地図を持て、旅に出よう。 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

※ピアノ話についてのおさらい

20年という長い空白期間を経て、2018年1月からピアノレッスンに通っています。

(登場人物)

 モネ先生=私の現ピアノの先生

 

 

上の記事で

「2ヶ月前に突然開催が決定したうちのポンコツピアノ教室の発表会が、無事終了した。」

と書いたが、今日はそこに至るまでのお話とその後の話。

 

いつの話やねん、という話ではあるが(そしてだいぶ忘れているが)記録として

書き留めておきたい。

 

2ヶ月ちょっとでノクターン2曲(1番と4番)を仕上げるというタイトなスケジュールではあったが、演奏そのものは1ヶ月でなんとか形になったので、

間に合わなかったらどうしよう><

という危険はなくなった。

しかし問題はこっからよ。

やっぱり人前で弾くからには少しでもいい演奏を披露したいじゃん?

 

一般的な難易度からいっても、私の指からいっても、1番より4番の方が確かに難しい。

 

ノクターン4番↑

4番の中間部(上記動画1分20秒あたりから)における地獄の重音連続(親指薬指と人差指小指の繰り返し)、これは難易度お高め。

それは間違いない。

だがしかし!

私はそんな4番より易しいとされている1番の方が断然コワかった><

 

ノクターン1番↑

 

冒頭から右も左もずっと単音ってこわくね!?

しかも冒頭アウフタクト(=1拍目以外から始まる音)は右だけ。

1音でもミスったら、めっちゃ目立つ。

冒頭の右オンリー部分をなんとか通過してもそのあとに登場する左が音域広めのアルペジオ。

指の間をむぎ~っと広げてなんとかギリギリ。

うぉ~水かきが邪魔すぎるんですけどー!!

この曲めちゃくちゃメロディアスな曲だから、絶対に間違えられない。

和音でもあればごまかせるのに!!!←考え方がコスイ。

 

それにひきかえ4番は(地獄の重音連続さえクリアできれば)なんと弾きやすい曲なのか。

和音もあるし(=ごまかせる)、古典派チックで構造もすぐ理解できたし、無理のない動き。

時々現れる不思議な音の進行に惑わされもしたが、それも

ここのゴールまであえて直進せずちょっと寄り道をしているんですよ

とモネ先生に説明されれば、なるほど納得!と理解も早かった。

 

4番はともかく1番がこんな調子だから、譜読み開始時に

 

「再び中断することになったシューマンのソナタの存在も忘れてはならない。

もうゼロスタートだけは避けたい。(略)指慣らしも兼ねて時々弾いておくことにした。」

 

とか書いたが、結局発表会までの2ヶ月間、全く弾くことはなかった。

あ~あ、またもやゼロスタートやで・・とか落ち込んでいる場合ではない。

とにかく目の前の発表会じゃ。

 

1番前半のアブナイ綱渡り部分を通過すると、ようやく(あもちゃん的に)安心安全区域に入る。そしてしばらくするとピアニッシモ(小さな音)で延々グルグルと回る箇所に入るのだが、そこを私は小節線を無視して霧の中を彷徨うイメージで演奏していた。

 

モネ「ここはもう少し拍感を出さないと、聞いている方が困惑しますよ。」

私「あえて霧の中を彷徨うイメージだったんですけど」←口答えあもちゃん

モネ「イメージはそれで合ってます。けど演奏者のあもるさんが一緒になって霧の中を彷徨っちゃだめ!」

私「あははは(大爆笑)!!!!!」

 

そうか。楽譜は地図なのだ。

演奏者は地図をしっかり読み、地図をもたない聴衆をゴールまで誘導しなければならないのだ。

 

モネ「有名な曲は聴いている側も曲を知っているから、多少拍感ない演奏でも聴衆が脳内補完してくれるけど、そうじゃない曲は演奏者だけが頼りなんですよ。」

 

妙に説得力のあるモネ先生のお言葉であった。

さあ、みんな私についてこーい。

 

そこから本番まで残り2週間。

1番の冒頭の単音の怖さは相変わらず拭えないものの、曲の仕上げはすこぶる順調であった。

本番ド緊張の中で上手く弾けるかどうかは別問題として、この2曲が自分の手の中に完全に収まる感じというかコントロール下にあることを実感できた。平たく言うと余裕があるということだろうか。細部まで神経が行き届く感覚があった。

 

そして本番前日、最後のレッスンを終えて。

 

モネ「あもるさんの演奏をこれまで2ヶ月ちょっと聞いてきましたが、アゴーギグ(※)などやりすぎだと思ったことは一度もなかったです。明日はあもるさんの感じるままに演奏すればいいですからね。」

 

※アゴーギグ=正確なテンポやリズムに微妙な変化をつけて、ニュアンス豊かに演奏すること

 

本番で要らんことをする女、それがあもちゃん笑!!

それをよくご存じのモネ先生!!

