映画-CAN -2ページ目

それでもボクはやってない

周防 正行それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!

なんて不条理な…。
映画の冒頭から常にまとわりつく、この気持ち。
何事も無い日常を送る人々にとっては、まさにワンダーランドな法の世界に、
ある日突然、あなたも放り込まれないとも限らない。

大ヒット作「Shall We ダンス?」から11年、待ってました!の周防正行監督の新作は、
その大半が裁判シーンという社会派ドラマ。
“社会派エンターテインメント”と表現する向きも有るが、
今までの周防作品のタッチを想定して観に行くと、独特の笑いで縁取られた
エンターテインメント性が影を潜めていることに驚く。

角川エンタテインメントShall We ダンス? (初回限定版)


切っ掛けは、ある痴漢冤罪事件。
この記事に興味を持った周防監督は、リサーチの鬼と化し、ありとあらゆる裁判を傍聴、
やがてその興味は、刑事裁判の在り方へと移って行く。
「疑わしきは罰せず」というのは、日本の司法制度では幻想でしかない。
無罪を主張する裁判の、実に99.9%が有罪――つまり、誤認逮捕されてしまったが最後、なのである。
有罪の立証よりも、無罪の立証の方がはるかにハードルが高いなんて、
何ともアンバランスな話だ。

面接に向かう満員電車が、徹平(加瀬亮)のそんな不運の始まりだった。
女子中学生に、身に覚えの無い痴漢行為を責められ、警察に連行された徹平は、
“私人(この場合は女子中学生)による現行犯逮捕”とみなされ、そのまま拘留される。
誰もが徹平を有罪にしたがっているとしか思えないほど、耳を傾けてくれる人はいない。
何を訴えても、聞き入れてもらえない恐怖。
この日から、徹平にとって長く苦しい“法との闘い”の日々が始まった…。

警察が取調べ中に自白を強要する、などという話は、時折耳にするが、
実際に判決を下す立場の裁判官までが、なるべく無罪を出さないようにとの
スタンスで仕事をしているとしたら、とても恐ろしいことだ。
事実、そういう面が有るがゆえの“99.9%”なのだろう。

知ってしまったからには映画にせずにはいられない――映画人としての魂や、
人としての正義感が、そんな風に周防監督を突き動かして生まれた作品ではないか、
と想像する。
あえてオーバーな演出を施さず、淡々とリアルに裁判シーンを描きながらも、
周防監督の怒りが透けて見えるような作品だった。
周防作品の良さは、馴染みやすく、分かりやすいところ。
裁判映画はこれ1本で終わらせるつもりはない、と語った通り、誰にでも分かる言葉で、
これからも暗部をえぐり出していってくれることだろう。

(2007年・日本映画)

(川口 桂)


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ディパーテッド

大好きな香港映画「インファナル・アフェア」をハリウッドがリメイク!
そう聞いた時、あれほど出来上がってしまっている作品を、
リメイクしようと考えるなんて余程の天才か、身のほど知らずなバカだ。。。
と思った。その張本人、マーティン・スコセッシは……やはり天才だった!

サントラ, ロジャー・ウォーターズ, ヴァン・モリソン, ザ・バンド, ビーチ・ボーイズ, ザ・ローリング・ストーンズ, ロイ・ブキャナン, ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド, バッドフィンガーディパーテッド



主演はレオナルド・ディカプリオにマット・デイモン。
脇にジャック・ニコルソンにマーク・ウォールバーグ。
主演級の俳優がずらりと名を連ねる豪華キャストが魅力。
若手は名優ジャック・ニコルソンなどの影響で
自分が持つ以上の力が引き出されているのではないかと感じるほど
それぞれのキャラクターを見事に演じ切っている。
本年度アカデミー賞の作品賞ノミネートが頷ける
隙のない作品に仕上がった。



ボストンを舞台に描かれる「ディパーテッド(=死者)」は
マフィアに潜入する警察官と警察に潜入するマフィアの物語。
「インファナル・アフェア」の着想はそのままに
アイルランド系マフィアの歴史的背景を取り入れるなど
オリジナルの色も濃い。

ビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)は犯罪一家に生まれた。
その生い立ちと決別するため、警察官を目指すが、
彼に命じられた任務は「ギャングの組織に潜入する」事だった。
一方、ボストン南部を牛耳るギャングのボス、コステロ(ジャック・ニコルソン)
に腹心の弟子として幼い頃より育てられたコリン・サリバン(マット・デイモン)は
コステロの「内通者」となるべく警察に潜入する。

同じ警察学校を優秀な成績で卒業した二人は、互いを知らぬまま
それぞれの道を歩き出す。
危険と隣り合わせでいつしか自分を見失っていくビリー。
署内でエリートの道を歩き始めるコリン。
運命はイタズラに彼らを引き寄せる。
ビリーは上司であるコステロから、コリンもまた上司から
「ねずみ(内通者)」を探し出せという使命を受ける。
それはまさに「自分」。身分を知られる事は「死」を意味する。
二人の男の運命をかけたスリリングな死闘が始まった……



とにかくオープニングからテンポが良く、見事に引き込まれる。
ジャック・ニコルソンの存在感には改めて感嘆し、
珍しく「嫌な刑事」役を演じるマーク・ウォールバーグはとても新鮮だ。
さすがスコセッシというべき、ギャング映画としての魅せ場も満載。
ただ、この作品のラストは、賛否両論だろう。
否と感じられる方はオリジナル作品「インファナル・アフェア」3部作を観れば
その意味が少しはわかるかも?
3部作をぎゅっと二時間に押し込めた事が「テンポがよく面白い点」でもあり
少し詰め込みすぎた事が「ラストでの説明不足」をもたらす弱点でもある。
しかし作品の出来は非常に高い。ぜひ観て欲しい!



★★★個人的に「インファナル・アフェア」比較(ネタバレかも?)★★★

ポニーキャニオンインファナル・アフェア トリロジーBOX



個人的に思ったことなので、違っていることもあるかもしれないが
あしからず??


・ディグナム(マーク・ウォールバーグ)の存在はどうよ?

この役はオリジナルでは登場しない役。ビリーが潜入警察官であるという事実を
知るたった二人の人物のうちの一人だ。
ラストにこのディグナムの存在が効いて来るわけだが、オリジナルでは
その事実を知っていたのはたった一人の警部だった。
この「たった一人」が重要で、その警部の死を目の前で見たヤン(トニー・レオン)の
あの表情だけの演技が素晴らしかっただけに、
今回クイーナン警部の死を見つめるビリーにそれほどの感情を抱けないのは私だけ?



・同じ女性でいいのか?

オリジナル作品ではヤン(レオ役)とラウ(デイモン役)の恋人は別人だ。
出世街道を歩くラウの恋人は、ベストセラー作家、ヤンはこの作品と同じく
精神科医だけに心を開き癒されていく……
今回は互いに精神科医と関係をもつ。「鏡」的要素を強調したかったようだが
正直、ビリー(レオ)のマフィアという外見ではなく内面を見抜ける女性が、
コリン(デイモン)のような男性に惹かれるだろうか……と少し思わなくもない。
もちろん彼らはとても似ている面があるのだけれど・・・
でもどうも女性からしてこの女医にあんまり感情移入出来ないんだな~



・封筒やギブスの使い方はオリジナルのほうが上

オリジナル作品を観た時、封筒の使い方がとても印象的だった。
もちろん今回もそこはうまく利用されているのだが、
例えばビリー(レオ)がコリン(デイモン)を追うシーン。
もちろんハラハラドキドキするのだが、オリジナルでは
ラウ(デイモン役)の封筒をもち歩く時の癖までいかされていた。
ただ封筒を使うだけでなく、性格が出る癖も併用した点は見事だ。
また原作と同様に登場するビリー(レオ)の手にはめられたギブス。
これもまたオリジナルでは通信手段という驚くべき利用方法で使用される。
だが今回はあまり意味がない。
なんだ~とちょっと残念な気が・・・ま、そのままってのも能がないのだけれど。



と、色々思う事はあるが、どちらの作品も面白いことに変わりはない。
世界を魅了した脚本をアメリカンスパイスを加え見事に料理した
これまた美味な作品なのだ。



(2006年・アメリカ映画)


(芝田 佳織)


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2006年 映画-CANアウォード~洋画編~

2006年もたくさんの映画に出逢いました。
その中で、私たち2人の心に特に深く残った作品を、ベスト5として発表します!


