科学技術白書は、2000年まで科学技術庁、2001年からは文部科学省が毎年発行している、日本の科学技術に関する白書です。日本の科学技術を取り巻く環境の変化、技術開発の展開状況、科学技術発展のための施策等を報告しています。また、文部科学省科学技術・学術政策研究所は5年ごとに、20年後に実現する科学技術を予測する調査を行っています。

 

「科学技術が広げる未来社会の可能性と選択肢」と題した2020年版科学技術白書文部科学省がまとめ、政府が6月16日に閣議決定しました。白書は2部構成で第1部の冒頭、新型コロナウイルスについて、短期間に感染が世界中に拡大したことの背景には人々の活動のグローバル化があり、流行を克服するためには科学技術の英知を集めることが不可欠だとしています。

 

第1部 科学技術が広げる未来社会の可能性と選択肢

はじめに 新型コロナウイルス感染症の流⾏について

第1章 科学技術に関する未来予測の取組

第2章 2040年の未来予測~科学技術が広げる未来社会(Society5.0)

第3章 未来社会に向けた研究開発等の政府の関連する取組

特別寄稿 旭化成株式会社名誉フェロー 吉野彰氏

第2部 科学技術の振興に関して講じた施策、身近な科学技術の成果(コラム)

 

文部科学省は1970年代からほぼ5年ごとに科学技術予測調査を実施しており、これまでに壁掛けテレビ(77年予測)や携帯電話(82年)などを的中させ、その的中率はおよそ7割と言われています。

2020年版白書は、昨年11月に公表した第11回科学技術予測調査を引用、46の科学技術が利用されている未来として「人間性の再興・再考による柔軟な社会」が実現するとしました。

 

 

これらの技術の中から医療や介護、福祉に関係するものを抜粋してみます。

 

①個人・無形~人間らしさを再考し、多様性を認め共生する社会

A1.超軽量感染症センサー 技術的実現2029→社会的実現2031

特定の感染症への感染の有無や感染者の他者への感染性、未感染者の感受性を迅速に検知・判定する、汚染区域や航空機内等でも使用可能な超軽量センサー

A3.意思伝達装置 2031→2034

発話ができない人や動物が言語表現を理解したり、自分の意志を言語にして表現したりすることができるポータブル会話装置

A4.遠隔治療 2026→2030

病変部位の迅速識別能力の向上と早期発見が可能となる、非侵襲診断機器のコンパクト化とAI導入

遠隔で、認知症などの治療や介護が可能になる超分散ホスピタルシステム(自宅、クリニック、拠点病院との地域ネットワーク)

A7.安心な道案内 2025→2028

高齢者や視覚障がい者が安心して自由に行動できる情報を提供するナビゲーションシステム

 

②社会・無形~リアルとバーチャルの調和が進んだ柔軟な社会

B4.心身のサポート 2029→2032

運動や記憶、情報処理、自然治癒など、人の心身における各種能力を加速・サポートするための、センシング・情報処理・アクチュエーション機能が統合された超小型HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)デバイス

 

③個人・有形~人間機能の維持回復とデジタルアシスタントの融合による「個性」が拡張した社会

C1.早期診断 2027→2029

血液による、がんや認知症の早期診断・病態モニタリング

C4.臓器の3Dプリント 2031→2034

3Dプリント技術を用いた再生組織・臓器の製造(バイオファブリケーション)

C5.生体融合義体 2029→2036

すべての皮膚感覚の脳へのフィードバック機能を備えた義手

ナノテクノロジーによる生体人工物界面制御の精密化に基づく、高機能インプラント機器やドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を可能とする高度な生体適合性材料

C6.体内監視デバイス 2028→2031

薬物動態・がんマーカー・感染・血液成分をモニタリングするウェアデバイス

 

私も、科学技術・イノベーション戦略調査会等における、ポストコロナを踏まえた科学技術の推進に関する議論に参加しています。新型コロナウイルス感染症は現在、健康だけでなく、経済・政治上にも様々な歪みを生じさせていますが、制度や習慣等を変えるチャンスでもあります。新型コロナで得た経験が、ポストコロナ社会の産業界に大きな影響を与えることは必至ですが、逆に国民の皆さまがより安心して暮らせる社会にしていくビジョンを描き、この先の政策立案に取り組んでいきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

合計特殊出生率とは、1人の女性が出産期と想定した15歳から49歳までに産む子どもの平均的な人数を指します。年齢構成の違い等を取り除いた指標であり、過去のデータや海外との比較が可能になっています。

 

厚生労働省が6月5日に発表した人口動態統計によれば、2019年の合計特殊出生率は1.36と、前年比0.06ポイント低下しました。合計特殊出生率は2005年に1.26で底を打った後、団塊ジュニアが出産適齢期に入ったために2015年の1.45まで上昇していましたが、それ以降は再び低下傾向に転じています。

(資料)内閣府「少子化社会対策白書(令和元年度版)」

 

この背景には未婚化の進行があります。下図は50歳時の未婚割合(45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均)を見たもので、1970年は男性1.7%、女性3.3%に過ぎませんでしたが、その後、男性は一貫して上昇、女性は1990年までの横ばい以降上昇を続け、2015年には男性23.4%、女性14.1%に達しています。

 

図: 50歳時の未婚割合の推移と将来推計

(資料)内閣府「少子化社会対策白書(令和元年度版)」

 