そのモネ先生から太鼓判を押され、要らんことする気マンマンで乗り込んだ本番当日。

 

今回も例の問題、そう、毎度私を悩ませる衣裳問題があった。

↓毎度悩んでいる様子はこちら・・・

 

 

 

 

 

しかし今回はホールでやるでもなく、演奏する曲はノクターン(夜想曲)。

 

夜・・だし黒にしようかな。

と思いついたのだが、黒かあ・・・とも思った。

安直だと思われたくないし、おばちゃんは黒を着がちだし、講師に間違われる危険もあるし笑、とこれまで黒をあえて避けてきたのだが、ゴージャスなキラキラの刺繍の入った黒のパーティドレスを発見、これを着ることにしよう!

と気合いを入れた黒ドレスを着て会場入りした私だったが、なんとカメラマンなし。

 

え〜、せっかく念入りに考え抜いて(=写真写りを気にして)華やかな黒を選んだのに~!!

しかも高いのに。。←ココ大事。

 

しかもピアノは家庭用だし!

蓋も開いてないし!

(詳細は冒頭記事参照)

ホールじゃないし、ちゃちいサロンだし、全然音は響かないし・・(略)

 

不平不満だらけだったが発表会が始まればそんな不平不満もどこへやら。

どんな状況でもベストを尽くす、これがあもちゃん。

緊張の面持ちで出番を待つ。

今回も一応トリなので出番は最後(チビッコと初心者大人が多めなので必然的にトリ)。

 

そしていよいよ私の名前が呼ばれ、舞台・・はないから客席からそのままズズイとピアノの前に進み出て、お辞儀をする。

しっとりハンカチ(ピアノ保護のため乾いたハンカチで包む二重構造)をぎゅっと握って手を湿らせ、いよいよ演奏開始です。

 

↓汗をかかない女、あもちゃんのしっとりハンカチの話

 

 

問題の1番の冒頭アウフタクト。

ミスしたら終わり・・という考えは不思議と出て来ず、いかにいい音で弾ききって次の小節に繋ぐか、ただその一点に集中してシ♭に指を落とす。ポロン・・・

 

私(うわ、過去最高にいい音出た!この音を活かしてネットリ次に繋げよう。)

汗(え?!昨日までと弾き方全然違うし!!でも過去最高。聞いてて安心~)←言い方!

母(いい曲じゃなあ・・・)←のんき

 

途中楽譜が光って見えづらくなるアクシデントも余裕で回避、

霧の中もしっかりと地図を持って聴衆を誘導し、ほぼ完璧な状態でゴールした。ホッ。

 

そして4番。

常々モネ先生に言われていた。

 

「1番との対比でアッサリ弾きたいのはわかりますが、言ってもこちらもノクターン(夜想曲)、夜の情緒を表す叙情的な曲であることを忘れずに。」

 

私は別に1番との対比でアッサリ弾きたいわけではなかったが(笑)、この曲の作りが古典派的であることから無意識にサクサクコロコロ弾きたくなっちゃうのよ~。

この注意だけは忘れず、演奏開始。

 

よし!ちょっと大げさかなってくらいのんびりゆったりと歌い出せたぞ!!

(後で聞いたら全然大げさでもなく、なんならもっとのんびりしてもよかったくらい)

 

そこさえクリアできればこっちのもの。

こちらの曲は大事故を起こす不安はなく(地獄の和音連続も問題なし。多少ミスってもごまかせるし笑)、大いに楽しんで終えることができた。

 

うんうん、これは手応えアリアリ!

意気揚々と席に戻りますれば、あも応援団からは

 

母「あんたが飛び抜けてうまかった。1番って素敵な曲じゃなあ。」

夫「家での練習含めて一番よかった。特に1番がすごくよかった。」

 

との賛辞(?)をいただいた。

 

終演後、健闘をたたえてもらうべくモネ先生に駆け寄ったものの会場が激狭、先生はモネ先生だけではないし、各先生と生徒が入り乱れての大混乱状態、かろうじてちょっと離れたところから挨拶だけはできて、また連絡します~とお互い言い合って会場をあとにした。

どんな会場やねん笑

 

そして数時間後、モネ先生から絶賛のお言葉をいただいた。

 

「今日の演奏、すごく素敵でした。ゆったり歌うのってものすごく緊張するのにとても美しく歌っていて、私も見習わなければと思いました。短期間でよくここまで仕上げてくださいました。あもるさんのステージ演奏が聴けて大満足でした。」

「あ、そうそう。帰りに一緒になった講師の先生があもるさんのこと、もうプロ、って言ってましたよ。」

 

ええ~~~!!!プロですって!?

エヘヘ、そうかなあ!!!!←お世辞を真に受けるオバサン

 

私「聞いて聞いて~。モネ先生が、私のことプロって言ってた先生がいるって~」

母「わかる~。プロ並みだった~」←親バカ。そしてこの日もうちにお泊まりデス。

汗「いや、さすがにそれはないでしょ。」

 

そりゃさすがにそれはないですけども!!!!

