制作秘話
〜「不思議な宿屋」の舞台裏〜
閲覧していただいてありがとうございます
著者前田亮が綴る不思議な宿屋を舞台にした壮大な物語
この記事ではそんな「不思議な宿屋」という物語一話毎に焦点を当て
”どのようにして出来上がっていったのか”
その舞台裏を著者本人が当時の記憶を思い出しながら書いております
ここまで来ていただいたあなたに贈る「不思議な宿屋」と著者の舞台裏をどうぞ!
HPから来ていただいた方も、前田亮のブログから来ていただいた方も
どうぞごゆっくりとこちらのコンテンツをお楽しみください♪
目次
- 「第二話 不思議な夜」はこうして紡がれた
- 登場キャラクターと作品たち
- 込めた想い
- 感想
- 収録裏話
1、「第二話 不思議な夜」はこうして紡がれた
YouTubeサムネイルボツ画像その1(森の感じはイメージに近いんだけどね)
「第二話 不思議な夜」
第一話を書き上げ、そのままの勢いで書いていったのがこのお話です。
題になっている通りここで描きたかったのはこの不思議な宿屋での男(番才)の最初の夜です。
この「不思議な宿屋」という物語を書くにあたって一番意識していたことは、当時から5年経った今でも一貫して変わらず
”ご都合主義を無くす”
ということと、
”リアリティを追求する”
というこの二点です。
少しばかり展開が遅いなと感じてしまうというデメリットを背負ってでも、読者に「本当にどこかにこういった宿屋があるのかもしれない」と思ってもらいたいと今でも思っていて、だからこそとても丁寧に且つ言動に説得力を持たせようと試みているなと感じてもらえたらとっても嬉しい。
第一話では宿の外観や不思議な雰囲気を描いていましたが、この第二話では宿の内部にある宿泊者の部屋を描きました。
中央の襖で部屋を仕切っても三十畳もある広い部屋であるだとか、簡素な室内には床の間と押し入れがあるだけでその他に宿としてあるべきものは何もなく、なぜか一組分の布団が用意されてあるという不気味さ。
宿の内側の廊下とは反対側の廊下に出るための障子の大きさが、一枚で畳三畳分もあるほど大きく、さらにそれが左右合わせて六枚分も連なっているという事実。
隣の部屋と合わせれば片側だけで六枚、左右合計で十二枚で構成されているという構造など。
宴会用の小広間くらいの大きさであるということを想像しながら部屋を描写していったのですが、こうして改めて説明されるとその大きさがより伝わってくるんじゃないかなと思います。
そもそもどうして宿泊者の部屋をこれだけ大きな設計にしたのかという話ですが、初めからこの宿屋には人外の物も泊まっているという設定にしていたからです。
自分のような人間専用であるならばこんなに大きな部屋は必要ないけど、そうでないものも泊まる、というかすでに泊まっているからということをこの時点で想定に入れながら書いた結果、これだけ大きな部屋になってしまいました。
そこから廊下に出た男が”この建物が生きているような気がする”と感じるわけですが、これも当然何らかの伏線です。
しかもこれは一回目でしかなく、この先も男は自分が今いるこの建物に何らかの違和感を感じていきます。
「この不思議な宿屋がどうやって出来たのか」
という設定もありますので、それも今後描いていければと思ってます。
こうして不思議な宿屋の不思議な部屋の構造を確認してもらった後は、いよいよ不思議な夜がやってくる。
そこで男は襖で仕切っただけの隣の部屋に住む宿泊者、後に名前が判明する雨ノ雫と邂逅するわけですが、キャラクター設定などは次の章でお話しするとして、ここでは何に注目して読んでもらいたいのかを、作者目線で書いていければと思います。
ズバリここで読者であり視聴者である皆様に想像してもらいたかったのは、”暗闇の濃淡”です。
もうここだけに神経を集中させていたと言っても過言ではありません笑
その分自分のイメージを言葉にするのが難しかったという記憶が残っていますが、一番は男と雫が襖越しに向かい合う場面です。
少しだけ開いた襖の向こうに雫が立ってこちらを闇の中から見つめている。
これをどう分かりやすく、さらに不気味で不思議な感じに描けるかがこの第二話の肝でした。
実際どうでしたか?
ちゃんと闇の中に雫の身体の形の影が見えましたでしょうか?
