながら視聴するのも歌番組を見る際のひとつの在り方であろうと私は思うのだ。
 またレコーディングされた音源にもいえることだが、昨今では声を補正するのが当たり前な風潮が強い。音程が狂っていようが大した問題ではなくなりつつある。そりゃあ音痴歌手もいなくなるわけだ。だけど、それによって伝わるものは何れも「薄めすぎたカルピス」を飲んでるかのよう。曲じたいがどんなに優れていたとしても、完成されたものは無味無臭な作品にしかならない気がする。ゴローがテレビで、いまも生歌で勝負できる歌手であることは素直に称えたい。
 さて本曲は『19:00の街』のB面曲であり、テレビドラマ『誰かが私を愛してる』の挿入歌。作曲担当の筒美京平氏は個人的にアタリ・ハズレの大きい作家さんという印象が強いのだが、『19:00~』などは大アタリの部類に入ると思う。もっともこの曲の場合、アレンジを担当した川村栄二氏の功績がいちばん大きいのではないかとも思っているのだが。そして『誰かが私を~』も、B面にしとくのはもったいなく感じられる佳曲かと。
 動画はライブ音源らしいのですが、冒頭でのゴローによるトークも聴きどころ。ドラマ出演時に共演した露口茂氏の意外な一面が披露されている。人を楽しませるのが好きな、ゴローのサービス精神の高さが窺えます。
 

 
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 以上、5曲。
 余談ですが、前に「三人組でひとくくりにされる場合、彼ら彼女らのキャラクターは“良い子”“悪い子”“普通の子”で1セットになることが多いらしい」と書いたことがありました。その場合は読んで字のごとくというよりも、私の勝手な感覚だと、良い子が「優等生っぽさ」あるいは「美」をウリにしたキャラクター、悪い子は「不良っぽさ」「ワイルドさ」、普通の子だと「素朴さ」「親近感」「お笑い担当」・・・といった位置づけになることが多い気がします。
 ゴローは御三家のなかでは「普通の子」かと。これは少年時代から偉い先生の指導のもと歌のレッスンに励んできたバックボーンによるオーソドックスな歌唱スタイルが、本来、歌手としては当然の在り方であったのだろうという意味での「普通」。まぁポジティブな意味で「普通スタイルの歌手」というイメージですかね。
 そして私は、蝶野も闘魂三銃士のなかでは「普通の子」ポジションだと思っているのですよ。
「ちょっと待て。蝶野のどこが普通の子なんだ?」と仰せの方、ごもっとも。かつては不良の部類に入ったであろう十代を過ごし、いまでも“黒の総帥”である。どう見ても「悪い子」に見えますよね。それも正しいと思います。
 ただ私のなかで蝶野といえば、やはりG1に優勝する前のパッとしない時期の印象が非常に強い。どのカラーにも染まることができず迷走していたころの・・・若くして“白の中堅”になりかねない姿を見ていましたんでね。その意味で蝶野の場合、ネガティブな意味で「普通のプロレスラー」でしたかね。
 それに闘魂三銃士には橋本真也という、ガキ大将がそのまま大きくなったような男がおりましたんで。「悪い子」ポジションは橋本のものですよ(笑)。
 ・・・と、ここまで書いても「いや、厳密に言うと闘魂三銃士は武藤も含めて三人とも悪い子だろ」って声が聞こえてきそう。うん、反論はしないよ。 (*≧m≦*)ププッ
 
かお
 
かお
 
かお
 
かお
 
かお
 
 あの。なんかやっぱり物足りないですね。いつもよりちょっとパンチに欠けると言いますか。洋楽もなければ戦前戦後の流行歌もない。パチソンもない。なにより毒の要素が少々足りないように思えます。毒のない記事になったときには自分でも不満が残るものでして。
 なので1曲、追加します。なんかこのパターンが続いてますが、当たり前になっちゃいけませんけどね。
 
音譜川橋啓史、大塚佳子『ユミちゃんの引越し ~さよならツトム君~<作詞:みなみらんぼう/作曲:みなみらんぼう>
 
 NHK『みんなのうた』始まって以来の大ヒットを飛ばした『山口さんちのツトム君』のアンサーソングとして企画された楽曲。「なんだ、毒なんかないだろ」「そこそこ有名だろ」って言われそうですけど・・・スイマセン、この曲はどこかでどうしても扱っておきたかったんです。
 ツトム君とは、母親が家を出て行って実家に帰ってしまい、家庭崩壊の危機に落ち込んでいた男の子。「夫の暴力に耐えかねて」「夫の浮気グセに愛想をつかして」「妻として或いは母親として疲れ果てて」・・・など、山口夫人にいったい何があったのか考えられる可能性は多々あるが、ツトム君しか見ていない「近所の女の子」の視点にその真相が映るはずもない――山口家をとりまく闇。それが前作のあらすじでした。
『山口さんち~』にてツトム少年を心配していた近所の女の子=ユミに代わり、本曲では心配されていた山口家の息子さんのほうがユミを想って歌うという構成に。どうやら両者は、あわれ家庭の事情で離ればなれの運命になるのでありました。
 このもようがたどたどしい歌唱で展開されてゆくのですが、みなみらんぼうによる歌詞がじつに巧い。とりわけ「全部ひらがなで書けば ぼくも読めるからね」のくだりには泣けてきましたわ。
えーん
 だが、引っかかる点もなくはない。ユミは遠い町へ行ってしまうそうです。これに対し山口家の息子さんは「お正月になったら ユミちゃんの家にいくんだ」と申しておいでです。さらに「ぼくはこづかいをためてね ママ 会いにいくんだよ」と。かなり意志は固いです。
 もういちど書きますが、ユミは遠い町へ行ってしまうのです。遠い町というからには日暮里と西日暮里くらいの距離ではすまないと思うのです。稚内と小笠原村くらいの距離だとしたら、かなり大変だと思いませんか?
 彼はこづかいをためて行くと言い張っている。ということは、単独行動を敢行しようとしている可能性が高い。しかも正月ですからね。山口夫人のことですから、彼女はまた実家へ帰りたいと思ってるかもしれないのですよ。仮に山口夫人の実家が鹿児島とかだったら方角がまるっきり違うじゃないですか。「ママは鹿児島へ帰るから、ツトムだけで行っておいで」って思ってるかもしれません。
 ひらがなしか読めない山口家の息子さんは、はたして稚内までたどり着けるのだろうか? このもようはテレビの特番を組んで中継すれば、正月でも高視聴率を取れること間違いなしでしょう。
 あと、この歌にはママは出てきてもパパの存在がありません。もしかしたら山口夫人はもう、やっぱり・・・すると息子さんのフルネームも、既に山口ツトムではなくなってるのでは⁉ Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
 

 
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 最後に。
 むかしの記憶です。これは実話なんですけどね。
 町内放送で「ヤマグチツトムくんの葬儀を・・・」という内容の告知を聴いたことがあります。どうやら近所の川でヤマグチツトムくんという、歌の登場人物と同名の実在した子が川で溺れて亡くなったらしい。
 その地区で川といえば大谷川くらいしか思いつかない。「あんな平和そうで水深がヒザ下までしかなさそうな川でも、人って死ぬんだなぁ」って考えさせられたもんです。
 それからは『山口さんち~』を聴くたび、見ず知らずの少年のことが思い出されるようになりました。