今日ご紹介するのは、Vinícius de Moraes(ヴィニシウス・ジ・モライス)が作詞作曲したSerenata do Adeusです。

Viníciusは通常、作曲をパートナーに任せることが多いのですが、この曲は外交官でもあった彼がパリにあるブラジル大使館に勤務していた1953年に書かれたため、彼自身が作曲も手掛けています。

Serenata do Adeusとは、別れのセレナータと言う意味。
ブラジル人にとってAdeusと言う言葉は、単なるさようならではなく、永遠の別れを意味します。
この歌の中でViníciusは、月を自分自身に、星を恋人だった女性に例えています。

この曲は1958年にElizeth Cardoso(エリゼッチ・カルドーゾ)とMorgana(モルガナ)によってレコーディングされました。
Morganaについては、後述しますが、この曲がチャートで1位を獲得し、彼女は人気歌手となったのでした。

ああ、空に現れた月は
僕の腕から生まれ
君を見た月とは違う
僕たちの愛の上に
夜が訪れる
そして今、愛が残したのは
言葉一つだけ
さようなら


ああ、去り難いけれど
行かなければ
ああ、愛するとは
生涯死に続けることだ
涙に映るのは
光を失った純真な星の
一瞬のまたたき


ああ、僕の女
光輝く星よ
出て行って
出ていく前に
僕の心を引き裂いて
爪を立てて
僕の胸に痛いほど
そうすれば血の中に
すべての愛も失望も
消えていく


光を失った純真な星は
一瞬またたく
僕の心のように
悲しく暗い夜に


Morganaは本名をIsolda Corrêa Diasと言い、1934年にサンパウロで生まれました。
ピアノをTobias Perfettiに、歌をZaira Bianchiに師事、音楽の他にバレエや語学も習得しました。
イタリア語、英語、フランス語、スペイン語も学び、これは後に外国語で歌う時に役立ちました。

1958年に”Serenata do Adeus”を収めた初のアルバムをリリース、翌1959年にエディット・ピアフのL’Hymme A L’amour(愛の讃歌)をポルトガル語に訳した”Hino ao Amor”を歌い、大ヒットとなりました。

豊かな金髪をたたえた容貌から、”A fada loura”(金髪の妖精)と呼ばれた彼女は、合計19の賞を獲得し、ブラジルで最高の歌手と賞賛されました。


しかし、人気絶頂期であった1973年に、突然引退を発表し、大衆の前から姿を消したのです。

彼女は1959年にレストラン経営者であったAmaury Garciade Oliveiraと結婚しています。Amauryは過去に結婚歴があり、当時のブラジルはカトリックの教義から離婚を認めておらず、彼らはウルグアイで挙式しました。
その最愛の夫のビジネスを手伝うため、歌手としてのキャリアを捨てたのでした。

その後、彼女の動向が公になったのは、1991年にブラジルの新聞社が夫の経営するピザ屋で働く彼女を取材した時と、彼女が亡くなった時でした。

2000年を迎えたばかりの1月4日、Morganaは夫のピストルを自分の口に当て、引き金を引きました。
彼女は病院に運ばれましたが、生命維持装置に繋がれたのを知ると、その管を引き抜いて絶命したのです。64年の生涯でした。
晩年はうつ病に苦しんでいたようで、あまりにも悲劇的な逝去のニュースでした。

まずはそのMorganaの歌う”Serenata do Adeus”をご紹介しますね。



こちらはElizeth Cardosoのバージョンです。



Vinícius自身が歌った音源で、1968年のアルゼンチン公演の時のもののようです。



Clara Nunes(クララ・ヌネス)の歌。



Pery Ribeiro(ペリー・ヒベイロ)の歌。



天才ギタリストBaden Powellによる演奏。

歌はありません。



★ポルトガル語の歌詞とコード進行はこちらをご覧ください。
Principal, Maisのタブでコードの種類を選べます。


※毎週日曜日に掲載します。
次回は4/28です。