1位 クラッシュ(芝田・川口共に)
東宝クラッシュ

☆差別、偏見、貧困。様々な問題を含んでいるが、本当の幸せとは何かを
考えさせられる作品だった。
希望がないという人もいたが、私はそう思えなかった。
見事に計算された群像劇に涙が止まらなかった。(芝田)

☆一触即発。普段交わることの無い人種が、ふとしたことで関わり合った途端、
何かが爆発する危険をはらんだ街・ロサンゼルス。
それはまるで、地球全体をコンパクトに映し出したよう。
多様な登場人物を巧みに操り、それぞれに強烈なドラマを創り出した
ポール・ハギス監督のこれからも楽しみ。(川口)


2位 ホテル・ルワンダ(芝田)、グエムル/漢江の怪物 (川口)
ジェネオン エンタテインメントホテル・ルワンダ プレミアム・エディション
ハピネット・ピクチャーズ
グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション

☆権力も力もない、ごく普通の男が愛と命をかけて闘う姿に胸が熱くなった。
ドン・チードルの演技が素晴らしい。
アフリカのルワンダで実際に起こった大量虐殺を扱った作品。
この映画は観なければ、知らなければならない映画だと思う。(芝田)

☆パニック映画だからといって、単なるエンターテインメントに留まらせず、
人間の愚かさや本質をとことんブラックに描いてみせたところが快感!
映画館でもっと爆笑が聞きたかった。(川口)


3位 カサノバ(芝田)、ホテル・ルワンダ(川口)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントカサノバ

☆面白かった~!
次々とピンチに追い込まれるカサノバがどう切り抜けるか、ハラハラドキドキし、
想像がつかなかった。
考えつくされたシナリオに感激。
幸せな気分に浸りたい時、オススメの作品!(芝田)

☆また一つ、知らなかった悲しい現実を映画に教えてもらった。
日本で公開される予定の無かったこの作品が、上映を望む多くの声に押されて
日の目を見たという経緯が、映画ファンとしてたまらなく嬉しい。(川口)


4位 父親たちの星条旗(芝田)、硫黄島からの手紙 (川口)
ジェームズ・ブラッドレー, 大島 英美父親たちの星条旗
栗林 忠道, 半藤 一利栗林忠道 硫黄島からの手紙

☆さすがイーストウッド。
戦争で英雄扱いされたことにより運命を翻弄される若者たちを描く。
硫黄島二部作により、若者に戦争を知ってもらえる機会が出来た事は
何よりも素晴らしいことだと思う。
特に、「父親たちの星条旗」は闘いよりも、人々の心の部分を描いている点で
「硫黄島からの手紙」よりも好印象。
どちらにしても双方の視点から描く試みは素晴らしいと思う。(芝田)

☆恥ずかしながら、硫黄島での激戦は、イーストウッドに教えられて初めて知った。
私のような人がたくさんいるというだけでも、この映画には意義が有ったと思う。
派手な戦闘シーンの為に作られた映画ではなく、同じ人間同士が
殺し合わなければならない残酷さ、悲しさを伝えようという姿勢に好感が持てる。(川口)


5位 玲玲(リンリン)の電影日記(芝田)、プライドと偏見(川口)
ビデオメーカー玲玲の電影日記
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンプライドと偏見


☆出来はさておき?心に残る作品だった。
監督は1972年生まれでこの作品が初メガホンとなる女性監督。
母親の再婚による孤独、父が違う弟への嫉妬。
そんな少女と親の「愛と確執」を描いた作品。
文化大革命世代の話であるが、設定は現代にも通じる。
決して暗い話ではなく、心温まる作品に仕上げた点もお気に入り。(芝田)

☆ジェーン・オースティンの原作ファンとして、小説の持つ雰囲気やアイロニーを
忠実に再現してくれたことに拍手。
キャストはいずれもぴったりハマっていたが、特に、無愛想な風貌の下に深い愛情を
隠し持つダーシー氏を演じた、ほとんど無名のマシュー・マクファディンは見事。(川口)




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池内博之監督トーク・イベント開催決定!

