地面師たち

新庄耕の小説が原作。Netflixの配信ドラマ。

土地の所有者になりすまして多額の代金をだまし取る不動産詐欺を行うには、各分野で専門技術を持った地面師がチームで活動する。「地面師」。2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルとしている。

 

主な登場人物

【地面師グループ】

・辻本 拓海(綾野剛)ーハリソン山中の腹心的な役割

・ハリソン 山中(豊川悦司)ー地面師集団のリーダー

・後藤 義雄(ピエール瀧)ー元司法書士、法務担当。ブローカーとの交渉役

・稲葉 麗子(小池栄子)ー都市所有者のなりすまし人物を手配するキャスティング担当

・竹下(北村一輝)ー物件・所有者のリサーチ担当

・長井(染谷将太)ー証明書類を偽造するニンベン師

 

【警察】

・警視庁捜査二課:下村 辰夫(リリー・フランキー)

・新人刑事:倉持 玲(池田エライザ)

 

 

 

 

  Episode#1 

 

済んだ水に魚は住まないが
汚い土地には多くの作物が実る
洪 自誠『菜根譚』

 <広大な山野>

ムースを狙ってハンターが馬を駆けている。

3日経つが、まだムースに出会っていない。

一人の客が案内役にキレた。

「そんなこと言われても…探して待つのがハンティングじゃないですか…」

と、案内役は本部に問い合わせると言って、急いで離れていった。

 

憤っていた男は、もう一人の客に話しかける。

「中国人か?」

「いや、日本人だ」

「日本じゃハンティングはできないのか?」

「できるが馬に乗ってハンティングするほど広い土地はない」

「そんなに狭いのか?日本ってところは」

「クソみたいに狭い土地にクソみたいな人間がひしめき合って生きている」

「おまえの仕事はなんだ?」

「地面師」(←ハリソン山中だ)

 

案内役の叫び声!大きな熊に襲われている。

キレていた男は逃げていくが、日本人の地面師はニヤッと笑って銃をかまえた。

熊は地面師に向かって突進してくる。

地面師は冷静沈着に発砲し、熊を射止めた。

 

<ハリソンルーム>

「なんの疑いもなく、私を自分のものにできると思っていたあいつが、一瞬で無残な姿になり死んでいったんです」

部屋にはハリソン山中ともう一人の男。

「恐らく私はあの時のエクスタシーが忘れられないのかもしれません。拓海さん、私と組みませんか?地面師になりませんか?あなたの人生を狂わせた詐欺師。それが地面師です。今度はあなたが誰かを地獄に落としてみませんか?」

もう一人の男は拓海。

 

<2017年6月 新橋>

雑居ビルから異臭がするとの通報を受け、警察が現場検証をしている。

その雑居ビルは捜査二課が捜査中の不動産詐欺事件に使用された可能性のある物件のため、捜査二課の下村辰と大久保が現場へ急行した。

これまでのところ、ビルの所有者は行方不明。

 

大久保と下村が雑居ビルの中に入る。

異臭が漂っている。

二階へと上がってみると、更に異臭は強くなった。

窓際の椅子に布団に包まれたものがあった。

 

下村がボロボロ布団を取ってみると…白骨死体が現れた。

行方不明のビルの女性オーナーだった。

 

いきなり死体が!!かなりヤバい展開になるのか?

 

以下、ネタバレです。

 

<TVのニュース>

数年前から地面師グループによる不動産詐欺事件が発生しており、新橋の雑居ビルの事件も地面師グループによる犯行のようだ。地面師グループは、死体で見つかった所有者になりすました女性を所有者と偽って不動産売買の場に同席させ、不動産会社より20億円を騙し取ったとのこと。

 

<ハリソンルーム>

ハリソンをリーダーとする辻本拓海たち地面師集団は、買主の強みと弱みを交渉に最大限活用し、迅速に契約に導いてきた。
今回のなりすましは、佐々木という老人。少々、記憶力に不安がある気弱な人物。

何度も練習をするが心もとない。少し認知症もあるようだ。

見た目がよく似て記憶力も良い有力な候補もいたのだが、ハリソンが佐々木を指名した。

麗子も後藤もなぜハリソンが彼を選んだのかわからない様子。

 

後藤は指にマニキュアを塗り、指紋が残らないようにしている。

 

拓海はハリソンに呼ばれ、書類の最終確認をしてもらう。

印鑑証明、登記事項証明書、固定資産評価証明書、固定資産税課税証明書、住民票、運転免許証、保険証、実印、物件の鍵

 

全て偽造。実印は使い込まれた感じになっていて、運転免許証にはICチップが埋め込まれている。

 

「いい仕事ですね」とハリソンのOKがでた。

 

なお、拓海は書類に指紋が残らないのも不自然なので指に特殊フィルムを貼っている。

 

<駐車場>

後藤と拓海が、所有者島崎になりすました佐々木老人を待っている。

 

拓海はハリソンで組んで4~5年らしいが、ハリソンからはかなり信頼されていると後藤からはみえるらしい。

そして、新橋の雑居ビルでオーナー女性の死体が発見されたネットニュースを見て、

「この時のなりすましのおばちゃんも行方不明なん知ってる?」と。

拓海は驚いたように聞き返すが、後藤は誰がやったのか知らない方が良いこともあると呟いた。

 