こうした中、政府は5月末、2025年までの「第4次少子化社会対策大綱」を閣議決定しました。2019年の出生数減少を「86万ショック」と呼び、基本的な目標である「希望出生率1.8」を再確認しています。

 

 

大綱では、少子化対策の基本的な考え方として以下の5点を掲げています。

1.結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる

・若い世代が将来に展望を持てる雇用環境等の整備

・結婚を希望する者への支援

・男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備

・子育て等により離職した女性の再就職支援、地域活動への参画支援

・男性の家事・育児参画の促進

・働き方改革と暮らし方改革

2.多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える

・子育てに関する支援(経済的支援、心理的・肉体的負担の軽減等)

・在宅子育て家庭に対する支援

・多子世帯、多胎児を育てる家庭に対する支援

・妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援

・子育ての担い手の多様化と世代間での助け合い

3.地域の実情に応じたきめ細かな取組を進める

・結婚、子育てに関する地方公共団体の取組に対する支援

・地方創生と連携した取組の推進

4.結婚、妊娠・出産、子供・子育てに温かい社会をつくる

・結婚を希望する人を応援し、子育て世帯をやさしく包み込む社会的機運の醸成

・妊娠中の方や子供連れに優しい施設や外出しやすい環境の整備

・結婚、妊娠・出産、子供・子育てに関する効果的な情報発信

5.科学技術の成果など新たなリソース を積極的に活用する

・結婚支援・子育て分野におけるICTやAI等の科学技術の成果の活用促進

 

少子化に対しては国も様々な施策を講じてきていますが、それでも合計特殊出生率が1.36まで低下するなど厳しい状況が続いています。一億総活躍関連の会議等でも発言してまいりましたが、私は、子ども1人の出産に1,000万円の手当を支給する(地方移住して子育てする場合はプラス1,000万円)くらいの思い切った支援策を検討するべきではないかと考えています。年間の出産数が100万人まで増加しても予算は10兆円程度であり、日本の将来に向けた根幹的な投資と考えれば決して過剰ではないと思います。

このところの新型コロナウイルス感染症の拡大は子育て世帯にも大きな負担増をもたらしています。学校や保育園、幼稚園が休みとなり仕事に影響が出るほか、休校中は比較的安価な給食がなくなったことも家計を圧迫しているとの声を多く聞きます。こうした世帯への支援として、政府は、児童手当を受給する世帯(0歳~中学生のいる世帯)を対象に児童1人1万円の臨時特別給付金の支給を開始しました。私も、ポストコロナ社会における少子化対策のあり方について真剣に考えていきたいと思います。

 

 

 

 

 

雇用調整助成金は、新型コロナウイルス等により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が労働者を休業させる場合に、支払った休業手当の一定割合を国が助成する制度です。今般、この制度が改正され、これまで事業主企業に支払われていた助成金を労働者個人に直接支払うことが可能になるほか、対象外だったパート勤務者等にも助成金が支払われることになりました。なお、フリーランスや一人親方のように雇用保険に入っていない人については、事業継続を下支えする助成として持続化給付金が用意されています。

6月12日、2020年度第2次補正予算が成立しました。新型コロナウイルス対策で雇用を守る政策として最も重要な支援が雇用調整助成金です。期待が大きい一方で、助成額の水準や申請手続きの煩雑さ等に批判があり、雇用保険法とは別に「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律案」が制定されました。


(資料)2020年5月26日 職業安定分科会雇用保険部会

改正の制度趣旨は、新型コロナウイルス感染症による国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにするため、これまでの各般の措置の影響により休業させられた労働者のうち、休業中に賃金を受けることができなかった方に対して、雇用保険法に基づく雇用安定事業として当該労働者の失業の予防を図るための必要な事業等を行うことができるとするものです。
内容は大きく、①休業中の方への対応、②失業中の方への対応、③財政面の対応の3つのパーツに分かれますが、①と②について簡単にご説明します。

1.休業中の方への対応~休業手当を受けることができない労働者に関する新たな給付制度


(資料)2020年5月26日 職業安定分科会雇用保険部会

まず、雇用調整助成金について、これまでの1日当たり上限額8,330円を1万5000円・月額33万円に引き上げます。そして、上図の右上赤字に「新型コロナ対応休業支援金」とありますが、休業中に休業手当を受けられない方に対する個人給付を実施します。財源は、上図の青い部分が雇用保険料、オレンジ色の部分が一般会計であり、4月1日から9月30日まで実施するものとして第2次補正予算に計上されました。
また、グレーの枠で囲まれている部分が雇用保険被保険者になりますが、枠外の雇用保険被保険者ではない方についても、一般会計により被保険者に準じて個人給付金が支給されます。具体的には、週20時間未満のパート勤務の方等が対象で、フリーランスの方は雇用されていないので対象外となります(持続化給付金で助成)。

2.失業中の方への対応~基本手当の給付日数の延長
求職活動の長期化に対応するもので、雇用保険法における災害時の個別延長給付をベースに制度設計されています。対象者は大きく次の3類型になります。
①緊急事態宣言の発令以前の失業
緊急事態宣言期間中に就職活動が制限されたということで、受給資格を問われず延長給付の対象となります。
②緊急事態宣言の発令中の失業
特定受給資格者ないし特定理由離職者、すなわち何らかの事情があって離職された方を対象とし、純粋な自己都合の離職は対象になりません。特定理由に限定はなく、例えば転居や婚姻等何らか事情があって自身の判断で離職された方も含まれます。
③緊急事態宣言解除後の失業
いわゆる雇い止めが理由の特定理由離職者、特定受給資格者で新型コロナウイルスの影響により離職を余儀なくされた方が対象になります。
なお、延長する日数は災害時と同様、原則60日です。