関西にお住まいの映画ファンの皆様に、ステキなイベントのお知らせです。
「チキン・ハート」「ロックンロールミシン」「全身と小指」などの映画を初め、
数々のテレビドラマや舞台でご活躍の俳優・池内博之さんが初めてメガホンを取った、
切ないラブストーリー「13の月」(主演:柏原崇、大塚寧々)。
東京では9月に公開されたこの作品を、映画専門フリーペーパー「CINE REFLET」
発行1周年記念イベントとして、関西初上映する事になりました!

1日だけの貴重な限定公開に、なんと池内監督をお招きしてのティーチインも決定!!
映画製作のエピソードや、皆様からの質問コーナーなどで、
楽しいひとときをお届けします。
皆様のお越しを、心からお待ちしております!!

日時:1月21日(日) 1部…12:15開場、13:00開演
              2部…16:15開場、17:00開演
場所:Flamingo the Arusha(大阪市浪速区桜川1-7-27)
    http://www.flmg.jp/index.html
料金:前売3,000円、当日3500円(1ドリンク&1デザート付)
    予約順に入場整理番号を発行致します
ご予約・お問い合わせ:TEL 06-6567-4949(Flamingo the Arusha)にて発売中!

映画「13の月」HP→http://cinemaparadise.co.jp/jusannotsuki/




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王の男

サントラ王の男 オリジナル・サウンドトラック(DVD付)


500年前も今も決して変わることのない事実。
それは人は生まれ持って「運命」を背負い生きていること、そして
人はいつの時代もその「運命」に逆らい生きていること……


第19回東京国際映画祭でオープニングナイトを飾った「王の男」。
この冬大注目作品の一つである韓国映画がついに日本上陸!

韓国で1,300万人を動員、韓国のアカデミー賞とも言われる
大鐘賞で監督賞・作品賞を含む史上最多の10部門を受賞。
そんな輝かしい実績をひっさげてやってきたこの作品は
悲恋もの、病気もの、モムチャンもの(肉体美・男前俳優もの)……
そういった韓国映画のイメージを完全に覆し、
男性が観ても十分に満足できる作品に仕上がっている。



16世紀初頭、時は朝鮮王朝の時代。
旅芸人であるチャンセン(カム・ウソン)は幼い頃からの同志である女形の
コンギル(イ・ジュンギ)と共に国一の芸人になるため都である漢陽に向う。
二人は当時の王、ヨンサングン(のちに史上最悪の暴君で有名になる)と
その愛人であるノクスを皮肉った芝居をみせ、たちまち民衆の人気者に。
だが、その芝居が役人に見つかり「王を侮辱した」として死刑を宣告される。
「王が笑えば侮辱にはならない!」
というチャンセンの言葉を聞き、一度のチャンスをもらえるが
「王が笑わなければ死刑」という最大のピンチは変わらない。
二人は何とか王を笑わせることに成功し、宮廷に招き入れられる。

女性よりも美しいコンギルに魅了された王は、コンギルを部屋に呼び
二人だけの時間を過ごすようになる。
コンギルと「兄弟とも家族とも恋人とも言える固い絆」で結ばれていると信じていた
チャンセンは、コンギルを奪われ失意にくれる。
そして宮廷を去ろうと決意するが、時すでに遅し……
彼らを待ち構えていたのは愛憎うずまく悲劇的な運命だった。


原作は「爾(イ)」と呼ばれる舞台劇。
爾(イ)とは朝鮮王朝時代に王から寵愛された者を呼ぶ名である。
舞台のほうはヨンサングンとコンギルが主役であり、チャンセンは脇役。
そのチャンセンを主役として描いている点が舞台との大きな違いだ。


コンギルを演じるイ・ジュンギは今、韓国で一番人気といってもいい俳優。
日本でもすでにファンが多く、数多くのスターが集まった東京国際映画祭でも
一番の歓声を受けていた。
彼の美しさは、あらゆる媒体で知られていることなので
あえて私はカム・ウソンが演じたチャンセンをオススメしたい。


