今日ご紹介するのは、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)が作詞作曲したO Ciúmeです。

この曲は1987年の彼自身のアルバム”Caetano”に収められました。

この曲のメロディは、O Ciúme(嫉妬)と言うタイトルから想像しがたいほど美しく、心に残ります。

ブラジル北東部バイーア州のサント・アマーロに生まれたカエターノは、自宅のある州都のサルバドールに帰る道すがら立ち寄ったレストランで、ある新聞記事を目にします。
それは、嫉妬に狂った男が、妻の喉を刺して殺したと言う事件でした。
カエターノは、命を落としたその若い女性のことが心から離れず、書いたのがこの曲でした。

歌詞の中には、3つの固有名詞が登場します。
まずは、フランシスコの愛称であるシコ。
Velho Chico(ヴェーリョ・シコ、年老いたシコ)とは、南米で4番目に長く、ミナス・ジェライス州を水源とし、バイーア州、ペルナンブコ州、セルジッペ州、アラゴアス州を流れ、大西洋に注ぐ全長2,863kmのRio São Francisco(サンフランシスコ川)を意味します。

そして、サンフランシスコ川を挟んだ対岸にあるペルナンブコ州のペトロリーナと、バイーア州のジュアゼイロ。

ポルトガル語の語尾は、男性名詞はO、女性名詞はAで終わるのが一般的です。
そこでカエターノは、ひとりの女性(ペトロリーナ)を巡る、夫(ジュアゼイロ)ともう一人の男性(シコ)の物語を歌詞にしたのでした。

太陽がシコの水面を照らす、正午
誰もがその輝きに目が眩む
ペルナンブコ、バイーアの
川の橋の上でたたずむと
ただ黒い影が映る
それは僕の嫉妬


嫉妬の放った黒い矢が
喉を傷つけているのに気付く
幸せではなく
悲しくもなく
詩人でもない者が
ペトロリーナとジュアゼイロの間で歌う


ヴェーリョ・シコは
不可解な秘密が隠された
ミナスから来た
僕は知っている
君がすべてを
その中に秘めていることを
しかし、君は教えてくれない
そして、僕はただひとり


ジュアゼイロ
君はあの午後も覚えていない
ペトロリーナ
君は気付くこともなかった
しかし、いまだに歌う声は
全てを焼き尽くす
全てを失い
全てを探そうとしている
それはどこにあるのか?


多くの人が歌い
多くの人が沈黙する
皮なめし工場では
たくさんの魂が広げられている
あらゆる通りの上
あらゆる広間の上に漂う
魔物、嫉妬の影

 
まずはCaetano自身の歌をご紹介します。
こちらは1st リリース。
 
 
 

ちらは、2020年に収録されたCaetanoのIvan Sacerdoteとのアルバムから。

 
 

私が初めて聞いたのは、1995年にブラジルで買ったCD”Mina d’Água do Meu Canto”に収録されていたGal Costa(ガル・コスタ)の歌でした。

 

 

1993年のNey Matogrossoのアルバム”As Aparências Enganam”より。
 
 
Ná Ozzetti(ナー・オゼッチ)が、André Mehmari(アンドレ・メマーリ)のピアノで歌うO Ciúme。
2005年のアルバム”Piano e Voz”収録。私はDVDを持っていますが、出色の出来です。
 
 

2009年にパリで行われたMaria Bethânia(マリア・ベターニア)の公演から。

彼女はCaetanoの実の妹です。

 

 

Geraldo Azevedo(ジェラルド・アゼヴェド)の、サンフランシスコ川にちなんだ歌を集めた2011年のアルバム”Salve São Francisco”から。Ivete Sangalo(イヴェッチ・サンガーロ)が特別参加しています。
 
 

 

★ポルトガル語の歌詞とコード進行はこちらをご覧ください。
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※毎週日曜日に掲載します。
次回は5/5です。