持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsの基本理念は次の5つです。
Ⅰ 普遍性…先進国を含め、全ての国が行動
Ⅱ 包摂性…人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」
Ⅲ 参画型…全てのステークホルダーが役割を
Ⅳ 統合性…社会・経済・環境に統合的に取り組む
Ⅴ 透明性…定期的にフォローアップ
わが国では2016年5月、総理を本部長、官房長官・外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が設置されました。
さらに同年9月、行政、民間企業、有識者、NGO等の広範な関係者が意見交換を行う「SDGs推進円卓会議」も設置されています。
SDGs推進本部では、SDGsへの貢献を「見える化」することを目的として、 2017年から毎年、政府の施策のうちの重点項目を整理した「SDGsアクションプラン」を策定しています。
「SDGsアクションプラン2022」の概要は以下の通りです。
●People 人間:感染症対策と未来の基盤づくり
• 6月までの可能な限り早いタイミングで新たな「グローバルヘルス戦略」を策定し、取組を加速する。
• 「女性版骨太の方針」等に基づき、女性デジタル人材の育成や「生理の貧困」への支援、女性の登用目標達成、女性に対する暴力の根絶など、女性活躍・男女共同参画の取組を強力に推進する。
• こども中心の行政を確立するための新たな行政組織を2023年中に設置することも通じ、子どもの貧困対策など、子どもや子育て世代の視点に立った政策を総合的かつ包括的に推進する。
●Prosperity 繁栄:成長と分配の好循環
• 「デジタル田園都市国家構想」の実現を通じ、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む。
• これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対しても支援を行うことで、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する。
●Planet 地球:地球の未来への貢献
• 温暖化対策を成長につなげるクリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進していく。
• 海洋プラスチックごみ対策について、2月の国連環境総会で国際約束作りの開始を目指す。
• 4月に熊本で開催する「第4回アジア・太平洋水サミット」や、「ポスト2020生物多様性枠組」に向けた議論などを通じ、地球環境問題に積極的に取り組む。
●Peace 平和:普遍的価値の遵守
• 第8回アフリカ開発会議(TICAD)も通じ、日本の取組を推進していく。
●Partnership パートナーシップ:絆の力を呼び起こす
• 2023年のSDGs実施指針改定を念頭に、2022年中に幅広いステークホルダーとの意見交換を進め、SDGs達成に向けた取組を加速していく。
• 「日メコンSDGsフォーラム」等を通じ、国内外のあらゆる分野の関係者とSDGs達成に向けた連携を深めていく。
医療界におけるSDGsを見ますと、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」が医療機関の本来業務に直結するため、外来診療や入院治療、糖尿病教育等の予防医療を通じて、地域包括ケアや共生社会の実現に取り組んでいます。
私は、ゴール1「貧困をなくそう」やゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」等、医療の本来業務の延長線にない目標にも積極的にアプローチしていくことが重要だと考えています。私が副会長を務めさせていただいている全日本病院協会や東京都病院協会等の病院団体でも、年度事業計画にSDGsへの取り組みを掲げて推進しています。先日も出席した東京都病院協会・診療情報管理委員会において、現在は紙が主流である患者紹介状をいかにペーパーレス化していくかという提案があり、環境問題という観点から資源の削減に取り組んでいくことができそうだと思いました。
提言 SDGsが目指す「持続可能な世界」に向けて、医療機関は本来業務である健康・福祉にとどまらず、貧困や平等、環境等の課題にも積極的に取り組んでいこう。 |