このカム・ウソン。
大鐘賞で主演男優賞を受賞しただけあり演技が最高にうまい。
綱渡りの名手という設定のため、2ヶ月かけて猛特訓を実施。
この綱渡りのシーンは張りつめた緊張感があり、手に汗握るほど迫力がある。
そして何よりも目力がある。
強い意志をもつ眼差し、そしてコンギルを見つめる優しい眼差し。
特にコンギルをみる目は正直「エロイ」。
別に自分が見られているわけではないのに「ドキドキ」する。
とにかく彼の演技は人を惹き付けるのだ。


そしてこの作品の見所は「時代劇でありながら現代を描いているところ」。
いつの時代も人は「組織」という社会の中で生きている。
思い通りにならない中で必死にもがき運命に逆らおうとする。

当時、最も身分が低いとされた芸人でありながら「自由」を求め
必死に運命と闘おうとするチャンセンはまさに「現代」の象徴。
観客は時代劇を見ながら、現代の自分とチャンセンを重ねていく。
自由に生きる姿に憧れ、必死にもがく姿に今の自分を見る。
彼に感情移入し、彼の存在が勇気や力を与えてくれる。
シェイクスピア的な悲劇要素も強く含む作品でもあるが、
チャンセンの生き方に監督からのメッセージを受け取って欲しい。


まるで舞台を観ているかのような視覚的な素晴らしさ、
そして人間の性を描いた奥深い内容……

舞台初日には主演のイ・ジュンギによる東京・大阪での舞台挨拶が決定!
日本でも最も美しい男「イ・ジュンギ」ブームが巻き起こることになるだろう。

キム テウン, 前川 奈緒, チェ ソクファン王の男
映画「王の男」, 冬乃 郁也王の男


(2005年・韓国映画)


芝田 佳織


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硫黄島からの手紙

硫黄島の地中から発見された数百にも及ぶ「届かなかった手紙」。
そこに描かれた出来事は、戦争を知らない若い世代に伝えたい「事実」。
61年の時を経て、今真実が明かされる。


硫黄島……日本の最南端に近い、周囲22キロほどの小さな島。
そこは本土決戦の最後の砦ともいうべき重要な拠点だった。
アメリカがたった5日で終わると考えた闘いは、栗林という一人の指揮官によって
36日にも及ぶ死闘へと展開する。
機知にとんだ作戦、そして何よりも兵士達を勇気付ける熱く優しい心。
愛する者を守る為、一日でも長く闘い続ける……新指揮官の元、
そう誓った若者たちの想いが長い年月を経て私たちの元へ届く。


栗林忠道には渡辺謙。そして二宮和也、加瀬亮、伊原剛志、中村獅童と
日本を代表する豪華キャストが集結。
それぞれが見事に役になりきり、違和感など全く感じさせない演技を披露している。


蜷川幸雄や倉本聡など大物に好かれる二宮和也。
正直言って、めちゃめちゃ男前! ってわけでもなければ、
速水もこみちみたいな完璧なスタイル! という訳でもない。
でも何故、彼が大物に好かれるのか……それはこの映画を観れば
わかってもらえるだろう。
言葉では「こんな島、アメコウにやっちまえよ。やってられねーよ」
と、ふてくされた一面を見せながら、本当は誰よりも繊細で、
愛情深く、利発。
そんな複雑な役をやらせれば、彼よりうまい役者はそういないだろう。
イーストウッドにまで「天才」と言わしめた彼の才能が光る。
(もちろん他の俳優も演技面ではいう事なし)



イーストウッドなので、いかにも「戦争映画」といったスペクタルさや
派手なクライマックスシーンなどはない。
でも地味にえぐい・・・(「父親たちの星条旗」もそうだったが)


ここに描かれているのは私たちが知る「日本兵」ではない。
お国のため、天皇のため、迷いもなく、生きて帰りたいなど言わず、
日本国の勝利を信じて、喜び死んでいく……
でも本当にそうだったのだろうか。
そう伝え聞かされていたからではないだろうか。

彼らはきっと迷い、恐れ、生きたいと願ったはず。
それでも彼らを闘わせたのは「愛する者がいる本土を守りたい」という願い。
そして愛する者を想う気持ちは世界共通。

彼らの生き様は素晴らしい。
でももう二度と繰り返してはならない。
その想いが伝わったなら、世界が決して忘れてはならない「島」を
イーストウッドがアメリカ、日本の双方から描くという試みは
成功したに違いない。



アメリカでの公開も早まり、アカデミーを狙えることとなった本作。
渡辺謙さんだけでなく日本の俳優の素晴らしさが世界中の人々に届く日も
遠くはないと願っている!