そして実際に自分が男の目線でそれを見て「ぞくっ」っとしてくれることを祈りながら書いていました。
元々広すぎる部屋を襖で二分しただけの片側の部屋に案内されて、誰かもわからない中で夜に見つめ合うって怖過ぎませんか?笑
自分から襖をずらして隣の部屋を確認することは誰もしないと思いますが(やるとしても夜中じゃなく日が登ってからですよね)
すでにちょっとだけ隙間が空いていたら、それを確認しないことにはいられないという男の心情にも納得していただけると思います。
そこから声で女性だと判明して少しだけ安心して(男はそうでも女性はひょっとしてそうはならないかもと不安は残りますが、まあ番才は男なので問題ないか)
かと思ったらめちゃくちゃヒステリーに叫ばれて動揺して、止めさせようと襖を開け注意していたら男は後ろから誰かに後頭部を殴打される。
そしてまた宿には静寂が訪れるというところで第二話は終わります。
男の行動と隣の部屋の女、そして唐突な終わり。
第三話がすでに頭の中で展開しながら書き終わった僕が、すぐさま第三話の執筆に入ったのは言うまでもありませんね。
2、登場キャラクターと作品たち
第二話サムネイルボツ画像その2(「おっ、月が二つある!いいかも!」と思ったけど、周囲の木の高さが低過ぎてボツにしました)
「第二話 不思議な夜」の作中に登場するのは
・男(天下番才:あましたばんさい)
・女(雨ノ雫:あめのしずく)
・女将(シルエットのみ)
の3人です。
女将は前回の制作秘話の中で少しだけ紹介したので、今回は主に”女(雨ノ雫)”に焦点を当てていこうと思います。
この物語というのが提供していただいた作品を元に執筆しているということは各所で説明している通りですが、ここで登場する男と女は僕が自分で考えた数少ないオリジナルキャラクターの二人です。
どちらもとても意味深な描写が多数読み取れると思います。
例えば男が見ていた夢の内容だったりだとか、ヒステリーを起こす女に対しての反応だったりだとか。
だけど、何よりも印象に残るのはやはり女の異常なまでの言動なんじゃないかなと思います。
というかそうであって欲しいです。
ここで初めて登場した後の雨ノ雫というキャラクターですが、少しだけ話が逸れますけど、そもそもこの「不思議な宿屋」という物語には明確な主人公やヒロインというものは存在していません。
全員が主役であり全員が誰かにとってのキーパーソンであり、全員が主役を引き立てるための存在でもあります。
ただ、そんな設定の中でも個人的に彼女は”ヒロイン的な立ち位置”をめちゃくちゃ意識して描いています。
黒髪ストレートの清楚な美少女で、自分に自信がなくて相手ともまともに視線を合わせられずよく目が動いておどおどしている。
【繊細・慎ましさ・可憐・薄幸】みたいなイメージをこれでもかと詰め込んだ僕なりの超王道のヒロインなわけです。
こうして僕の中で外観が練り上がった後に考えないといけないのは、「どうして彼女はこの宿屋にいるのか?」という存在理由です。
ただこれもほとんど悩むことなく決めた記憶がありまして、容姿端麗でなおかつ性格も良く捻くれてもいない純情無垢な美少女がどうしてこの不思議な空間にいるのかを考えた時に、すぐに頭の中で”いじめ”や”周囲からのやっかみ”という理由が浮かびました。
その上でさらに自ら死を望むほどになっているというところを深掘りしていった結果、この雨ノ雫というキャラクターは”重度の発作を抱えている”という設定、そしてその理由が”激昂型の両親によるもの”と展開していきました。
まだ本編ではこの辺りについて直接触れられてはいませんが、各所の雫の言動にその片鱗を見ることができるようにしてあります。
現在の最新シリーズ『未蕾編』でもそうですが、今後もこの雨ノ雫というキャラクターの成長を通して、読者の方々に色々と感じてもらいたい、そしてそれを感じさせることができるキャラクターとして大事にしていきたいと思ってます。
そしてもう一人の登場キャラクターである男。
後の天下番才なのですが、彼もこの第二話で初めての登場ということになります。
実質この物語の主人公的な人物だと思われても仕方がないとは思いますが、彼もまた僕の中では主人公ではなく、あくまでも物語のストーリーテラーと言いますか、火付け役と言うか、きっかけを生み出す存在として活躍してもらっているというのが僕の捉え方だったりします。
彼もまた明確に何かを抱えていて、雫のヒステリーを受けて過呼吸のような症状に見舞われる場面がありますよね。
果たして番才がこの宿屋に来た理由とは何なのか?
