続きです。
レジン講座の講師依頼に拙宅にいらっしゃった講座を運営する会社の社長に、考案したばかりの製法で制作したドライフラワーを
「今、これまでにないレジンフラワーを作ろうと
思っているんですよ」
と、大輪のバラのドライフラワーをお見せしたところ、社長の眼が見開いて動かなくなってしまいました。
あれ? どうしちゃったのかな? と思いながらレジンフラワーのことをしばらく話していますと社長が
「ちょ、ちょっとすみません。 これ、 なんですか!?」
「なんですかって、ドライフラワーですけど」
「いえ、それはわかっているんですけど、なんなんですか、このきれいなドライフラワーは!」
「あぁ、これはレジンフラワーを作るために、 色あせない、花びらにシワのできないドライフラワーの作り方を自分で考えたんですよ」
「先生! これすごいですよ! 特許取りましょう! ドライフラワーの講座も作りましょう!」
「いやぁ~、私そういうの好きじゃないんで。
実は今、だれでもこの作り方でドライフラワーを作れるように、アメージングのHPに解説するページを作っている途中なんですよ」
「いや先生、ちょっと待ってください。
ネットで公開してしまったら特許が取得できなくなりますから、 それは公開しないでください。
ドライフラワーの講座も作ります。
その受講者さんの 認定後の活動を守るためにも、 特許を取得して技術を囲う必要があります。
ですから受講者のためにも製法特許を出願しましょう」
それで、「受講される方のプラスになるのであれば」 ということで、社長に製法の権利を売却して、製法特許出願に向けて動くことにしたのです。
まず、製法特許の出願について簡単にご説明しますね。
出願はだれでもできますが、申請書の書式にはこまかい規定がたくさんあって、素人ではむずかしいので、代理で申請書を作成する、弁理士という職業が存在するわけですね。
それと、すでに特許として認められている技術や、出願されて特許庁の広報で公開されている技術、出願したけれど特許を取得できなかった技術、類似の技術がないかどうかなどを、出願の前に精査する必要があります。
すでに既出の技術であれば、出願するだけ無駄ですからね。
そうしたことは特許庁のHPで閲覧できますが、これも素人ではむずかしいので、弁理士に依頼することになるわけです。
講座を運営する会社の社長は、これまでにも何件かの特許を出願したことがあり、いつも同じ弁理士事務所に依頼していました。
そこの代表の弁理士は、メディアなどでも有名な若手の売れっ子だそうで、歳は私と同じくらいでしたが、東京のビジネス街に広い事務所を構えて、数人の弁理士と事務員を抱えていましたから、やっぱり売れっ子だったのでしょうね。
お会いしましたが、いかにも頭がキレそうで、話術に長けていて、そつがなく、自信満々という感じでした。
その右腕的な、これまたデキそうな弁理士が専任の担当者になりました。
まず最初に、私がワードで製法の作業工程、製法の特徴などをまとめなければいけませんでした。
それはそうですよね、作り方を知っているのは私だけですから。
私がワードが使えてよかったですよ。
とはいえ、製法特許の申請書の書き方など、私にはまったくわかりませんから、弁理士事務所にすでに終わった案件の申請書の写しを参考書代わりにお借りして、それをマネてまとめることにしました。
社長とお会いしたのが、確か2003年の11月下旬か、12月の最初だったと思いますが、レジンとドライフラワーを抱き合わせにした講座を3月から始める、というスケジュールが立てられ、準備に半年くらいかけるものだと思っていた私は
「ウソでしょ・・・・」
と思ったのですが、社長の勢いは止められず、3月までの間は、とにかくワードで特許用の資料と講座用のテキストの作成、そして講座で使用する原形などの資材の制作などなど、やることは山ほどあり、もう頭がおかしくなるかと思いましたよ。
それまでと生活が一変しましたね。
この頃の時系列は、今思い出しますと判然としません。
それほど多忙だったのでしょうね。
私はデジカメで記録を撮っておく 「記録魔」 ですから、その当時の画像ファイルを調べてみて
「あぁ、この時にこんなことをしてたんだ」
そう思うだけで、記憶は定かではありませんし、覚えていることも前後しています。
それでも特許申請の下書きとなる書類をまとめ、講座は3月下旬に開講となりました。
当時のレジン講座の様子。
特許出願のための下書きは弁理士さんにお渡しして、それを元に既出の技術がないか、類似の技術がないかをまず精査してもらいました。
その結果、これまでにない技術で、十分に特許は取得できるとの弁理士さんの判断で、出願する運びとなりました。
あとは私のまとめた資料をベースにして、あらゆる面から見ても漏れのないように、抜け穴のないように、申請書を作成していただくだけです。
ご存知かもしれませんが、特許というのは「似ている」 技術はたくさん出願されているのです。
しかし、使われている材料の素材や、寸法がひとつでも違えば特許の侵害にはならないので、あらゆる面において、文章で抜け穴を防いでおく必要があるのですね。
例えば乾燥剤の種類、元の原料、埋設材の素材、粒の大きさの範囲など、あらゆる可能性をつぶしておくような申請書にする必要があるのです。
ですから、よく 「似てるから特許侵害だ」 などという誹謗はまったく論外なわけです。
同じでなければ、侵害にはならないのです。
後々、私はこうした誹謗や中傷にうんざりすることになるわけですが、それはまた2年のちのことです。
さすがに売れっ子弁理士事務所だな、と思えるような緻密で、うんざりするほど些末なところまでこまごまと類似をブロックする申請書となっていました。
つまり、この時点でもう特許は取得できたのと同然だったわけです。
そうでなければ、高い料金を取れる売れっ子弁理士にはなれないわけですね。
しかし、世の中は人と人のつながりで成り立っているもの。
つながりが途切れれば、すべてが瓦解してしまうものです。
次回は、私が社長に不信感を抱き講師を辞任し、講座運営会社との関係を一切断ち切り、そのために出願した特許が宙に浮いてしまう、という、今につながるエピソードについてお話しますね。
認定スクールではありません。
オリジナルのアメージングスタイルドライフラワー製法の
制作キット(テキスト付)の販売のみ行っております。