追伸:11月17日、大阪で行われた舞台挨拶で伊原剛志がこう言っていた。
「一年前は自分がハリウッド映画に出るなんて思いもよらなかった」と。
舞台に立つ伊原さんはとても自信にあふれ輝いていた。
一年先、どんな自分になるかわからない。
一年先の自分が輝くために、今を一生懸命に頑張るしかない、そう思った瞬間だった。

栗林 忠道, 半藤 一利栗林忠道 硫黄島からの手紙


(2006年・アメリカ映画)

芝田 佳織


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Sad Movie<サッド・ムービー>

燃え尽き、地面に落ちる前のその一瞬に、最高の輝きを放つ線香花火。
4組8人の男女が経験する別れの物語には、そんな切ない美しさが宿る。
主人公たちは皆、私たちと変わらない等身大の今を生きている。
不器用で想いを素直に伝えられなかったり、
一歩前に踏み出す勇気がなかなか出せずにいたり…。


消防士のジヌ(チョン・ウソン)と手話キャスターのスジョン(イム・スジョン)は、
結婚も視野に入れたカップル。
上手くプロポーズのタイミングを図れないジヌの間の悪さに、
いつかいつかと心待ちにしているスジョンはヤキモキしっぱなし。
おまけに、ジヌの仕事に危険が付きまとう事にも不満を感じている。
しかし、仕事への誇りと、彼女への愛、そのどちらか片方を諦めるという選択肢は、
ジヌには無かった…。


いつまで経ってもうだつの上がらないダメ男のハソク(チャ・テヒョン)と、
スーパーで地道に働く堅実派のスッキョン(ソン・テヨン)の気持ちは、
すれ違ってばかり。
ハソクは、どうにかしようと必死になっていたある日、ふとした事から
“別れさせ屋”稼業を思い付き、そこにやり甲斐を見出していくのだが…。


スジョンの妹スウン(シン・ミナ)は、耳が聞こえず、顔に大きな火傷の痕が有るが、
明るい気持ちを忘れずに頑張っている女の子。
そんな彼女の日々の楽しみは、遊園地で着ぐるみのバイトをしている時だけに会える、
似顔絵描きの青年サンギュ(イ・ギウ)との触れ合いだった。
本当の自分をさらけ出して、彼と対面する事が、果たしてスウンに出来るのか?


小学生のフィチャン(ヨ・ジング)は、ママ(ヨム・ジョンア)が
仕事ばかりしているのが気に入らない。
だから、ママの入院は、ママを一人占め出来る嬉しい出来事だった。
赤ちゃんの時、病気になった自分を祈るような気持ちで守ってくれたママ。
今度は僕がママを助けるんだ!と、せっせと看病に訪れるフィチャンの小さな体に、
いつの間にか、ママの大きな愛がしっかりと刻み込まれていく。


韓国映画界の豪華な面々を集めてみせた、魅力的な脚本。
それぞれが一見独立したエピソードだが、少しずつどこかでリンクし合っているのも心憎い。


「号泣してください!」と言わんばかりの予告編を先に観てしまった人は、少しお気の毒。
号泣なんてしなくても良い。
うっすらと浮かんだ涙の向こうに笑顔が滲んで見える、これはそういう趣の作品なのだ。


人は人と関わり合って生きている限り、別れを免れる事は出来ない。
どんな形であれ、それは誰もが経験する事。
だからこそ、いつまでもくよくよせずに、前を向いて歩いて行かなくては――。
別れを軸にしているがゆえに、自分を、相手をちゃんと見つめたいと思い、
また、その時間を持てた事に感謝出来る。
決して“Sad=悲しい”だけではない4つの物語が、心に強さの種を蒔いてくれた。

レントラックジャパンSad DVD もうひとつの Sad Movie <サッド・ムービー>

(2005年・韓国映画)


(川口 桂)




