最近、後輩Kとよくデートしている。
2年ほど前、第一次「熱心口説かれ期」の際、数回外で会ったことがあったが、
そのときは、彼の車で人気のないところに行き、
そこでひたすらおしゃべりするという、半軟禁状態デートであった。
無論向こうも少なからず接触を求めてくるし、
けれどこちらにその気はないし、逃げようにも逃げ場もないしで、
会った後は非常に疲労した。
それに、当時私には付き合っている人が2人もいた。
面倒な思いをしてまでKと会うメリットはどこにもなかった。
そういうわけで、Kと外で会うことは、その後しばらく封印していた。
しかし、時間は流れ、私はパパと付き合うことをやめ、
Sさんと過ごす時間もなくした。
いつの間にか、私は1人だった。
別れた直後は、1人でいることに特に苦痛を感じなかった。
いや、悲しい気持ちが強すぎて、
「1人が苦痛」
などという感覚自体がない状態だったのだ。
当時私が一緒に過ごしたい人は、たった1人しかいなかったし、
誰もその代わりにはなれなかった。
なれるとすれば、チアキだけだった。
さらに時間が流れ、私は傷心から大分立ち直った。
いや。
記憶が薄れてきただけかもしれない。
いずれにせよ、
なにかを思い出して急に涙ぐんだりするようなことはなくなった。
それと同時に、なんとなく1人で過ごすことに対する
所在なさ感が芽生えてきたのだ。
チアキと好きなときに会えるのが最善の策だが、
住んでいるところも離れていて、お互いに忙しい今、
それを実現することは不可能だ。
先日までの「一緒に過ごしたい人」はむしろ除外されている今、
私の「一緒に過ごす人」に、特に制限はない。
もちろん「御免こうむりたい」人がいないわけではないが。
そんな私にちょうどよくあてがわれるのが、Kなのである。
彼は小さい子供がいる父親としては、かなり自由な暮らしをしていると思う。
なぜなら、私が遊びに誘って、断られた試しがないからだ。
普通ならば
「いや、今日はちょっと予定が・・・。」
というのが必ずあるはずである。
しかし急な誘いでも大概は応じてくる。
よほど女房「が」ホレていて夫の自由を許しているか、
子供一辺倒になっているかのどちらかであろう。
まぁ、それは正直私には関係のない話だ。
Kとはデートはするが、やはりそれだけだ。
しかし、彼は策士である。
少しずつではあるが、私の領空を侵犯してきている。
最初は抱きしめ、順を追うようにキスするようになった。
今では、デートの別れ際には必ずキスをするという流れを作ってしまった。
Kはもともと私の好みのタイプではない。
しかし、その心配りはなかなかのものだ。
職場においても、またプライベートで一緒にいるときでも、
私の動きを細やかに観察し、手を差し伸べる。
それは決して「でしゃばった」行為ではなく、
あくまで絶妙なサポートなのだ。
心憎い男である。
私も既婚者との付き合いに関しては熟練している方だと自負しているが、
この細やかさに近頃参り気味である。
少しずつだが、Kにホレ始めている。
作戦に乗せられている。
しかし、まだ
「彼に本気になっていない。なってはいけない。」
私がいる。
全てを明け渡していいとは思っていない。
先日、職場の中で、たまたまKと2人きりになった。
「ねぇ。
また2人でどこか行こうよ。仲良くデートしてさ。」
Kは私をデートに誘った。
私は軽く苦笑いして言った。
「そうねぇ・・・・。いいけど。
・・・はぁ。私って不幸だわ。」
「どうして?何が不幸?」
Kは質問してきた。
それはそうだろう。普通に考えたら、脈絡がない。
「だってそうでしょ。
自分のことを『好きだ』って言ってくれる男がいるのに、
その人とは結ばれない運命なのよ。
これが不幸じゃないって言える?」
それは、私が既婚者と付き合ってみて学んだ真実だった。
「確かにオレはあなたを幸せにはできないかもしれないよ。
でも、そういう『雰囲気』を作ってあげることはできるよ。」
彼は言った。
よくわかる。
私は「そういう雰囲気」を以前しばしば味わっていたのだから。
「そうね。でも『雰囲気』だけじゃイヤなの。」
「そう?
でもいいんじゃない?そういう方が。」
悪気はないのだろうが、Kはそう言った。
既婚者の素直な気持ちなのだろう。
確かにそういう方がいい場合もある。
実際私も
「それも悪くない」
と思っていた。
しかし、今の私は、それがイヤなのだ。
「確実に私だけのものである」1人の男がほしいのだ。
「最初はね、それでもいいのよ。
でもね、段々辛くなってくるの。」
私は、Kの前で初めて確信めいたことを口にした。
一般論を語っているようにも聞こえるだろうが、経験談にも聞こえる。
もちろん、私にとっては「一般論を装った」「経験談」だ。
しかし、Kにはどう聞こえているだろうか?
