遅れてGT。。


鳥山明先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。




超絶☆ダイナミック!


渾身のかめはめ波を叫びました。


よろしければお聴き下さい。





思い返してみるとドラゴンボールという作品は、男の子が好きなモノ全てが魅力的に詰まった作品だったと思います。実家にもボロボロにふやけた単行本が眠っており、寝る前も風呂の中でもトイレでも読んでいた記憶があります。


ドラクエも飲まず食わずでやり倒しました。受験の邪魔をしてきた事もありました。大事な時期にドラクエ7が出て、僕は鳥山先生を選びました。後悔はしていません。


自分は戦闘バチバチのフリーザ編も好きですが、初期の頃のブルマとカプセルハウスでシェアしたり、カメハウスで鍋をしたりといったほっこりしたシーンも大好きです。


殺伐としていなくて、時代背景から来るものなのかは分かりませんが、生き急いでいなくて、いい時代だったなと思います。自分が子供だったせいなのか、余計な情報が無かったからかも知れません。勿論今の時代も良いところは沢山あります。このアメブロも良いツールだと思います。


ツイッターのイラストなどを見ると、かっこいいスーパーサイヤ人も魅力的ですが、やはり初期の頃のイラストなどを見ると、ついうるっと来ちゃいますね。そして何よりも驚いた事が、世界中からこれ程まで多く人達に愛されていた事が何よりも嬉しいです。
 

鳥山明先生ありがとう!

そして新たなステージへ!


旅行先での出来事だった。僕の旅館の人に対する態度が冷たいと言うのだ。それ以前にも社交性の欠如している僕に、フラストレーションを抱えていたらしい。そのフラストレーションが旅先の疲れによって破綻し、接客にプロ意識を持つ陽葵は、僕の旅館の人に対する無愛想を許せなかったのだ。

「仲居さんにもっとちゃんと返事くらいしてよ、ちょっとは世間話するとかさ」

「疲れるじゃないかそういうの、こっちは客で来てるんだからさ、そんなの別にいいじゃないか」

「旅館の仕事って大変なんだよ、向こうの人だって忙しい中頑張って笑ってくれてるんだからさ、ちょっとぐらい笑って返してくれても良くない?何の為に接客業してるのよ、もうゆっちゃん最初に会った時から全然進歩してない、ああ疲れる」

陽葵は次第に「疲れる」を復唱し始めた。最初に出合った頃は、僕のそういった嘘の付けないところが可愛いと言ってくれてたが、ある場面においては嫌悪感を抱いていた。陽葵は僕の嘘の付けないところを好きになり、嫌いになっていった。




僕と陽葵は仕事が早く終わった時などは、私服に着替え、そのままカジカのソファーで注文をとり、束の間の時間を楽しんだ。弟は野球が大好きでチャンネルの主導権を争う話から、欲しい洋服の話など。それから母の料理が手抜きになってしまったので料理を勉強したいからと、ダシの取り方から食材を入れるタイミング、火の扱い方などを僕に聞いて来た。

二人にしか分からない遊びも考えた。会話を全て歌で返すというルールを作り、即興ミュージカルみたいな事をした。陽葵の透き通る様なソプラノに返す、僕のたどたどしい滑稽な歌声に陽葵は終始笑っていた。

陽葵と話をしているとあっという間に時間が過ぎていった。僕達の事を内心面白くないと思っているクルー達もいたかも知れないが、陽葵の天真爛漫な性格がそういった雰囲気を作らせなかった。僕は店内の掛け時計を見つめ、時計の針を何十回、何百回と逆に回したいと思った。

しかしどんなに仲の良い恋人同士の間にもお互いの嫌な所が目に付くようになり、時には大喧嘩に発展してしまうもの。僕達の間にも倦怠期が訪れた。





運転手にお金を支払い、車からゆっくりとロータリーの地面に足を着いた。周りを見渡し、崎玉の姿が見えない事を確認し、肩を撫で下ろした。まずは崎玉に捕まらないように、できるだけヒトケが多くて、土地勘のあるところへ逃げたいと思った。土地勘を探られると反ってリスクがありそうだが、判断力を損なうよりはマシだと思った。

しかし駅のホームで電車を待っている最中、僕はまたフラッシュバックに襲われた。駅のアナウンスや乗客の靴を鳴らす足音が、脳内へ直接吸い込まれ、何かを呼び起こす様な感覚を覚えた。