それもまた本編、またこの制作秘話の中で徐々に明かしていければと思ってますので、引き続き楽しみにお待ちください。
3、込めた想い
第二話サムネイルボツ画像その3(宿のイメージにはかなり近かったけど、周りの景色が違ったので泣く泣くボツになりました)
この「第二話 不思議な夜」は、第一話から続く長い構想をちょうどいいところで区切って書いているというのが僕の中での感覚です。
第一話にて”一緒に物語を作りませんか?”だったり、”想像力を取り戻す”と息巻いていたと言いましたが、その思いを抱いたまま世界観をお見せするという思いが強いのです。
読んでいただいた方が自分の大切な作品を前田亮という作者に、そしてこの「不思議な宿屋」という物語に提供してもいいかなと思えるように、起承転結の『起』に当たる場面を描いていこうと思ってました。
そもそもこの『黎明編』という全十話のお話全てが、これから始まる壮大な物語においての『起』という感覚でして、その中のさらに導入部分が五話くらいまで続いています。
第一話で謎の男が不思議な場所にやってきて、第二話で不思議な出来事に遭遇する。
さあでは第三話はどうなっていくのかしらとページを捲る手を止めさせないためにも、何か印象的な場面やセリフや人物が必要だったので、隣の部屋に宿泊している不気味な宿泊者を登場させ、次に繋がる終わらせ方をしてあります。
ただこの時点ではまだ宿の全体像だったり、これから物語がどう発展していくのかという具体的なイメージや構想というものはありませんでした。
なにせただただ当時の自分は「自分はまったく新しいことをしているかもしれない!?」と興奮していたので笑
事前に設定を洗い出したりだとか、キャラクター表を作成したりだとかも全部後回し、というか今現在も執筆と同時進行だったりします。
だから書いている本人ですら今後の展開がどうなるのか知らないんです。
なんとなくの描きたいイメージという提灯だけを持って暗闇を歩いているような感覚で今でも毎月の最新話を書き進めている状況なんです。
番才って今後どうなるの?
この話の終わり方ってどうなるの?
安心してください。
僕が一番気になってますんで笑
絶対に僕がこの作品の一番のファンです。
それはもう揺るぎないほどの自信があります。
そんなだから続きを書くのが楽しみであり続けているし、毎度毎度書きながら「えっ!?これマジで?」と本人が一番驚いているんだから。
書きたい物語があるというのは恵まれたことだなと思いつつ、これからもワクワクしながら続きを書いていけたらと思ってます。
4、感想
読み聞かせ動画の中でも使用している宿泊者の部屋のイメージ画(設定上は蛍光灯などの光源になるようなものは一切ありません)
第二話を読み返してみると、自分の文章の書き方というのものがよく表れているなと感じます。
それは主にセリフの部分なんですけど、僕はキャラクターにセリフを喋らせる際に実際の間というか、呼吸まで表現しようとしてます。
具体的に言うとそのキャラクターが息継ぎをする時に「、」を付けたり、何かを思案したり言葉が出ない時なんかは「……」でその時間を表したり。
なので、こうして読み聞かせ動画を自分で演じながら収録する時には、改めて文章中に「、」や間を書き込むことがほとんど必要ないんですね。
これは結構他の人とは違う書き方なんじゃないかなと自分でも思います。
まあ、読みやすいかどうかは置いといて笑
そんなことを考えながら第二話を読み返していくと、雫のセリフにはまあ大量に「、」や「……」が使われていることにすぐに気づけると思います。
当時の僕の頭の中で雫がどのようにこれらのセリフを発していたのかという、いわゆる作者の頭の中がそのままセリフとして表れているなと自分でも感じます。
試しに皆さんもHPで誰でも読めるので雫のセリフを自分で言おうとしてみてください。
言い方や演じ方は人それぞれだと思いますが、間だったりタイミングはそれほど差が出ないんじゃないかなと思います。
それ以外だと、やっぱり各所に出てくる諸々の謎ですよね。
どうしてこんなに風が強いのかだったり、男の記憶や反応はすでに言いましたが、廊下の先に見えた階段がどこに繋がっているのかなどなど。
宿屋の作中で風が強い日というのは何度か描いてきていますが覚えていますか?
