
「斜陽」
太宰治

『斜陽』(しゃよう)は、太宰治の中編小説。
敗戦後の没落貴族の母と姉弟、デカダン作家らの生き様を描いた太宰文学最高のロマン。
真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要だという決意から書かれた。
『新潮』1947年7月号から10月号まで4回にわたって連載された。
同年12月15日、新潮社より刊行された。定価は70円だった。初版発行部数は1万部。
すぐさま2版5,000部、3版5,000部、4版1万部と版を重ねベストセラーとなった。
太宰の代表作の一つで、作中で描いた、
没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という流行語を生みだした。
斜陽という言葉にも、
国語辞典に「没落」という意味が加えられるほどの影響力があった。
太宰治の生家である記念館は、本書の名をとって「斜陽館」と名付けられた。

斜陽館
「斜陽」をはじめ、多くの名作を残した文豪「太宰治」。
その父親で大地主だった津島源右衛門が明治40年(1907年)に建てたものが
現在の太宰治記念館「斜陽館」となっています。
約680坪(約2200平方メートル)もの広大な敷地に、
米蔵にいたるまで青森ヒバ(ヒノキ)を使って建てられている豪邸は、
東北豪商の館としても見ごたえがあります。
明治時代に建てられた貴重な木造建築であり、
近代和風住宅の代表例として2004年に国の重要文化財に指定されています。

蔵を利用した資料展示室には、太宰が生前着用していたマントや執筆用具、
直筆原稿、書簡などのほか、初版本や外国語の翻訳本などの貴重な資料があり、
全国から多くのファンが集まります。

『斜陽』は全8章の小説です。
そのうちのいくつかの章は、手紙や、遺書の形をとっています。
かず子の視点で語られる物語には、戦後の移りゆく時代や、
周囲の人たちの生活の様子も垣間見えます。

主要登場人物
- かず子 29歳の華族の家の娘。死産と離婚、肺病を経験している。
- お母さま かず子の母。貴族の典型のようなマダム。十年前に夫を亡くしている。
- 直治 かず子の弟。麻薬に溺れる弱い性格の青年。従軍しアヘン中毒になっていて帰還。
- 上原二郎 直治が慕う小説家。「無頼派」らしく酒と女に溺れる。
あらすじ
戦後、家を引き払ってお母さまとともに伊豆の山荘へ移り住んだかず子は、
慣れない庶民の生活を強いられる。そこへ直治が帰ってくる。
弟を通じて知り合った上原に彼女は恋のような思いを抱く。
お母さまは結核で病没し、彼女は思い切って上原の赤ちゃんを孕もうと東京に出てくる。
時を同じくして上原の奥さんに恋慕していた直治は自身の弱さに絶望して自死する。
彼女は直治の死を思い、
上原の奥さんに「これは、直治が、或る女のひとに内緒に生ませた子ですの。」
と言うつもりであると上原に手紙で宣言する。

『斜陽』発表前年(1946年)に撮影
太宰治
ダザイ・オサム
(1909-1948)青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。
本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。
酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。
1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、
翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。
1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、
平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。
戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、
『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
現在でも遺体が発見された6月19日は「桜桃忌」として国民に愛される作家です。


禅林寺 三鷹市下連雀