国民の皆様の雇用を守るという観点から、雇用調整助成金制度の拡充は最も重視すべき政策です。私は、制度やシステムを構築する際には、早くてフェアでリーズナブルであるべきだと考えていますが、この臨時特例実施には最大限のスピード感をもって取り組んでいきたいと思います。

 

団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて医療と介護の体制づくりが全国で進められています。地域医療構想は、2025年における医療ニーズを高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの医療機能ごとに推計し、それに対応する医療体制をつくるため、地域の関係者が協力して医療機関の役割分担や連携の仕組みを構築する取組みです。

厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ(WG)」における議論が、半年ぶりに再開されました。WGはこれまで、急性期機能に着目した公立・公的医療機関の診療実績を分析、2019年9月に再検証対象医療機関を公表しました。
これを受けて、加藤厚労大臣は2019年12月の経済財政諮問会議において、「地域医療構想は、今回、公表を踏まえた公立・公的医療機関の着実な改革が重要で、進捗状況を逐次把握しながら、必要な支援を行いたい。また、民間の医療機関の議論についても進めていく必要がある。公立・公的の医療機関に行った機能に焦点を当てた分析と同じように、今年度できるだけ早期に、民間の特性に応じた、新たな観点を加えた分析の検討を行いたい。また、ダウンサイジング支援の追加的方策の検討や総合確保基金のメリハリ付けも実施をしていきたい。」と発言されました。
今回のWGでは、「新たな観点を加えた分析」について課題が示されました。
●高度急性期・急性期
①手術の一部や内科的な診療実績が分析に含まれていない。
②医療機関あたりの分析を実施しているが、病床あたりの分析など病床規模を勘案した分析になっていない。
③人口が特に減少する区域に着目するなど踏み込んだ分析が必要ではないか。 例えば、②の病床あたりの実績を見ると、グラフの左上のように、小規模でも極めて生産性の高い病院があることが指摘されています。

 



また、③の人口動態を見ると、人口の少ない地域では2040年度にかけて急激に人口が減少し、病床過剰に見舞われることが分かります。


●回復期
回復期機能とは、「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能」を指します。具体的には、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟、一部13:1・15:1の一般病棟があります。回復期の課題としては次の2点が指摘されています。
①回復期医療における回復期リハビリテーション機能と「それ以外の機能」を比較すると、患者の病状や流入経路、提供している医療の内容が一定程度異なる。
②回復期機能は民間が主に担うことができると考えられるが、構想区域によっては公立・公的医療機関等が担わざるを得ない場合がある。

 



●慢性期
慢性期においては、介護保険施設等への転換について、どのような推進要因、阻害要因があるかを踏まえて転換の意向・転換の状況をモニタリングし、必要な対策を行うべきではないか。

公立病院への補助金の繰入金額は年間8,000億円程度に及んでいます。私は、経営指標も含め、公立病院と民間病院で共通のインディケータを用いて病床機能等を比較してイコールフッティングの見地から医療提供体制を決めていくべきだと考えています。

WGでは、骨太方針2020の策定時期を目途に、2025年までの地域医療構想全体をより具体的にどう実行していくのか、工程表の作成等を進めていくことになります。引き続き、WGにおける議論を注視していきたいと思います。

 

今週は6月3日の経済産業委員会に出席、一般質疑において、国会における通算14回目の質問の機会をいただきました。経済産業委員会では初めての質問であり、私自身の医療機関および介護事業所の経営者という背景と、国政に出てから国民にとって質の高い医療の提供、持続可能な医療介護制度、産業としての医療の発展に取り組んできたことをご説明した上で、下記の3点を質問しました。

 

1.災害時の支援策について

全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人協会3つの病院団体が行った、1,317病院を対象にした「病院経営状況緊急調査」の結果をみると、2020年4月は外来患者・入院患者とも大幅に減少、経営状況は著しく悪化したとのこと。とりわけ新型コロナ患者受入病院では,医業利益率(一般企業の営業利益率)が昨年4月の+1.2%から、今年4月は▲10.8%と一転して大幅赤字に陥っており、特に東京等の大都市部では、まさに壊滅的なダメージを負っている。新型コロナウイルス対応を含め、災害対応に際して、地域の医療機関や介護事業所が使うことのできる支援策はどのようなものがあるのか。

(資料)「新型コロナウイルス感染拡大による 病院経営状況緊急調査」

         2020年5月27日 日本病院会・日本医療法人協会・全日本病院協会

(回答)経済産業省では、大規模災害の復興に向けて「グループ補助金」を用意しているほか、「災害貸付」により資金繰りの支援を行っている。新型コロナ関連では、「持続化給付金」や「最大5年間の無利子・無担保融資」を制度化、要件を満たせば、医療機関や介護事業所も活用することができる。

 

2.BCP(Business Continuity Plan)について

政府の支援策はもちろん、企業の自主的な努力という意味でBCP計画を立てていくことも大事だと考える。その重要性を企業は認識していると思うが、実際にBCP計画が役に立った事例があれば教えてほしい。

(回答)

過去の経験を活かし、受電設備を高所に移設することで水害による被害を避けることができた事例がある。昨年施行された「中小企業強靭化法」において、企業の防災に関する取り組みを「事業継続力強化計画」として認定することで支援しており、9ヵ月間で7,000件を超える認定がある。