「そう・・・?」
量りかねているような返答だった。
私の発言が、一般論なのか、
それとも経験に基づいた、苦いセリフなのか。
その話はそこで終わりになった。
Kにホレてはいけない。
自分が辛くなる。
でも、都合よくデートに付き合ってくれる存在は、実際重宝しているのだ。
しかしそうやって一緒に過ごす時間をもてばもつほど、
私の情は少なからず彼に移っていく。
気を緩めてはいけない。
以前の「カレ」たちと違って、
Kは同じ町に住む、同じ職場の後輩なのだ。
いつ誰にどう見られ、ウワサされるかもわからない。
しかし、今の
「ちょっと寂しい」
気持ちの私に、彼の存在はうってつけなのだ。
危険なにおいがしている。
私は、
今こそ自分を律しないといけないときなのかもしれない。
2年ほど前、第一次「熱心口説かれ期」の際、数回外で会ったことがあったが、
そのときは、彼の車で人気のないところに行き、
そこでひたすらおしゃべりするという、半軟禁状態デートであった。
無論向こうも少なからず接触を求めてくるし、
けれどこちらにその気はないし、逃げようにも逃げ場もないしで、
会った後は非常に疲労した。
それに、当時私には付き合っている人が2人もいた。
面倒な思いをしてまでKと会うメリットはどこにもなかった。
そういうわけで、Kと外で会うことは、その後しばらく封印していた。
しかし、時間は流れ、私はパパと付き合うことをやめ、
Sさんと過ごす時間もなくした。
いつの間にか、私は1人だった。
別れた直後は、1人でいることに特に苦痛を感じなかった。
いや、悲しい気持ちが強すぎて、
「1人が苦痛」
などという感覚自体がない状態だったのだ。
当時私が一緒に過ごしたい人は、たった1人しかいなかったし、
誰もその代わりにはなれなかった。
なれるとすれば、チアキだけだった。
さらに時間が流れ、私は傷心から大分立ち直った。
いや。
記憶が薄れてきただけかもしれない。
いずれにせよ、
なにかを思い出して急に涙ぐんだりするようなことはなくなった。
それと同時に、なんとなく1人で過ごすことに対する
所在なさ感が芽生えてきたのだ。
チアキと好きなときに会えるのが最善の策だが、
住んでいるところも離れていて、お互いに忙しい今、
それを実現することは不可能だ。
先日までの「一緒に過ごしたい人」はむしろ除外されている今、
私の「一緒に過ごす人」に、特に制限はない。
もちろん「御免こうむりたい」人がいないわけではないが。
そんな私にちょうどよくあてがわれるのが、Kなのである。
彼は小さい子供がいる父親としては、かなり自由な暮らしをしていると思う。
なぜなら、私が遊びに誘って、断られた試しがないからだ。
普通ならば
「いや、今日はちょっと予定が・・・。」
というのが必ずあるはずである。
しかし急な誘いでも大概は応じてくる。
よほど女房「が」ホレていて夫の自由を許しているか、
子供一辺倒になっているかのどちらかであろう。
まぁ、それは正直私には関係のない話だ。
Kとはデートはするが、やはりそれだけだ。
しかし、彼は策士である。
少しずつではあるが、私の領空を侵犯してきている。
最初は抱きしめ、順を追うようにキスするようになった。
今では、デートの別れ際には必ずキスをするという流れを作ってしまった。
Kはもともと私の好みのタイプではない。
しかし、その心配りはなかなかのものだ。
職場においても、またプライベートで一緒にいるときでも、
私の動きを細やかに観察し、手を差し伸べる。
それは決して「でしゃばった」行為ではなく、
あくまで絶妙なサポートなのだ。
心憎い男である。
私も既婚者との付き合いに関しては熟練している方だと自負しているが、
この細やかさに近頃参り気味である。
少しずつだが、Kにホレ始めている。
作戦に乗せられている。
しかし、まだ
「彼に本気になっていない。なってはいけない。」
私がいる。
全てを明け渡していいとは思っていない。
先日、職場の中で、たまたまKと2人きりになった。
「ねぇ。
また2人でどこか行こうよ。仲良くデートしてさ。」
Kは私をデートに誘った。
私は軽く苦笑いして言った。
「そうねぇ・・・・。いいけど。
・・・はぁ。私って不幸だわ。」
「どうして?何が不幸?」
Kは質問してきた。
それはそうだろう。普通に考えたら、脈絡がない。
「だってそうでしょ。
自分のことを『好きだ』って言ってくれる男がいるのに、
その人とは結ばれない運命なのよ。
これが不幸じゃないって言える?」
それは、私が既婚者と付き合ってみて学んだ真実だった。
「確かにオレはあなたを幸せにはできないかもしれないよ。
でも、そういう『雰囲気』を作ってあげることはできるよ。」
彼は言った。
よくわかる。
私は「そういう雰囲気」を以前しばしば味わっていたのだから。
「そうね。でも『雰囲気』だけじゃイヤなの。」
「そう?
でもいいんじゃない?そういう方が。」
悪気はないのだろうが、Kはそう言った。
既婚者の素直な気持ちなのだろう。
確かにそういう方がいい場合もある。
実際私も
「それも悪くない」
と思っていた。
しかし、今の私は、それがイヤなのだ。
「確実に私だけのものである」1人の男がほしいのだ。
「最初はね、それでもいいのよ。
でもね、段々辛くなってくるの。」
私は、Kの前で初めて確信めいたことを口にした。
一般論を語っているようにも聞こえるだろうが、経験談にも聞こえる。
もちろん、私にとっては「一般論を装った」「経験談」だ。
しかし、Kにはどう聞こえているだろうか?
「そう・・・?」
量りかねているような返答だった。
私の発言が、一般論なのか、
それとも経験に基づいた、苦いセリフなのか。
その話はそこで終わりになった。
Kにホレてはいけない。
自分が辛くなる。
でも、都合よくデートに付き合ってくれる存在は、実際重宝しているのだ。
しかしそうやって一緒に過ごす時間をもてばもつほど、
私の情は少なからず彼に移っていく。
気を緩めてはいけない。
以前の「カレ」たちと違って、
Kは同じ町に住む、同じ職場の後輩なのだ。
いつ誰にどう見られ、ウワサされるかもわからない。
しかし、今の
「ちょっと寂しい」
気持ちの私に、彼の存在はうってつけなのだ。
危険なにおいがしている。
私は、
今こそ自分を律しないといけないときなのかもしれない。