薬を飲みたいところだが、あれを飲んだらここまで行動した意味が無くなってしまう。僕は耳を両手で塞ぎ、ホームのベンチに座った。踏切のサイレンが両手の隙間をこじ開けて大音量で入って来る。僕は自分宛ての手紙の内容を思い出した。

「薬は絶対に飲んではいけない」

胸が苦しい。呼吸が出来ない。割れるような雑音が段々フェードアウトしてゆく。僕は気を失ってしまうのだろうか。崎玉に捕まってしまうのだろうか。電車の発車ベル音が鳴る。

レストランカジカの乾いた鐘の音が鳴る。

「初めまして、祇園杏です」

ボブカットに透き通る様な白い肌、背は低めで猫目が印象的な女性だ。


知念草さんとはカジカでクルーとして一緒に働いていた時も、風邪で休む時ぐらいしか電話をかけた事が無かった。受話器の声からは少し戸惑いを感じた。

「どうしたの?何か用?」

「知念草さん、ちょっと聞きたい事があるんです」

「何よ改まって、そう言えばあの時聞けなかったんだけどさ、何あんた達結婚したの?」

「はい、一応そういう事になってはいます」

「何よその他人事みたいな言い方、良かったわね、おめでとう」

「ありがとうございます」

「ごめん脱線しちゃったわね、聞きたい事って何?」

僕は乾いた口の中の空気を一旦呑み込んだ。

「祇園て人知っていますか?」

呑み込んだ筈の空気が知念草さんに伝染した様に嫌な空気が一瞬を支配した。

「あんた頭大丈夫?あんたの隣にいた人が祇園杏じゃない」

「祇園、杏。」

「ちょっとどういう冗談?本当に大丈夫?」

興奮状態の中で、自分の中の不確かな情報はようやく確信に変える事ができた。

「ええ、大丈夫ですよ。改めて冗談を踏まえた上で、報告したかったんです」

確信を得た上で悲しい気持ちに襲われた。やはり僕が想っている陽葵は陽葵では無いのだ。それに祇園杏という人物の記憶がない。一体どんな人物なんだろう。

「あんたの冗談て本当に分かりづらい。話はそれだけ?」

「それだけです」

「何か変な話、ねぇいつ遊びに来るのよ」

「また連絡しますよ」

「あんたに聞いてもいつになるか分からないわ、杏に聞いてみた方が早いわね、それじゃあまたねばーい」

僕が想っている木下陽葵が祇園杏であるという事実をようやく自分の中に落とし込む事ができた。先の見えないトンネルの明かりがやっと見えてきた気がした。だが抜け出すまでの距離は相当長く感じられた。背筋に吹き荒れる風が距離の長さを示していた。



動揺が胃から胸を伝って頭の中を完全に支配した。どうにか震える声を隠そうと声のトーンを上げた。
 
「そうなんだ、寄りを戻したんだ、実はそれを言いたかったんだよ」

「わざわざ報告する為に電話したのか?まあ良かったじゃないか」

「ついつい誰かに言いたくなって電話しちゃったよ、悪かったな仕事中に」

「今度またゆっくり話聞かせてもらうよ、また飲もうぜ」

「ああ、それじゃあ」

マスは何の疑いも無い様子で電話を切った。


僕が陽葵と呼んでいる人物が、祇園であるという事実を認めたくは無いが、一度呑み込むとして、しかし姿形に至る記憶まで書き換える事など本当に可能なのだろうか、名前をただ書き換えられているだけなんじゃないだろうかと予測してみたが、そんな事は信じたくなかった、陽葵が僕にあんな事をするなんて絶対信じたくない。

僕の愛した木下陽葵がこの世の何処かにいる筈なのだ。僕は電車の時間を確認して家を出た。現段階では未だこの状況において納得する事ができなかった。タクシーに乗り込み、運転手に行き先を逗子駅と伝えると、携帯電話から知念草さんに電話をした。



僕はバックに歯ブラシや数枚の下着などを詰め込み、陽葵と昔カジカで撮ったフォトフレームを手にした。もしかしたらこの写真に映し出された陽葵さえも虚像であるかも知れない。そう思うと涙が込み上げて来た。簡単に忘れる事の出来ない大切な思い出を、簡単に操作しようとする者に怒りを覚えた。


