特性が良いというけど他と比べてどうなの?という人のために その1 | Analog of Magic もみじとクラフトマンのblog

Analog of Magic もみじとクラフトマンのblog

Analog of Magic (AoM)のブログです。
アナログ回路を中心とした話題をお届けします。

GND分離ポータブルヘッドホンアンプ【Zwei Flugel】【Eins Flugel】など各種アンプなどを販売中

特性が良いといわれても、データを載せられてもわからないという人が多いようなので、
ちょっと他のアンプの特性を見ながら、比較してみる企画第一弾です。

 

Vier Flugelの特性はこちら
https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12405424033.html
https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12405424801.html

Zwei Flugelの特性はこちら
https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12424918829.html

 

 

 

1.プロ向け?と言って売っていた6ケタ円の据え置きヘッドホンアンプ

 

上:出力 100mV/DIV 下:入力 20mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷

 

ボリューム最大でのデータはぱっと見悪くはなさそうなのですが、ボリュームを15時位置まで絞ると…

 

上:出力 50mV/DIV 下:入力 20mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷 ボリューム位置15時

 

このようになります。

ストレー容量が見えていない設計をしているため、波形がなまってしまっています。

これはつまり、周波数特性が悪くなっているということ。

27mm角ボリュームを使っていてもこれでは残念です。

ボリュームの位置で音が大きく変わって聞こえると困るのですが。

 

また、このアンプはチャンネルセパレーションもボリュームの位置に大きく依存しています。

このようなチャンネルセパレーション特性になるアンプは意外と多いです。

そのような配置にしたほうが、PCBは一見きれいに見えますからね。

 

なお、このアンプはのちの改良でゲインが下げられているので、

常用時のボリューム位置は特性が悪くなる位置に近づいているようです。

 

 

一方、Zwei Flugelのボリューム最大と、15時位置の波形は以下のようになっています。

 

上:出力 100mV/DIV 下:入力 100mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷

 

上:出力 50mV/DIV 下:入力 100mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷 ボリューム位置15時

 

ピンボケしました…。

ZweiFlugelは27mm角より不利な9mm角ボリュームですが、可能な限り特性が落ちない設計です。

 

 

 

2..ポータブルのバランス出力ヘッドホンアンプのキット(基板単売+部品表)

 

このキットの販売元は、この機種も他の機種も特性などが特に公開されていませんでした。
基板および部品を見ても特性が出る感じではありませんし、
音が良さそうな感じでもありませんでしたが、はたして…。

 

THD+N 測定周波数:1kHz、帯域幅:400-80kHz、無負荷時(A補正ではありません)

 

hot・GND間 上:入力 下:出力 どちらも10mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷

 

cold・GND間 上:入力 下:出力 どちらも10mV/DIV 2us/DIV 約100kHz 無負荷


設計が悪く、選べるオペアンプの制約もあり雑音歪率はあまり良くないと思っていましたが予想通りの特性でした。

このアンプは、ある程度の出力を確保するために

入出力レールtoレールのオペアンプが必要となります。
入出力レールtoレールのオペアンプはその多くがCMOSであり、
最近では高性能になってきたものの一昔前はCMOS特有のクセがありました。
そのクセがよく出ている特性に見えます。

 

hotとcoldで波形が異なるのは、反転側のほうが安定しやすいからでしょうね。
(ゲインが+1と-1だと-1のほうが無補償時の周波数特性のピークが小さくなることが多い。)
リンギング自体があまり良いものではありませんが、バランス出力でこの差は致命的だと思います。
hotとcoldの差は、そのまま音として出てくるわけですから。

 

なお、CMOSではなくバイポーラ入力やJFET入力の出力レールtoレールだと
入力側が原因で特性悪化+最大振幅に制限が出てきます。

 

矩形波応答は、無負荷ですでにリンギングが出ているため、負荷を取り付けての測定はしていません。
出力にLが入っているアンプでは、Lと負荷でLPFが形成されリンギングが収まるように見えますが、
それはアンプが安定したわけではありませんので。観測している振幅が小さいのは、
スルーレートが低すぎて振幅を大きくするとオーバーシュートが隠れるためです。


矩形波応答波形でリンギングもしくはオーバーシュートが出ているものは個人製作でも

よく見かけますし、ある程度知名度のあるものでも割と見かけます。

リンギングが出ているからといって必ずしも位相余裕が小さいわけではありませんが、

その場合が多いので、できれば避けたいですね。

 

回路と測定と音の関係の話はこちら

https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12416834362.html

 

 

 

3.知人のシングルエンド出力アンプ(ポータブル)


本人がデータを公開していたので許可を得てもらってきました。

 

THD+N 測定周波数:1kHz、帯域幅:400-80kHz、無負荷時と33Ω負荷時(A補正ではありません)

 

上:出力 下:入力 どちらも100mV/DIV 2us/DIV 約100kHz


Vier FlugelやZwei Flugelよりさらに帯域幅が広い一方で、最大出力は小さめになっています。
これはとにかく音質に振った設計をしているため。このアンプは一般的な測定では見えない部分まで
詰めてあり、なかなか見ないタイプのものです。
ただし、基本設計が古いらしく配置に無理がある部分も見えますし、本人もそうのように言っていました。

 

オーディオアンプでこれほどきれいな100kHzの矩形波応答波形はあまり見かけません。
普通はもっと帯域幅を狭くするので丸まった波形になりますし、未調整だとリンギングが出ます。
このアンプやVier Flugel、Zwei Flugelでは丁寧に調整されていることがわかります。

 

 


こういったデータからわかることはわずかで、音もほぼわかりません。
しかし、購入しようとしているアンプを設計した人にどの程度の技術があるかや、
そのアンプがどういった方向けのものかを判断するときの助けにはなると思います。

また、技術力は必ず音に現れてきます。

 

良いものを選んでハッピーな音楽ライフを♪

 

もみじさん

 

 

Vier FlugelやZwei Flugelについてのお問い合わせは

 

analog.of.magicあっとまぁくgmail.com

 

までどうぞ。

 

値段などはこちら https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12423225646.html

Zwei Flugelの紹介はこちら https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12423646844.html