 

3.オンライン健康管理について

従業員の健康維持・管理の観点から、今回の新型コロナの状況下でオンラインによる健康相談のニーズが高まっていると聞いている。経済産業省における取り組み内容はどうなっているか。

(回答)新型コロナウイルスを契機に、健康不安を解消したいという相談ニーズが増えていると認識している。2月の新型コロナウイルス感染症対策基本方針を受けて、補正予算により「遠隔健康相談窓口」の開設を進めている。LINEヘルスケア、Mediplat、Kids Public、セイフティーネット4社の民間企業と提携し、オンラインの遠隔相談サービスを展開している。

←2018年度診療報酬でオンライン診療料(1月71点)が新設されましたが、かかりつけ医や産業医が積極的にオンライン診療を行うには決して充分な点数ではなく、オンライン診療・相談を推進していく上でさらなる診療報酬による評価を実施していく必要があると考えています。

 

経済産業委員会では、新型コロナウイルスによる経済的ダメージについて多くの議論がありました。融資の相談件数はリーマンショック時より多くなっています。医療機関や介護事業所も大変ですが、ホテル業界では客室稼働率が4月に16.6%まで落ち込んだというデータも示されました。医療・介護やホテルを含め様々な業界で持続化給付金の活用が進んでいます。当該給付金は、感染症拡大を受けた営業自粛等により特に大きな影響を受けた事業者に対して、事業の継続を支え再起の糧としていただくため、事業活動全般に広く使えるものです。

 

私は、制度やシステムを構築する際には、早くてフェアでリーズナブルであることが重要だと考えています。経済的支援が迅速かつ適切に実施されるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。

 

 

 

先週は、5月20日の厚生労働委員会における「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」に関する質問についてご報告いたしました。それ以外に、令和2年通常国会には厚生労働省から以下の3本の改正法案が提出されています。

1.労働基準法の一部を改正する法律案
【制度趣旨】
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)により、使用人の給料に係る短期消滅時効が廃止されることや、労働政策審議会の建議等を踏まえ、労働基準法における賃金請求権の消滅時効期間等を延長する(経過措置あり)。


消滅時効とは、請求できるのに請求しない場合に権利を消滅させる制度ですが、2020年4月の改正民法の施行に伴い、債権の消滅時効が原則5年に統一されました(それまでは飲み屋のツケは1年、工事請負代金は3年など債権の種類でバラバラでした)。これを受けて、未払いの賃金の請求権についても、消滅時効期間が従来の3年から5年へと延長されました(当分の間は3年の経過措置)。雇い主においては、これまでの未払賃金を可能な限り清算しておく、今後未払賃金を生じさせないために労働時間制や勤怠管理を見直す、といった対策が求められます。

2.雇用保険法等の一部を改正する法律案
【制度趣旨】
高齢者、複数就業者等に対応したセーフティネットの整備、就業機会の確保等を図る。
●失業者、育児休業者等への給付等を行う基盤となる雇用保険制度の安定的な運営等を図るため、育児休業給付の区分経理等の財政運営の見直しを行う。

 

 

雇用保険法を巡っては、議論すべき課題が多く残されています。フリーランスや一人親方には雇用保険が適用されないケースがあります。高齢者の就業支援を進めることは大事ですが、高齢者の場合、仕事中に転倒・転落でケガをする可能性もあり、安全策を合わせて検討する必要があります。有償ボランティアへのきめ細かい対応も求められます。雇用問題と同時に議論すべき働き方改革では、生産性の向上や成果主義に基づく人事考課の理解を深めていく。医師については、他業種とはやや異なる職場環境や、副業・兼業のあり方も考えていかなければなりません。

3.年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案
【制度趣旨】
より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等を行う。

 



年金法改正案の3つの柱は、①被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大ですが、改正の度に仕組みが複雑化し、厚労関係の雑誌でも特集が組まれるほどです。多くの国民の方々にとって安心で分かりやすい年金制度にしていくことが重要です。私は、フェア・リーズナブル・シンプルという観点から、年金制度を縦は給付、横は被保険者、斜めは国の経済状態の3軸で整理したらよいと考えています。今後は、人生100年時代の中で、在職老齢年金についても議論を深めていくことが肝要です。

今国会での法改正により、少子化対策としての育児休業制度の充実、高齢者が働き続けやすい雇用環境の整備や年金制度の柔軟化等が進展することが見込まれます。いよいよ医療保険・介護保険制度の改革に入っていきますが、「負担と給付のバランス」という難題を解決する必要があります。さらに、ポストコロナ社会における社会保障のあり方についても真剣に議論していきたいと思います。


 

今週は5月20日の厚生労働委員会に出席、国会における通算13回目の質問の機会をいただきました。

今回は「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」について質問いたしました。

 


(出所)厚生労働省ホームページ

今般の改正の趣旨は、地域共生社会の実現を図るため、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点から、市町村の包括的な支援体制の構築の支援、地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進、医療・介護のデータ基盤の整備の推進、介護人材確保及び業務効率化の取組の強化、社会福祉連携推進法人制度の創設等を行う、というものです。

