二人は黙々と手慣れた手付きで準備に取り掛かった。僕は恐る恐る瞼の隙間から辺りを伺った。崎玉先生がアタッシュケースからパソコンを取り出し、夥しい数のコードを繋いでいる様に見えた。先生が顔を一瞬僕の方へ向けた。僕は空かさず薄目に開いた瞼を完全に閉じた。全身の汗をかき集めた様な汗を拳に伝え、タオルケットの中で握り締めたシーツを濡らした。
先生は僕の頭部にヘッドギアの様なモノを取り付け、顔面にはゴーグル、後頭部にカテーテルを差し込んだ。
「祇園さん、いつまでこんな事をするつもりですか?」
「ずっと悠尋と一緒にいたいんです」
崎玉先生は陽葵の事を祇園と呼んだ。陽葵の旧姓は木下だ。先生は何故陽葵の事を祇園と呼ぶのだろう。それに陽葵は僕の事を悠尋と呼んだ。普段と呼び方が違う。僕が今理解できている事は、ここで行われている事が僕の想像を遥かに越えているという事実だけだ。