 自分の記憶に著しく変化を感じたのは、やはりマスと飲んだ翌朝の出来事だ。この家を離れる前にどうしても確かめてみたい事があった。僕はマスに電話してみる事にした。

「おおどうした?」

マスは変わらず元気そうだった。

「マス、急で悪いんだけどちょっと聞きたい事があるんだ」

「悪い、今取り込み中だから後でかけ直すよ」

「いや、今じゃ無いと困るんだ、すぐ終わるから」

「何だよ聴きたい事って」

「最後に飲んだ日の事覚えているか?」

「ああ随分前だよな、そう言えば最近お前と飲んで無いよな、どうだ今日あたり」

「いや、今日は俺用事あるから。そのマスと飲んだ日に記憶を無くしてしまったみたいなんだ。俺マスに何か迷惑かけてないよな」

「お前にしては珍しいな、あの日は普通に帰っていったよ」

「そうか、それならいいんだ」

変に思われるかも知れないが、一番聞きたかった事を切り出した。

「あともう一つ聞きたい事があるんだけどさ、祇園て人知ってる?」

「ああ、お前の元カノだろ?寄りでも戻したのか?」



僕は自分の耳を、記憶を疑った。



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君がこれからやらなければいけない事、書き換えられたメモリーを現状に戻す事、削除されたメモリーを復元する事だ。崎玉の元へは行ってはいけない。君が陽葵と呼ぶ人物、彼女は書き換えられた虚像だ。

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ノートには陽葵が虚像と書かれているが、その人物が誰であるかまでは書かれていない。姿形は明らかに僕の中では陽葵なのだ。もしかしたら陽葵も崎玉によって操作されているのか、それとも僕の脳を操作して陽葵の虚像を作り出しているのか、考えれば考える程思考は混乱を来たした。



現在に至るまでの陽葵と過ごしてきた時間が崩れ落ちてゆく。しかし落ち込んでいる暇は無い。このまま記憶のすり替え実験のモルモットにされて人生を終えるなんてごめんだ。それに記憶の全てが虚像とは限らない。あのノートによれば記憶のすり替えに何度か失敗していると書いてあった。つまり本当の記憶とすり替えられた記憶が混在している狭間の世界に今いるということだ。ここから抜け出し、本当の記憶を取り戻さなければならない。



「受容体をシャットダウンします」
 
「パルス信号のパイプを元に戻します」

「カテーテルを脳インプラントに移行」



専門的な用語ばかりが行き交い、全容を理解する事はできなかったが、あのノートに書いてある通り、脳内の記憶を書き換えている事だけは理解できた。



 僅かに溶け出した薬が効いてしまったのか、僕はそのまま深い眠りに付いてしまった。しかし反って都合が良かったのかも知れない。あのまま起きている状態が続いていたら、流石に脳波の乱れという事で終始しなかったかも知れない。

 そしていつも通り何も変わらない日常を迎えた。いや、取り繕われた日常を迎えた。確かめたい事が次から次へと頭の中を巡る。陽葵を見送り、かりよしを保育園に預けた後、僕はメモしてあった金庫のダイヤルの数字を合わせ、金庫を開けてノートを手にした。混乱の渦を沈めて、冷静に考えなければならない。何故なら事実を知ってしまった今、もう寝たフリはできないからだ。脳波の乱れが接触不良で無かった事に気付けば何をされるか分からない。とにかく全ての事実を知り、真実を暴く必要がある。


「先生、脳波が乱れています。睡眠状態に入っているとは思い難いです」

僕は息を潜めて固唾を飲んだ。

「薬は飲みましたよね」

「間違いありません、確認しました」 

「接触不良かも知れません、続けましょう」


「脳梁を断絶、フラクタルカイン遮断、海馬をスリープします。視覚情報を脆弱化、リモデリングを再構築。海馬に擬似脳波を送ります。エンドルフィンが活発になりました」

「大脳皮質を脆弱化して下さい」
 
「先生、やはり眠っている筈の脳が起きてしまっている状態です」

崎玉は一瞬キーボードの打つ手を止めたが、直ぐに手を走らせた。何かを急いでいる様子だった。

「彼が海に行った時に刷り替えを妨害する症状が表れたのです。記憶のフェーズを再び戻されてしまうと厄介な事になる。続けましょう」

「抗記憶ナノウイルスを注入。ウイルスが海馬に到達するまで10秒」

「ウイルスだって?冗談じゃない、侵入させてたまるか」

僕は反射的に抵抗する様に、飛び起きようとしてしまったが、体が金縛りにあったみたいに硬直し、動く事ができなかった。

「抗記憶ナノウイルス、BAKUが刷り替えを妨害しようとするメモリーを捕食」

捕食。記憶を食べられてしまうと言うのか。記憶を失いたくない。陽葵。陽葵。