今日ご紹介するのは、サンパウロでのサンバを確立したAdoniran Barbosa(アドニラン・バルボーサ)が1960年にOsvaldo Moles(オズヴァウド・モリス)と共に創作したTiro Ao Álvaroです。

Osvaldo Molesは主にラジオで大きな功績を残し、数々の賞を受けた優秀なジャーナリストで、Adoniran Barbosaにラジオでの活躍の場を提供しました。

タイトルのTiro Ao Álvaroとは、アウヴァロ(男性の名前)を撃つと言う意味。
射撃の種類の一つであるTiro ao Alvo(ブルズアイ射撃)をもじったものです。
軍事独裁政権下では、政権に反対するものはAlvo(標的)と呼ばれました。
そこで、検閲を逃れるために、タイトルをTiro ao Álvaroとしたのでした。

この曲は1966年にOs Maracatinsによって初めてレコーディングされました。
しかし、アドニランの悪い予感は的中し、1973年に軍事独裁政権の検閲により、しばらくお蔵入りとなってしまったのです。
指摘されたのは、サンパウロ方言とも言える、automóvel(自動車)をartomorveと書いた部分などで、全くいちゃもんとしか思えないものでした。

 

 

次にレコーディングされたのは1980年で、アルバム”Adoniran Barbosa:70anos”にElis Reginaがボーカルとして参加しています。
このリリースから2年後の1982年、Adoniranは72歳で、Elisは36歳で逝去しています。

君の瞳にたくさん射抜かれて
僕の胸は・・・どうしてか分かる?
アウヴァロの標的には
もはや穴を開ける場所がない

 
君のまなざしは
ライフルの弾丸よりも
ストリキニーネの毒よりも
バイーアのペイシェイラ(注)よりも
多くの人を殺す
君のまなざしは
車にひかれるよりも
多くの人を殺す
リボルバーの弾丸よりも
多くの人を殺す
(注):Peixeiraは、魚を捌く時に使う刀で、殺傷能力もある。
 
まずファーストリリースとなったOs Maracatins(オス・マラカチンス)のバージョンです。
よく聞くと、検閲を受ける前の歌詞で歌っていることが分かります。
 
 

そして、1980年のAdoniran BarbosaとElis Reginaのデュエット。

 

 

1943年の創設以来、サンパウロのサンバシーンを牽引してきたDemônios da Garoa(霧雨の悪魔)によるライブ録画。
 
 

サンバ界の巨人 João Nogueira(ジョアン・ノゲイラ)を父として生まれたDiogo Nogueira(ジオゴ・ノゲイラ)の歌うTiro ao Álvaro。

彼は父の希望でサッカー選手になったものの、膝を負傷してキャリアを断念し、幼少時から触れてきたサンバの世界に入ることを決意、今最も成功しているサンバ歌手のひとりとなりました。
 

 

マンドリン演奏家でシンガーソングライターであるAleh Ferreira(アレー・フェレイラ)がまだ駆け出しの歌手を招いて共演するAlehConvidaより。歌っているのはNatália Glanzです。
 

 

 
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※毎週日曜日に掲載します。
次回は5/12です。