概要は上表の通りですが、私からは次の4点に関して質問させていただきました。
1.地域共生社会について
今回の法案では、地域住民の複雑化・複合化したニーズに対応すべく、福祉サービスの整備を進めていくとされており、「地域共生社会」を目指すとしているが、国民にとって「地域共生社会」という言葉はまだまだ馴染みの薄いものである。医療・介護の現場においてさえ、「地域包括ケアシステム」という考え方が一般的であり、「地域共生社会」は多くの従事者にとって聞きなれない言葉となっている。このように「地域共生社会」という言葉の浸透具合が気になるところであるが、政府の考える「地域共生社会」とはどのようなものなのか、改めて見解をお伺いしたい。
 

2.介護人材確保について
介護人材を確保していく上で、今後、世代や職業、人種を問わず様々な方が従事できる仕組み作りが重要である。例えば「介護助手」に関して、元気な高齢者はもちろん、今回の新型コロナウイルス関連で失業された人、アルバイトを失った学生等に加わっていただくのも方策の1つである。介護助手の導入は離職率減少やモチベーションアップにつながるというデータもあり、介護助手を活用した取り組みは約半数の都道府県に広がっている。このような「介護助手」の活用について、今後どのように考えているか
また、外国人労働者の介護分野での活躍も大きな流れである。この点、看護師国家試験に不合格となったEPA看護師候補者や、在留期間を満了した外国人准看護師(4年間)について、例えば特定技能1号に円滑に移行できるように現行制度で必要とされる試験の合格を免除するなど、介護人材として引き続き働いてもらえる仕組みを検討したらいかがか。政府の見解をお伺いしたい。

3.認知症施策の総合的な推進について
認知症で身体合併症を持つ患者への対応を行う急性期病院等では、身体合併症を優先しがちで、不要な身体抑制や排尿バルーン導入等、認知症への適切な対応が行われずADLやQOLの低下につながるケースも多い。また、介護の現場においても、介護職の認知症への対応が不十分な事例もあると聞いている。
このため、認知症の方を支援する医療職・介護職等の人材養成が重要で、「ほっておかないケア」を進めていくなど質の向上を図っていくべきと考える。また、医療・介護現場に限らず、地域で認知症の人を支える人材を確保していくことも重要と考える。今回の法案はこうした状況に対してどのように寄与するのか。

4.医療・介護のデータ基盤整備について
質の高い医療や介護サービスを提供していくためにも、医療・介護のデータ基盤を整備していくことは重要である。一方、現場としては、データの電子化自体にまだまだハードルがあると考えるが、政府ではどのように考えているのか。
また、介護データにおいては、リハビリに関するVISIT情報や高齢者ケアのCHASE情報等が収集されていくことに加えて、ケアマネが扱う情報も今後ますます重要となってくる。そうしたデータについて是非とも、集めるだけでなく現場にフィードバックして活かす仕組みを作ることが重要だと考えるが、政府のお考えをお伺いしたい。

質問はしませんでしたが、社会福祉法の改正により「社会福祉連携推進法人」が創設される予定です。将来的にはさらに踏み込んで、既存の地域医療連携推進法人との連携(統合)も検討し、例えば「福祉医療連携推進法人」という医療・介護・福祉を一体的に提供できる仕組み作りにつなげていけたらと考えています。データに関しても、医療や介護だけでなく、障害者・福祉といった情報を加えた一体的なシステムとして構築していく必要があります。
地域共生社会を実現することで、これまでの縦割り行政の弊害、すなわち国民がワンストップで相談できないという課題が改善されていくと期待しています。新型コロナウイルスの流行下でも、医療や介護に関する相談にとどまらず、自宅で過ごす機会が増えたために、児童虐待や高齢者虐待、DV等の相談、その他生活に付随した様々な相談が持ち掛けられています。今後、国民からのニーズはより一層高まることは確実であり、地域共生社会の構築に向けて取り組んでいきたいと思います。


 

医師や看護師等の医療従事者、保健所や清掃工場等の公務員、流通を担う物流業者、スーパーやドラッグストア等の販売員、バスや地下鉄等公共交通機関の職員など、新型コロナウイルス対策の最前線で働く、すべてのエッセンシャル・ワーカーの方々に深く感謝と敬意を表します。

先週は、新型コロナウイルス感染が拡大する中で雇用を維持するための「雇用調整助成金の特例措置」について述べました。今週は、公的な支援策としての融資制度と給付金の主なものをまとめてみました。

 

1.融資制度

制度

融資対象

限度額

金利等

新型コロナウイルス感染症特別貸付

最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%

3億円

当初3年間基準金利▲0.9%

商工中金による危機対応融資

最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%

3億円

当初3年間基準金利▲0.9%

新型コロナウイルス対策マル経融資

最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%

1,000万円

当初3年間基準金利▲0.9%

生活衛生新型コロナウイルス感染症特別融資

最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%の生活衛生事業者

6,000万円

当初3年間基準金利▲0.9%(3,000万円限度)

新型コロナウイルス対策衛経融資

最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%の生活衛生事業者

1,000万円

当初3年間基準金利▲0.9%(3,000万円限度)

特別利子補給制度(実質無利子)

個人:要件なし

小規模:▲15%

中小:▲20%

1億円

借入後当初3年間

 

日本政策金融公庫商工中金では、既存の制度融資をベースに、新型コロナウイルス感染症による影響を受けて業況が悪化(最近1ヵ月の売上高が前年比▲5%以上)した事業者に対し、特別な融資による資金繰り支援を実施しています。さらに、借入を行った事業者のうち、売上高の減少幅の大きな事業者(小規模事業者は▲15%以上、中小事業者は▲20%以上)に対しては利子補給を実施、実質的に無利子化する支援策を講じています。

 