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手紙

兄のせいで全てを失った。
夢も職場も、そして愛する女性さえも。
もしどこかに行けるなら……差別のない国に行きたい。


直樹(山田孝之)はお笑い芸人を目指す青年。
だがその目は暗く、社会から身を潜めるように生きてきた。
直樹の兄(玉山鉄二)は無期懲役の刑罰を受けた「殺人犯」。
両親を早くに亡くし、弟のために働きづめに働いたことにより体を悪くした兄は、
直樹の大学費用を欲しさに豪邸に押し入り、老婦人の胸をあやまって刺してしまう。

兄の罪は自分のせい……
塀の中の兄にとって弟との唯一の繋がりであり、返事を待ちわびる存在である「手紙」。
だがその手紙は直樹にとって、影のように決して逃れることの出来ない呪縛であり、
「罪を犯した家族もまた罪人」という贖罪の念を抱かせるだけの存在でしかない。
その手紙の存在に耐え切れなくなった時、直樹は苦渋の決断を下そうとするが……


毎日、報道される「殺人事件」、そして「犯人の自殺」。
そんな時代だからこそ観て欲しい。
罪を犯すという事はどういうことか、真の償いとは一体何なのか。

自分さえ償えばいいというものでなない。
罪を犯すとは、残された家族の人生をも背負い生きていくこと……


この作品で二枚目俳優ではなく「演技派俳優」としての地位を確立した
玉山鉄二の渾身の演技が私達にそう訴えかける。
どんなに悔いても決して消えることのない罪。
何より大切な弟の「全て」を奪ってしまうのはまぎれもない自分……
その言葉に出来ない想いを演じるタマテツの姿に熱い涙を流す人が溢れたなら、
私は信じたい。この世界もまだ腐ってはいない……と。


重い題材を扱ってはいるが、たくさんのラブストーリーも描いていると
監督が語るように、苦しみだけでなく、希望と愛もしっかりと
描かれている作品。
中でも沢尻エリカ演じる由美子という女性は、暗闇にさす太陽の光のように
温かい。


山田孝之、もうちょっと痩せてくれていたなら……(苦悩している若者にしては
少し太い気が・・・)と個人的には思うけれど、そんな事を差し引いても
若手俳優達の演技力の高さに今年の邦画ランキングでかなりの上位に
入る作品。
この秋は「フラガール」といい「手紙」といい邦画作品に
泣かされっぱなしである。
(この監督は「3年B組、金八先生」を撮った生野慈郎。泣かせる演出が憎い!)

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罪を犯した者やその家族だけでなく、全ての人に伝わるメッセージが
詰まっている。
それはきっと監督のこの言葉でなないだろうか。
「人間って捨てたもんじゃねぇ」……

東野 圭吾手紙





(2006年・日本映画)


(芝田 佳織)


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フラガール

こんなに感情移入し、こんなに胸が熱くなり、
こんなにダンスに魅了され、こんなにすっきりした映画は久しぶり。
はっきりいって……最高!


アカデミー賞外国語映画賞の日本代表に決まった「フラガール」。
この良さが外国で通じるのかは少々不安ではあるが、
ダンスと笑顔は世界共通語。 
きっとラストでは世界中の人々が笑顔&涙 でくちゃくちゃに
なっているはず。



昭和40年、福島県いわき市。
時代の波が押し寄せ閉山の危機に陥る炭鉱の町。
従業員やその家族を救うための起死回生プロジェクトは
「東北にハワイを作る」事だった。
この街から抜け出したい、家族のために働かなければならない、
様々な事情を抱えた少女達は常磐ハワイアンセンターのダンサー募集に応募する。
彼女達をプロのダンサーに育てて欲しいと頼まれ、
東京からやってきた元プロダンサー・平山まどかはあまりのド素人の集まりに
「あんた達には一生無理よ」といい放つ。
だが彼女たちの情熱はまどかも、いや時代の変化についていけない大人達をも
変えようとしていた……


この映画は「ダンスが出来ない素人集団がラストには素晴らしい演技をみせる!」
といったよくあるスポ根、サクセスストーリーではない。
もちろんそういった要素もあるのだが、登場人物たちの抱える背景、
時代、彼女達によって変わっていく周りの人々の心、
何よりもフラガールたちの表情や心の変化を感じて欲しい作品である。



