江戸は燃えているか TOUCH AND GO | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

 

作/演出 三谷幸喜

 

出演

◇幕臣たち

勝海舟        中村獅童

山岡鉄太郎      飯尾和樹

◇薩摩藩士たち

西郷吉之助      藤本隆宏

中村半次郎      吉田ボイス

◇勝家の人々

たみ(勝海舟の妻)  八木亜希子

ゆめ(勝海舟の娘)  松岡茉優

順(勝海舟の妹)   妃海風

村上俊五郎(順の夫) 田中圭

◇勝家の使用人

かね(勝家の女中頭) 高田聖子

いと(勝家の女中)  磯山さやか

たえ(勝家の女中)  中村蝶紫

 

平次(庭師)     松岡昌宏

デク(取的)     藤本隆宏

 

(あらすじ)※HPより
時は慶応四年。
鳥羽伏見の戦いで幕府軍に勝利した西郷吉之助(隆盛)率いる官軍(新政府軍)は、江戸城総攻撃のために、東海道を進んできていた。
西郷としては、無駄に血を流さずにを江戸城を受け渡してもらえるなら、こんなに嬉しいことはない。そこで幕府側の代表である勝海舟と会って降伏を勧めることにする。
だが、この勝という男、実は元来の江戸っ子気質で、気が小さい上に喧嘩っぱやい。こんな性格の勝が西郷に会ったら、間違いなく交渉決裂。江戸は火の海になるのは目に見えていた。江戸の庶民たちも、誰もが戦さは望んでいない。もう戦さはこりごりだ。
そこで立ち上がったのが勝家の使用人たち。彼らが考えた作戦は、勝をニセの西郷に会わせて、ニセ会談をやらせている間に、勝家の庭師の平次に勝のフリをさせ、本物の西郷に会わせて、和平交渉をしてしまおうという、大胆なもの。
なんとしても江戸を戦火から守るんだ!
名もなき庶民たちによる、西郷吉之助&勝海舟を相手の大芝居が、今、始まろうとしている。

 

三谷幸喜が描く幕末群像喜劇!ここに誕生!

今作のスローガンは
「新橋演舞場史上、もっとも笑えるコメディ」。
歴史をつくった偉い人たちと歴史に名を残さなかった庶民たちの可笑しくも愛おしい、江戸無血開城をめぐる群像喜劇を三谷幸喜が書き下ろす最新作「江戸は燃えているか」、乞うご期待ください。2018年3月、新橋演舞場史上、最も笑えるコメディが開幕します!

 

◇◆

 

ちょっとした記念日を祝うべく、大雪降る中、行ってまいりました新橋演舞場。

 →『江戸は降っているか。

 

いつもの三谷舞台に出る役者さん(例:戸田恵子さん、浅野和之さんなど)がおらず、新鮮な雰囲気を楽しむことができた。良く言えば新鮮、悪く言えば違和感。

役者さんが違うだけでこうも空気感が変わるものか、と正直驚いた。

しかしこの作品でいいものみた!と思ったのが、ずんの飯尾である。

みんなが一所懸命演じている中、飯尾だけの普段感がひときわ目立った。気負ったところがなく(ように見えた)、テレビでいつも見ている飯尾をそのまま舞台で見ている感じ。

私が中村獅童が好きじゃないせいもあるのだが(何も関係ないが、竹内結子ちゃんを傷つけた恨みは忘れん!)、中村獅童の前のめり演技がどうも痛々しくてねえ・・・。それにつきあわされる磯山さやかちゃんが気の毒であったが、さすがバカ殿(志村けん)の下で鍛えられたコメディアンヌ、見事なさばきかたであった。

そんな痛々しい中村獅童を見たあとでの、普段感あふれる飯尾におばちゃん、ホッとしたわあ。

バラエティでは10年以上も前から私の中で絶賛の飯尾だったが、まさか舞台でも絶賛することになるとはね〜

そんな中、こんな記事が・・・

→『ドラマ『アンナチュラル』でも好演 ずん・飯尾がバラエティーやドラマで引っ張りだこのワケ

 

(引用初め)

