真空管ラジオ『 コロムビア COLUMBIA 1510 』の修復 - Part.5 | アナログ三昧、そして時々ディジタルな日々
先のPart.1Part.4 の結果より、このラジオの問題点は次の通り:
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<現状の問題点まとめ> は解決済み。
①短波は受信できるが、中波が受信できない。
 ②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
 ③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
  最大音量?の雑音が出る。
④局部発振回路の中波用バリコンの配線が取り外されている事が判明!
  これが①の原因になっている可能性が大である。
 ⑤コンデンサ、抵抗などの部品劣化の懸念有り。
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①と④は解決済み。
②と③はVOLUMEの可変抵抗器の故障が原因と思われるので、
 交換用の可変抵抗器を入手した。 後日交換する予定。 
⑤は更に詳細に調査する予定。


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このPart.5では、先ず⑤の部品の劣化状況を調べる事にします。

昨年5月の“カセットデッキ 『 Lo-D D-3500 』の修復 - Part6”に書いた
ように、電子部品の中でも特に70年代前半以前に製造されたコンデンサは
経年劣化によって機能や性能が低下するだけでなく、破裂や発煙したり、
発火などによって火災を引き起こす場合もあり得るので要注意です。

先ず、最も危険と思われる『電解コンデンサ』を調べる事にしました。

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シャーシの裏面側から撮影。
緑円内の円筒形の部品がブロック型電解コンデンサです。

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ブロック型電解コンデンサの表面には『50MFD-350WV』『20MFD-350WV』
『5MFD-350WV』と印刷されています。
このブロックコンデンサは、静電容量『50μF』『20μF』『5μF』の3個の
電解コンデンサから成り、それらの定格電圧(耐圧)は全て『350V』です。

これらのコンデンサはB電源(真空管のプレートやスクリーングリッドの電源)
の平滑用コンデンサとして使われています。

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シャーシの前面側から撮影。
緑円で示した所にブロック電解コンデンサの取り付け穴があり、その中に
コンデンサの底面と4本の接続端子が見えます。

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ブロック電解コンデンサの底面にズームイン。
回路図と照合した結果、左端の黄色の配線が接続されているのが共通のアース
端子で、そこから時計方向に50μF、20μF、5μFの端子である事が判りました。

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先ず50μFのコンデンサをチェックするのに先立って、接続先回路の影響を

取り除くために50μF端子の配線を全て取り外しました。


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50μF端子にテスターのマイナス側テスト棒を接続しました。

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シャーシ上のアース端子にテスターのプラス側テスト棒を接続しました(緑円内)。
(シャーシを加工したアース端子が随所に設けられています)

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“×10kΩ”レンジでテスターの針は一瞬右に振れた後、∞(無限大)Ωに
戻りました。 電極間の絶縁状態は一応保たれているようです。

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20μF端子(緑円内)と5μF端子(黄円内)も、50μF端子と同様に配線を取り外し
テスターでチェックして、絶縁状態が保たれている事を確認しました。

しかし、このテスターの“×10kΩ”レンジの電源は9Vの乾電池なのに対して、
これらのコンデンサの実使用時においては250V以上の電圧が掛かるので、
その場合にも絶縁状態が完全に保たれるかどうかは不明です。

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次に、黄円内のオイルペーパーコンデンサ?の絶縁状態もチェックします。

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チェックするコンデンサと、それが接続された真空管のピンにズームイン。

このコンデンサは、局部発振/周波数変換用五格子七極管『6BE6』の
第2、第4グリッドに繋がる6ピン(青円内)とシャーシ上のアース端子の間に
接続されていて、6ピンを高周波的に接地するバイパスコンデンサ(パスコン)
として機能します。

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チェックするパスコンのリード線を『6BE6』の6ピンから取り外して、
テスターのマイナス側テスト棒を接続しました(青円内)。

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テスターのプラス側テスト棒をシャーシ上のアース端子に接続しました(緑円内)。

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“×10kΩ”レンジのテスターの針は一瞬右に振れた後“約1MΩ”まで戻って
止まり、左端(∞無限大)までは戻りません。
このコンデンサの電極間の絶縁が破壊され、漏れ電流が流れているようです。

テスターの針が一瞬右に振れてから戻ったりラジオが一応動作している事から、
コンデンサの機能は一応維持しながら電極間の一部で漏れ電流が流れている
ものと推定します。

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チェックしたコンデンサを完全に取り外しました。
“A.CON 1000V 0.1”と表示されています。
0.1μF、耐圧1000Vの(恐らく)オイルペーパーコンデンサです。

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念のため、単体でチェックしてみました。
“×10kΩ”レンジのテスターの針は一瞬右に振れた後“約750kΩ”まで戻って
止まりました。
やはり絶縁不良状態で、何故か抵抗値が実装状態時より小さくなりました。
取り外す時のハンダゴテの熱やリード線に加わった力によって電極や絶縁体の
状態が変化したのでしょうか?
コンデンサの機能を維持していて、この程度の漏れ電流であればラジオの動作
への影響は少ない様な気もするけど、ブロック電解コンデンサの場合と同様、
このテスターの“×10kΩ”レンジの電源が9Vであるのに対して、実使用時には
100V程度の電圧が掛かるので、漏れ電流も当然多くなるはずです。
また、使用時間に応じて劣化が更に進行する可能性もあります。

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B電源(約220V)とアースの間に接続された別のオイルペーパーコンデンサ?も
チェックします(黄円内)。

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コンデンサを取り外しました。
汚れが酷くて判り難いけど“A.CON 1000V 0.05”と表示されています。
0.05μF、耐圧1000Vのコンデンサです。

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“×10kΩ”レンジのテスターの針は一瞬右に振れた後“約150kΩ”まで戻って
止まり、∞(無限大)まで戻りません。
このコンデンサの電極間も絶縁不良状態で、しかも比較的小さな抵抗値です!

このタイプのコンデンサを2個チェックして2個とも絶縁不良という事は、
『不良率100%』です!

全部チェックすれば中には正常な物も有るかも知れないけど、劣化傾向が
止まる事はなく、いずれ早い時期に同様の故障を起こす可能性が高いので、
この際すべてのコンデンサを交換する事にします!

抵抗器は劣化によって絶縁不良を起こす事はないかも知れないけど、特性の
劣化や故障率の増加はありそうだし、コンデンサだけを全数交換するという
のも作業的に難しそうなので、この際すべて交換する事にします!

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<現状の問題点まとめ> は解決済み。
①短波は受信できるが、中波が受信できない。
 ②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
 ③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
  最大音量?の雑音が出る。
④局部発振回路の中波用バリコンの配線が取り外されている事が判明!
  これが①の原因になっている可能性が大である。
 ⑤コンデンサ、抵抗などの部品劣化の懸念有り。
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①と④は解決済み。
②と③はVOLUMEの可変抵抗器の故障が原因と思われるので、
 交換用の可変抵抗器を入手した。⇒後日交換する予定。 
⑤を調査した結果、複数のコンデンサに絶縁不良有り。
 ⇒コンデンサと抵抗をすべて新品に交換する。

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