なりすましの佐々木が来たので出発する。

 

<警視庁捜査二課>

下村辰と大久保が地面師詐欺について話している。

ハリソン山中。有名な地面師。

元暴力団。バブル時代に地上げ屋として名を馳せる。

その後、地面師詐欺集団を束ねて次々と大掛かりな土地絡みの詐欺を仕掛け、バブル崩壊後に都内の雑居ビルをめぐる詐欺事件で主犯格として逮捕。懲役5年の実刑判決。

 

出所してからしばらく大人しかったが、ITバブル頃から再度動き出し、2007年に逮捕されるも嫌疑不十分で不起訴になっている。

その事件は、赤坂見附の20年間空き地だった土地をナパホテルが12億円でブローカーから購入したが、詐欺が発覚し、関連人物を逮捕。逮捕されたのは、

なりすましの老人男性

キャスティング担当(麗子)

ブローカー

司法書士(後藤)

リーダー(ハリソン)

 

だが、

なりすましの老人男性は認知症で、事件当日の供述がまったく合わなかったため、なりすまし以外は全員不起訴となった。

 

辰は、新橋の事件もハリソンの地面師グループが関与していると思っている。

 

<さかい法律事務所>

・物件:渋谷区恵比寿の一軒家。478㎡。10億円

・所有者:島崎健一。一人暮らしの老人。現在ホスピス療養中。

・買主:マイクホームズ(新進不動産企業)。社長:真木 悠輔(駿河太郎)


契約までに買い手と現地調査を経て、なりすまし所有者を同席した契約が行われようとしている。

所有者の島崎になりすました佐々木は、買主の司法書士からの本人確認の質問になんとか答えていくが…、最後に想定外の質問が・・・。

 

交渉役の後藤が、「もういいやろ!」とすごんで中断を迫るも、買主のマイクホームズ社長の真木も「疑っているわけではありません。この取引は、わが社にとっても大きな取引です。どうかご本人であることを確認させてください」と頭を下げる。所有者島崎になりすました佐々木が答えられなければ破談となってしまう緊迫した空気が流れる。

 

「わぁ~~」

と所有者島崎になりすました佐々木が声を上げると、股間にはシミが・・・。同席した辻本がトイレに連れて退席する途中、所有者島崎になりすました佐々木が立ち止まり、「私は島崎健一です。昭和15年、1940年2月17日生まれ。77歳。辰年。買い物は家から駅に向かうとピーコックがあるのですが、外苑西通りを渡ったところにあるライフへよく行きます。ライフの方が安いので」と答えた。ホッとした一同。そして、買い手の司法書士が売主の意向を確認し、契約を急ぎだす。

 

一週間後の地面師集団の会食場面。

先日の契約場面での想定外の質問を上手く切り抜けることができた理由が明らかに。リーダーのハリソンが、「小物は最後の最後で悪あがきをする。念のために。」と辻本に小型イヤホンを渡していた。想定外の質問がきて答えられないところで、辻本が所有者になりすました佐々木の股間にペットボトルのお茶をかけ、お漏らしに見せかけ、そして、トイレへ誘導する途中に佐々木の耳にイヤホンを装着。

契約が行われている部屋の様子を隠しカメラで観ているハリソンが「佐々木さん、今から私の言うことを復唱してください」と指示を出した。

ハリソンの先の先を見越した作戦が少々恐ろしい。

 

今回の取り分は、後藤さん現金1億5千万、振込は辻本1憶5千万、麗子8千万、竹下2億万、ハリソン4億2千万。

竹下は、ハリソンの取り分に比較して自分が少ないのが不満げ・・・

 

後藤「で、次はどうすんの?」

 

ハリソン「次は死人がゴロゴロでるような山を」「難攻不落の山を落としてこそ、どんな快楽も及ばないエクスタシーとスリルを味わえる。」

 

竹下「あるぜ、死人が出そうな山が」と・・・

 

高輪3200㎡の土地が次のターゲットとなった。

 

そして…

所有者になりすました佐々木さんは、気持ちよく夜道を歩いている時に、車に轢かれてしまう。かなり生々しい。

 

ー感想ー

ゆっくりと丁寧に言葉を発する豊川悦司ハリソンは、関西弁でまくし立てるピエール滝後藤とすぐにキレる北村一輝竹下、またまたすぐにキレる小池英子の麗子との対比でより凄みを感じて恐ろしい。

詐欺に引っ掛かりやすい買い手を選定し、その買いたい欲望を上手く利用して商売に結び付けていく。人の持つ欲望がぶつかり合う様をハラハラドキドキしながらドラマ化していて、次話が楽しみすぎる。

また、最終話までに繋がる伏線があったり、何度も繰り返してみてしまいます。ハリソンたちが高輪の土地をビルの屋上から下見する場面では、40から50回も撮り直しをしたそうです。この場面だけでなく、5人が揃う場面は同様だったとか。そこには大根監督の意図があったようです(完成会見より)。丁寧に創りこまれた映像と素晴らしい役者たちの演技の相乗効果が感じられます。

 

ハラハラドキドキの本人確認場面、何度見ても面白いです。