先日とても素晴らしい本を見つけました。「和歌で読み解く天皇と国民の歴史」です。私は普通に、天皇の御製が沢山出てくる本だと単純に考えていましたら、全然違いました。天皇は、その言葉の影響力から、その本心、気持ちを口にしません。しかしそんな天皇のお心が出てくる唯一のものが御製=天皇の和歌と言われています。そこで多くの方々が、御製を紐解かれていてそうした本が沢山あります。ただ、この本ほど分かり易く紐解かれた本はないと思うのです。しかも現在の私達に繋がる所まで紐解いているのです。それは御製だけでなく、例えば特攻隊で亡くなられた英霊の方々の和歌も挙げているからでしょう。そして、御製も国民との繋がりを表すものを基準として選択して記載されています。そして裏表紙に記載があるように「通史で見る天皇と国民の関係」を紐解いていることから、我が国、日本というものが理解しやすい本となっているのです。

 

 

 

特筆すべきは、著者の古宮春人氏が元小学校教諭の後、塾講師として国語と古典を教えている方であることです。塾講師の方々はやはり教え方が上手いから、このような読みやすく分かり易い本なんだと思うのです。そしてもう一つ、一番大事なことがあります。それは長年直に子供達、若い人達を見てきた点で、現代の若者と昔の若者の天皇と皇室を観る目が変わっていることを語られていることです。これは、私が靖国神社に長年通ってきたなかで漠然と感じていたことと一致していました。

 

そうした時代の変化について書かれたプロローグから抜粋(素晴らしいので全文読んで欲しいです)↓

私は大学受験の予備校で三十年以上のあいだ高校生や大学受験の浪人生に国語の古文を教えています。

・・・省略・・・

もっとも同じ高校生といっても私が予備校で教えはじめた三十年前の高校生と今の高校生とでは多くの点で意識が違っています。

その一つは、高校生や浪人生の天皇・皇室に対する意識の違いです。その違いを簡単にいうと、三十年前の高校生や浪人生は天皇・皇室に対して無関心あるいは軽侮の意識をかなり強く持っていました。

それに対して今の高校生や浪人生は天皇・皇室の事を詳しく知りたがり、しかも「天皇は立派な人ではないのか」という気持ちを持っています。

なぜこのように言えるのかというと、それは私の直感です。私の記憶では天皇に関する高個性や浪人生の意識は三十年前には「無感心」「軽侮」でしたが、それが二十年ほど前から徐々に変わり始めました。

今から二十年ほど前、私が予備校の校舎から移動する電車の座席にすわって本を読んでいた時に、JR御茶ノ水駅あたりで社内に乗り込んで私の目の前に立った二人の女子高生が、暇つぶしのおしゃべりで「皇室が・・・」と語りはじめました。

電車内での暇つぶしに皇室を話題にするようなことは私の高校生のときにもなかったことなので、そのとき私は「時代が変わりはじめた・・・」と感じたのです。

 

その変化は今も続いています。最近は私が古文の授業中に天皇の説明をしはじめると、現役生のクラスでも浪人生のクラスでも急に教室がシーンとなって私の説明に耳を傾けます。予備校の講師としては「肝心の本文解説をしている時にシーンとなってくれよ」という気持ちが無いわけでもないのですが、ともあれ今の若者は心の奥底で天皇のことを知りたがっています。

しかも天皇の悪口ではなく、歴代天皇は立派な人たちだったという話を聞きたがっています。なぜそれが分かるかというと、私が「歴代天皇の理想は無私の天皇にあった。だから今まで千五百年以上も続いてきたのだ」というような話をすると聞いている生徒が満足そうな顔をするからです。

・・・以上

 

このプロローグの中で天皇と国民の関係という問題は、国史上の非常に重要な問題でもあると語っています。そして、この本ではそうした関係性が分かるように書かれているのです。

 

以前、江崎道朗氏のご著書で、明治維新後の若い日本人の精神性が二つに分かれさせられた目に多くの問題が起きたということが書かれていてハッとさせられたことがありましたが、この本を読んでいて最後の方、戦後の日本も明治維新後と同じで精神を割かれている状態にあったことに気づかされました。現代の日本の問題点はここである、と。というのも、当時多くの自死者がいました。そして、当時に比べれば安寧な世の中である現在の日本はさらに多くの自死者がいるという問題があります。そこにこうした精神の二面性が関わっているのかもしれないとも思えてきたのです。しかし、そうした割かれた状態とは関係なく、本来の日本の状態で育っているのが現在の若者達であるのかもしれないとも思えるのが、現代の若者の純粋な天皇と皇室への好奇心であり、それは希望でもあります。

 

時間が無くなってしまったので、本書については、また次回取り上げたいと思います。

 

この本も素晴らしい「日本とは和歌」

 

今朝補足しました↓

 

 

 

 

 

 

 

 

🌸🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