2.給付金

制度

給付対象

給付金額

特別定額給付金

4月27日時点で住民基本台帳に記録されている国民(外国人を含む)

一律10万円

持続化給付金

最近1ヵ月の売上高が前年比▲50%以上

法人は資本金10億円未満又は従業員2,000人以下

法人:200万円

個人事業者:100万円

上限は昨年1年間からの売上高からの減少分

小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得

子どもの世話が必要な労働者に対し年次有給休暇とは別途に有給休暇を取得させた事業者

休暇中に支払った賃金相当額×10/10

日額上限は8,330円

 

誰でも一律10万円の現金を受け取れる「特別定額給付金」がすでに開始されています。

感染症拡大により特に大きな影響を受けている事業者(最近1ヵ月の売上高が前年比▲50%以上)に対しては、事業の継続を支え、再起の糧としていただくために、「持続化給付金」が用意されています。農業、漁業、製造業、飲食業、小売業、作家・俳優業など幅広い業種で事業収入(売上)を得ている法人・個人の方が対象で、事業全般に広く使える給付金です。売上減少分は、前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヵ月)で計算します。

また、雇用調整助成金と同様に雇用環境の観点からは、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金も創設されました。令和2年2月27日~6月30日の間に取得した休暇について適用されます。

 

政府では、中小企業関連団体、支援機関、政府系金融機関等1,050拠点に「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置し、経営相談に対応しています。具体的な窓口は、経済産業省HP特設ページ内の「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口一覧」でご確認いただけます。

特別融資は、日本政策金融公庫事業資金相談ダイヤル(平日0120-154-505)や商工組合中央金庫相談窓口(0120-542-711)等でお問い合わせに対応しています。

持続化給付金は5月1日より下記の申請サイトで受付を開始しています。

持続化給付金事務局HP https://www.jizokuka-kyufu.jp

 

新型コロナウイルス感染症で亡くなることはもちろん、経済によって人が死ぬことも絶対にあってはなりません。医師として、国会議員として、引き続き、全身全霊をささげて取り組んでいきたいと思います。

 

雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。景気の悪化時に企業が労働者を休業させる場合、休業期間に応じて平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。企業が休業手当を支払い続け、雇用を維持できるよう、国が雇用保険を活用し休業手当額の一定割合を助成するのが雇用調整助成金です。

 

政府は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月1日から6月30日までを緊急対応期間とし、雇用調整助成金の特例措置を講じています。

 

まず、対象となる労働者を見ますと、通常は雇用保険6ヵ月以上加入が条件ですが、今回の特例では加入期間が6ヵ月未満や被保険者でない方も対象になります。すなわち、新入社員やパート従業員を休ませて休業手当を支給しても助成金が出ることになりました。

次に、助成率は、大企業が休業手当日額の1/2から2/3、中小企業が2/3から4/5に引き上げられました。従業員全員を解雇しない場合はそれぞれ3/4、9/10になります。

例えば、ある中小企業が平均賃金10,000円で休業手当を60%支給しているケースでは

10,000円×60%×9/10=5,400円が助成されます。

経営状況に関する条件については、通常は直近3ヵ月の売上高が前年同期比10%以上減少することが求められますが、特例では直近1ヵ月で5%以上減少になりました。

 

厚生労働省は4月25日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける事業主を支援するため、雇用調整助成金の特例措置のさらなる拡充を発表しました。

下図の通り、中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率をさらなる特例として10/10としました。

加えて、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率さらなる拡充の特例として10/10とする方針です。

○新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行っていること

○以下のいずれかに該当する手当を支払っていること

 ①労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること

 ②上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)

 

医療介護の業界でも、小規模な介護事業所、特にデイケアやデイサービス等の通所系は休業を余儀なくされるところが出てきていますが、そうした介護事業所も雇用調整助成金の特例措置を活用することが可能です。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、サービス業や外食業等を営む企業の資金繰りは日々厳しさを増しています。引き続き、中小企業の雇用維持に向けて、議論を進化させていきたいと思います。

 

医療機関や行政機関の方々など、感染拡大防止に日々ご尽力されている皆様に深く感謝申し上げます。先月2回にわたり、新型コロナウイルス感染に立ち向かう医療の最前線を視察する機会を得ましたので、現場の状況をご報告いたします。