「自分の人生は自分で決めたい」「夢を持ちたい」

そんな当たり前の事が当たり前じゃなかった時代に生きた女性たち。
彼女達を観ていると、何でも好きなことをやれる時代に生きながら
少しうまくいかないだけで諦めたり、いい訳している自分が情けなくなる。
何やってんだ?私……もっともっと頑張れよ。
無理なんて決め付けていては決して変わる事など出来ないんだから。



フラガールズのリーダー紀美子(蒼井優)の兄を演じる豊川悦司が
「女は強えな」という様に、女性の魅力がたっぷり詰まった作品。
蒼井優はもちろん「しずちゃん(南海キャンディーズ)」の存在感も素晴らしい。


特に松雪泰子扮する平山まどかが
「女はこうあるべき!」といった古い考えの紀美子の母に、
「あんたみたいなおばさんがいるから、いつまでたっても女は男の下なんだよ」
と啖呵を切るシーンや、教え子の1人が、娘がフラガールになることを
快く思っていない父親に顔がはれるほど殴られた事を知り、
男風呂まで殴りこみにいくシーンはみていてとっても気持ちいい
(男性の皆様 すみません)。
でもトヨエツを通じて男性の優しさ、強さといった魅力も
しっかりと描かれているのでお許しを??



フラガールたちの踊りはきっとあなたの中の何かを変えるはず。
いくぞ!と大きな声を出し、笑顔を作って、背筋をピンと伸ばしたら
(フラの基本だ)きっと明日の自分は変えられる。
さあ、フラガールたちの魂のフラをとくとご覧あれ!

ジェイク・シマブクロ, サントラ, ナレオフラガール




(2006年・日本映画)


(芝田 佳織)


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ワールド・トレード・センター

2001年9月11日……人は多数の人命を奪った。
2001年9月11日……人は多数の人命を救った。


「悲劇」の中に差し込んだ一筋の「光」を描いたオリバー・ストーン監督最新作。


2機の旅客機がW・T・Cに激突し、アメリカの「力」の象徴であった巨大なビルは、
まるで砂で造った城のように脆くも崩れ落ちた。

逃げ惑う人々、地獄絵の様な地上の下でジョン・マクローリンとウィル・ヒメノ
という二人の警官が、倒壊した瓦礫の下敷きになりもがいていた。
どんなに叫んでも届かない声。
身動き一つ出来ない中で、二人は命の糸を繋ごうと必死に励ましあう。
もう一度、愛する家族に会いたい……その希望だけが彼らの「糸」だった……



人間の「悪の象徴」ともいえるこの惨事の中で、人を救う事ができるのは
人だけなのだという人間の「善」を力強く描いた作品。
警官二人は実在の人物であり、彼らが「95%真実だ」と語るほど忠実に描かれている。

ジョンを演じるのはニコラス・ケイジ(めっちゃ痩せてるけど大丈夫か?)、
ヒメノを演じるのはマイケル・ペーニャ。
はっきり言って、二人はかなり早い目で生き埋めされてしまうわけであり、
暗闇の中、瓦礫の下で声と表情だけの長時間の演技は困難極まりなかっただろう。
しかし彼らだからこそ、ここまで惹きつけられるのだといえる素晴らしい
演技をみせてくれている。


数千人の命が犠牲となったあの日。
たった2人の命を描くだけで、あの瞬間に生きた人々の全ての命の尊さが伝わってくる。
そしてあの日、あの瞬間、犠牲となったのは数字に残る人数だけではなく、
彼らを愛した無数の人々も含まれるのだという事も。


今年は「9.11」を描いた作品が立て続けにやってくる。
先ほど公開された「ユナイテッド93」との大きな違いは
モデルとなった人々の結末が「生」か「死」かという事かもしれない。
「ワールド・トレード・センター」の2人の警官が救出される瞬間は
本当に胸が熱くなり、人々の勇気と強さに涙が溢れた。

だが、この映画を遺族はどんな想いで見つめるのだろう。
自分の身内の生存を知り、大喜びする家族の隣で、
家族の死と直面する黒人女性の姿が今でも私の心から離れない。



(2006年・アメリカ映画)


(芝田 佳織)


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