茶聖 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

 

 

 

 

(あらすじ)※Amazonより

真の芸術家か、戦国最大のフィクサーか-

安土桃山時代に「茶の湯」という一大文化を完成させ、天下人・豊臣秀吉の側近くに仕えるも、

非業の最期を遂げた千利休。

革命的な価値創造への執念と矜持。
わが死をもって「茶の湯」は永遠となる。
その切腹の真相に迫る戦国大河ロマン。

戦場はたった二畳の茶室-。

そこで繰り広げられる秀吉との緊迫の心理戦。
門弟となった武将たちとの熱き人間ドラマ。
愛妻、二人の息子たちとの胸に迫る家族愛。

 

◆◇

 

だいぶ前に読み終わっていたのにそのまま感想やらやらを書いてなかったな~と思い、そういう作品は山ほどあるのだが(ズボラここに極まれり)、この作品はメモ程度でもいいので書いておきたいと思い書くことに。

 

まず驚くのはこの厚みよ・・・

そこらへんの人よりかは(多少)本を読み慣れている私をもってしても

「ひぇ~分厚い・・読めるかしら・・」

と恐れおののくレベル。

 

それでもえいや、と気合いを入れて読み始めてみると、そんな厚さなんてなんのその、あっという間に読み終えた。

いやーおもしろかった。

やっぱり伊東さんの時代小説って面白いな。

もともと読ませる力のあるベテランなので『潮待ちの宿』のような市井ものというか人情ものというかそういう作品ももちろん悪くはなかったが、やっぱり時代小説となるとレベルがぐぐっとアップ!

自分のホームで戦う、そんな感じ。

早く直木賞受賞の瞬間をこの目で見届けたいところ!今度こそ!!←魔のあもる推し・・・※

 ※魔のあもる推し=私に愛された作家さんは皆一様に直木賞の受賞が遅れる、という現象を指す。別名:あもるのノロイ(鈍い)

 

前半はとくに面白くて、後半になると少しご都合主義というか(話をたたみかけないといけないから)、

千利休が活躍しすぎ~

フィクサーというか諸悪の根源・・というか秀吉はただのお飾りなんか~?

結末がむむ・・?

と多少強引になってしまっているところもなくはなかったが、全体を見れば秀吉と利休の関係性についてよく描けていたし、なによりあの時代の茶の湯の立ち位置がよくわかるいい作品だった。

 

先日大成功のうちに終了した「麒麟がくる」(NHK大河ドラマ)だが、この飽きっぽい私が最後まで見ましたよ、と。

という話はおいおいするとして、この「麒麟がくる」の中でも「茶」「茶人」の描写が詳細になされていた。←今井宗久(陣内孝則)

(わたしゃお茶の先生の娘のくせに茶の湯についてさっぱりなので、お茶に詳しいブログ友&リアル友のsaryaさんに色々教えてもらったよ!)

 

放送前にすでにこの伊東さんの「茶聖」を読んでいたので、秀吉時代の茶や茶人の立場があるのも、この「麒麟がくる」での茶の立場が前身となっているんだなあ・・等々考えながら見た。

茶が政治の場に深く食い込んでくる、とか今じゃ考えられない。

・・・いや、もしかしたら今は、高級クラブとか?料亭とか?経団連とか?に茶の湯から場所を移して今も続いているのかもしれんが。

 

利休と秀吉との関係はともかく、奥方と利休、息子と利休、の関係性の描写がすごくよかった。

特に奥方と利休。

比翼の鳥、連理の枝という、ただの夫婦という関係性だけでは語れない二人のお互いを思いやる息づかいまでがこちらに届くようであった。

 

あとはどうしてもこれは言いたい。

出てくるお食事がいちいちおいしそうなの~。

・・・って結局そこかい、とか言うそこにあなた、そしてそこにきみー!

食事の描写ってすごく大事なんだよ~。

ニオイも味もしない小説で、いかにおいしい食事をおいしく見せるか、これはもう作家の筆力にかかっているのであります。

伊東さんのお食事描写はもうサイコー!

よだれがでてくるかと思いました(笑)

 

つーか、茶の湯で食事ってどういうこと?とか思うじゃないですか!

私も少し前までは思ってた。

上記に登場した私の茶の湯アドバイザー(笑)のsaryaさんから聞くまでは、茶の席に食事が出るとか知らんかったで。

茶碗をぐるぐる回して、ぐびっと飲んで、結構なお点前で~とかいうやつでしょ~とか思ってた私。

それでもお茶の先生(の免状を持ってるだけ)の娘か!

母に知られたら叱られると思う。なのでご内密に・・・。

(ちなみにアドバイザーのsaryaさんに誘われて茶の席に行ったとき、菓子にひっついた懐紙がどうしてもはがせず、仕方なく飲み込むという大失態をおかしたわたくしです笑)

←参考記事『カジュアルに、そしてカジュアルに。

ちょうど7年前の記事だわ・・・もうあれから7年も経ったんか・・遠い目。

 

それはさておき料理の描写がすばらしいという話の続きだが、その場その場にふさわしい食事を、と考えられたお献立になっていて、当然じゃないかとお思いのかたもおいででしょうがきっと伊東さんはすごく茶の湯のお食事(だけじゃなく全般)をお勉強されたんだろうなあと思うとその苦労が忍ばれる・・。

私みたいな素人にもわかりやすく、そしておいしそうに丁寧に食事を描写していて。

そんでもってやっぱり一流の茶人である利休が用意するお料理が一番おいしそうに書かれているのもさすが。

 

物語のストーリーそのものも楽しめるし、その他のところでも大いに楽しめる、あの本の厚みに比例した熱くていい作品であった。

 

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