『雷鼠編』で雷鳴轟く悪天候だった時とか。
それ以外でも風が強かった描写があるんですが、この夜の強風の理由は実はそれだったりするわけです。
あえてここでは申し上げませんが、わかった人からしたら「えっ、ということはあの夜こういうことが起きていたんだ」と思えます。
それがまた今後に繋がる予定でもありますが、それらもまた描かれるのを楽しみに待っていただけたら嬉しいです!
5、収録裏話
第二話サムネイル採用画像(採用理由は周囲の景色と中央の建物の感じ、また光の当たり具合などがイメージにぴったりだったからです。画像から静寂が伝わってくるというのも採用理由の一つ)
第二話の裏話と言ったらやっぱり雫の演技じゃないですかね笑
女性を演じるだけでもハードルが高いのに、なにせ雫は初登場からとんでもないヒステリーというか騒ぎまわっているので、それを演じるというのはかなり難しいことでした。
ただ、「4、感想」の中でも話しましたが、どうやってあの暴れ回るようなパニック状態のセリフを演じるのかというのは頭の中の雫はちゃんと喋って暴れてくれてはいたんです。
もちろん女性の声でね。
要はその頭の中にいる雫の言動を再現すればそれまでと言ってしまえばそれまで。
まあ、それができないからみんな悩むんですけど。
この読み聞かせ動画を作成するにあたって、物語の執筆同様に自分の中で一貫して守っていることがあります。
それは
”あくまでも睡眠導入のナレーションであること”
です。
これが例えば絵が動くアニメーションだったら、またラジオドラマのような絵はないけどキャラクターの演技で場面を動かしていく媒体だったらまた話は違ってきますが、僕は一貫してこの読み聞かせは眠りに誘うためのナレーションであるということを意識して収録したり編集したりしていて、それによって演技自体も意識的に変えているんですね。
その上でこの雨ノ雫というキャラクターの衝撃的な初登場を演じるわけなんですが、聞けばわかると思いますがマイクの前で実際に暴れ回るような演技をしていません。
音量のつまみを下げて声が割れたり振り切れないように調整するまでいかず、また気持ちを込め過ぎて印象には残るけれどそれと同時に不快な声を届けるということにもならないようにあえて努めているわけです。
それがどこまで表現できているのかは、もう聞いてもらった方自身の判断に委ねる以外にないんですが、僕は夜布団の中で流し聞きしていても不快な音を届けないようにギリギリのところを狙うのが役割だなと思ってます。
ただそれでもとある方に「叫んだりヒステリーになるところはこっちも不安な気持ちになるからあんまり聞けないんだよね」と言われました。
ちゃんと感情を伝えられているという嬉しい気持ちになる反面、睡眠導入の読み聞かせ動画としてはこれじゃいけない。
気持ち込め過ぎて眠りを妨げているなんて本末転倒もいいところです。
そういうわけでこの第二話に限らず、キャラクターの叫びや驚き、または遠山の金さんのように「この桜吹雪が目に入らぬかー!」と啖呵を切る場面というのは、その都度「どこまで気持ちを込めるのか」や「声の声量や音量はどうしようか」といったことを考えながら収録をしています。
今後この活動がもっともっと沢山の人に知られるようになった時、女性キャラくらいは実際に女性の方に演じてもらってもいいのかななんて考えてますが、取らぬ狸の皮算用のようなことをしても意味がないので、今はもっと沢山の人の夜のお供になれるよう頑張っていきたいと思います。
僕の演出で演技するのは、なかなかに難しいと思うなあ笑
終わりに
というわけで「第二話 不思議な夜」の制作秘話を書いていきましたが、いかがでしたでしょうか。
各話の振り返りや記憶の再確認ができて僕は楽しい時間を過ごせていますが、果たしてこの制作秘話がどれだけ読者の方の助けになっているか、またコンテンツとして成立しているのかという不安は消えません。
どの媒体でも構いませんので何かしら感想なんか聞かせてくれたら嬉しい限りです。
また何がなくともコメントやらを聞かせてくれるだけでも、モチベーションになりますし、もっともっと頑張ろうという希望に直結します。
何かございましたらお申し付けください。
それでは制作秘話「第二話 不思議な夜」でした。
ありがとうございました!
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(作:れいさん)
また第三話の制作秘話でお会いしましょう!
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