日本赤十字医療センター視察
4月4日、小松裕 元衆議院議員早坂よしひろ都議会議員小松ダイスケ都議会議員と一緒に広尾の日本赤十字医療センターを訪問し、新型コロナウイルス感染症の状況を視察いたしました。本間之夫院長はじめ担当医師、看護部、事務局の方々から話をお聞きしました。
日赤医療センターは感染症指定医療機関ではなく感染症診療協力医療機関です。緩和ケア病棟の個室18床をすべて陰圧管理の上でコロナ患者に使っており、ほぼ満床、視察の時点で累計156名が利用され、重症例はeICU2名(ECMO1名<61歳男性>、人工呼吸器1名<26歳男性>)とのことです。
新型コロナ対応の外来は一般外来と隔離するため、救命救急センターの陰圧外来室を使用していくつかのバリアを設ける、CT検査も救急専用CTを随時消毒しながら利用している、感染防止用のN95、マスク、アイシールド、ガウン等は4月末までしか持たない、というお話でした。
内視鏡は学会からの通知もあり緊急以外は先送り、耳鼻科診療、全身麻酔も抑制あるいは中止しているそうで、相当のダメージを受けていると思われます。
また、初診と救急の外来も停止、救急車も軽症は停止していますが、「スーパー総合周産期センター」の指定を受けている関係から産科、小児科、新生児の診療は行っているとのことです。
他にも、新型コロナの治療は、多くの医療機関に分散させず集中させる方がいい、東京消防庁によれば発熱や呼吸苦の症状がある患者を断る二次救急病院が多いとのことが大きな問題である、新型コロナを受入れる病院は経営的にも厳しい状況で、緩和ケア病床の点数は通常8万円に対し感染症だと3万6千円と半分以下になってしまう上に様々な経費が掛かってくるので適正な評価を求めたい、ECMOを動かすには相当のスペースと多くの医療スタッフを要するため、ECMOを設備できる病院は実際には限られている、国がECMO活用を促進しようとしても実情は厳しいのではないか、といった話が出ました。
私から、国や病院団体は「新型コロナ専門病院」に診療を集中させる方がいいという考えだが、集中型と分散型はどちらがいいかお聞きしたところ、「そうした議論も重要だが、その前に今ある資源と支援を最大限活用して、診療スタッフのモチベーションが上がる、病院の運営管理が継続できるような、先行投資的な安心できる報酬を補償した方がいいのではないか、新型コロナの治療に参加したいと思わせることが大事だ」というご回答をいただきました。
さらに、検査や給食等の委託業者が無防備なので消毒等の対策をきちんと行うことも課題、患者数がこれ以上増えた場合、回復期や慢性期の病院が相応の感染防止対策のもとで軽症な患者を引き受けてもらえるとありがたい、という話もありました。

東京医科歯科大学病院視察
4月21日、衆議院議員の国光あやの先生にお誘いいただき、衆議院議員の河村健夫先生とともに東京医科歯科大学病院における新型コロナウイルス対策を視察してまいりました。学長の田中雄二郎先生副学長の大川淳渡部徹郎両先生、日頃からお世話になっている外科の植竹宏之先生に現場をご案内いただきました。
当病院では、最悪のシナリオを想定し全病床753床の20%程度に当たる149床を「コロナ用病床」として設定していますが、その内訳は次の通りです。
○重症:High level ICU(ECMOや高度呼吸不全のレベル:26床
○重症:ICU(高度人口呼吸や臓器不全治療:16床
○重症:HCU(高濃度酸素、早期挿管による予防~通常人工呼吸):34床
○中等症(酸素投与・モニタリング可):53床
○陽性者の医療従事者用:20床
「非コロナ用病床」は259床で、残りの345床については、医療スタッフを新型コロナウイルス陽性患者の治療に専念させるため休床にする方針です。外来診療及び予定手術も中止(急患及び入院手術の一部(癌、心臓血管外科、脳神経外科)は引き続き対応)しています。こうした診療の縮小の影響により月間15億円規模の減収となる見込みだそうです。
また、患者と医療スタッフの身を守る観点から、院内感染防止の徹底や医療スタッフの心身のケアが必要であり、防護服やマスク、消毒液等の消費が通常時に比べ大幅に増加、人工呼吸器購入等と併せた追加支出は現時点で3億円以上に上るとのことです。
院内では、ECMOや最新のコンパクトな人工呼吸器も見学しました。ECMOの運用には、医師、看護師、臨床工学技士等10名以上で編成されるチームが必要です。少ない人数で効率的にシフトを組まねばならないうえ、技術のあるスタッフや機器の設置スペースも必要であり、実際の運用は容易でないとのお話でした。
また、多くの医療機関同様、N95マスク、防護服、フェイスシールド等の物資が不足しているとのことでした。当院では、歯学部にある3Dプリンターを使いフェイスシールドを作成する等の工夫を凝らすほか、病院内の発熱外来とは別に歯科外来を活用して発熱外来を展開できないか模索しているそうです。


今回の視察を通じ、院内感染防止の徹底、新型コロナウイルスに感染した患者さんを受け入れるための病床確保とそれによる休床、外来診療や手術の停止、内視鏡を含めた検査や人間ドック、健診の縮小といった経営面の負担増に対して強力な支援が必要だと、改めて感じました。特例措置として、いくつかの項目で診療報酬点数がアップされ、それは現場にとって喜ばしいことですが、まだまだ足りないと思います。私は、収入面で前年同月の総診療報酬点数を確保できるだけの補てんに加え、費用面でN95マスクや防護服等にかかる経費や医療従事者への危険手当等の支援が求められるのではないか、しかも、事後に支払うのではなく、事前もしくは極力早い段階で医療機関へ手渡されることが必要だと考えています。これは大学病院に限ったことではなく、軽症の感染患者や非感染の患者さんを受け入れる中小病院、外来診療に打撃を受けている診療所も含め、すべての医療機関が対象になります。もともと診療報酬という制度で抑制してきた医療費を、この緊急事態に一時的に医療機関に戻すと考えれば、財政規律を乱すことにはならないと思います。

 

 

 

※下記は、4月26日に公開したブログ内容ですが、再掲いたします。

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コロナ患者受け入れ医療機関に対する財政支援策(案)について

目的:
コロナ患者の受け入れ、検査、治療等を行った医療機関においてコロナ対応に伴い収入減少・費用増加が発生していることを受け、財政支援策を講じることによって存続危機を回避し、もってコロナ患者の受け入れ体制及び地域の医療提供体制を維持する