わかってはいるけども!!!!

だからってその言い方はなんや!!!!

 

汗「前に大人だけの発表会を聞いて、あもさん以外にもあんなに弾ける人がいるって知っちゃったんだもん。」

私「わーん><」

 

↓上手な人ばかりだった(プロもいた)大人中心の発表会

 

技術はつたなくとも、ステージ上での度胸だけはプロ並みってことで。

 

 

さてさて今回もノクターンというステキな旅を無事に終えたのだが、

この旅では大変大きな収穫があった。

 

それは単純に「うまくなった&耳がよくなった?」ということである。

2ヶ月やそこらでそんなバカな!とか思うじゃん?

それが本当なんです。

 

発表会も終わってまたもやゼロスタートのシューマンソナタ2番全楽章をやらねば。

とゆっくりさらい直していると・・

 

私「あれ?思ってたより、というか普通に弾ける。1楽章に至っては暗譜が全く落ちてない。」

私「というか音そのものがよくなった。気がする。」

 

ただの偶然?と思ってはみたものの、何度弾いてもいつ弾いても音がよくなった。気がする。

 

汗「あれ?あもさん、上手になった?音のバランスがすごく整ってる。

  違う曲弾いていても上手くなるもんなんだね〜。」

 

こ・・これは!

何百万回と聞かされている汗かき夫がそう感じるとは、本物かもしれん。

 

そしてレッスンへ。

シューマンのソナタのやり直しレッスン。

まずは難易度MAXの1楽章、そして4楽章を演奏。

 

モネ「・・・あれ?なんか・・音がよくなりましたね。」

私「先生もそう思います!?気のせいかと思ってたんですけどやっぱりそうですかね!?」

モネ「うん、すごく音がよくなってる。しかも以前は弾きにくそうだった箇所も難なく弾けるようになってるし。」

私「ノクターン弾いたらなぜかこっちが弾けるようになりました笑」

モネ「なんででしょうね。熱湯風呂からぬるま湯に入ってラクになったとか?」

 

は??

 

私「ん?熱湯風呂とは?もう少し説明を・・笑」

モネ「あ、説明不足すぎますよね笑。短期間でノクターンを仕上げるってアツアツのお風呂に入るようなものじゃないですか。そこから今まで弾き慣れたぬるま湯・・って難易度は高いですけど弾き慣れているという意味でぬるま湯で。だから余裕が生まれたのかなあって。」

 

それもあるかもしれん。

ただ1つわかったのは、一回弾けるようになった曲を休ませてもう一度弾くってすごくいいということである。

それまでわかっていなかったことがわかったり、と新しい発見もある。

あとこれは推測だが、一度その曲から離れることで変な癖がとれるのかもしれない。

モネ先生の言っていた「弾きにくそうな箇所」もしばらく離れたことで一旦リセットされ、体についていたクセもなくなり、シンプルに弾けるようになったのかも。

 

てなわけで、心配だったゼロスタートもなく、全4楽章はほぼ以前のレベルまで戻ったので、練習時間のほとんどをゆっくり片手ずつの練習に費やした。

すると今まで聞こえていなかった音が聞こえてくるのだ。

あ、この和音、内声が次のこの音につながるように作られてるんだ!!内声は強い音で弾けないからじゃあ響きで繋げてみたらどうだろう。

とか。

 

片手でゆっくり練習していると、両手・光速で演奏していたときには流れていた音がじっくり響いてくる。

あ~そうするとこの先の和音ってすごく大事かも。

 

と鉛筆で軽く印をつけようとすると、もうついてるし!!!笑

 

モネ先生が「ここは大事ですよ。丁寧に。」とつけていた印だ。

表面的には大事だとはわかっていたし、言われるがまま大切に注意深く弾いていたが、

深い意味ではちゃんとわかっていなかった。

 

「この曲・・やっぱりいい曲だなあ(特に2楽章)」

「飽きたとか言っちゃってたけど、私、この曲のこと全然分かってなかったんだな」

「楽章のあちこちから、シューマンの心が伝わってくる。気がする」←これは妄想!

 

違う曲を演奏して再び戻ると見えてくる景色が違う。

これまで聞こえていた音が変わってくる。そして意識も変わる。

このことはすごく収穫になった。

 

手応えバッチリだったレッスン終了後・・

 

私「大曲をじっくり時間をかけてやりながら、小さめの曲を急速仕上げで演奏していくってのもいいかも。」

モネ「それってもうプロのセリフだから!だいたいそんなうちの教室の行き当たりばったりに洗脳されちゃダメ!笑」

私「あはは。洗脳って!!!」

モネ「あはは。言い過ぎでしたね〜!」

 

そして翌日、その行き当たりばったりに再び直面することになった私とモネ先生であった。

続く・・・