最近、よくないのである。
既婚後輩Kへの依存度が高まっているのだ。

Kから初めて告白されたのは約2年前、
その頃私は「Sさん」と「パパ」という2人の既婚カレがいた。
当時の私は、今よりも革新的?であった。
2人に奥さんがいることは重々承知していたが、
恋を告白してきたのはどちらも向こうの方だという自負があった。
2人のカレを同じように好きだったし、
会えたときに楽しくて、相手からの愛情を感じられれば、それでよかった。
家庭のことさえそれぞれうまくやってくれれば、何も問題なかった。

そんなときに後輩Kからの告白である。
さすがに「年下」の「後輩」からの告白は初めてのことで、
その事実に少なからず私は驚いたが、「告白」自体には特に衝撃はなかった。
「若いけれど、また既婚者か。」
私は思った。

Kは正直私の好みではない。
顔は整っているが、少々涼やかすぎる。
頭は切れるが、やせすぎているし、性格も非常にクールだ。
私は知的な男も嫌いではないが、
どちらかと言うと少しガッチリ目のホットな男が好みだ。
生来の好みではない。

しかし不思議なことに、そのような涼しげな印象からか
これまで熱心に口説かれても、
Kのことを
「あぁ、ウザイ。もう放っておいて。」
と思ったことはあまりない。
引き際をわきまえているのだ。
そういう意味ではプレイボーイなのだと思う。
単純な繰り返し接触を嫌悪に変えさせないのだ。

まぁともかく、私はその後しばらく2人のカレと付き合い続けたし、
「パパ」と別れた後も、約半年間「Sさん」と付き合っていた。
その間はKに口説かれても気持ちが動くことはなかった。

しかしだ。
今年の初めに、本意ならずも私はSさんと別れた。
涙が止まらなかった。
「これが失恋なのだ。」
と初めて感じたのではないか、というほどの悲しみだった。
30を越しての失恋は辛い。
私は表に出さずに、しかし前の恋愛をしっかり引きずっていた。

そして夏。
急に仕事が忙しくなった。
ネットサーフィンをしながら仕事をするのがスタイルの私も、
そんな暇もなくなった。
そんな私を支えたのがKだ。

こう言ってはなんだが、生来の頭の出来は、
きっとKよりも私の方がいいと思う。
しかし私は勉強熱心ではない。
元々の頭の良さに甘えている部分がある。
おまけに要領もいい。
だから、全てを理解しなくてもなんとか70点を取れた。
しかし、常に70点の状態なのだ。100点はない。

Kは勉強熱心だ。仕事に関する造詣も深い。
いわゆる秀才タイプである。
大人になればこういうタイプには敵わない。
結果、私は仕事で彼に頼ることになる。

「きちんと勉強すればいい」と思う。
そうすれば、私だってKのように技術で自立できるのだ。
しかし、言い訳をするようだが、私は今の職業にあまり向いていない。
その事実に「この仕事に就いてから」気づいてしまった。
もちろん今から人生を大きく変える気もないし、
今の職業に「全く向かない」ということではない。
続けてはいくつもりだ。いや、続けていくしかないであろう。
しかし、熱心に勉強する気にはなれない。

Kは、
「私を好き」だと言う。
そして
「たとえつまらないこと(仕事も含む)でも、私の力になりたい。」
と言う。
そこに利害が一致してしまうのだ。

始めはある種「利用する」ような形でKにサポートを頼んでいた私であるが、
そのうち苦しくなってきた。
自分の無力さが苦しい。なぜ1人で仕事できないのか。
なぜ、知識を身に着けないのか?

なんでもないことである。
勉強すればいいのだ。そして、身に着ければいい。
しかし、仕事は際限なくやってくる。
のん気に本を1ページずつ開いてはいられない。
私はKに頼らざるを得ない。

つまらない自尊心である。
ある意味、女の部分を利用してKを使っておきながら、
そんな自分が嫌なのだ。

私は、自分の役割が技術者ではないと人に言うとき、
「私は頭で売ってるわけじゃないから。」
と説明する。
しかし、
少なからず技術者の1人であるとアピールするときには
「私は色気で売ってるわけじゃないから。」
と説明するのだった。
愚かな女である。どちらにもなれない。

Kといると、そんな自分を感じて、自己嫌悪に陥るのであった。
一方で、Kへの依存心の高まりは、恋にも似た感情を揺さぶる。

勝手な女。
頭でも色気でも勝負できない。
中途半端な。

こんな自分をダメだと思いつつ、
結局はKの好意にあぐらをかいているのが今の私なのだ。
そして、あれほど
「好みじゃない。」
と言っていたKを、
少なからず意識して、頼りにしているのだ。


もう誰かの旦那とは恋しない。

そう思っていた。
やはり自分1人のものになる人と付き合いたい。
勝手だが、Sさんと別れて、私がみつけた1つの真実だった。

それなのに、また誰かの男を頼りにしようとしている。

自分に呆れる一方、この流れを今は止める術がないのだ。