「今と変わらない独特な間合いとフレーズでじわじわと視聴者の心を掴み、その後、世間に飯尾の実力が知れ渡った。プチブレイクする以前も芸人仲間や業界関係者からはすでに一目置かれる存在であったが、コンビ結成時が同期の「キャイ~ン」と比べられてしまい、「売れっ子になるまで時間がかかっていたが、ここに来て“遅咲きブレイク”しましたね」と業界関係者は語る。
 もともと飯尾の芸風はハマる人にはハマる芸であり、世間に目立ちはしなかったが、テレビ出演は続いていた。ピンとしての出演が増えても、相方・やすのことを忘れることなく、新ネタを作り、コンビでの活動も精力的に行っていた。
 2010年頃から常にプチブレイク状態が続いている飯尾。バラエティー番組のみならずテレビドラマやCMをはじめ、あらゆる場所で引っ張りだこだ。2018年1月から3月まで放送されたドラマ『アンナチュラル』(TBS系)では、臨床検査技師の坂本誠役として出演。脇役だったが「いい味を出している」と俳優としても話題になり、いまだ毎週“アンナチュラル・ロス”になるファンの間で「飯尾さん最高」と好評だ。」

(引用終わり)

 

世間に飯尾の存在が認知され、私も嬉しい限りですじゃ。

 

そんな飯尾のことはさておき、勝海舟を演じた中村獅童が唯一よかったのは、

やっぱ仕方ないから西郷どんに会うわ〜

と決意したもの、グダグダした挙句、

やっぱり気が乗らないわ!行くの、やーめた!!

とでっけえ声で宣言するとこ、あそこはすばらしかったです(笑)

ダメ男、わがままフルスロットル!!

きっとこれは演技以上にもともとの素質が活かされているに違いない!!←妄想。

 

この作品、中村獅童と松岡昌宏が入れ替わって江戸を無血開城へと導く、という話であるのだが、そもそも中村獅童と松岡昌宏って似てるか〜?と思いながら見ていた私。

これが不思議なことに、顔なんて全然似てないのに、雰囲気とか体つきとかおでことかなんとなく似てるんだよね〜。そのことに気づいた三谷幸喜ってすごいわ。

 

そんなわちゃわちゃと有名どころが多く出る中、忘れてはいけない影(?)の功労者は西郷吉之助を演じた藤本隆宏さんと、劇団☆新感線でおなじみ、女中頭を演じた高田聖子さんである。

この2人がいなかったらちょっと大変だったと思う。

特に藤本さんは、西郷どんと取的(お相撲さん)の一人二役でそれはそれは大変だったと思うが、とにかく西郷さんらしさがすごく出ていて、ぴりっと舞台がしまったなあ。

 

あと、私にとって大変印象深い出来事が。

休憩挟んで後半が始まったばかりのころ、勝海舟邸の庭の池の水が急に音を立ててじゃばじゃば流れ込みだした・・と思ったら、急に女中や奥様たちが歌い出してミュージカル風になったシーンがあったのだが、その音楽の調と池の水の音が絶妙にハモっていたのだ!音が一緒!!!!

これ、たまたまなんだよね?

それとも水の音まで計算してこの高さの音を出すように調整してるとか!?

と、こだわりなのかたまたまなのかわからないが、池の水音に感激した私なのであった。

(水や風の音が、BGMと混ざって気持ち悪くなることがたびたびある)

 

最後に。

以前の記事にも書いたが

 

「この舞台はとにかくお客様に笑っていただく、それ以外のものは何もありません。(略)見終わって『あんな勝海舟なんていないよね。』みたいなことを言いながら劇場を出て、駅に着いた頃にはもう話題にも上らなくて、まあ楽しかった昂揚感だけはほんのり残ってる・・くらいがちょうどいい、それ以上のことは芝居に求めたくないんです。僕自身がそういうお芝居が見たいんだけど、なかなかない。やっぱり難しいんだと思います。これは面白いな!と思って観ていると、最後はいい話しになっちゃって「泣かせに入ってるな」と思うとホントに寂しいし。『笑いは高尚なもの』みたいな感じで始まって、『笑わせるだけでは終わらせないぞ』といった作家の決意表明みたいなものが漂ってくると、もう耐えられないんですよね。でもわかるんですよ、そのほうが書きやすいから。僕も普段から、そうなりがちな自分の未熟さを感じ、なるべくそうならないよう心がけているんです。(略)」

 

幕間に読んだ三谷幸喜の記事が印象深かった。

三谷さんの思惑通り、本当にただただ、ひたすら笑うだけの舞台でとにかくおもしろかった。

面白い中にも、どんでん返しのどんでん返しがあって凝っていてそちらも楽しめた。

だが何か物足りなかったのは、やっぱり私の嫌いな中村獅童がハメを外し過ぎたせいじゃなかろうか!!!!!←完全に私怨。