背景:
1.  収入減少
①   稼働率低下
コロナ患者を受け入れている医療機関においては、コロナ患者に備えて病床を確保する必要があり、またコロナ患者を受け入れたのちにはコロナ患者向けにゾーニングした病床には通常の患者を入院させられない、4床室を1人で使用せざるを得ないなど運営上の制約が発生し、稼働率は大きく低下する

②   患者単価低下
コロナ患者またはコロナ疑い患者を入院させた場合、通常の疾患による入院と診療内容が異なることから、患者単価の低下が見込まれる

→上記により、コロナ患者を受け入れている医療機関において著しく収入が減少するケースが想定される

2.  費用増加
①   人件費
万一医療スタッフが感染した場合、当該スタッフおよび濃厚接触の疑いのある医療スタッフが出勤停止となるため、他のスタッフによるサポート体制を作ることから人件費は増加する。また、医療スタッフの感染リスクに対応するため、医療機関によっては危険手当を支給している

②   医療材料費
コロナ患者に対応するため、平時に比べてより多くのN95マスク・防護服等の各種物品の調達が必要


財政支援策(案)

1.  収入減少への対応
①   過去の収入を基準にした支援
コロナ患者の受け入れを行った医療機関において、当該医療機関における過去3か年度の診療報酬収入の平均(もしくは前年同月の診療報酬収入)を基準として、収入の平均を下回る場合は平均に達するまで財政支援を行う

②   赤字額の支援(準公的病院としての取り扱い)
コロナ患者の受け入れを行った医療機関に対して、収入ごと、費用ごとに支援するのではなく、公的病院のように赤字額を全額補てんした上で、インセンティブとして感染症指定医療機関と同等の補助金(1床7.7百万円)を給付する

③   診療報酬単価調整による支援
コロナ患者の受け入れを行った医療機関の受け入れ病棟において、コロナ患者の受け入れ期間について、現在1点10円となっている診療報酬の1点単価を変動させ(1点11円~20円など)、診療報酬が支払われることとする

2.  費用増加への対応
①   医薬品費、材料費


(ア) コロナ患者の受け入れを行った医療機関においては、平時よりも余分に調達が必要となった医薬品や衛生材料について、実費全額について、財政支援を行う

(イ) コロナ患者の受け入れを行った医療機関においては、医薬品および衛生材料については、包括請求として1日5万円/人、人工呼吸器を用いた場合は1日7万円/人、待機病床を設けた場合は1日3万円/人を支給

②   人件費

(ア) コロナ患者の受け入れを行った医療機関においては、当該医療機関に勤める医療スタッフへのコロナ対応を指示する場合に危険手当を支給し、危険手当については、1日当たり医師1万円、看護師5,000円、その他の医療従事者に3,000円とし、その1/2を都道府県が負担する。

(イ) コロナ患者の受け入れを行った医療機関においては、当該医療機関に勤める医療スタッフへのコロナ感染が認められるおよびその疑いがある場合に、余分に掛かる人件費が存在する場合は、実費のおよそ50%を上限に財政支援を行う。

(ウ) コロナ患者の受け入れを行った医療機関において、コロナ患者に対応する医療スタッフの時間外勤務について、時間外手当のおよそ●%を上限に財政支援を行う。

③   設備費

(ア) コロナ肺炎患者を受け入れて人工呼吸管理を行っている医療機関に対しては人工呼吸器1台を、また、ECMOの高度医療を提供(高度な操作が可能な医師や臨床工学技士(ME)を配置)している医療機関に対しては、人工呼吸器1台プラスECMO1台を寄贈する。

3.  その他
①   ICUを活用した受け入れ
特定機能病院等におけるICUを利用したコロナ患者の受け入れの場合、もともとのICU患者の転棟が必要となる場合があり、その際は、転棟した患者についてはICUと同様の点数を講じる。

②   病院を端緒とするクラスターを回避するための対策
コロナ患者の受け入れを行った医療機関において、コロナ患者に対応する医療スタッフおよび職務上濃厚接触者となったスタッフが自宅で家族に感染させないために近隣のホテルなどに単身滞在する場合、実費のおよそ●%を上限に財政支援を行う。

③   病院における出口戦略
コロナ患者への対応に端を発する労災が起き、業務命令を出した院長などが訴えられた場合、賠償金のおよそ●%を国と地方自治体で負担する。


別紙「その他の現場からの意見」
・コロナ患者を受け入れ人工呼吸管理を行っている病院においては、人工呼吸器やECMOの在庫が逼迫し、コロナ以外の患者について通常の高度診療を提供することが極めて困難となっている

・DPC対象病院では、来年の係数への影響が不安視されるので、DPC係数についてはコロナ患者を除くという特例を設定

・コロナ患者の受け入れ医療機関では、発熱外来の設置等の影響による来院患者数の減少や、風評被害による受診抑制があるので、外来についても補償されるとありがたい。

・通信機器を使った診療は診療報酬点数が低いので、その補填があれば、もっと活用されるのではないか。

・コロナ患者を受け入れている医療機関において、ゾーニングの関係から既存患者の転棟によるオーバーベッドも発生するが、これについては認められており、これを利用することで病院の受けいれも進むのではないか。現場医療機関への正しいアナウンスもお願いしたい。(吉田医政局長に本日確認済み)

・コロナ患者への対応を苦とした離職による医療崩壊への対応を行っていただきたい。

・休眠中のベッドや病棟を一時的にコロナ病棟として扱う場合、現状の受け入れホテルと同様の補填(ホテルコスト+人件費(1日医師1名、看護師1名、事務1名))を都道府県から補填。